五条「ククク… ここが学園都市ですか」その32

2011-02-16 (水) 08:39  禁書目録SS   38コメント  
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恋と選挙とチョコレート 初回限定特装版


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743 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02 /07(月) 22:00:58.39 ID:XmYUE7e7o
『……来たか。存外に遅かったな』

学園都市第七学区の一角。
薄暗い宵闇に包まれた部屋の中に、堂々とした男性の声が響き渡る。
その声に呼応したかの様に、ぼう、と中空に炎が浮かび、その炎が部屋の中に居る二人の男の姿を浮かび上がらせた。

片方の男は、長めの緑髪を総髪にまとめ上げ、白いスーツに身を包んだまま泰然とソファに腰掛ける稀代の錬金術師、アウレオルス=イザード。
そしてもう片方の男は、対照的な漆黒の神父服に身を包み、咥えた口元のタバコへとライターの炎を寄せる天才魔術師、ステイル=マグヌス。



ステイルはそのタバコの先端に火を灯すと深く息を吸い込み、一拍の後大きく紫煙吐き出し、口を開いた。

ステイル「詫びるつもりは無いよ。生憎とこちらも暇じゃないんでね。それで、見せたいものって、一体何だい?」

アウレオルス「悠然。そう急くな倫敦の神父よ。時に貴様は一人で来たというのか?」

ステイル「……?ああ。それがどうかしたのか?」

ステイルの返事を聞いたアウレオルスが、疑わしげに周囲を眺める。
薄暗い部屋の中には間違いなく彼とステイルのしか存在せず、また周囲に他者の気配が無いという事を確認した様に一度口元に笑みを浮かべた彼が、再びその口を開いた。

アウレオルス「少々無用心が過ぎるな」

ステイル「……無用心?そもそも君はこの部屋の中では魔術が使えない様結界を──」

そこまで言葉を吐いたステイルは、アウレオルスの右手を見て戦慄する。
暗い部屋の中ではまざまざとは確認出来ないが、その右手に握られた細い棒状の何か。
その何かが一瞬金色の輝きを放つと同時、コートの内ポケットからルーンを刻んだカードを取り出さんとステイルの右腕が動いた。

アウレオルス「動くな、ステイル=マグヌス」

ステイル「っ!?」



744 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02 /07(月) 22:03:41.93 ID:XmYUE7e7o
薄暗い部屋の中、突然の出来事で反応が遅れたのは当然だった。
ステイルが右手でカードを掴むと同時、その首に黄金の鍼を突き立てたアウレオルスが言葉を吐くと、突然鉛の様に重くなった体がステイルの動きを完全に封じた。

その様を見たアウレオルスが、くくっ、と小さく含み笑いをした後に、彫像の様に固まったステイルに向け言葉を吐く。

アウレオルス「憮然……あの程度の結界で我が黄金練成を防げるだろうとは、侮られたものだな」

ステイル「……!貴様、何をするつもりだっ!?」

投げられたステイルの言葉に返答するでもなく、アウレオルスはゆっくりソファから立ち上がると、入り口とは逆側の窓に立ち、その外に広がっている学園都市の夜景を眺めた。
眼下に広がるその景色を、どこか遠くを眺める様な眼差しで眺めていた錬金術師の口が動く。

アウレオルス「当然。知れた事……三沢塾の一件における礼をするまで」

ステイル「……?礼……!?」

呟いた錬金術師が、そのまま振り返り魔術師と視線を交差させる。

アウレオルス「五条勝には礼をしていたが、貴様には礼をしていない。此度呼集せしは、その礼をせんが為だ」

ステイル「……礼ね、だったらこの呪縛を解いてくれないか?」

アウレオルス「それは出来ん。これより行わんとする事は、貴様らの教義の源に反するもの。貴様はそこで見ているが良い。"我が術にて動きを封じられている状態"でな」

ステイル「……!?」

再び踵を返し、窓の外に目線を投げた錬金術師が言葉を続ける。

アウレオルス「……少々、話をしようではないか」

ステイル「……」

アウレオルス「三沢塾での一件以来、私は考えを改めさせられたのだ。禁書目録を人の身より外し、彼女の笑顔を守りたい……その一心で全てを捨て、神にすら反目し、なお私は艱難辛苦を積み重ねこの黄金練成を完成させた」

ステイル「……その努力は、まったくの無駄骨に終わったわけだけどね」

吐かれたステイルの皮肉に、軽く自嘲の色を表情に浮かべたアウレオルスの言葉が続く。

アウレオルス「然り。されどそれは貴様とて同様だろう?ステイル=マグヌス。貴様も彼女が為、相応の研鑽を重ねたはずだ」



745 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:06:12.58 ID:XmYUE7e7o
ステイル「それは……」

アウレオルス「……そして我々が幾重にも血涙を重ねようと届かなかった彼女の解放を、いとも容易に上条当麻と五条勝が成しえてしまった」

ステイル「……!!それは違う!彼らの辿った道は、決して容易なんかじゃ」

アウレオルス「唖然、失言であったな。彼等を侮辱する意は無い。許せ。そして結果として、禁書目録は記憶を失わずに生を歩むことが可能となったと」

ステイル「ああ……それは君もボクも望むところだったはずだろう?彼女の幸福。それを得るために君は神に背き、ボクは悪に染まる事も辞さなかった」

アウレオルス「また然り。私も禁書目録と上条当麻を見て、嫉妬すると同時に祝福の念も抱いたのだ。そしてあの三沢塾一軒では、その祝福の念が嫉妬に打ち勝ったが為、私は黄金練成を封じ、彼の者達を陰より見守ろうと決意した。彼女が幸福なるというのならば、それに勝るものは無いだろう。我が方向性は誤っていたのだとな……だが……」

そこで振り返ったアウレオルスの表情を見たステイルの背中を、ぞわりと冷たい何かが駆け巡った。
あれは、あの表情は──

アウレオルス「時を経るつれ、次第に私の中で肥大化して行ったのだ。そう、嫉妬の感情が」

ステイル「っ!!ならば君は壊すというのか!?彼女がようやく得た平穏を!日々を笑って過ごせるという、当たり前の幸福を!!」

語調を荒げるステイルと対照的に、何処か落ち込んだ様なアウレオルスの声が響く。

アウレオルス「……そうなのだ。私には出来ない。禁書目録がようやく得た幸福を私情にて蹂躙するなど、到底叶わぬ」

ステイル「……だったら話はこれで」

アウレオルス「だがな倫敦の神父よ。そんな矛盾を抱えたまま煩悶の日々を送る内、さる東洋の偉大な錬金術師の言葉を思い出した。その錬金術師の残した言葉が、私を突き動かしたのだ」

ステイル「?」



746 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:08:25.72 ID:XmYUE7e7o
アウレオルス「"彼女は僕が先に好きになったんじゃないか、それを横からとるなんてダメだよ兄さん!"と!」


ステイル「」

アウレオルス「私は感銘を受けた。そうだ!私が先に想いを寄せた禁書目録が、どこの馬の骨とも知れぬ男に奪われて良いというのか!?否!!私には、そして貴様には、上条当麻よりも先に禁書目録と想いを通わせる権利があるハズだ!!」

次第に加速する様テンションを上げる錬金術師の気勢に押される様、ぽろっとステイルの咥えたタバコの灰が落ちた。


ステイル「しかし、それは彼女が選択する事じゃあ……」

アウレオルス「当然!!されど目を逸らすなステイル=マグヌス!姫神秋沙より聞き及びしところによれば、上条当麻は我らが禁書目録と既に同棲をしているとの事ではないか!」

ステイル「それはイギリス清教の指示でもあるんだけどね……」

アウレオルス「知れた事!!されど想像してみよ!!我らが禁書目録と同棲をした折に繰り広げられるであろう、その甘美で穏やかな日常を」

ステイル「!!そんな不埒なこと、出来るワケが」

アウレオルス「己が欲望のまま正直に想像せよ!倫敦の神父!!」

高らかに声を上げたアウレオルスの首に、黄金の鍼が立てられる。
刹那、ステイル=マグヌスの脳裏に浮かんだのは、禁書目録と呼ばれる少女との二人暮し。
朝は彼女に起こされ、二人で朝食をとり、暫し同じソファでテレビを眺めた後、猫を伴い近所の公園に散歩に行き、彼女が興味を示した飲食店で昼食を済ませ、そのままぶらぶらと街を歩き、夕食の買い物をし、帰宅し、夕食の後に軽く戯れそのままベッドで──

つう、とステイルの鼻腔から一筋の赤い線が流れた。
それは、そんな願望が叶わないと知る彼の心が流した涙に代わるものだったのかもしれない。



747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:10:19.78 ID:RfwCuU9AO
アウレオルスじゅうはっさいなにいってんだwwww



