1:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:10:01.01
ID:r2x7VMVc0
化物語のssです。
2:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:10:44.00
ID:r2x7VMVc0
育「次の町に行くバスまでどのくらいかな?」
結構ある
私は次の町に行かなくてはならない。逃げるわけでなく
誰に言っているんだ。私のためだ
時刻表をみるのに決意を使った私は椅子に座る、いやベンチか
青いベンチの端を見つめる。長い引きこもり生活の所為か
視線が外に出るとまったく定まらない。何かに固定したいのだ
でも人がいたら固定はできないので
物体を見つめるのだけど、この子なに?
オレンジと青緑の女の子
いつからいただろう?
余接「僕の石ころ帽子を見破るなんて」
3:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:11:36.53
ID:r2x7VMVc0
僕って言うんだ。この子
なんか頭がちょっとおかしい子なのかな?
私もおかしいことには自信があるけど
育「その帽子のこと?」
変な帽子
余接「お姉ちゃんはマンガとかテレビ見ないほう?」
育「見ないわ」
余接「そう」
余接「最近じゃ意識高いとか言われちゃうけど、お金が無くてそんなどころじゃねーよとか」
余接「余裕もなにもないからだよ。見れたらみたいよ僕だって」
余接「って言う人もそんな風に言われちゃうのかな?」
育「さぁどうだか」
4:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:12:55.20
ID:r2x7VMVc0
実際私はそうだけど、言われたことはないし、そんな会話にはならない
会話はしない
してくれる人がいない
この子は話しかけてきた
私は話しかけない
元々そんなに話したいほうじゃないし、頑張らないと無理だし
こんな格好の子供と仲良くならなくていい
足をプラプラさせてこっちを見てる
私なんかに話しかけてくれてありがとうだけど
私はこの町からでていくからね
バスの時間はあるみたいだ。私は気まずくなって目を閉じる
寝るふりをしよう
気にしているんだと自嘲しながら更に目を閉じる
5:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:16:15.57
ID:r2x7VMVc0
肩に重さを感じて、目を開くと
寄りかかるカラフル
余接「いけない、いけない。僕としたことが寝てしまった」
棒読みの子供
無表情な少女
かわいい格好
寄りかかったままで
育「なあに?」
精一杯、子供向けの声を出す
余接「ほっぺたから匂いがする」
私の頬に近づき、鼻があたる
育「私のほっぺが臭いっていう意味?」
余接「ネガティブだね」
6:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:18:58.16
ID:r2x7VMVc0
いや、びっくりしたんだよ。だから変なことを
触れられたことに
人に触られるのが怖い
これが治ることはあるのだろうか
もちろん人に触るのも怖い
拒絶されるのが怖い
往々にして私も拒絶するけど
余接「知っている人の匂い、だからか」
知っている人?
この子の知っている人の匂いが私からしているのか
なんだろう。それ
7:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:20:32.80
ID:r2x7VMVc0
子供だから、まあ本気にしなくていい
でもどんな人と似ているのかな?
育「それってどんな人?」
育「素敵な人?」
私に似ていて勉強が、数学が好きな人なら嬉しい
余接「一言で言うなら変人、いや変態かな」
余接「とにかく変な人だよ」
まあ私に似ているんだ
仕方ない。バス来ないかなあ
9:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:25:56.16
ID:r2x7VMVc0
余接「バスがくるよ」
育「あれじゃない」
バスが来て
バスに乗らないことを示すために頭を下げる
隣を見る
見られて
遅れてもう一つの頭が下がる
いい子じゃないか
でも変な帽子
余接「かぶる?」
育「ごめんなさい」
10:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:27:24.26
ID:r2x7VMVc0
頭を下げる
かぶせようとする
そういうんじゃないんだけどね
断ったんだよ。だからごめんって
伝わらないなあ
でもかぶって
10秒だけ耐えて
隣を見て
目を逸らされた
こいつ
11:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:29:06.59
ID:r2x7VMVc0
余接「そんな無表情でそんな帽子かぶったら変だよ」
知ってるよ。せめて笑ってよ、頑張ったんだから
それにしてもこの子、笑わないな
それには負けないけどね
余接「いえーい」
ジッと見ていたらそう言われた
今、子供達の間で流行っているに違いない
なにが流行るか分からない
帽子はとってくれた
12:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/09(土) 23:30:30.18
ID:r2x7VMVc0
余接「お姉ちゃんも一緒にする?」
育「やめとくわ」
誰かに見られたら死にたくなる
まあ見られたところでどうとでもないか
余接「やりたいでしょ?」
育「やらないの」
だからってやりたいわけはないもの
13:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 00:40:14.12
ID:nrxl/ocm0
余接「どこに行くの?」
育「ここ以外のところ」
余接「じゃあこの町を離れるの?」
育「そう」
余接「誰かいないの?」
育「誰が?」
余接「普通町から離れるのなら誰か見送りにきているものだから」
思いもしなかった
14:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 00:41:28.54
ID:nrxl/ocm0
育「誰もいない」
余接「わー」
わーってなに?
