【艦これ】比叡「司令のことを考えると眠れない」

2015-07-27 (月) 12:01  艦これSS   0コメント  
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:34:55.17 ID:UGSbS4XK0


比叡「ふわぁー……」

比叡「…………zzz」

霧島「……比叡姉様?」

比叡「っは! 寝てません、寝てませんってば!」

霧島「いや、寝てたでしょう。任務を終えての帰り道とはいえ、油断されては困ります」

比叡「ゴメン。……実は最近、夜中に眠れなくて」





3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:36:13.26 ID:UGSbS4XK0


霧島「何か悩み事でも?」

比叡「うーん、そういう訳じゃないんだけど……司令のね」

霧島「司令?」

比叡「うん。司令のことを考えてると、全然寝付けなくて」

霧島「…………」

比叡「司令はもう寝たかなーとか、明日は何で勝負しようかなーとか、いつもどんなことを考えてるのかなー、とか」

霧島「…………」




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:37:13.14 ID:UGSbS4XK0


比叡「自分でもわっかんないんだよねー……何でこんなにモヤモヤしちゃうのか」

霧島「……比叡姉様」

比叡「ん?」

霧島「私の計算によるとそれは…………恋、ですね」

比叡「恋ぃ?」

霧島「はい。恋です」

比叡「…………」




5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:38:18.86 ID:UGSbS4XK0


比叡「…………ぷっ」

霧島「姉様?」

比叡「あははははっ、ないない、私が司令に恋なんて~」

霧島「えっ」

比叡「だって、私は金剛お姉様をこの世で、一番愛してるんだよ?」

比叡「それなのに司令みたいな冴えない人を好きになるなんて……うん、やっぱありえないと思う」

霧島「いえ、姉様……」




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:39:16.64 ID:UGSbS4XK0


比叡「はあ~、霧島に思いっきり笑わされたから、何かお腹減ってきちゃった」

比叡「帰ったら司令とお昼食べに行こーっと」

比叡「ふんふん~♪」

霧島(…………もしや、比叡姉様は)

霧島(生まれた時からずっと金剛姉様を慕っていて……男性を好きになった経験がないのでは?)