759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:26:16.41 ID:fo/sbluRo
アウレオルスの偉大さがよく分かるスレだな



748 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:11:43.44 ID:XmYUE7e7o
アウレオルス「クックック……貴様も思春期、無理も無い……鼻血よ、止まれ」

アウレオルスが三度首に黄金の鍼を突き立てると、ステイルの鼻から流れ出した血がぴたりと止まった。
それと同時に、呆けていたステイルの顔が険しくなり、言葉を吐き出した。

ステイル「クソっ!!こんな事を考えさせてどうするつもりだ!?ボクらが如何に望もうと、彼女は、彼女はッ!!」

アウレオルス「間然。既に禁書目録は彼女が定めし伴侶が居る。その幸福を奪うことは我らには到底叶わぬ。私はこのジレンマを解消する為の手立てを考え、そして結論に至ったのだ」

ステイル「結論……?」

アウレオルス「そう、"もしも彼女がもう一人居れば"とな」

ステイル「なっ……!?まさか……!?」

アウレオルス「見るが良いステイル=マグヌス!!これぞ我が錬金術が到達点にして終着点!!我が願望にして貴様が願望!!これこそを以って我が最大の返礼と知れっ!!」

再度高らかに叫んだアウレオルスの首に、黄金の鍼が突き立てられる。
刹那、アウレオルスとステイルの間に黄金の閃光が迸り、部屋中を埋め尽くして行った。


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八月二十七日 夏休み三十八日目
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750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:16:03.13 ID:fo/sbluRo
ギャグ回か



749 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02 /07(月) 22:14:09.78 ID:XmYUE7e7o
『クックック……では、行くとしましょうか……』

残り幾許も無い夏を惜しむかの様に冴え渡る晴天。
とはいえ、相も変わらずその紫外線を容赦無い勢いで投げ掛けてきている太陽のせいで今日も温度計の表示は摂氏三十度を上回っており、晩夏の公園は季節外れの猛暑の様相を呈していた。

その公園の中でむさっ苦しい白外套に身を包みながら悠然と言い放つ五条勝の長身を眺め、彼の対面に立つ転送能力者の少女白井黒子は大きくため息を吐き出した。

黒子「行きますかって勝さん、何ですのその格好は?見ているこちらまで暑くなって来ますわ。というか……」

いつもの微笑を浮かべたまま、つるなしのメガネに太陽光を乱反射させている五条に、黒子の言葉が続けられる。

黒子「学園都市に来て以来、外出されるのは初めてですの?これから一体いくつ面倒な手続きが待っているかご存知ではありませんの?」

法を守っている立場として、当然彼女は知っている。
学園都市の機密保持に関する異様なまでの堅苦しさと、その最中で外出をするという事が如何に面倒な手続きを経るものであるかを。

そもそも、こんなにも急に外出届が受理された点は些か不自然ではあったが、どうにも偽造の線は薄そうだし、そんな事を知ったら彼女がそれはもう烈火の如く激怒するであろう事を五条は知っている。
相も変わらず謎の多い人だ、と彼女が再度が再度吐こうとしたため息は、五条の言葉によってかき消された。

五条「クックック……面倒な手続きとやらはパスしましょうか……どうせオレに許可を出した人間は、これからの移動手段も、果てはオマエと同行する事も周知の範疇でしょう……」

黒子「……何ですのそれ……?」

そこまで言葉を吐いた五条勝の視線が、中空へと投げられ再び言葉が続けられる。

五条「何よりも行き先を指定されたと言うのが気がかりですが……まあ好意に甘えておきましょうか……ねえ……?どうせ見ているのでしょう、オマエは…… クックック……」

その言葉に反応した黒子の視線が、五条の視線と同じく中空へと投げられる。
しかし当然ながら、そこには何も無い。



751 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:16:15.31 ID:XmYUE7e7o
黒子「……?勝さん?中二病でもこじらせましたの?」

五条「なっ!?」

黒子「パスをすると仰いましたけれども、不可能ですわ。これから外との境界線に向かうかと思われますけれど、その境界線で強制的に体内にナノマシンの注入作業と書類の山の処理が待ち受けておりますのよ?」

五条「……黒子、荷物はそれだけですか?」

外出の際に必要となる面倒な手続きを知っている事を得意げに語る黒子と、意に介さず彼女の手荷物のみに気を掛ける五条。

その問いを聞いた彼女は、自身が抱える大きめのバッグに目線を落とし、五条へと返答した。

黒子「ええ。二泊三日ならば、あとは現地で調達すればよろしいかと思いまして」

五条「そうですか……」

答えを聞いた五条が、彼女の右手からバッグを受け取る。

右手に黒子のバッグ。
左手に自分のバッグ。

両手の塞がった五条はそのまま黒子に背を向け、軽くしゃがみこむ様に中腰の体制になる。

五条が求めていることを理解が出来ず立ち尽くす黒子と、降り注ぐ蝉時雨。

暫しの間を置いて振り返った五条が、不思議そうな表情で口を開いた。

五条「……?何をしているのです?おんぶですよ、おんぶ」

黒子「おっ……おんぶですの!?」

五条「早くしなさい……!夏は待ってはくれません……!」

ほらほら、と急かす様に揺られたその背中を見つめる黒子の顔に徐々に赤みがさす。



754 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:19:05.37 ID:XmYUE7e7o
黒子「まっ……勝さんと密着できる点ではそういったプレイも嫌ではな……いえむしろそのマニアックな要求もわたくしの望む所なのですが、幾らなんでも街中でおんぶというのは羞恥心的にも風紀委員的にもマズイですの、あ、いえ、羞恥心を煽られるのは嫌じゃないですわよ。というかわたくし的にも燃えるので構わな「良いから早くしなさい」

冷淡に放たれた五条の言葉に、彼女は一瞬のたじろぎを見せた後覚悟を秘めた表情へと変貌し、その肩に両手を掛ける。

黒子「……覚えていないのですけれど、あの晩以来なのですわね」

五条「……そんな事もありましたね、クックック……」

次いでその体重を五条の背に預けた彼女の頬が、より一層赤く染まっていく。

黒子(……やっぱり大きいですわね、勝さんの背中……)

五条「ククク……」

かちゃり。

どこか恍惚した表情のまま、その頬を五条の背中へと押し当てる黒子。
早鐘こそ打たれていないが、とくん、とくんと背中越しに伝わる五条の鼓動が、彼女の耳に届いた。

かちゃり。

黒子「ねえ、勝さん……?」

五条「……?何でしょう?」

かちゃり。

黒子「さっきから何をされておりますの?」

五条「ああ、コレですか」

かちゃり。
音が鳴るたびに、まるで車のシートベルトの様な仰々しいベルトで自身の身体が五条の背に固定されていくのを感じていた黒子が、率直に疑問を吐き出した。



756 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:21:44.37 ID:XmYUE7e7o
胴体に三本、足に一本のベルトで強く固定された状態の彼女と五条の姿は、傍目から見ると非常に滑稽なものに見える。

五条「落ちると危険ですからね……しっかり掴まっていなさい……クックックック……」

黒子「きっ危険って……!?ちょっと、勝さん何をされるつもりですの!?」

五条「行きますよ……加速が終わるまでは息を止めていなさい……5……4……」

黒子「お待ち遊ばせ!!何ですの!!何ですのその不穏なカウントダウンは!?」

五条「3……2……」

再び両手にバッグを持った五条の身体が、その筋肉を凝縮して力を貯める様にググっと折り曲げられる。
その背に負われる黒子の表情は、襲い掛かる不安に対し、徐々に青ざめていった。

黒子「お待ち下さい!!勝さん!!良く判りませんがわたくし心の準備がまだ──」

五条「1……0!」

轟、という音と共に、襲い掛かる重力に全身の血液が後方に引っ張られる様な感覚を覚えた黒子の意識が、徐々に漂白されて行く。

その意識が手放されんとする直前、息を止めていろと言った五条の言葉を思い出した彼女は強く口をつぐみ、その背にしがみ付く事で何とか意識を留めた。

そして景色が目まぐるしく流動する様を見て、その背に負われた彼女は気付いた。
自身と五条勝が、今正に凄まじい速度で上昇しているという事に──────

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758 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:25:26.11 ID:XmYUE7e7o
手を伸ばせば届きそうな程に近い雲、遥か下方に流れ行く街の風景。
閉鎖的な学園都市を抜け出し、青い海を目指して、愛しの五条勝とつかの間のバカンスを堪能しに向かったはずの白井黒子は──

黒子「……何ですの、これ……」

自分が五条の背に負われ、空を駆けている事に呆然としていた。

五条「クックック……何故飛べるのか、とかどんな能力なのか、とか細かい事はオレも良くわからないのですがね……なかなかに壮観でしょう……」

ともすれば、彼の駆ける振動で酔ってしまいそうなものだが、転送能力を多用する白井黒子の三半規管は、随分と鍛え上げれていたものだった。
現に彼女はその振動と速度をものともせず、流れていく景色や鳥を眺めるたびに、感嘆の声を挙げている。

