1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:45:51.28
ID:hSLcEpgs0
@音無家。早朝。
カーテンの隙間から差し込む陽に顔をしかめる。
「……きもちわる」
降り注ぐ太陽光に、目の奥がズキズキと痛んだ。
「昨晩のチャンポンはマズかったわね……」
まだ布団の上で寝そべっていたいけど、喉が渇いて仕方がない。
加えて胃の中がひっくり返りそう。
「うぅ」
汗ばむ体を引きずってキッチンへ向かう。
「暑いよぉ」
七月下旬。絶好調な太陽が顔を出した早朝の事。
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:46:13.17
ID:hSLcEpgs0
小鳥「……んく。ぷはぁ」
小鳥「あーあぁ」
小鳥「だいぶマシになったわ」
小鳥「うぅ」
小鳥「うっ」
小鳥「……うええぇ」
小鳥「ぜんぜんマシじゃなかったわ……」ヘナヘナ
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:46:58.84
ID:hSLcEpgs0
小鳥「……はぁ。やんなるわ」
小鳥「いつの間にこんなに弱くなったのかしら。うぷ」
小鳥「代謝が悪くなったのも歳の所為、かも」
小鳥「流しに吐きまくる2×歳か」
小鳥「……私、いつまでもこんなで」
小鳥「いつまでも独りなのかなぁ」ぐすん
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:48:11.55
ID:hSLcEpgs0
小鳥「今日もお仕事あるのに。流しから離れられない」
小鳥「うぅ、まだ決済の済んでない書類がぁ」
小鳥「律子さんに怒られるぅ」
小鳥「吐き気だけで熱はないし。頑張って出社しないと……」
小鳥「……うん、ちょっと良くなったかも」
小鳥「なんならちょっと体が軽いぐらいだし」すくっ
小鳥「うっ」
小鳥「」ごくん
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:48:48.45
ID:hSLcEpgs0
小鳥「準備しよ……」
小鳥「ごそごそ」
小鳥「ふぅ。ん? あれ?」
小鳥「下着が緩い」
小鳥「!」
小鳥「こ、これは」?
小鳥「お胸様が」
小鳥「小さくなっとる!!」
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:49:41.71
ID:hSLcEpgs0
小鳥「ナンデ!? オムネ、ナンデ!?」
小鳥「まさか、萎んだ……?」
小鳥「歳で?」
小鳥「……」
小鳥「……もう、いやぁ」
小鳥「もうヤダ。会社行かない」
小鳥「今日は休むもん! ぜったい!」ぴぴぴ
小鳥「はい、音無です」すちゃ
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:50:16.05
ID:hSLcEpgs0
小鳥「あ、律子さん。おはようございます」
小鳥「はい、はい。書類ですね」
小鳥「はい、今日中に、ええ」
小鳥「わかりました。大丈夫です。丁度家を出る所なので」
小鳥「はい、では」カチャ
小鳥「……ノーとは言えないシャチークです、小鳥です」
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:50:47.45
ID:hSLcEpgs0
小鳥「はぁ。顔洗うの忘れてた」
小鳥「でも不思議と吐き気以外はいたって好調なのよね」
小鳥「スキップも軽やか」ぴょんぴょん
小鳥「これも女として色々失ってきたからかしら……」
小鳥「さてと、お化粧して、その前に洗面台へ……ってアンタ誰!?」
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:51:24.93
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(状況を整理しよう)」
小鳥「(今の私は紛れもなく2×歳だ)」
小鳥「(昨日だって焼酎を一本開けてベロンベロン」
小鳥「(でも! 今! 目の前に立つ彼女は!)」
小鳥「(いや、違う)」
小鳥「(鏡の前に立つうら若き少女は!)」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:51:53.81
ID:hSLcEpgs0
小鳥「……なんか若返ってる」
小鳥「やっぱり、お胸さまが大人しくなってるし」
小鳥「昨日寝る前までは、こう、バイーンって感じだったのに」
小鳥「でもいまは、ふにょんって感じなのよ?」
小鳥「ふにょんふにょーん。でも昨日は、ばいーんばいーん」