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:41:01.70 ID:UGSbS4XK0


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比叡「艦隊、帰投しましたー!」

提督「お帰り。ご苦労様」

比叡「ふっふっふ……今日の勝負も私の勝ちですね、司令」

提督「なに……?」

比叡「今回の任務……この比叡が! MVPを! 取りましたぁ!」

提督「おおー」パチパチ




8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:41:59.04 ID:UGSbS4XK0


提督「ここのところ、出撃するたびにMVPじゃないか? よくやってくれているな」

比叡「ふふん、もっと褒めてくれてもいいんですよ?」

提督「よーし、すごいぞ比叡。偉い偉い」ナデナデ

比叡「へへ……」ニヘラ




9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:43:01.17 ID:UGSbS4XK0


比叡「……っは! そ、そういうのはいいですから! 金剛お姉様にしてあげて下さい!」

提督「おっと……すまんすまん」

比叡「あ、そうだ。私お腹が空いてたんだった。MVPのご褒美にお昼おごって下さいよ、司令~」

提督「よかろう。お安い御用だ」

比叡「やたっ」




10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:44:00.18 ID:UGSbS4XK0


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比叡「おっごり~、おっごり~、司令のおっごり~♪」

比叡「何食べようかな~」

提督「間宮さん、俺『六駆カレー』大盛ね」

間宮「は~い」




11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:46:02.40 ID:UGSbS4XK0


比叡「司令、いつもそれですね~。カレー、お好きなんですか?」

提督「ん……まあ、そうだな」

比叡「ふーん……」

比叡「…………」

比叡「……よし決めた! 間宮さん、和風ハンバーグ定食の中盛と、間宮印のたいやき二つ下さい!」

間宮「毎度ありがとうございま~す」




12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:48:35.01 ID:UGSbS4XK0


提督「比叡はハンバーグ好きだよな」

比叡「はい! 艦娘になれてよかったことの一つは、昔はなかったこうした美味しい料理を食べられることですね~」

比叡「あと、グラタンとかオムライスとか……そしてやっぱり甘い物なんかが好きです」

提督「ははっ、なんか男の子みたいだな」

比叡「(ムッ)……それって、暗に私が子どもっぽくてガサツだって言ってます?」

提督「ん? いや、そんなことはないぞ。無邪気でおおらかなのが比叡のいい所だ」

比叡「…………そ、そーですかぁ?」テレ




13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:49:23.54 ID:UGSbS4XK0


提督「ああ。比叡の明るさにはいつも助けられている」

比叡「や、やだなぁ。褒めすぎですよぉ」テレテレ

提督「俺は本心から言ってるぞ」

比叡「……てへへ」

提督「食い終わったら午後からの執務も頼むぞ、比叡」

比叡「…まっかせてぇ!」




14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:50:08.87 ID:UGSbS4XK0


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提督「…………」カキカキ

比叡「…………」ペラ

提督「…………」ガサゴソ

比叡「…………」ジー




15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:51:45.00 ID:UGSbS4XK0


提督「……ん? どうした、比叡」

比叡「はぇっ!? な、何ですか?」

提督「いや、今こっちを見てただろう?」

比叡「そ、そうでしたか? えーっと……疲れてちょっとぼーっとしてたのかなー、あはは……」

提督「そうか? じゃあ少し休憩するか。……ちょうどそろそろ」




16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:52:46.55 ID:UGSbS4XK0


 (ガチャリ)

金剛「Hey! テートク、ヒエイー! 少しTea breakしてはどうデスかー?」

比叡「お姉様!」パアァァ

提督「いつもすまんな、金剛」

金剛「問題Nothing! 可愛い妹と、そして…」シナ




17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:53:51.96 ID:UGSbS4XK0


金剛「愛しのテートクのためなら、なんてことないネー」サワサワ

提督「……おいおい、金剛。紅茶の差し入れには感謝するが、執務中にそういったことは控えてくれ」

金剛「Mmm...テートクは相変わらず身持ちが固いネー。まあそこがまたいいんだけどネー」

比叡「あははっ――」




18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:54:51.67 ID:UGSbS4XK0


 (モヤ…)

比叡(ん……?)

提督「? 比叡?」

比叡「あ、いえ……なんでも……」

金剛「さあ、美味しいTeaをゴチソウしますヨー」

比叡「ありがとうございます、お姉様……」

金剛「……?」




19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:55:56.05 ID:UGSbS4XK0


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比叡「…………」ガチャリ

霧島「ああ、姉様。執務お疲れ様です」

比叡「…………」

霧島「比叡姉様?」

比叡「……ああ、うん。私、今日はもう寝るね……」

霧島「え? ちょっと、姉様?」

比叡「…………」パタン




20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:57:12.53 ID:UGSbS4XK0


比叡「…………」ドサッ

比叡(今日も、楽しかったな……)

比叡(午前の出撃ではMVPを取って、司令と一緒にお昼を食べて)

比叡(秘書艦の仕事をして、お姉様と司令と三人でお茶をして……)

比叡(楽しそうにしている、お姉様と司令――)




21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:58:18.01 ID:UGSbS4XK0


 (ズキ…)

比叡(……そう、今日は楽しい一日だったんだ。……胸が痛んでなんて、いない)

比叡(寝よう……今日こそ寝よう……寝れば何も考えなくてすむ……)




22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 21:59:51.14 ID:UGSbS4XK0


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 ――数日後

比叡「はぁ……」

比叡(今日は秘書艦の当番でもなければ、出撃のメンバーにも入っていない)

比叡(半ば休日のような気楽な日だが、天気は陰鬱な雨)

比叡(そしてあの日から、私の心には澱〈オリ〉が溜まり続け、相変わらず眠れぬ夜を過ごしている)




23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:00:49.43 ID:UGSbS4XK0


比叡「はあぁ……」

金剛「ヒエー、溜息なんて吐いて、どうしたネー」

比叡「お姉様……」

比叡(大好きな金剛お姉様に会えたというのに、私の心は浮かばれない)

比叡(寝不足のせい……きっと、そうに違いない)