五条「……この調子ならば、思ったよりも早く目的地に着きそうです……黒子、体調に異常はありませんか?」

自分を気遣う五条の言葉に、少し喉が渇いた事を告げようと思ったが、彼女は言葉を飲み込んだ。
自身と荷物を負ってこの速度で駆けている五条が平然としているのに、自分のわがままで彼のペースを乱す事は無いだろうと。

黒子「……異常有りませんわ。それより勝さんはお疲れになりませんの?」

五条「軽く駆けているだけですからね……全力だったら、今頃オマエは火だるまですよ……クックック……」

その含み笑いが冗談は無いであろう事を察した黒子の背を、一抹の恐怖感がなぞる。

黒子「あまり脅かさないで下さいまし」

五条「これはすみません……」

黒子「……というか勝さん」

五条「……?どうしました?」

黒子「こんな姿、外の方に見られたらフライングヒューマノイドが出たと騒ぎになりませんこと?」

五条「あぁ、その点は心配要りません……余程接近遭遇でもしない限りは、我々の姿は見えていない。いや、見えづらい様になっていますので」

黒子「……ますますワケがわかりませんの」



760 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:27:40.19 ID:XmYUE7e7o
軽口を叩きあい、再び黒子は五条の背に顔を埋める。
規則的な五条の息遣いに合わせ、その背が膨れ、萎み。
そんな繰り返しを感じながら、彼女が小声で呟いた。

黒子「本当に、わたくしは貴方の事を何も知りませんのね」

その呟きは吹き付ける風の音に打ち消され、五条の耳へと届く事は無かった。

────────────

数刻程空を駆けて到着した神奈川県のとあるビーチは人影もまばらで、思っていた以上に活気の無いものだった。

五条「……少々期待外れでしたかね……もう少し活気のあるものだと思っていましたが……」

その様を見て、思わず一人ごちる。
入院中にニュースで耳にした太平洋沿岸のクラゲ大量発生の煽りを受けたのだろうか。
それなりに広いビーチは随分閑散としていて、夏ももう終わりかけだという事実を改めて想起させてくれる。

ぎらぎらと照りつける太陽。
青松白砂の様相を呈する、なかなかに赴きのある浜辺。
しかし夏特有の喧騒はなく、ただ穏やかな波の音と蝉の鳴き声、時折高く鳴く鳶の声が周囲を夏色に彩っていた。

直ぐに着替えを済ませた自身とは違い、少々時間がかかるであろう黒子が手近な海の家で着替えを済ませる間、レンタルしたパラソルとサマーベッドを設置してそのベッドに腰掛け、波の音に耳を澄ませる。

──────こうして誰かと海水浴に来るなど、どれくらいぶりの事だろうか。

『どうされましたの?感傷的になられて』

五条「……クックック……いえ、海というのも中々に良いものですね……へぇあッ!?」

背後から投げられた黒子の言葉に答えながら振り返った五条の笑みが、驚愕の色に染まりあがった。

黒子「大変お待たせしましたわ。いかがです?似合っておりますの?」



761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:30:06.49 ID:dEmy5TBDO
・・・・・・へぇあッ!?



762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:30:43.16 ID:RfwCuU9AO
ちょっと五条さんには刺激が強すぎるな



763 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/07(月) 22:32:16.82 ID:XmYUE7e7o
五条の視界に写る、見慣れた白井黒子の姿。
問題は、その水着の方だった。
お世辞にも大人びた体型とは言えない起伏に乏しい彼女の肢体とその局部、細かく表現してしまうならば股間と両胸の先端を、必要最低限な紫色の布が覆い隠している。

というか、その局部を隠している布の面積は一般的なそれと比較して余りに小さく、ほぼ全裸に近い。

五条「サっ……サンバ?」

思わず見たままの印象を表す言葉が、五条の口から漏れた。

黒子「嫌ですわ、サンバではございません。水着ですの。恥ずかしいのであまり見つめないで下さいまし」

黒子の返答を聞いた五条が黙って立ち上がり、海に向かって駆け出した。

黒子「……?」

その様子を不思議そうに眺めている黒子を尻目に、走りながら五条が指を鳴らした。
次いで一斉に浜辺の水が引き、暫しの静寂を伴った後に、高さ数メートルはあろうかという一際大きな波が海岸へと押し寄せる。

押し寄せてくる波間にいつの間にか漂っていたサーフボードに向かい五条は大きく跳躍し、その上へと飛び乗ると、起用にバランスを取り、波を切り裂き滑走を始めた。

波は次第にその形を崩し始め、白と青が描くパイプラインが形成され始める。

その最中に悠然とボードを滑らせた五条の身体がそのままの勢いで美しい弧を描き、宙へと舞う。
海面から一羽の企鵝が顔を出し、五条に向かいビーチボールを放った。

黒子「すっ……凄いですの勝さん!!そんな特技がございましたのねっ!流石ですのー!」

始めて目の当たりにする五条の波に乗る姿にキャーキャーと黄色い歓声を上げる白井黒子。

五条「着替えろ……純粋にっ!!」

その顔面に向かい、ビーチボールによる五条のシュートが放たれた。



764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:33:25.22 ID:fo/sbluRo
やっぱギャグ回やww



765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:33:36.32 ID:jP7nMIudo
五条さんツナミブーストも使えたのかwwwwwwwwwwww

てっきり海に向かったのは冷やして鎮めるためだと(ry




766 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02 /07(月) 22:34:46.85 ID:XmYUE7e7o
黒子「?……へぶっ!!」

何が起こったのか理解出来ず呆けていた黒子の顔にビーチボールが直撃し、ぽよんと弾む。

波頭が砕け、その巨大な質量を以って押し寄せた津波が海岸線を覆いつくして行った。

『不幸だあああああああああああああああ!!!』

彼らは知らない。
その波に飲まれ、危うく溺れ掛ける羽目になった一人の高校生が居たことを。

────────────

間を置いて海の中から五条が顔を出し、ばしゃばしゃと海岸線に向かい泳いで海から上がり、黒子の下へと駆け寄った。

地味に痛かったのだろうか、彼女の顔に痕こそないものの、その瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。

黒子「なっ……何をされますのいきなりっ!?」

五条「こちらのセリフです!!何だというのですかその水着はっ!!」

珍しく語気を強めた五条の言葉を聞いた黒子の視線が下を向き、自身の水着へと走る。

黒子「……?何か問題がございますの?」

……本物だ。彼女はここまで大掛かりなツッコミして尚、何が問題かまるで気が付いていない。
そんな彼女の様子に、五条の肩がガックリと落ちる。

五条「……露出をし過ぎでしょう……」

黒子「……?そうですの?わたくしとては、これでも控えた方なのですが……」

理解が出来ない、といった様子で言葉を返す黒子の身体に、五条が唐突にバスタオルを投げかけた。

五条「……水着を買いに行きましょう……確か海岸線に店があったハズです……」

黒子「お待ち下さいまし、わたくしは別にこれでも」

五条「オレが嫌なのです!!オレ以外の衆目に、あまり素肌を晒さないで下さい!!」

歩き始めながら一層強く吐かれた五条の言葉に、一瞬ビクっと黒子の背が跳ねる。
そんな様子を知るはずもなくずんずんと歩みを進める五条の背を見て、何かに合点した様な表情を浮かべた黒子が軽く頬を染め、笑みを浮かべたままおずおずと追従して行った。

午後を回ろうとしている終わりかけた夏の日は未だ高く、バスタオルに包まったまま隣の少年に寄り添って歩く少女と、どこか呆れた様な笑顔を浮かべ少女と歩調を合わせる水着姿の少年に、強くその日差しを投げ掛けている。
暮れて行く、自身たちには遅く訪れた穏やかな夏休みを惜しむ様に寄り添い歩く二人の姿が、静かな波音をBGMに、ゆらゆらと揺れる陽炎の中へと溶けて行った──────

──────to be continued──────



768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:38:26.97 ID:RfwCuU9AO
あらあら
五条さんったら




769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 22:39:24.16 ID:jP7nMIudo
ぐぬぬ…一瞬津波によるポロリ展開を期待したが…ラッキースケベ値が足りなかったようだ…!



774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 23:11:09.78 ID:53rvccHDO
なにこのバカップル

乙でした!




777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 23:29:21.96 ID:HLE7xGaO0
乙です
アウレオルスは黄金錬成をそんな使い方ばっかでいいのかwww




778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 23:30:06.39 ID:fo/sbluRo
でもお前らがアウレオルスと同じ能力を持っていたらリアルダッチワイフ作るんだろ?