小鳥「わはははは」
小鳥「これはすごい!」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:52:20.88
ID:hSLcEpgs0
@765プロ事務所前
小鳥「何とかあり合わせの服でやってきたけど」ブカブカ
小鳥「何かスースーするし」//
小鳥「オハヨーゴザイマース」がちゃ
小鳥「誰も、居ないわね」
小鳥「今の内に書類だけ整理して病院いこ」そろーり
小鳥「原因不明の奇病かもしれないのに、こんな事してる私」
小鳥「社畜の鏡ね」キリッ
真美「?」
小鳥「どわっほい!?」
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:52:58.32
ID:hSLcEpgs0
真美「どわっほい?」
小鳥「ままま真美ちゃん!?」
真美「真美は真美だけど、姉ちゃん誰?」
真美「ふしんしゃ?」ジト
小鳥「(あぁ! 真美ちゃんの怪訝そうな視線、最っ高だわ)」はぁはぁ
真美「うえ!? ちょ息遣い荒いよ、この姉ちゃん」ヒク
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:53:29.98
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(おっと、そうじゃなかった)」
小鳥「真美ちゃん私よ小鳥よ! だからその電話を置いてダメ! 通報やめて!」
真美「姉ちゃんが、ピヨちゃん?」ケゲンソー
小鳥「そうよ、音無小鳥よ」
真美「ぶぅ。真美がコドモだからってバカにしてるっしょ」
真美「ピヨちゃんは姉ちゃんより歳とってるYO!」
小鳥「ぐは! いやそうなんだけど」グサリ
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:54:03.90
ID:hSLcEpgs0
小鳥「でもほら私が音無小鳥の証拠に」ごそごそ
真美「証拠に?」
小鳥「ほうら、この写真。事務所でお昼寝中の真美ちゃんよぉ」
小鳥「ぐふふ。よく撮れてるでしょ? おへそだしちゃって、可愛いわぁ」
小鳥「ほらっ、見て! 私の真美ちゃんコレクション!」
小鳥「まだまだあるわよ。テレ顔真美ちゃん、エヘ顔真美ちゃん、ゆきまみ! やよまみ!」
小鳥「これが私の真美ちゃんへの愛の証だぁ!」
小鳥「これでもまだ私が音無小鳥じゃないって言える!?」
真美「Oh……」
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:54:34.23
ID:hSLcEpgs0
がちゃ
P「おはよー」
真美「に、兄ちゃーーーーん」がばっ
P「うおっ、真美!?」
真美「へ、ヘンタイだよっ、ヘンタイさんが居るんだよ!」
P「変態だって!? どこだっ」
小鳥「はぁぁはぁ、真美ちゃん、真美ちゃん……」ニジリニジリ
P「」
小鳥「あ、プロデューサーさん、おはよーございまーす」
P「誰だアンタっ!!」
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:55:06.70
ID:hSLcEpgs0
ζ'ヮ')ζ<事情を説明中です~
P「に、にわかには信じがたい話だ」
あずさ「でも音無さんソックリだわ~」
伊織「目元のホクロもそのままだし」
亜美「おーよしよし、怖かったねー」ナデリコナデリコ
真美「うう、ぐすんぐすん」
春香「可愛い女の子に目がない所もね。あはは……」
小鳥「ほんとなんですよぉ、ぷろでゅーさぁーさーん」うるうる
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:55:37.94
ID:hSLcEpgs0
P「しかしだなぁ。そんな荒唐無稽な」
小鳥「判りました、じゃあ私の秘蔵本の隠し場所を」ごそごそ
真美「!」びく
P「わかりましたから! 真美にトラウマ植え付けるのはやめてくださいっ」
春香「な、なんでそんな見せたがるのかな、小鳥さん」
伊織「露出狂に通ずる物があるわね……」
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:56:11.81
ID:hSLcEpgs0
律子「しかし、小鳥さんがこうだと、仕事にならないわね」
小鳥「あのー、事務仕事なら」
律子「お客様との応対が無いとはいえませんし」
律子「ってそんな話じゃありません!」
律子「お仕事は良いですから、早く元の体に戻る方法を探さないと。一番大切なのは小鳥さんの健康でしょう?」
小鳥「り、律子さぁん」うるる
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:56:49.81