金剛「でも丁度よかったデース……実は、比叡と話したいことがありマス。私の部屋でTea timeにしまショウ」

比叡「……はい、喜んで」




24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:03:42.61 ID:UGSbS4XK0


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金剛「…………」カタ

比叡「…………」ゴク

金剛「……美味しいデスか? ヒエー」

比叡「……はい、お姉様」

金剛「そうデスか。よかったデース」

比叡「…………」

金剛「…………」




25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:05:27.26 ID:UGSbS4XK0


比叡「……あの、お姉様。私にお話しというのは……?」

金剛「…………」

金剛「……ヒエーに三つ、聞きたいことがありマス」

比叡「……何でしょう?」

金剛「まず一つ目。ヒエーは、ワタシがテートクを好きだということを知っていマスか?」

比叡「え? それは当然。なんで今さらそんなことを……」




26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:06:59.37 ID:UGSbS4XK0


金剛「二つ目。ヒエーは、ワタシのことが好きデスか?」

比叡「そ、そんな、お姉様。突然そんな……///」

金剛「どうなのデスか?」

比叡「う~……はい。比叡は金剛お姉様が、大、大、だ~い好き! です!」

金剛「そうデスか……ありがとう、ヒエー」

比叡「い、いえ///」




27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:07:53.71 ID:UGSbS4XK0


金剛「……それじゃあ三つ目デース。ヒエーは……」

比叡「…………」

金剛「……ヒエーは……好きデスか?」

比叡「……?」




28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:09:28.03 ID:UGSbS4XK0


金剛「……テートクのことが」

比叡「……え」

金剛「……どうなのデスか。テートクを好きなワタシを好きなヒエーは、それじゃあテートクのことはどう想っているのデスか」

比叡「わ、私が……司令を……好き?なんて、そんなこと……ありえな……」

金剛「…………」ジッ




29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:10:27.01 ID:UGSbS4XK0


比叡「ありえ……ありえな……っ……」

比叡(…………言えない)

金剛「……答えて下サイ、ヒエー!」

比叡「――っ!」ダッ

金剛「ヒエー!」

比叡(言えない言えない言えない、絶対に、言えない!)




30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:11:33.62 ID:UGSbS4XK0


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比叡「っはー、はー、はー……」

比叡(金剛お姉さまの前から逃げ出した私は、いつの間にか埠頭に来ていた)

比叡(相変わらずしとしとと雨が降り続き、私の服や髪を濡らしていたが、そんなことが全く気にならないほど私の心は動揺しきっていた)

比叡(金剛お姉様に……気付かれた)




31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:12:59.62 ID:UGSbS4XK0


比叡(――気付かれた? 気付かれたって何? 傷付けたじゃなくて? 何を気付かれた?)

比叡(私は金剛お姉様が好きで、金剛お姉様は司令が好き)

比叡(私にとって司令は、信頼できる上司で、金剛お姉様を巡るライバル。それだけの関係)

比叡(それだけ――だった、のに)

比叡(司令の姿……司令の声……司令の優しさ……)




32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:14:23.86 ID:UGSbS4XK0


比叡「――司令」ギュッ

比叡(声に出したその瞬間、心の内から切なさが溢れ出し、私は思わず自分の身を掻き抱いた)

比叡「私、本当に馬鹿だな……」

比叡「私は、司令が…………」

比叡「……好き、なんだ……」

比叡(金剛お姉様を好きなのと同じくらい……いや……きっと、それよりも)




33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:15:24.50 ID:UGSbS4XK0


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比叡(……どのくらい座り込んでいたのだろう。いつの間にか雨は止み、鮮やかな夕焼けが水平線に沈もうとしていた)