779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 23:41:10.32 ID:RfwCuU9AO
>>778
ハーレム作るよ…




781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/07(月) 23:48:43.43 ID:DNHjio9Xo
「ネトラレ効果」で興奮二倍!さらに「好きなあの子に対する背徳感」で興奮四倍!!
そして事後に「俺…本気で何やってるんだろ…」で通常の十三倍の空しさを味わうんですね。わかります。








823 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:14:21.96 ID:PHCZGbGho
本日もご支援の程を頂き、誠にありがとうございます
雪やべえwwww

三十分頃より投下を開始させて頂きます



824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 22:16:32.74 ID:Z2g4/5jho
よしこい



825 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:28:43.36 ID:PHCZGbGho
────溢れ出した金色の光が、まるで大きな渦を描く様、徐々にその中心点へ向かい収束を始める。

錬金術の秘奥にして、有史より只の一人も成し得る事の叶わなかった神の領域の踏破。
己が欲望のみを糧にその禁忌を破り捨てた錬金術師の業に、思わずステイルは目を奪われた。

収束しきった黄金の光が、一層その輝きを増加させ、再び大きく爆ぜる。
一瞬の内に霧散していった金色の光が渦巻いていたその場所をまざまざと見据えた彼の口からは、思わず声が漏れた。

ステイル「こ……これは……!?」

視線が向けられたその先。
再び宵闇に包まれたその部屋の中において、赤子が産声を上げるが如く、淡い燐光を放っている物体が一つ。

──否、物体では無い。あれは最早、一つの生命──

ごくり。
思わずステイルが口中の唾を嚥下する音が、静寂に包まれた部屋の中に響き渡った。

その音に反応する様に、彼の目線の先に生まれた生命が蠢く。

緑色を帯びた半透明のゲル体。
恐らくは瞳なのだろうか、真っ赤な球二つの球体が、意思を持った様にステイルの双眸を見つめる。
ふるふると、その小さな体を振るわせた生命体が、口の様に見て取れる箇所を開き、人の言葉として理解の出来る音を吐き出し始める。

『ゥオ……オレ ゲドウ スライム コンゴトm』
アウレオルス「ええい消え去れ化物(フリークス)!!」

間髪居れず、その首に黄金の鍼を立てたアウレオルスが高らかに叫ぶ。
彼の宣言と同時、ステイルが見つめていたその緑色のプルプルした何かは「ヒデー」と吐き捨てる様な断末魔の雄たけびを上げ、虚空へと消滅して行った。

呆けた様にそのやり取りを眺めるステイルの目線の先で、アウレオルスがぜえぜえと肩で息をしていた。
その視線に気付いた彼の顔が上がり、両者の眼差しが交差する。

……場を包み込む静寂。

どこからか、夏の終局を高らかに歌い上げる澄んだ鈴虫の鳴き声が響いてきた。

暫しの間を置いた後、錬金術師は背筋を伸ばし、握りこぶしを口元に添えてこほん、と一度咳払いをして口を開く。

アウレオルス「そう、"もしも彼女がもう一人居れば"とな!」

ステイル「ああ、そこからやり直すんだね」

────────────



826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 22:29:33.66 ID:Z2g4/5jho
悪魔合体失敗ww



827 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:30:14.67 ID:PHCZGbGho
夏と言えど、如何に長く暑い日と言えど、必ずや落日は訪れる。

五条勝はサマーベッドに上体を預けたまま、次第に金色から深い紅へとその色彩を変化させて行く水平線を眺めながらため息を吐き、左隣へと視線を投げた。

その視線の先では、真剣な面持ちの白井黒子が彼と同様、プラスチック製のベッドに体重を預け、海の彼方へ沈もうとしている夕日を眺めている。

……こうして黙っていれば、彼女も相応に絵になる少女なのだが。

浮かんだ邪推を振り払う様、五条の口が開いた。

五条「……以上が、オレが学園都市に訪れるまでの生い立ちです……」

五条の言葉を聞いた黒子の首が動き、その澄んだ瞳が五条の目線を捉える。
そんな彼女の眼差しに、急激に胸の鼓動が早まるのを感じた五条は思わず目線を外し、再度暮れて行く西日を眺めた。

五条「……中途半端に重い話ですみませんね……ですが、オマエには知っておいて貰いたかった……クックック……」

黒子「……勝さん」

夕日を眺めながら、くぐもった自嘲の声を上げる五条の名を、確かめる様に黒子が呼ぶ。

黒子「あなたは今、お幸せですの?」

五条は彼女に投げられた意外な言葉に、多少の驚きを覚えながらも、静かにその瞳を細め思い返す。

学園都市に足を踏み入れて以来の出来事を。

晩秋の公園で、黒子と出会った。
今でも月を背負って街頭の上に立っていた彼女の姿は、瞼の裏にしっかりと焼き付いている。

忌み嫌っていた異能を、多少なりとも制御する術を得た。
そして、その異能が誰かを守り得る力となる事も知った。



828 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:32:21.51 ID:PHCZGbGho
そして迎えたこの夏休み。
振り返ってみれば直に終わろうとしているこの期間で、随分と沢山のものを得た気がする。

上条と出会い、美琴と出会い、ステイルと殴り合い、神裂に襲われ、禁書目録を餌付けし、姫神に血を見せ付けられ、アウレオルスに記憶を消され、鎧に身を包んだおっさん連中と三沢塾に突撃し、9982の散り様を目撃し、初春のサポートで研究所を燃やし、また時に爆破し、フレンダを謀り、麦野に打ち抜かれ、一方通行に危うく殺されかけ……

黒子「……どうされましたの?頭なんか抱えて」

五条「考え直してみればここ最近、ロクな事をした記憶がありません……」

暫し頭を抱えて思い返してみたが、今のところ、脳裏に浮かんでくる知人・友人の顔は全て笑顔へと帰結している。
……善しとしようか。

五条「……ですが……」

顔を上げた五条の視線と、黒子の視線が再度ぶつかる。
そのメガネ越しに移る瞳を嬉しそうに細めた五条の口が、率直な感想を紡いだ。

五条「ですがオレは幸せです。これは断言出来ますよ」

その笑顔は、少年が浮かべるそれに相応しく、普段のどこか陰のある微笑とは異なる眩い程の笑顔だった。

滅多に見ることの無い彼の表情に釣られて笑顔を溢した黒子が、穏やかな口調で言葉を返す。

黒子「なら結構じゃありませんの」

五条「……?」

笑顔をたたえたままの表情で、尚も穏やかに彼女は続ける。

黒子「今がお幸せなら、もう良いではございませんの。辛い過去や絵に描いた餅の未来なんて、幸せな今の前では何の価値もございませんわ」

そんな言葉を聞きながら、五条は学園都市に来てより自身の過去を知る事となった二人の人間のリアクションを思い起こす。

友と呼べる上条はこの過去を知った際、その傷跡を見て何も言わず涙を流した。
利害の一致している統括理事長は、表層的な事実に囚われずそれを深く見据え、現在の有益な情報へと転化した。

そして今眼前で語りかける少女は──────



829 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02 /14(月) 22:34:22.65 ID:PHCZGbGho
黒子「過去を振り返るよりも、未来を夢みるよりも、わたくしは今を、貴方と過ごす今この瞬間を見つめていたいですの」

──────凪ぐ夕刻の海原よりも穏やかに、"どうでも良い事"と笑い飛ばした。

それは、何よりも優しい肯定であり、何よりも穏やかな否定。
傷跡に薬を塗るでもなく、傷跡を診断するでもなく。
ただ自身と過ごす今こそ、最も価値があるものと断言した。してくれた、彼女の言葉。

その意味を頭の中で咀嚼するにつれ、思わず熱を帯びた目頭を悟られぬ様、五条の口が冗談を紡ぐ。

彼の言葉を聞いた黒子の顔が赤く染まり、ぎゃあぎゃあと何かをまくし立てる。

響くくぐもった笑い声。
何処か楽しそうなため息交じりのお説教。

浮かんでいた太陽がその姿を水平線の彼方へと完全に沈めるまでの暫しの時間、そんな二人のやり取りを優しい波音が柔らかく包み込んでいた。

────────────

海水浴場から徒歩数分。
海の家が経営している民宿や、良い具合に萎びた雰囲気の食堂のある通りを抜け、田舎特有の温かみを帯びた白熱灯に照らされた道沿いに、五条勝、白井黒子の両名が今夜宿泊をする予定の温泉旅館は存在していた。