ID:hSLcEpgs0
P「ともかく原因が判らないと。まずは病院へ行きますか」
小鳥「アポトキシンを飲んだ覚えはないんですけどね」
P「それにしても何で若返りなんて……」
貴音「それは私が説明しましょう」しゅばっ
P「貴音!? 一体どこから」
貴音「それは些細な事です。それよりも先ず、解決すべき問題があるでしょうに」
20:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:57:19.35
ID:hSLcEpgs0
貴音「プロデューサー」
貴音「雨だれ石を穿つ、という言葉をご存じありませんか」
貴音「結論から言いましょう」
貴音「小鳥嬢の若さへの憧れや執念が、彼女を17歳に若返らせたのです」
P「んな、アホな」
貴音「想いの力に底はありませんよ? プロデューサー」
貴音「それに」
小鳥「あ」
貴音「小鳥嬢には心当たりがあるようです」
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:57:48.28
ID:hSLcEpgs0
小鳥「そう言えば私、ココのところ自己暗示にハマってたんだわ」
あずさ「暗示?」
小鳥「ええ。鏡美容法っていうんですけど……」
伊織「あんまり聞きたくない話ね、ソレ」
小鳥「鏡の前でこういうの」
小鳥「小鳥、貴方は可愛い。ビューティー、若返る、Pさんの正妻……」
小鳥「毎晩毎晩、自己暗示をかけ続けたの」
小鳥「丁度、昨日が九九日目の晩だったわ……」
伊織「とんだ99 Nightsね」
貴音「げに恐ろしきは女の執念とはこの事です」
春香「二人とも言いすぎだよっ!」
22:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:58:22.12
ID:hSLcEpgs0
小鳥「そうよ、そうだったのよ。これが……」
あずさ「アンチ、エイジング……!」ごくり
伊織「いや、おかしいからね」
P「……で、音無さんを元に戻すのはどうしたらいい? 貴音」
貴音「強い呪いこそ、綻びは見えやすいものです」
貴音「もとに戻る為には、願望を成就させることですよ」
23:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:58:56.40
ID:hSLcEpgs0
貴音「小鳥嬢がこの姿を取っているのは、彼女の強い願いがそうさせているのです」
貴音「その願いが叶えられたなら、自然と元の姿に戻りますよ」
律子「小鳥さんの」
亜美「望み?」
小鳥「私の望みですか……」
貴音「邪法に縋ってでも叶えたい望みがあったのでしょう?」
伊織「邪法て」
24:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 22:59:29.55
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(私の望み、か)」
小鳥「(若返って私がしたかったこと)」
小鳥「(……そりゃいっぱいあるわよ)」
小鳥「(2×じゃ着れないような女の子な服装とか、体重を気にしないで甘いもの食べて)」
小鳥「(それで……)」ちら
P「?」
小鳥「(……甘酸っぱい恋とか、してみたい)」
25:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:00:00.20
ID:hSLcEpgs0
小鳥「…………」
P「音無さんが長考に入ったぞ」
真美「またヘンな事言わないかなぁ」
P「……そうなった時は全力で真美を守るよ」
小鳥「決めましたっ!」がたんっ
P「き、決めたって何を?」
真美「びくびく」
小鳥「あたし、ゆ、遊園地に行きたいです」
P「(音無さんはそんな、ホントに些細な願いを口にしたのだった)」
26:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:00:32.05
ID:hSLcEpgs0
@遊園地。
ジェットコースターが綺麗な宙返りを決める。滑車の音に伴って楽しそうな叫び声が続いた。
入園チケットを持って、プロデューサーはゲート前の三人の元へ向かった。
P「ほれ、春香に真美に、あとは音無さ……ん」
いつも職場で見る彼女とは違う姿に、言葉を失う。
紺色のブレザーに身を包んだその背は、丁度プロデューサーの胸のあたり。
彼を見上げた拍子に、髪飾りが光に揺らめいた。
P「それ」
小鳥「あ、これですか?」
小鳥「わ、私はちょっと派手かなぁって思ったんですけど」
27:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:01:01.95