睨んでみる
全然動じない
余接「じゃあ僕がお姉ちゃんの友人を演じようか?」
いや・・・別に
嬉しいと思ったけれど、それはどうなのだろう?
16:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 09:54:28.87
ID:nrxl/ocm0
余接「あんまり・・・いたことがないんだけど」
育「それは分かるよ」
余接「お姉ちゃん、僕のど渇いたな」
育「そう」
余接「友達でしょ?」
友達ってそうなんだ。難しいな
なにがいいんだろう
お茶は子供だから駄目かもしれない
炭酸系も苦手かもしれない
これでいいか
余接「おしるこって」
17:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 09:54:59.21
ID:nrxl/ocm0
余接「おしるこって」
育「2回言う?」
でも飲むんだ
余接「いいセンスだね」
育「ありがとう」
余接「お姉ちゃんのこと、心配になるんだけど」
お金はちゃんとくれた
18:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 09:58:55.72
ID:nrxl/ocm0
余接「僕、携帯持っているんだ」
今時の子供は持ってるよね
余接「お姉ちゃんは?」
これが最近の携帯か
余接「持ってないんだね」
余接「写真を撮れるんだよ」
育「それは知ってる」
余接「一緒に撮ろうよ」
育「バス停を?なんで?」
余接「ポンコツだね。自分達を撮るんだよ」
19:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 10:00:12.59
ID:nrxl/ocm0
育「撮りにくいじゃない。誰かに頼む?」
余接「・・・いや大丈夫だよ」
顔を近づけ、シャッター音が鳴り、画面を見てみる
余接「無表情だね」
育「2人ともね」
余接「お姉ちゃん、これに懲りずに頑張ってね」
ピースまでしたのに
20:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:01:27.64
ID:nrxl/ocm0
育「そういえばあなた、どこに行くの?」
余接「行かないよ」
育「じゃあ何しているの?」
余接「基本はお仕事だよ」
嘘をつくな
育「誰の子?」
余接「誰かの子」
育「どこの子?」
余接「どこかの子」
バス来て
私にはきつい
あいつならきっとうまくやるだろう
妹達がいるから
私はひとりだ
21:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:07:37.23
ID:nrxl/ocm0
育「お母さんは?」
余接「いないよ」
育「どこかに行ってるから?」
余接「どこにもいないよ」
どこにも
育「大変だね」
私らしくなく笑顔になって励ましてみる
余接「笑顔が歪んでいる」
余接「自信がないんだね」
余接「持続性がない」
育「ああ、そう」
22:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:09:16.12
ID:nrxl/ocm0
見せたことないもの。見たことないもの
自分の笑顔なんて
いつもの顔に戻るだけ
余接「素敵な怖い顔だね」
これは良い評価をもらったらしい
余接「そんな目付き、皺になっちゃうよ」
育「目が?」
余接「バカじゃない」
余接「普段冗談を言うタイプの人が言うと、もの悲しくなるよね」
余接「それはもう冗談みたいに」
23:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:19:03.95
ID:nrxl/ocm0
育「それで何がいけないの」
余接「お姉ちゃんが友達がいなくて、アレな子っていうのはいけないことではないよ」
私はカッとなっているのか
余接「ずっとそうだったの?」
育「ずっとそう。10周年は堅い」
余接「アニバーサリーだね。おめでとう」
頑張らなくていいところで頑張るのが私だ
育「そういえばもうずっとおめでとうなんて言われてない」
育「誕生日でもそう。普段の日もまったく人と話さないし」
育「インターホンなんか鳴ってもほぼでないし」
余接「断交だね」
育「電話なんてもちろんなくて」
余接「断線だね」
育「郵便箱も開けない」
余接「郵便局の人、困るね」
育「これで女子高生だものね。先はないかもしれないわ」
育「言うとおりに人としてもだいぶあれだしね」
もういいよ。何を言ってるんだろう
24:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:28:08.07
ID:nrxl/ocm0
余接「でも家族の人は?」
育「いない」
いない
育「私はドアを毎日ノックしていたの」
育「でも返ってきたことはなかった」
育「帰ってくることはなかった」
育「私は何回も大丈夫?って言ったけど」
育「それも返ってこなかった」
育「唯一、私のつくったご飯だけがそのまま返ってきたの」
育「私、どうしようかと思ってどうしようもできなかった」
何を言っているのだろう
でももう流石にこの子でも頭のおかしい人だと思って
どこかに行ってくれるかもしれないな
余接「大変だね」
無表情なままで言う
余接「ところで」
余接「僕に心があると思う?」
25:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:42:43.85
ID:nrxl/ocm0
余接「僕はそれしか言うことができないんだ」
余接「本当ならお姉ちゃんに同情したりするのがいいのだろうけど」
余接「思うことができなくてごめんね」
育「違う」
余接「違う?」
さっき私は同じことをこの子に言った
大変だねって
そんなこと言うなら
私のほうがないに決まっている
より救いのない
育「私はこれからも駄目かな」
26:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 20:59:34.42
ID:nrxl/ocm0
余接「希望も絶望も感じない人はどうなんだろうね」
余接「少なくともお姉ちゃんは僕よりもマシなんだ」
余接「そんなことを」
余接「僕なんかに言われちゃ駄目だ」
余接「手遅れな物に言われてもなにもならない」
余接「まだ全然なんとかなるんだよ」
余接「逃げ無ければ」
不思議なことを言う子供。でも
育「私、逃げることには自信があるもの」
育「私はすぐ逃げちゃうの」
育「なにもかも」
育「家族といるとき」
育「家族がなくなったとき」
育「学級会のとき」
育「なくなったとき」
置き去りにしたんだ
これからもそうなのだろうと予想できてしまう
27:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:06:10.38
ID:nrxl/ocm0
私のこの先、ずっと1人なんじゃないかな
余接「その分戦ったんじゃない?」
余接「僕はそう思うよ」
余接「逃げっぱなしなら何回も逃げない」
余接「何回も立ち向かわないと何回も逃げれない」
手を伸ばして
余接「帽子」
この子の手が空中でさ迷う
子供から帽子を奪いとる。最低だ
でも私の目を隠せるのはこれしかなかった
余接「泣いている?」
育「いいえ」
28:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:20:08.38
ID:nrxl/ocm0
これは本当。泣いていない
目を隠したかった
私は私がどんな表情をしているか解らないのだから
分からないものを見せるわけにはいかないから
私は解答しない、できない
私になにがある?