建蔽率の都合なのだろうか、さして大きな建物ではないが趣のあるロビーへと歩を進めようとした二人は、通りに面したその門前で思わず足を止めて完全に凍りつく。

五条「……歓迎……?」
黒子「五条勝・黒子様……?」

その門扉の脇には、黒板に白の筆文字で二人の宿泊を告げる旨の文字が堂々と躍っている。

学園都市の外部だからまだしも、内部で行われたら周囲の好機の目線に晒されるどころかお嬢様学校の生徒でもある黒子は"不純異性交遊"のレッテルを貼られ進退の危機に晒されかねない危険性すら孕んだそのウェルカムボードに、五条の顔が青ざめる。

黒子「まっ……勝さん?これは予め頼んでおいたものですの……?」

五条「いえ……この宿は知人の紹介でしてね……予約もその知人に丸投げしていたのですが……」

黒子「……そ、そうですの……」



831 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:35:57.10 ID:PHCZGbGho
五条は言葉を交わしながら隣に立っている黒子の表情を伺う。
どこか引き気味の表情の奥底に、仄かな怒りの色を感じ取ることが出来た。

五条「……任せた人間が悪かったですね……戻ったらオレからよく言っておきましょう……」

彼はため息混じりに首を降ると、眼鏡に手を添えながらこの宿泊施設を紹介した、ビーカーの中に漂う一人の人間の顔を思い浮かべた。

……先に会った際に放ったジョークへの仕返しのつもりなのだろうか。
理由もなくこんな事をするとは思えない人物なのだが……

黒子「まあ、良いじゃございませんの。考えてみれば学園都市の外ならわたくし達の事を知ってる方もおりませんものね。さ、入りましょう」

こっ恥ずかしいボードを尻目に、すたすたと館内へ歩を進める黒子。
彼がそれに続いて歩を進め旅館の自動扉をくぐると、小さくチャイムの音が鳴った後、『いらっしゃいませー』と、温かみのある歓迎の声が響いた。

ぱたぱたとスリッパの音を響かせながらフロントに顔を出した着物の女性の姿を視認すると同時、再び五条勝は凍りつく。

その装いこそ、いかにも女将といった着物だが、その顔はつい先日目の当たりにしたものだ。

切れ長の目つき。僅かに赤を帯びた長髪。下方に流されたツインテールの様な髪型。

学園都市統括理事長の居る"窓の無いビル"への案内人、結標淡希──────

黒子「すみません、表のボードに書かれております五条ですけれど」

凍りつく五条の様子に気付かず、黒子が女将の格好をした結標に話しかける。

『五条様ですね、お待ちしておりました。それではお部屋の方までご案内させて頂きますので、お荷物をお預かりいたします』

黒子がよろしく御願いしますわ、と女将に荷物を手渡し、受け取った女将が今度は五条の前へと手を差し出す。

『さ、遠慮なくお預け下さい』

黒子「……?勝さん?どうされましたの?」

二人の声で我に返った五条が、伸ばされた手と女将の顔をまじまじと数回見比べて口を開く。

五条「いえ……部屋までならば自分で持ちますので結構です……」

『あらまあ、お若いですねぇ。これは失礼致しました。それではこちら、ご案内致します』

まるで熟年の女将の様な抑揚で笑い、歩を進め始めた結標の後を、さ、参りましょうと微笑みながら黒子が追従する。



832 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02 /14(月) 22:38:42.56 ID:PHCZGbGho
数歩遅れてその後に続いた五条は、部屋までの道のりを案内されながら思案を巡らせていた。

五条(……この旅館を理事長が指定したのは、やはり外出先で監視を行う為でしょうか……いや、あの人間が本気で監視を行おうとするのならば、こんなに直接監視役を前面に押し出す必要は無いでしょうね……となるとオレとだけ面識のある彼女が直接我々に接触するポジションに据えられたというのは、オレに対する威嚇や牽制が目的というのが妥当でしょうか……"出先で妙な事をするなよ"というメッセージ……いや、そんな事はオレも重々に承知していますし、妙な事をしないというのはアイツも理解しているハズです……ならば何故、"オレと面識のある転送能力者の少女を不自然な女将役に据えた"のでしょうか……先のボードの件と併せて考えると、まさか本当に嫌がらせ?……考えられない、あの無感情そうに見える理事長がそんな些少な物事の為にわざわざ手はずを整えるとは「勝さん?」思えませんね……もしも理事長の意に反して彼女が独断でここへ来たというのならば、これは先に死守したオレの貞操の危機という事態も考慮に「勝さん!!!」「へぇあっ!?」

少し語調が荒くなった黒子の声に、思考の坩堝に沈んでいた意識が引き戻され、五条は思わず驚嘆の声を上げた。

その視界に飛び込んでくる、一つのドアの前で足を止めている結標女将と黒子の姿。

黒子「はぁ……もう少ししっかりして下さいませ……で、お部屋はこちらですの?」

『はい、こちらです。今お開け致しますね』

結標が手馴れた様子で鍵を解除し、ドアを開く。

失礼しますの、とその部屋に入った黒子に続き彼もまた部屋の中へと歩を進めた。

通されたその部屋はこれまた外観と同じく趣のあるオーシャンビューが高ポイントの和室だったが、隣で歓声をあげる黒子とは異なり、どこか釈然としない気持ちを抱えたまま五条は女将から部屋や食事、宿泊の説明を受ける事となった。

────────────



833 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:40:49.34 ID:PHCZGbGho
周囲が完全に宵闇に閉ざされた午後八時。
五条勝は、海の見える旅館の一室、その窓際のテーブルに添えつけられた椅子へと腰を下ろしていた。

ちょっとお風呂に行って参りますわと言い残し鼻歌混じりに部屋を出た黒子を見送り、アメニティの浴衣に着替えた後に腰を下ろした彼は、座ったまま網戸が付いている事を確認し、窓を開く。

途端、程よく涼を帯びた夜の潮風が吹きつけ、彼の頬を撫でた。
惰性で点けられたテレビからは、凶悪殺人犯が新府中の刑務所から脱獄したというニュース特報が流れてきていた。

……しかし統括理事長は、一体何を考えているんだろうか。

網戸越しに夜の海を眺めながら思わずため息を吐いた彼の頭の中では、そんな疑念が渦を巻いていた。

再び思考の奔流が彼を絡み取り、その体勢のまま暫し頭を捻る。

五条(……腑に落ちない点が多すぎますね……あえて現状で理事長が自分にプレッシャーをかけてくる必要は無い……しかし、彼女は確かにこの旅館で女将をやっている……他人の空似……?考えられない事もないが……)

……数分が経過した後、彼は再び大きくため息を吐くと頭を垂れた。

五条(……結論が出ませんね……まぁ、ここでこんな事を深く考えていたら、また黒子に心配をかけてしまいそうだ……)

よし、と小さく呟きブンブンと頭を振る五条。
そしてその様を見据えた様に、着信を告げる旨の呼び出し音を部屋に響かせる携帯電話。

五条(……?誰でしょうか……?)

彼は、自身がかけるテーブルの上に置かれた携帯電話の背面ディスプレイに目線を投げ、その表示を確認する。
映し出された発信者の名前は、上条当麻。
例のトラブル体質が発動していなければ、今頃は学園都市の一角でアバドンと見紛う聖女と食後の穏やかなひと時を過ごしているはずであろう男。

その表示に何故か嫌な予感を覚えた五条が、おもむろに携帯を手に取り、通話ボタンをプッシュする。

『もっ……もしもしっ!?』

それに次いで、慌てた様子の声が受話器のスピーカーから響いてきた。

五条「もしもし……オレですが……どうかされましたか?」

『五条か……?五条だよな……!?』

……?妙な事を言う。この電話にかけて来たのだから、自分以外の人間が出る事も無いだろうに。



835 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:43:06.81 ID:PHCZGbGho
五条「ええ、オレです。五条勝です」

『そうか、そりゃそうだよな……あのさ、今何してる?』

受話器を片手に立ち上がり、彼は再度夜の海へと視線を投げた。
ところどころで点滅している夜漁の船の灯火が、夜空の星のそれを連想させ何となく美しい。

五条「今は……学園都市の外の海に居ます。ああ、勿論許可状を貰ってですが……」

『海……なあ、まさかそこって神奈川県だったりするか……?』

五条「……?ええ、何故わかったのです……いよいよ能力に開花でもされましたか……?クックック……」

『いやぁ~、上条さんは無能力者のままなんですけどね……』

五条「……?ならば何故わかったのです……」

『……つうか、もしかして白井と一緒に居ないか?』

五条「……ッ!?」

その言葉を聞いた彼の背筋を、つうと冷や汗が流れた。

何故無能力者である上条が、自分と白井がともに神奈川のいち海水浴場に宿泊しているという事実を知っている……?
まさか上条も、結標と同じく……

五条「……何故、オマエがそれを知っているのです……?」

『……今……』

嫌な予感が方向性を変え、加速度的に膨張していく。
知りうるはずの無い男が知りうるはずの無い情報を持っている。
そんな明らかに異な事態を前にすると、やはり人間は生理的な恐怖を覚えるのではないだろうか。