ID:hSLcEpgs0
小鳥「服は衣装に丁度良いのがあって。髪留めは春香ちゃんと真美ちゃんが選んでくれたんです」
いつものカチューシャに加えて、格子模様の入った髪留めを刺していた。
小鳥「黄色は亜美ちゃん、真美ちゃんのイメージカラーでしょって言ったんですけど」
P「ひよこ色っていうんですよね」
小鳥「え?」
P「綺麗です。似合ってますよ」
小鳥「きれ……え? きれいって、えぇええ?」
28:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:01:35.11
ID:hSLcEpgs0
P「さぁさ、みんな行こうか。せっかく俺がおごるだんから楽しんで貰わないと」
春香「やったー! ねぇねぇ、真美。はじめは何に乗ろっか」
真美「えとえと、真美はね」
P「けど、ちっとは仕事が少ない事を心配してくれても良いんだぞ……?」
小鳥「き、きれぇ」//ぷしゅー
P「さ、音無さんも行きましょう」
29:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:02:03.18
ID:hSLcEpgs0
真美「あー楽しかった! アレもう一回乗ろうよ、はるるん」
春香「ええ、また!? もう三回目だよぉ」
真美「いーじゃんいーじゃん、ほらピヨちゃんもっ」
小鳥「う、うん。もう一回!」
P「ちょっと、みんな……待ってくれよ」
30:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:02:40.74
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(なんて、なんて、なんて)」わなわな
春香「アイスおいしいね」
真美「はむはむ」
小鳥「おいしー」
小鳥「(何て燃費が悪いの、この身体わっ)」
31:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:03:12.32
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(食べても食べてもお腹が減るわ。カロリー消費量半端ないわね)」
小鳥「(そしてそして!)」
真美「はるるん、あそこまで競争だー」
春香「あはは、待ってよー」
小鳥「私も行くわー」
小鳥「(身体がっ身体が軽いっ)」
P「お前たち、走るなよ~」
32:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:03:41.59
ID:hSLcEpgs0
小鳥「待てー、あはは」
小鳥「まてぇ、あはは、はぁ」
小鳥「ちょ、待って……」ぜぇぜぇ
小鳥「(しまった、この頃も体力はないんだった……)」
P「お、音無さん平気ですか?」
小鳥「プロデューサーざん……」ぜぇ
33:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:04:09.82
ID:hSLcEpgs0
小鳥「ごめんなさい、私はしゃいじゃって」
P「たはは。良いですよ。何だか、危なっかしくて」
P「しばらく、傍に居ます」
小鳥「あ」////
P「どうかしましたか?」
小鳥「な、何でもないです」ぷいっ
P「?」
小鳥「……」
34:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:04:42.50
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(プロデューサーさん優しいよぉ)」ドキマギ
小鳥「(でも、勘違いしないようにしないと)」
小鳥「(私だけじゃなくて、女の子には優しい人だもの)」
小鳥「(危なっかしくて、か)」
小鳥「(ほっとけないと思われるのも、私が若いからなのかなぁ)」
小鳥「(だから、小鳥! いまこそプロデューサーさんに甘えるチャンスなのよ)」
小鳥「(ちょびっとドジで無防備な格好を見せれば、プロデューサーさんも私にメロメロ)」
35:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:05:11.94
ID:hSLcEpgs0
春香「みんなー。クレープ買ってきたよー」
小鳥「!」
P「おいおい、また食べるのか?」
春香「い、いいんですよ、女の子は甘いものは別腹なんです。ねー」
真美「んっふっふ~、兄ちゃんはレデーの扱いが判ってないなー」
小鳥「(チャンス到来っ)」」
36:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:05:44.26