金剛「……探しましたヨ、ヒエー」

比叡「金剛……お姉様……」

金剛「答えは……出ましたカ?」




34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:16:09.90 ID:UGSbS4XK0


比叡「…………」

比叡「……はい」

金剛「…………」

比叡「私は、やっぱりお姉様が好きです。そして……」

金剛「…………」




35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:17:58.54 ID:UGSbS4XK0


比叡「……そしてそれ以上に、司令が……司令のことが、好き、です」

金剛「……そうデスか」

金剛「……でも、ヒエーは優しい子デスから、きっとテートクを私に譲ってくれマスよね?」

比叡「…………」

比叡「……例え金剛お姉様が相手でも、それはできません」

金剛「…………」

比叡「金剛お姉様には……絶対に……負けません……!」




36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:20:29.72 ID:UGSbS4XK0


金剛「…………」

金剛「オーケイ、それが聞きたかったデース」

比叡「え……?」

金剛「ヒエーがそれだけ強くテートクを想っているのなら、私はテートクを諦められマス……」

比叡「そんな! どういうことです!?」




37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:21:16.70 ID:UGSbS4XK0


金剛「……いつも見ていれば解りマス。テートクはきっと、ヒエーのことが好きネ」

比叡「そんなこと……!」

金剛「解るんデス」

比叡「……なぜ?」

金剛「女の勘……それと年の功、デスかね」




38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:22:30.02 ID:UGSbS4XK0


金剛「とにかく、テートクは私の妹が好きで、私の妹もテートクが好き。これが事実デス」

金剛「それなら姉である私は、可愛い妹と愛しい人のために、身を引きマス」クル

比叡「……お姉様」

金剛「比叡、しっかりやりなさいね」スタスタ

比叡「…………はい」

比叡(立ち去るお姉様の頬に、透明な雫が流れるのが見えた気がして、私はそっと頭を下げた)

比叡「ごめんなさい……それと、ありがとう、ございます……」




39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:25:33.98 ID:UGSbS4XK0


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 ――さらに数日後

金剛「――で?」

比叡「……はい?」

金剛「『……はい?』じゃないネー! テートクとはどうなってるデース!」

比叡「え、えと、そのう……」

金剛「…………」

比叡「……特に、何も」

金剛「っかー! 人がせっかく背中を押してあげたのに何デスかー!? その体たらくWaaa!」




40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:27:06.17 ID:UGSbS4XK0


比叡「そ、そんなこと言われたって……異性へのアピールの仕方なんて解らないし、そもそも恋心を自覚したのだってつい先日だし……」ゴニョゴニョ

金剛「Ahaaaa、じれったいネー!」

金剛「……ヒエー」ガシッ

比叡「は……はい」

金剛「もう一度だけ、チャンスをあげマス。今度ヒエーが何のActionも起こさなかったら、ヒエーの戦意喪失と見なして私もテートクへのアピールを再開しマスからネ。いいデスね?」

比叡「んぐ……わ、解りました……」




41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:28:42.16 ID:UGSbS4XK0


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比叡「――と言っても、本当にどうしたらいいのか……」トボトボ

鳳翔「――あら、比叡さん。どうかされましたか?」

比叡「あ、鳳翔さん……」

比叡「…………」ジー

鳳翔「……な、何ですか?」




42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:29:57.29 ID:UGSbS4XK0


比叡(鳳翔さんと言えば、間宮さんと並ぶ鎮守府屈指の家事上手)

比叡(さらにその年齢不詳めいた雰囲気で、軍の内外を問わずファンが多い……らしい。青葉から聞いた話だけど)

鳳翔「あ、あの、比叡さん? そうまじまじと見つめられると……なんだか、照れてしまいます///」

比叡(うーん、女の私から見ても可愛い。すごく可愛い)

比叡「……鳳翔さん!」ガシッ

鳳翔「は、はい?」

比叡「私に……家事を仕込んでください!」

鳳翔「え……ええ?」




43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:40:21.50 ID:UGSbS4XK0


鳳翔「――なるほど。つまり、提督に女の子らしいところを見せたいと」

比叡「う……は、はい///」

鳳翔「……解りました。そういうことであればこの鳳翔、微力ながらお力添えいたします」

比叡「! 鳳翔さん……」

鳳翔「短時間なので、少し厳しく行きますが……よろしいですね?」

比叡「……はい!」

比叡「気合! 入れて! よろしくお願いします!」




44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:42:00.93 ID:UGSbS4XK0


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鳳翔「――古来より、男性の心を掴むにはまず胃袋を掴め……と言われています」

鳳翔「今回は、お料理に絞って腕を磨きましょう」

比叡「はい!」

鳳翔「比叡さん、何か希望される料理はありますか?」

比叡「特にはないですけど……でも、うーん……」




45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:43:14.44 ID:UGSbS4XK0


比叡(…………あっ)