『今目の前に掛かってるボードに、歓迎 五条勝・黒子様って……』

──────彼の身体は、弾かれる様に廊下へと飛び出していた。

────────────



836 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:45:58.25 ID:PHCZGbGho
五条「違うんです!!これは違うんですっ!!落ち着いて聞いて下さい!!」

上条「や、女連れで旅行ってのが男のロマンって言うのはわかるんだけどさ、いくらなんでもこりゃちょっと引くわー……新婚気分っつーのか?」

慌ててロビーを飛び出した五条が、旅館の前、何故かそこに居て難しい表情でウェルカムボードを眺めていた上条に詰め寄っていた。

五条「違いますっ!これはっ……これはっ!!」

上条「あぁ、皆とか御坂には言わないから安心して良いぜ?あー、何か喉渇いちゃったなー」

五条「ジュースですか?ジュースですね!?すぐに用意しましょう……!」

きょろきょろと辺りを見回した五条が、旅館の中を歩いている女将、結標の姿を視認し声を投げる。

五条「結標さん!大至急このお方にジュースをお持ち下さい!」

しかしその声に反応する事なく、彼女の姿は従業員用のドアへ吸い込まれていった。

五条「無視ですか!?それでは接客業者にはなりきれませんよ結標さん!」

……相も変わらず無反応。
やはり、他人の空似なのだろうか。
或いは彼女は名を呼ばれても無視をせざるを得ない状態なのだろうか。

上条「……やっぱりオマエのとこもか……」

そんな五条のうろたえる様を見て、上条がため息混じりに口を開いた。

五条「……?やっぱり?オマエのとこも……?一体何を言っているのです……?」

上条「……それなんだけどさ……」

『私から説明しましょう。二三、確認させて頂きたい所もありますので』

唐突に二人の会話を裂いて、凛とした女性の声が響き渡った。
五条が声のした方角へと目線を投げると、暗い路地に見覚えのあるシルエットが浮かび上がる。

長い黒髪をポニーテールに束ね、へそが見える程短く絞られたTシャツと、片側だけホットパンツの様に短くカットされたジーンズ。
腰に巻かれた二本のベルトの一本には、長さ二メートルはあろうかという太刀が挿されたままピンと背筋を張る女魔術師、神裂火織の姿がそこにあった。



837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 22:47:37.72 ID:Z2g4/5jho
痴女さんか



838 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:48:07.67 ID:PHCZGbGho
五条「……これはこれは、息災そうですね……」

上条「……ついて来てたのか!?」

神裂「……いえ、犯人を捜して歩いていたら、窓際に立っている彼の姿が見えたので、もしやと思いここに来たのです」

つかつかと五条の方へと歩み寄りつつ刀の柄に手をかけながら、神裂が続ける。

神裂「恩義もある手前、あなただとは信じたくありませんが……答えてください五条勝。あなたがこの魔術の術者なのですか?」

上条「……ちょっと待てって!またそんな物騒になる必要も無いだろ!?刀から手ぇ離せって!」

……眼前で繰り広げられるやり取りが理解できず、思わず五条は首を傾げる。

五条「……さて?何のお話でしょうか……オレにはとんと理解出来かねますがね……ククク……クックック……アーッハッハッハ!!」

神裂「その口振り……やはり貴方でしたかっ!?」

上条「違う!!素だから!!何か黒幕チックだけど、あいつ素であの口調だから!!五条!!オマエもいちいち高笑いすんな!!」

五条「これは失礼……久しく見た顔に、つい嬉しくなってしまいましてね……」

神裂「……失礼しました。ご無沙汰でしたね、五条勝。貴方も息災そうで何よりです……幾つか確認したい事があるのですが、ご協力頂けますか?」

はっとした表情で刀から手を離し、律儀に一礼しながら挨拶をした神裂が、五条へと問を投げる。

五条「……?確認したい事?……別に構いませんが……」

言葉を返しながら、五条は上条と神裂の顔を交互に眺めた。
先のやり取りとは打って変わって、二人とも真剣な面持ちになっている。
加えて、禁書目録の件以来顔を合わせる事もなかったこの二人の取り合わせで、何となく自身が置かれた状況が推察出来た。

五条「……何かあったのですね……ここで立ち話も何です……部屋で伺いましょうか……」

二人に向かい口を開いた五条が踵を返して歩き出す。
顔を見合わせて互いに頷いた上条と神裂が、その後に続いて旅館の門をくぐり、その中へと消えていった。

────────────



839 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:51:59.99 ID:PHCZGbGho
『~♪』

白井黒子は、上機嫌だった。
先刻から若干五条の様子がおかしく感じられたが、きっと日中の疲労によるものだろうと断定した彼女は、宿泊しているフロアとは別のフロアにあった温泉につかり、今日一日の遊び疲れを洗い流し彼の待つ部屋への廊下を軽い足取りで進む。

黒子(男はほろ酔い、女は湯上りと申しますものね~♪旅の空での湯上りのわたくしを見たら、勝さんもケダモノになってもおかしくはございませんの……ようやく奥手なあの方に黒子の純潔を捧げる時が来ましたのねっ……!!そもそも男女で旅行というのは"そういう事"でございますわよね……あぁ、どうしましょう、これで部屋に戻ったらもう滾った勝さんがお待ちしておりましたら……!!)

部屋のドアの前にたどり着き足を止め、大きく息を吸い込んだ彼女は、意を決した表情でドアノブに手をかける。

風既に備え付けの浴衣に着替えた彼女は、その浴衣の下に一応の下着は身につけているものの、その気になればいつでも"こと"に及べる状態だ。

彼女の手が、ドアノブを捻り、強く押し開ける。
それと同時、彼女は声を張りながら部屋の中へと飛び込んだ。

黒子「お待たせしましたの勝さん!!黒子はっ……!!黒子は覚悟を決めて参りました!!さぁ、わたくしの純潔、今晩こそ、その勝さんご自身でお散らし遊ばせええええっっっ!!」

──刹那、浴衣がはだける程の勢いで飛び込んだ彼女の視界を、想像だにしていなかった光景が迎撃した。

正面、部屋の中に立っているパンツ一丁の五条勝の姿。
そしてその五条の背にぴったりと密着して、彼の腰から下腹部へと手を回している、見慣れない黒髪長身の美女。

五条「……っ!神裂!そこはいけないっ!!」

神裂「直ぐに済みますので……じっとしていて下さい」

五条の耳元へと囁きかける様凛とした神裂の声が響き、その真っ白な蛇を思わせるしなやかな右手が、ボクサーパンツの上部から彼の局部を目指して滑り込む。
絹の様な滑らかさを帯びているその手に体表をなぞられた五条の口から、思わず嗚咽混じりの哀願が漏れた。

五条「やめてくださ……っ!!??」

慌てて腕を振り払おうと顔を上げた五条の目線が、浴衣をはだけさせたままぽかんとした表情を浮かべている黒子を捉えた。

────────────



840 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:54:14.85 ID:PHCZGbGho
話は、少々前に遡る。
五条勝は上条当麻と神裂火織を部屋に招きいれ、両者に事情を尋ね、帰ってきた答えに首を捻っていた。

五条「天使とやらを呼ぶために、外見と中身が入れ替わる副作用のある魔術ですか……」

招き入れた二人の語る話を頭の中で反芻しながら理解を進めていく。
彼らから語られた内容は以下の通り。

・誰かが天使の力を手に入れるため、天界に存在する天使をこの世界に引き摺り下ろす大魔術を行使しようとしている。
・この術を便宜的に御使堕し(エンゼルフォール)と呼称する。
・その影響は全世界に及び、副作用として皆の外観と中身が入れ替わってしまう不思議な現象が起きている。
・影響を受けていない人間が犯人。
・天使の力などという物騒なものが誰かの手に渡ってしまうと大変なので、必要悪の教会に所属している魔術師として神裂が首謀者を探っていたら、影響を受けていない上条に出会った。

五条「……では、オマエが犯人なのですね?」

上条「バカ言うなっての。オレの場合、この右手のせいで影響が出なかったみたいだ」

そんなやり取りを挟みながら、なおも彼らは話を続ける。

・右手が理由で上条が犯人じゃないのは判ったが、犯人はきっと近くに居る。
・上条が五条を発見。あれ?あいつ影響されてなくね?
・あいつ犯人じゃね?
・今に至る。

五条「……オレが犯人……?クックック……失礼な事を言う……しかしこれで合点が行きましたよ……オレもこの旅館の女将が知った顔だったので、少々訝しんでいたところでした……」

