彼女(アイドル)はつっこまれるのが好き! (電撃文庫) 293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:45:30.30
ID:vcp3CRRP0 「うぅ…グスッ…っふぐぅ…」
一人の少女が泣いている。
「あ…あ、あくせら…れーたぁ…」
今にも少女は壊れてしまいそうで。
「暗いよぅ…怖いよぅ…どこ…どこにいるの…?」
ひた、ひた。
「ひ…いや、いやぁ…。ち、近くにこないでぇ…!」
ひた、ひた、ぺた。
「 キ ヒ ッ ♪」
「んにゃあああああああああああああああああああああ!!!」
「うるっせェぞ!!黙って見れねェのか!!」
「だってだって!B級ホラー映画だと思ってみたらこんなに超怖い映画だなんて誰が想像つくんですか!?」
「オマエの悲鳴のほうがよっぽどビビるわ!!そんなに怖いのが駄目なら恋愛モノでもみてりゃいいだろォが!!」
「恋愛物なんて駄目です!!最低でもアクションが入ってないと、恋愛ものなんか吐き気がして見る気が超しません!!」
(どォしてこォなった…!)
294 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:46:21.19
ID:vcp3CRRP0 ――――遡ること3時間前。
「はぁまぁづぅらぁ~?今超何て言いましたか!?」
『だから、滝壺とのデートが今からあるんだって!!映画はまた今度、なっ?』
「どう考えても私のほうが先約だったじゃないですか!!浜面は私と一緒に過ごしたくないってことなんですか!?」
『そういうんじゃねぇって!いま急いでるから、後でな!じゃあ!!』
「ちょっと!話はまだ終わって―――!っ…切れました…。後で浜面は窒素プレスの刑ですね…」
これからどうしようか、と絹旗最愛は思案する。
たまの仕事の休みだからと、今日一日B級映画を見て過ごす予定だったのだが、約束していた浜面はこの始末。
今からフレンダを誘っても、どうせ鯖缶探しの旅に出ているだろうし、麦野はそもそもこういった映画は好みではないだろう。
「超困りました…どうしましょう…」
キョロキョロとあたりを見回す絹旗。
と、その時視界の端に白いものが映り込む。
(アレは…)
「ったくよォ…何で俺がゲコ次郎だか何だかの映画を一緒に見なきゃならないンですかァ?」
「ゲコ次郎じゃないもん!ゲコ太だもん!ってミサカはミサカは名前を毎回間違えるアナタに憤慨してみる!」
「興味ねェよ…」
「まぁまぁ、そう言ってやるな、打ち止めはずっと楽しみにしてたじゃんよ?」
「そうね…というかこんな明るい所に居たくないわ、一刻も早く中に入りましょう愛穂。日光で私の体が溶けてしまう前に」
「日光で溶けるって…オマエは神話の吸血鬼かってンだ」
「さしずめドラキュリーナ、といったところかしら?フフッ」
「桔梗は外に出ないで家でニート生活してるからそうなるじゃんよ…もっと外に出るべきじゃん」
「イヤよ。家で自由気儘にだらだら生活するのが一番いいのよ…ほら、私って優しいんじゃなくて甘いから」
「それは甘いのとは全然違うじゃん…」
(一方通行と…ミサカネットワークの上位個体に、それに付いてきた保護者二人ってとこですかね…?)
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:46:55.26
ID:vcp3CRRP0 周りに見知った顔も居らず、仕方ないので一人で見ようと思っていた絹旗であったが
彼らを見た瞬間に、正確には一方通行を見つけた瞬間だが、ふと思い付く。
そして、躊躇なく一方通行に近づいて行った。
「第一位じゃないですか、こんなところで何してるんですか?」
「あ?…オマエ確か、モアイだったよな。どうしたこンなところで」
「モアイじゃないです!サイアイです!いつになったら覚えるんですか!!」
「そォだなァ…オマエが俺より強くなったら名前で呼ンでやンよ、サイアイちゃンってなァ、クカカ」
「超無理難題じゃないですか!?」
突然やってきて一方通行と痴話喧嘩をし始めた一人の少女。
勿論打ち止めや黄泉川達に面識はない。
「一方通行、何か盛り上がってるところ悪いがその子は誰じゃん?」
「も…もしかして彼女…?ってミサカはミサカはあなたの浮気を疑ってみたり…」
「浮気も何も俺はオメェの彼氏でもなンでもねェだろうが…
コイツはあれだ、あー…黄泉川、浜面って言う雑魚の三下がいたろ、アイツの知り合いの絹旗ってやつだ」
「ふぅん…絹旗って言ったっけ?私は黄泉川愛穂。こっちのやる気のないのが――」
「やる気のないとは失礼ね。脱力系と言って欲しいものだわ…。私は芳川桔梗よ、この可愛らしい小さい子が――」
「打ち止めだよ!ってミサカはミサカは自己紹介してみる!」
「絹旗最愛です、決して"モアイ"じゃなくて"サイアイ"ですのでそこのところ超覚えておいてください」
296 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:47:32.72
ID:vcp3CRRP0 ちょっと睨まれているのは気のせいだろうか。
それよりも、と一方通行は気にかかっていたことを目の前の少女に問いかける。
「ンでェ?何でサイアイちゃンはこンなところで"一人"でいるんですかァ?」
「うっ…そ、それは…」
「ここは映画館だ。見たところ周りにはカップルやら家族連れ、それか友達グループできてる奴らが多い。
そのなかで用もねェのに俺らに話しかけてきたところを見ると…オマエ、一人だろ?」
「ぐっ…」
「それかあの馬鹿を誘っててドタキャンされたとかかァ?何にしろ、こンなトコで一人たァ滑稽極まりねェなァ!」
「………い……す」
「あ?」
「うるさいです!そうですよ!アナタのご想像どおりですよ!