逃げ切らなかったのはなぜ?
立ち向かったのはなぜ?
全くわからない
今言える唯一のことは
育「私は嫌いな人がいる」
29:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:22:46.86
ID:nrxl/ocm0
余接「お姉ちゃん?」
育「ほんとなんで私なんかを心配してくれるの?ムカツクなぁ」
余接「どうしたの?」
育「かまわないでよ」
余接「えっ?」
余接「迷惑なのかな」
育「あっ」
育「ごめんなさい。あなたのことを言ったのではなくてね」
育「私の知り合いを思い出してたの」
30:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:30:09.46
ID:nrxl/ocm0
余接「僕の知っている人もそうなんだ」
余接「いいよ、いいよ。そんなことしなくてもって」
余接「でもしちゃう」
余接「僕はバカなんじゃないかなって思うんだ」
余接「バカなんだろうけどね」
余接「いつかどうかなっちゃうのに」
育「心配?」
余接「全然だよ」
育「世の中にはそんな人は中々いなくて」
育「素敵な人だと思う」
余接「そうかな?会ってみたい?」
育「どうかな?嫌われちゃうかもね。そんな人なら」
余接「そんなことしないよ。僕もお姉ちゃんの言う人に会ってみたいな」
育「うーん。仲良くないから」
余接「仲良くなればいいじゃない」
育「それはまだ、難しいの」
31:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:41:42.66
ID:nrxl/ocm0
嫌いだ
助けてくれなかった
嫌いだ
心配なんかしてくれて
嫌いだ
一緒に勉強したのに
嫌いだ
仲良くなれなかった
嫌いだ
見返してやる
嫌いだ
負けたくない
嫌いだ
私を不幸だと思っていることに
そうだ
こんな私でもどうにかなったって思わしてやる
32:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:43:49.98
ID:nrxl/ocm0
私の嫌いな人、大嫌いだ。あなたを根拠にしてやろう
私は幸せになりました
そうなったらいいよ
私は不幸なままでした
そうなったとしても
それを証明してみせよう。予想から定理にしてそれを見せてあげる
あなたも好きでしょう?証明問題
卑小で卑屈で卑怯そして頭がおかしい私の
人として終わっているかもしれない私の答えを
33:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:46:22.12
ID:nrxl/ocm0
育「でもこの町に住んでいるから会えるかもね」
育「その人にあなたが運悪く会ったとしたら」
余接「意地悪するんでしょ?頑張るよ」
育「してもいいけど嫌ってはダメだから」
私の最後の持ち物なのだから
余接「お姉ちゃん名前は?」
育「名前聞いてなかったんだ」
育「育」
余接「育お姉ちゃん、僕は余接」
育「どんな漢字?」
余接「余る接続で余接」
育「素晴らしい名前ね!」
余接「へえ」
34:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:47:50.86
ID:nrxl/ocm0
余接「バスだよ」
育「見送ってくれてありがとう」
育「余接ちゃん」
余接「なに?」
育「あなたにはきっとあると思う」
育「カージオイドみたいにね、綺麗な形の曲線があるわ」
余接「なにそれ」
育「あなたの知っている人なら解ける」
分からなかったら嫌いになってやる
育「うーん、分かった。聞いてみるよ」
余接「バイバイ」
育「じゃあね」
余接「いえーい」
育「やらないって」
心のなかではやってあげるけどね
心臓の形を見出して
いつか答え合わせができるといい
余接「さあて、お兄ちゃん家でもいこうかな」
35:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:48:22.16
ID:nrxl/ocm0
これで終りです。ありがとうございます。
37:
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/10(日) 21:59:57.51 ID:Bquc8Wa/o
乙
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1452348600/
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