神裂「非礼は承知しています。ですが、何故貴方には影響が無いのでしょうか?ご説明頂けますか?」

……説明、と言われてもあまり心当たりが無い。
自身が身に着けている魔術的な要素といったら……



841 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:56:09.79 ID:PHCZGbGho
五条「……以前知り合った錬金術師より贈られた外套があります……それが魔術の影響を防いだのでは?」

神裂「……その品を拝見させていただいてよろしいでしょうか……?」

それですよ、それ。と呟いた五条が、壁のハンガーに掛かっていた白い外套を指差した。
みるみる内に神裂の顔色が変わり、慌てた様に言葉が吐かれる。

神裂「歩く教会っ……!?いえ、違いますか……しかしこれは……」

外套をまじまじと眺めながら、神裂が言葉を続ける。

神裂「……随分な代物ですね……ですが、これだけでは御使堕しの影響を防ぐ事は……」

五条「それで防ぐに足らずと言うのならば、あとはオレの能力が原因ではありませんか?以前にもあったでしょう……オレが人払いの結界とやらを無意識に透過していた事が……」

神裂「ええ……ありましたね……確かにその二つの要素があれば御使堕しの影響を回避出来る可能性もあるでしょう」

上条「……ま、当たり前だけどやっぱり白だって事だな」

あーよかった、とため息を吐く上条と対照的に、まだどこか疑念の表情を浮かべている神裂が続けた。

神裂「……ですが、念の為身体を改めさせて頂きます。あなたも学園都市の能力者なのでしたね?」

五条「……ええ、構いませんが身体を改めるとは……?」

神裂「言葉の通りです。能力者が魔術を使うと、身体のどこかに大きなダメージを負うという報告が上がっているので、貴方の身体に損傷が無いかどうかを調べさせて頂きます」

淡々と続ける神裂の様子に、軽く首を横に振った上条が立ち上がり踵を返した。

五条「……?どこへ行くのです?」



842 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 22:57:43.04 ID:PHCZGbGho
上条「飲み物でも買ってくるわ……人に見られるのも忍びないだろーからな」

五条「……?何を言っているのですか?」

神裂「賢明ですね、上条当麻。さて五条勝。まずは衣服を脱いで下さい」

五条「なっ!?何を言っているのですか貴方はっ!?」

神裂「?やましい所が無ければ、何ら問題は無いでしょう。それとも何かあるのですか?衣服を脱いだ後は、触診を行わせて頂きますのでご了承下さい」

五条「触診!?かっ……上条!待て!待ちなさい!一緒に止めt」

上条「許せ五条っ!!」

叫びながら足を速めた上条が、見る間もなく部屋から駆け出して行った。

神裂「あくまでも脱ぐ気が無いのならば、申し訳ありませんが力づくで調べさせて頂きます……浴衣ならばさして手間はかかりませんからね……」

五条「や、止めなさい神裂!!部屋で暴れてはなりません!ちょ!!まっ!!アッ────!!」

────────────



843 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 23:00:33.13 ID:PHCZGbGho
そして、今に至る。

……彼女は、風呂に入りに行っていた。
これは間違いない。
そして彼女が部屋に戻らぬ様、神裂が人払いの魔術をこの部屋に施していた。
これも間違いない。「結界の類は苦手なので簡単な術式ですが」と言っていたが、暫く部屋に人は寄り付かないとの事だった。
だったはずなのに。
どういうワケだか、彼女は今部屋に戻ってきている。
そして今、自分の局部を神裂に"調べ"られている。
何故か。
否、今は原因の追究はどうでも良い。

──────どうしたものか。


五条「狂え!!純粋にっ!!!」

素早くその右手でつる無し眼鏡を外した彼は、力を込めた目線で黒子を見据える。
彼女が今正に目の辺りにしている光景の認識を阻害する為に──────

程なくして、黒子の身体がふらりと揺れ、そのまま後方へと昏倒した。
派手に倒れそうになる彼女を、神裂の手を振り解いた五条が素早く駆け寄り、抱きとめる。

神裂「その娘は何者ですか?」

その様子をみた神裂が、倒れ掛かった黒子を抱きとめた五条に声を投げた。

五条「……オレの恋人です」

神裂「っ!?……恋人!?その娘がですか……?」

五条「ええ……先に話していませんでしたか……オレはコイツと、泊りがけで旅行に来ている最中なんです……」

神裂「……そうですか……」

若干申し訳無さそうな表情を浮かべ俯きかけた神裂だったが、すぐにはっとした表情に切り替わり、端整な顔を持ち上げる。

神裂「確認させて頂きたいのですが、その娘の外観は貴方から見て入れ替わっていますか?」

五条「……いえ、入れ替わってはいませんね。恐らくは今朝方オレと……その……密着状態で行動していたので、その影響ではないかと……」

神裂「……貴方と外套の発する反魔力の影響が彼女にも及んだと……」

五条「それに一日中さんざん水着で遊びまわりましたが、彼女にダメージなんて一片も見当たりませんでしたよ……これはオレが証明します」



844 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 23:03:16.36 ID:PHCZGbGho
あれだけ際どい水着を着ていても、いくつか古い傷跡こそあれ、彼女の身体には痣の一つも無かった。
彼女が犯人では無いのは明白だろう。

神裂「……わかりました。では貴方がたは完全に白として扱わせて頂きます。手間をおかけしましたね」

ぺこりと頭を下げ、神裂が部屋の外へと歩を進めはじめる。

五条「少々お待ち下さい……久しく会ったのです、夕食でもご一緒に如何ですか?」

神裂「……申し訳ありませんが、そんな事をしている時間は……」

五条「上条も居るとなれば……船盛りをもう二人前追加して頂きましょうか……今朝は良い鯛が上がったと女将さんが言っていましたね……」

神裂「ご相伴しましょう。その娘が気がかりです」

神裂の返事を聞き、座布団を枕代わりにして黒子を横たえた後、内線を使ってフロントへと電話をかける。

数回の呼び出し音を経て響いた明るい声にオーダーを告げようとした際、部屋のドアが開いた音と共に二つの足音が部屋へと飛び込んできた。

五条「もしもし……五条です……友人と夕食を共にすることになりましたので、急で済みませんが彼らの分もご用意頂けますか……?はい……当然料金は追加で結構です……」

上条「お?なんだ、ゴチしてくれんの?んじゃあウチの家族に連絡しとかないとな」

受話器を耳に当てたまま、背中越しに右手の親指を突きたて上条へ合図し言葉を続ける。

五条「はい……ええ、船盛りも二人前追加で御願いします……ええ……無理を言ってすみませんね……」

『おー!船盛りなんて豪勢なハナシだにゃー!三人前で頼むにゃー!それでこそわざわざイギリスくんだりから駆けつけた甲斐もあるもんぜよ!!』

五条「……あ、済みません、一人増えたので計五人分で……はい……御願いします……では支度が終わったらお呼び下さい……ええ……どうも……」



845 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 23:06:31.37 ID:PHCZGbGho
フロントとの電話を終え、軽くため息を吐く。
急に三人前と無理を言ってしまったので、後で女将に心づけでも渡しておいた方が良いだろう。

……三人前?

ふと疑念が湧き、受話器を置いて振り返る。

飛び込んで来た部屋の中の光景は、すやすやと寝息を立てる黒子と、背筋を伸ばして正座している神裂、そして皆にジュースを配っている上条の姿と────

五条「オマエは……?」

『急でごめんにゃー、ゴチになるぜよっ!!』

神裂が当然の様に振舞っているところから考えると、彼もまた魔術師なのだろうか。
何処かで見た様なツンツン金髪アロハシャツ姿の男と目線がぶつかった。

……何処かで見た事がある。どこだったろうか。
慌てて脳内にある記憶の重箱を逆さにして激しく揺さぶってみた。

その底からこぼれ出して来たのはつい最近。
禁書目録の件が解決し、入院をしていた際に姿を見せた深夜の侵入者。

五条「……っあの時の!?」

上条「あれ?お前ら知り合いなの?」

『いや、自己紹介するのはこれが初めてぜよ。上やんの仲間の土御門元春(つちみかどもとはる)だにゃー、よろしくにゃー』

──────ニヤニヤと笑みを浮かべたまま、男の右手が眼前に差し出される。
統括理事長の使いをしていたあの男が何故ここに……?