浜面の馬鹿を誘ったら当日滝壺さんとのデートがあるってことで今さっきドタキャンされましたよ!
超笑えばいいじゃないですか!…ぐすっ」
悔し涙をその目いっぱいに浮かべて喚く絹旗を見て、一方通行は言い過ぎたと今更ながらに気付く。
だが時既に遅し、周りの冷ややかな目線が一方通行一点に集中している。
これはマズい。非常にマズい。
しかしどうこうする前に、女3人から追撃の一言が入る。
「泣かせたじゃん」
「泣かせたわね」
「あー泣かせたんだーってミサカはミサカは貴方を責めてみる」
どうもこういう展開には弱い。
天下の第一位様が女の涙に弱いなんて知られた暁には、笑い物になること間違いなしである。
しかし、いくら演算能力が高かろうと、一方通行に女心が理解できるはずもなかった。
297 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:50:33.58
ID:vcp3CRRP0 (クソッ…どうすりゃいい…どうすりゃ…
!!! 一番ここから抜け出しやすい最善の策があるじゃねェか、それを使わない手はねェ)
「おい、絹旗」
「ぐすっ…ふぐぅ…ふぇ?ひゃ、ひゃい」
「泣いてねェでこっち来い。黄泉川ァ、俺コイツと映画見に行ってくるわ。後頼ンだ」
「後頼んだってオマエ…打ち止めはどうするじゃんよ?」
「オマエらがいれば大丈夫だろォ、それにあンなガキ向けの映画なンか見てられるかってンだよ
それにコイツ泣かせたのは俺の責任でもあるしなァ、ちょっと付き合ってやるだけだし、問題ねェよ」
「アンタがいいって言うならそれでいいけど…まぁ、あんまり遅くならないようにするじゃんよ?」
「おォ、分かってる。じゃあまた後でな…ホラ、行くぞ」
―――回想終了。
298 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:51:12.46
ID:vcp3CRRP0 (あンなガキ向けの映画見るくらいなら…と思ったがこっちの方も大差ねェな…。
ドコのB級映画だよ、面白くもなンともねェぞ…コイツはこンなの見て面白れェのか?)
「オイ…この映画のどこが面白れェンだ?全く怖くもなンともねェが」
「まだまだB級映画の良さが分かっていないようですね、一方通行は。
いいでしょう、この私がこの映画の面白さを超講義して―――」
「パス。ホラ、スタッフロールももうすぐ終わるから外出てメシでも食うぞ」
某バーガー店にて。
これでやっと解放される…と思っていた一方通行はその考えが甘かったことを思い知らされる。
「はァ?まだ見るって言うンですかァ?冗談じゃねェ、俺は帰るぞ」
「この私を超泣かせたのは誰でしたっけね。別にいいんですよ?帰っても。
その時はあの3人に貴方がどれだけ冷たいか言いふらすだけですから」
そんなことをされると後でどんな結末が待っているかは予想もしたくない。
ただでさえ口うるさいのに又七面倒なことになると厄介になるのは想像に難くはないだろう。
結局、一方通行は大人しく一緒に映画を見る羽目になるのであった。
「ンでェ?今度は何の映画を見るんですかァ。次はもっと面白いのにしてくれよ…見てるこっちが苦痛にならない奴な」
「うーん…これはどうでしょう」
そう言って絹旗が指さしたのは『,hack// G.D. TRIANGLE』(カンマハックジーディートライアングル)
どことなくパクリ臭がするのは気のせいだろうか。
「またクッソ面白くなさそォなモンを…もォそれでいいわ。見に行くぞ」
「どんな映画なのか今から超ワクワクしますね」
「しねェよ。ったく…」
「♪」
(嬉しそうな顔しやがってよォ…そンなにこの映画が楽しみだったのかァ?)