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(クリームを口の横につけて子どもアピール)」
小鳥「(無防備な笑顔にプロデューサーさんもキュン死に作戦よっ)」
P「はいはい。ほら春香は前向いて。危ないから」
春香「大丈夫ですよ、私もそうそうコケたり……っ」ゲシっ
春香「はれ?」ぐらり
P「春香っ!?」だっ
小鳥「!」
37:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:06:13.62
ID:hSLcEpgs0
その時、全てがスローモーションに見えました。
よろけた春香ちゃんは、プロデューサーさんが受け止めます。
そして春香ちゃんの手からクレープが放り投げられました。
ゆっくりと弧を描いてクレープが私に向かって飛来。
避け、否。
小鳥「」べちゃ
春香「小鳥さんっ!?」
真美「まさかの顔面キャッチだYO!!」
P「ちょ、音無さんっ。エライことになってますが」
38:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:06:47.90
ID:hSLcEpgs0
鼻先からクレープをぶちまけられ、口元から生クリームを垂らすあたし……
小鳥「ありね」
真美「ないよ!? どったの、ピヨちゃんっ」
小鳥「ほらほらぁ、プロデューサーさん。JKが白くベタつくナニカを口元につけてますよ~? ありでしょ~?」
P「おおお音無さん、落ちついて」
春香「うぐっ。うう。ごべんなざい。私の所為で小鳥さんが……!!」
39:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:07:14.01
ID:hSLcEpgs0
@お手洗い。お化粧直し中。
小鳥「うぅ、クリームは大分落ちたけど」バシャバシャ
小鳥「プロデューサーさん、ドン引きだったなぁ」フキフキ
小鳥「ううんっ! 落ち込んじゃダメよ、小鳥っ。次なる一手を考えなくては」ぐっ
小鳥「そうだ! 躓くフリして、プロデューサーさんに抱き着いちゃおう!」
小鳥「……春香ちゃんみたいに」
小鳥「せっかく若返ったんだから、いっその事、妹キャラで攻めるのはどうかしら?」
小鳥「にーちゃーんって甘えてみるのよ!」
小鳥「……真美ちゃんみたいに」
小鳥「はぁ、あたし何やってるんだろ」
40:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:07:45.66
ID:hSLcEpgs0
P「あ、音無さん!」ぱたぱた
小鳥「ごめんなさい。待たせちゃって」ぺこり
P「いやいや、そんな」
春香「謝らなきゃいけないのは私の方です! 小鳥さん、私のせいで……ごめんなさいっ」
小鳥「大丈夫よ」ニコ
春香「でも……」
41:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:08:23.58
ID:hSLcEpgs0
小鳥「もう、春香ちゃん? 可愛いお顔が曇ってるわよ」
小鳥「それより、せっかくのお休みだもの。もっと楽しみましょう!」
小鳥「ね、プロデューサーさんっ」だっ
P「うわっ、音無さん? 急に走り出して」
小鳥「ほらほら~、あたし先に行っちゃいますよ?」
42:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:09:02.39
ID:hSLcEpgs0
小鳥「(結局、考えても邪な考えしか思いつかないもの)」
小鳥「(だから。少女時代のあこがれだった観覧車へ、Pさんと!)」
小鳥「(こんなチャンスもう二度とないかもしれないもの)」
小鳥「(2×のあたしじゃ……プロデューサーさんは……)」
43:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:09:32.77
ID:hSLcEpgs0
P「あ、あの! まってくださいって……」ぜぇぜぇ
小鳥「プロデューサーさん! 私をドキドキさせてくださいっ」
P「急になにいってるんすか」///
小鳥「若い私なら、プロデューサーさんだって嬉しいでしょう?」
小鳥「ほら、一緒にっ」ぐいぐい
P「いや、ちょっ」
44:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:10:00.72
ID:hSLcEpgs0
P「どうしたんですか」
P「……いつもの音無さんと違いますよ」
小鳥「!」
小鳥「そうですよ! 私はいつもと違って若いんです!」
P「音無さん?」
小鳥「真美ちゃんみたいに元気いっぱいで、春香ちゃんみたいに素直で明るくて」
小鳥「若い私って変ですか? でもいいじゃないですか。……ちょっとぐらい夢みたって」