問い詰めたい気持ちに駆られながらも、部屋の中には上条も神裂も居る。
今妙な機密でも持ち出されたら、二人に危険が及ぶ可能性も重々に考えられる。

暫しの逡巡を経てその右手をとり、言葉を返した。

五条「……オレは五条……五条勝です……よろしく御願いしますね……"土御門先輩"……クックック……」

握った右手に力が加えられたので、自身もまた同様に力を加え返す。
暫くの間微笑み混じりに互いを睨み付けながらギリギリと力を込めあっていた均衡を破ったのは、家族へと電話をかけるどこか間の抜けた上条の声だった ──────

──────to be continued──────



847 :五条ファン ◆APKLrJzDFw :2011/02/14(月) 23:10:12.66 ID:PHCZGbGho
以上、本日投下分となります
ご支援を頂きました皆様、関係各位の皆様、本日も誠にありがとうございました

週一投下ともとなると、どうにも分量が濃くなってくたばれバレンタインしまいがちですが、ごゆるりお読み頂ければ幸いです

次回投下に関しましてですが、此度と同じく週末~週頭に投下を行わせて頂こうかと存じます
お時間がございましたら、またお付き合いの程を頂ければ幸いです



849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 23:12:01.51 ID:RHSapciw0


五条さんにまで不幸体質が伝染してるとしか思えないwwwwwwwwwwwwwwwwwwww




851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 23:30:27.40 ID:6qAPNGoJo
乙です

五条さんもう認識阻害使いこなしてるなwwww




853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 23:34:27.00 ID:9a8Ka7yLo
>>847
途中で本音がこぼれてるぞ




854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/14(月) 23:44:24.16 ID:i0ITQpuo0
>>1乙



860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 01:11:24.80 ID:bYZcN6o20
最初のやつは何かのパロディかな?



861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 01:17:46.80 ID:ArqVvVTfo
ゲームの女神転生シリーズですな
悪魔と悪魔を合体させる時に、合成が失敗すると組み合わせと無関係にスライムが出来上がってしまうという




862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/15(火) 01:21:24.85 ID:bYZcN6o20
そうなんだサンキュ
さすがに人体錬成はきつかったかw








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禁書目録SS   コメント:38   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
3543. 名前 : 名無し@SS好き◆QfU8/X0I 投稿日 : 2011/02/16(水) 10:01 ▼このコメントに返信する
流石五条さんだ・・・
これで上条一家まできたらどうなるのか
3546. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/02/16(水) 10:54 ▼このコメントに返信する
アウレオルスwww
白金の言葉じゃないか
3548. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/02/16(水) 11:00 ▼このコメントに返信する
来た!純粋にっ!!

しかしここまで相思相愛、しかも片方が性欲淑女の黒子となると、
行為に及ばない理由をつけるのも大変だにゃー。
3550. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/02/16(水) 13:55 ▼このコメントに返信する
土御門を待っていた・・・!
くたばれバレンタインしまいがちwwwww
3552. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/02/16(水) 14:23 ▼このコメントに返信する
からくりサーカスが混じっててワロタ
3590. 名前 : 名無し@SS好き◆Qi8cNrCA 投稿日 : 2011/02/17(木) 15:20 ▼このコメントに返信する
フェイスレスさんがいる
5393. 名前 : 名無し@SS好き◆AvURf82. 投稿日 : 2011/03/29(火) 23:54 ▼このコメントに返信する
最近更新無いな(泣)
5674. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/04/06(水) 21:17 ▼このコメントに返信する
↑そうだなあ(泣
6838. 名前 : 名無し@SS好き◆sSHoJftA 投稿日 : 2011/05/11(水) 02:42 ▼このコメントに返信する
つづき探しても見つからないけどもしかして無いの?
9504. 名前 : 名無しさん◆pnbeOqtk 投稿日 : 2011/07/18(月) 05:20 ▼このコメントに返信する
作者が死亡フラグ立てたまま行方不明なんだ
9581. 名前 : 名無し@SS好き◆F3OnhyVM 投稿日 : 2011/07/20(水) 01:35 ▼このコメントに返信する
もう無理か…
9972. 名前 : 『 ホ ラ イ ゾ ン 』 & 『 五条さんの作者さん 』 信 者◆- 投稿日 : 2011/07/30(土) 00:49 ▼このコメントに返信する
もう7月が終わろうとしているが・・・自分は信じたい・・・

まだだ!まだ終わらんよ!!


v-42v-41v-29v-41v-42
10018. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/07/31(日) 03:05 ▼このコメントに返信する
今日で7月も終わり・・・くそっ!!作者!帰って来い!
11764. 名前 : マダオ( 自称:魔術師サイド )◆mYbggkm6 投稿日 : 2011/09/07(水) 17:06 ▼このコメントに返信する
v-42v-29v-42v-29v-42v-29v-42v-29v-42

『 五条さん 』の作者さん・・・
見ていますか???
聞こえていますか???

貴方様が書き綴った『 神・作品 』のお陰で
なでしこジャパンv-22v-254v-22
大 活 躍 v-20v-20v-20ですッ!

自分は画面越しでしか
応援をする事を許されない?
地下帝国の住人v-35v-12v-26でしか
ありませんが、貴方様の
 復 帰 を心から
祈念しております・・・
恐らく、此処を訪れる全ての人達も
自分と同じ気持でしょう
兎に角・・・帰ってこい!!!

脳内☆イメージBGM♪
『 山崎ハコ 帰ってこい 』
ttp://www.youtube.com/watch?v=4BgIajhJ7bw


v-41v-30v-41v-30v-41v-30v-41v-30v-41


11943. 名前 : 創造力有る名無しさん◆- 投稿日 : 2011/09/11(日) 22:03 ▼このコメントに返信する
生きてりゃ良いんだけどな―
13094. 名前 : 名無しさん@ニュース2ちゃん◆- 投稿日 : 2011/10/09(日) 01:01 ▼このコメントに返信する
3月11日。やっぱり駄目だったのかな。
14528. 名前 : 名無しさん@ニュース2ちゃん◆- 投稿日 : 2011/11/19(土) 02:20 ▼このコメントに返信する
こんないい所で止まってるなんて生殺しもいい所じゃないですか!
14822. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/11/27(日) 15:31 ▼このコメントに返信する
今また祭りやってるし復活してくれないかなあ
氏の書く10年後五条さんが見たい…
14832. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/11/27(日) 22:00 ▼このコメントに返信する
震災で……とは思いたくないもんだ。
15155. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/12/06(火) 17:14 ▼このコメントに返信する
GOの五条さんにはきっと子供がいるんだろうな…見たいものだ
18316. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/02/20(月) 03:43 ▼このコメントに返信する
気づいたらもう一年たったんだな……
19531. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/03/19(月) 21:38 ▼このコメントに返信する
願え・・・純粋に!
20406. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/04/10(火) 05:41 ▼このコメントに返信する
本当に面白い作品
ただ願うのみ
23292. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/06/30(土) 14:28 ▼このコメントに返信する
もうこの作品も一年以上前のものなのか・・・

無事だといいなぁ
26812. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/09/22(土) 17:29 ▼このコメントに返信する
3月もくそも週末云々って言ってたんだし21日、28日、(3月)5日と三回もチャンスがあったんだから更新も連絡も無いってことは単に飽きたんだろ
29206. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2012/11/25(日) 22:46 ▼このコメントに返信する
週末に書けなくて報告はしてたけど、そのレスが拾われてないだけじゃないのか?

完結しなかったのが本当に残念だ
生きてることを祈ってる
30367. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/01/01(火) 11:11 ▼このコメントに返信する
今からでもいいから続編が見たい
31745. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/02/23(土) 05:37 ▼このコメントに返信する
まだ・・・帰って来る場所はありますよ・・・
32754. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/03/29(金) 00:55 ▼このコメントに返信する
是非続きがみたいです
33349. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/04/16(火) 22:43 ▼このコメントに返信する
生きていて、書く気があるなら報告があるはず
無いって事は亡くなったか飽きたかだ
37455. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2013/08/15(木) 20:21 ▼このコメントに返信する
どんなに良い作品でも未完は駄作
40982. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2014/01/18(土) 03:37 ▼このコメントに返信する
もうすぐで3年経つな
41961. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2014/03/01(土) 23:01 ▼このコメントに返信する
三年ぶりに読み返したが面白かったわw
未完だが名作SSだと再認識した
47342. 名前 : 幻想殺し◆- 投稿日 : 2016/08/11(木) 16:36 ▼このコメントに返信する
このSSを書いたやつは誰だ。ふざけンじゃねェ‼︎死んでみるか?書いたやつ
47389. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2016/08/30(火) 02:46 ▼このコメントに返信する
3月11日の震災が原因とか言ってるけどあながち間違ってないかもな・・・再びこのssを連載することを願うのみ
48092. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2017/07/24(月) 23:04 ▼このコメントに返信する
ほぼ希望はないと思うけどまだ待ってるよ...
48346. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2018/01/04(木) 18:15 ▼このコメントに返信する
もはやないとしても五条さんの活躍を永遠に待ち続ける
48900. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2019/03/05(火) 01:25 ▼このコメントに返信する
今年のイナイレ人気投票の中間発表にて、再び五条さんが1位になっているのを見てこのSSを思い出しました。
久々に読み直したが相変わらずの名作SSだなぁ…
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