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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/07/15(月) 01:55:18.98
ID:GuzBXgUxO
※独自設定あり。今回も地の文です。そして毎度ながら冗長です、ご了承下さい。
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/07/15(月) 02:00:55.67
ID:GuzBXgUxO
「プロデューサーさん、ちょっと相談があるんだけどさ――」
とある芸能事務所、そこに所属する一人のアイドル――木村夏樹は、彼女を担当するプロデューサーへ遠慮がちに切り出した。
ロックなアイドルを信条・コンセプトとし今を駆け抜ける夏樹。
純粋、清廉、無垢で可愛らしい……そのような従来のアイドルイメージとは対極にある彼女であるが、そんな形にとらわれない「かっこいいアイドル」は社会に鮮烈な印象を刻み込み、今や男性はもとより、同性である女性からの支持も厚い。
前髪をたくし上げ、いわゆるリーゼントのような髪型をしていることも相まって、夏樹というアイドルは今や若者の憧れであり、一種のアイコンになっている。
そんな彼女であるが、いつもの明朗快活な性格は鳴りを潜め、何やら葛藤の中にいるような面持ちであった。
「……相談? どうした?」
初夏の太陽は眩しく、高い空には雲ひとつない。事務所のクーラーが冷気を吐き出す音、それだけが響いている。
「スケジュールのことで相談があってさ」
「何だ、そんなことか」
いつもらしくない夏樹を見て、何を切り出されるのか――そのように身構えていたプロデューサーであったが、何気ない相談であったことに安堵のため息を漏らす。
「……スケジュールか。休みが欲しいとか?」
地道な下積みを経てアイドルとしてデビューし、デビュー間もなく注目を集め忙しい日々を送ってきた数年間。駆け足のように過ぎる目まぐるしい時間はようやく落ち着き、これからの戦略を再構築する時期に入っていた。
プロデューサーにとってはこれまでの労をねぎらう意味も込めて、スケジュールに余裕を持たせようと思っていたところであった。
「いや、その逆っていうか……」
ところが、彼女から返ってきたのはその逆。意表を突かれる。
「……え?」
「いや、もっと仕事を入れて欲しいんだ」
まさかの提案に呆然とするプロデューサー。
まさか、俺のやり方に不満があるのでは――彼の脳裏に一抹の不安が過ぎる。