299 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:52:31.63
ID:vcp3CRRP0 ―――館内。
(やっぱ面白くねェ。なンだなンだよなンですかァ?この超展開はァ。
パンフにゃ原作になったゲームをやってからのほうが楽しめるって書いてあンじゃねェか…)
「誰もアタイを見てくれない!」
「僕がいる!僕が、ニトリを見てる!!」
「嘘!アタイがどんなに頑張ったか!!!アタイはいつだってここにいたのに!!」
「嘘じゃない!!」
(まァでも…この主人公には微妙に俺に通じるところもあるなァ…)
「どうしたんですか一方通行。そんななんか超微妙に納得した顔して。
もしかして、B級映画の良さに気付きましたか!?」
「気付くかボケ。なンでもねェよ」
「いいぜ…来い…来いよ…僕は、ここにいるッ!!」
ス パ ァ ァ ァ ァ ィ ス ッ !
ハーイ>
「何だかこの主人公、誰かに似てませんかね?」
「そうかァ?ただの自己満足野郎だろォが」
「いやー、モテモテのところとか超似てると思いません?」
「誰にだよ」
「いや分かりませんけど」
「弱い憎しみだ…そんなものでは何もできはしない」
「ヴ…ヴヴァアアァァア゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ァ!!!」
「おお…」
「…」
300 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:53:35.38
ID:vcp3CRRP0 …そんなこんなで映画を観終わった絹旗と一方通行。
もう時間も遅いし、ということでもっと見たいと渋った絹旗は、最終的に一方通行に家の近くまで送ってもらうことで妥協した。
「…一方通行」
「…なンだ」
「今日はありがとうございました、まぁ一応お礼だけ言っときます」
「どォいう心境の変化だよ」
「人がお礼を言ってるのに何ですかその反応は!超腹立ちます!」
「怒ンな怒ンな。っとォ、この辺でいいのかァ?」
「おっと、もうこんなところでしたか。ここまででいいですよ」
じゃあ、と言いつぐむ絹旗。
何事かと一方通行がいぶかしんでいるといきなり携帯を突き出してきた。
「あン?」
「見てわからないですか?番号とアドレス交換しようってことですよ」
「なンでンな面倒なことを…」
「つべこべ言わずやればいいんです、これも何かの縁でしょう」
「チッ…」
渋々、といったような風に一方通行は絹旗の携帯から赤外線で受信する。
ちゃんと携帯に絹旗の番号とアドレスが入ってきていることを確認してから絹旗に赤外線送信を始めた。
「ホラ、コレでいいんだろォ?俺は帰るぞ」
「いいですよ…また後日誘いますね」
「はあァ!?また付き合えってンですかァ!?」
「当たり前じゃないですか!むしろ喜んでほしいですよ、こんな超可愛い子と1日中一緒に過ごせるんですから!」
「自分で可愛いとか言ってンじゃねェよ…ったく、暇だったらな」
「いつも暇でしょうに」
「うっせェ、後気分のったらだ。じゃァな」
だるそうに歩く一方通行を後ろから見つめる絹旗。
最後まで一方通行は振り向かなかったが、絹旗の心の奥には小さな"ソレ"が植えつけられていた。
"ソレ"が何なのか絹旗はまだ気づいていないけれども。
一方通行を見つめる彼女の頬が少し赤くなっていることから想像には難くないのではないだろうか。
その日の絹旗最愛の帰り道への足は、少し軽かったそうだ。
301 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 22:57:33.98
ID:vcp3CRRP0 今回も自分で何が書きたいかわからなかった
.hackのくだりがやりかっただけなんだ、すまない
.hackは全作やってます、大好きです、ファンの方汚してすみません。
このネタ書くために3回トリロジー見直した…
この後絹旗の呼び出しがあったりなんやらで一方さんの彼女になるとかいう話を書いてたんですけどどうにも上手くまとまらなかったので消しました。
次は誰得と言われそうな婚后通行やってみたいと思ってますの
プロットの時点で30レス余裕で越えてるので本気でやるときはスレ立てようかなと。
その時はまた見てくださると助かります。
お目汚し失礼
302 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 23:22:18.63 ID:K2odYPFz0
乙、GUだけだが三作やりこんだわ
愛の絆とか言っちゃう一方さんか・・・
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