私ってば何いってるんだろう。
45:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:10:33.95
ID:hSLcEpgs0
小鳥「私は若くなりたかったんです」
些細な事で笑い合ったり、
ちょっとした弾みで指先が触れ合って、照れちゃって、
でもそれがまたおかしくって。
そんな、そんな当たり前の気持ちを、感じたくて。
小鳥「男の人とデートみたいな事、したかったんです」
46:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:11:11.54
ID:hSLcEpgs0
小鳥「あたしは……Pさんに女の子として見て欲しかったんです」
小鳥「2×のあたしじゃなくて、一人の女の子として、Pさんと遊びたかったんです」
P「……」
小鳥「ご、ごめんなさい。なんか、まくしたてちゃって……困っちゃいますよね」
小鳥「でも、私が妄想してきたような事は、もう、できないんです」
小鳥「いい年した女が、学生みたいな恋に憧れるなんて、おかしいですよね?」
P「おかしくなんてないです」
小鳥「でも――」
47:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:11:47.76
ID:hSLcEpgs0
P「それに年も関係ありません」
P「いくつになったって、恋は楽しいもんです」
P「俺だって苦しんで悶絶する夜が、今だってありますよ?」
P「好きな人と一緒に歩いたり、ちょっと口には出来ないような事を妄想したり」
P「そういう事考えては、にやにやしたり」
P「でも恋をするって、俺はそういうことだと思うんです」
P「学生の頃みたいに、胸を弾ませられるなんて素敵じゃないですか」
48:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:12:19.63
ID:hSLcEpgs0
小鳥「プロデューサーさん……」
P「そうやって、何かを強く想う事が出来る音無さんが、俺はとっても素敵だと思います」
小鳥「……!!」
小鳥「あの。あたし」
小鳥「あ、あれ。あたし、もしかして泣いちゃってます……?」ほろほろ
49:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:12:45.27
ID:hSLcEpgs0
小鳥(あたしは、別にこのままで……2×歳のままでも)
小鳥(恋をしたっていいんだ)
小鳥(ああ、でも。もっとたくさん遊びたかったなぁ)
小鳥(遊園地の次はプールに行って)しゅ18才
春香「ああ! 小鳥さんのお胸さまが!」
小鳥(遊び疲れた帰りの電車で、Pさんの肩に寄りかかったりして)しゅぅ24才
真美「ばいんばいんにっ!」
小鳥(そんなこと、もっとしたかったなぁ)しゅぅう2×才
50:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:13:35.16
ID:hSLcEpgs0
小鳥「……」
P「……音無さん」
小鳥「ごめんなさい、ごめんなさいっ」バッ
P「音無さん。こっちむいてくださいよ」
小鳥「いま、みっともない顔してるんで。だから……こっち見ないでください」
51:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:14:20.06
ID:hSLcEpgs0
――――
――
小鳥「(結局その日はそれで終わっちゃった)」
小鳥「(プロデューサーさんが事務所まで送ってくれて。車の中では春香ちゃんや真美ちゃんに気を使わせちゃったな」
小鳥「(事務所に着くと、律子さんやみんなが笑顔で迎えてくれた)」
小鳥「(多分気づいてたと思うけど、あたしの眼が赤い理由は誰も聞かなかった)」
小鳥「(……みんなの優しさに事務所のトイレでまた泣いてしまった)」
52:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:14:52.87
ID:hSLcEpgs0
そして……
満員電車に揺られ、日々の業務に追われる。
妄想を働かせる暇もなく過ぎる毎日の事。
@765プロ事務所
相変わらず冷房は壊れていて、扇風機の首が忙しく動いている。
時折、涼しい風が吹いては、机の上の重なった資料を揺らす。
P「音無さん。次のミーティングの資料ですけど」
小鳥「それでしたら――はい、これです」ごそごそ
P「ありがとうございます。やぁ、それにしてもすっかり夏ですね」
小鳥「え、ええ。そうですね……」
デスクから首を捻って外を見ると、ビルの隙間から立派な入道雲が見えた。
53:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:15:30.46
ID:hSLcEpgs0
小鳥(あの一件以降、身体に不調はなくなったけど……)
小鳥(プロデューサーさんとは、何だか気まずい感じ)もじもじ
P「おとなしさん」
小鳥(それに冷静に思い返すと、Pさんに告白めいたことをしちゃったよーな)ドキドキ
小鳥(でもしょうがないじゃない。こちとら一体何年片思いしてると思ってるのよ)
P「音無さん」
小鳥「(……思いしちゃうな。Pさんと初めて出会った日)」
小鳥「(『こんな綺麗な女性と働けるなんて』そんな可愛い事を言ってくれたっけ)」
P「音無さんっ」
小鳥「へ!?」
54:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:16:01.47
ID:hSLcEpgs0
P「今からコンビニ行きませんか? アイドル達がそろそろ帰ってくるし。アイスでもご馳走しようかなと」
P「手伝って貰えると嬉しいです」
開け放たれた窓から蝉しぐれが聞こえる。
一拍の間をあけて、あたしは答えた。
小鳥「も、もちろん。お手伝いしますよっ」
あたしの頬が赤くなっていないか、心配だった。
55:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:16:32.29
ID:hSLcEpgs0
@コンビニまでの街路。
プロデューサーさんの半歩後ろを、歩くあたし。
ドキドキが止まらない。
そういえば二人で出歩くのは久しぶり。
意識しだすと、妄想も出来ない。頭の中が真っ白になる。
56:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:17:01.82
ID:hSLcEpgs0
「音無さん」
「は、はい! なんでございましょう!?」
……声が上ずってしまった。
あたしの緊張を知ってか知らずか、プロデューサーさんは柔らかく笑う。
鼓動が半音を上がるのが分かった。
「今日は髪留めつけてないんですね」
髪留め。春香ちゃんと真美ちゃんが遊園地デートで選んでくれた。
あたしには若いと感じて気おくれしてた。
「あれ、かわいかったのにな」
「……あ」
57:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:17:57.91
ID:hSLcEpgs0
『こんな綺麗な女性と働けるなんて』
お世辞だと思っていたあの言葉が思い出される。
今まで真剣に向かい合ってこなかったのはきっと、あたしなんだ。
プロデューサーさんの言葉を信じられなかったのは、あたしが弱かったから。
彼の本心を知るのが怖かったから。
若さとか、同僚だからとか、適当に理由をつけて、逃げてたのはあたしなんだ。
58:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:18:34.99
ID:hSLcEpgs0
でも、もう言わなきゃ。言わないと、この気持ちを伝えないと一生後悔する。
プロデューサーさんは言ってくれたじゃない。
年齢なんて関係ないって、誰かの事を大切に思う事に資格なんて必要ないって。
あたしは、あたしの好きな人の言葉を信じられないっていうの?
だから、あたしは言う。
59:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:19:01.39
ID:hSLcEpgs0
「プロデューサーさん?」
夢みる頃を過ぎたって、
いまも私は恋していられるの。
それは貴方のおかげなんですよ?
「なんですか、音無さん」
60:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/23(土) 23:19:35.30
ID:hSLcEpgs0
こんなキモチを教えてくれて ありがとう
あなたのことが とってもだいすきです
おしまい
68:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/25(月) 22:18:53.33 ID:HUTfDBJJO
結婚式編読みたいね
66:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 06:58:27.26 ID:SpgU3oIgo
小鳥さんかわいい
乙
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469281550/
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