比叡「それじゃあ、カレーの作り方を教えて下さい」

鳳翔「カレー、ですか? 私は構いませんが……もう少し、凝ったものでなくてもいいのですか?」

比叡「はい。カレーでお願いします」

鳳翔「解りました。それでは、私は普通に調理をしますので、見よう見まねで付いてきて下さい」

比叡「えっ」

鳳翔「言ったでしょう? 厳しく行きます、と」

比叡「ひ……ひえぇ……」




46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:44:49.38 ID:UGSbS4XK0


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鳳翔「野菜の切り方が雑過ぎます! 食材の特徴を頭に入れて!」

鳳翔「水を入れるのが速すぎます! 玉葱を飴色になるまで炒めて!」

鳳翔「ぼーっとしていてはいけません! 煮立ったらちゃんとアクを取って!」

鳳翔「まだ火を止めてはいけません! 弱火にしてじっくり煮込んで!」




47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:45:42.60 ID:UGSbS4XK0


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比叡「……ひえぇ」

鳳翔「……ふぅ。お疲れ様でした」

比叡「あ、ありがとうございました……」

鳳翔「今日お教えしたのは基礎中の基礎。またいずれ、続きをお教えしますね」

比叡「は……はい」

鳳翔「ふふっ。それじゃあ……頑張って下さいね」

比叡「……はいっ」




48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:47:16.77 ID:UGSbS4XK0


比叡(さて、じゃあ早速司令に……)

比叡(……でも待てよ。鳳翔さんのおかげで立派なカレーになったとはいえ、このままでは何の変哲もないただのカレー)

比叡(こんな何のひねりもないもので、司令に喜んでもらえるだろうか?)

比叡「どうせなら……(サッサッ)自分なりに工夫して……(ゴリゴリ)私好みの味に……(トポトポ)」

比叡「できた! 比叡特製、超激辛カレー!!」

比叡「よ~しっ……」




49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:48:51.13 ID:UGSbS4XK0


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 (コンコン)

比叡「司令? いらっしゃいますかー……?」

提督「おう、比叡。どうした?」

比叡「まだ執務中ですか?」

提督「ああ。提出しなきゃならない書類が溜まっててな」

比叡「そうですか…ちなみに、今日はお夕食は…?」

提督「そう言えばそんな時間か……腹ペコだ」




50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:50:07.36 ID:UGSbS4XK0


比叡「! で、でしたら……でしたら、そのぅ……」

提督「?」

比叡「カレーが……えーと……そう、カレーを作り過ぎちゃって! よ、よかったら食べて頂けないでしょうか?!」

提督「カレー……比叡の手作りか?」

比叡「は、はい……」

提督「……ありがたい、貰おうか」

比叡「……はい、今お持ちします!」




51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:52:04.76 ID:UGSbS4XK0


比叡「(コト)……ど、どうぞ」

提督「ありがとう……うん、美味そうだ」

提督「では、いただきます」

 (パク、モグモグ)

提督「む…………」

比叡「…………」

 (ゴクリ)




52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:53:27.62 ID:UGSbS4XK0


比叡「……どう、ですか?」

提督「う、む……」

 (モグ…モグ…)

比叡(無言……)

 (…モグ)

提督「…………」




53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:55:02.78 ID:UGSbS4XK0


比叡「…………」

比叡(まだ半分以上残ってるけど、スプーンが動いていない……)

比叡(…………)

比叡「……もう、いいですよ」

提督「! いや、まだ……」

比叡「……いいんです! 無理してまで食べないで下さい……!」ダッ

提督「あっ、おい……待て! 比叡!」




54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 22:57:40.86 ID:UGSbS4XK0


比叡(……私ってば、いつもこうだ)

比叡(気合を入れれば入れるほど、空回りして)

比叡(司令に失望されたかな……)




55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:00:34.51 ID:UGSbS4XK0


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 ・

鳳翔(あら? こんな時間に食堂の明かりが?)

比叡「はぁ……」

鳳翔「……比叡さん?」

比叡「……鳳翔さん」

比叡「……失敗、しました」

鳳翔「え?」




56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:02:17.82 ID:UGSbS4XK0


比叡「…………」スッ

鳳翔(カレーのお鍋?)チョイ、ペロッ

鳳翔「ん……かなり辛口ですけど、おいしいですよ?」

比叡「……いいですよ、気を使ってくれなくて」

鳳翔「いえ、本当に……」

比叡「……いいんです」

鳳翔(うーん、何があったかは解りませんが重症ですね……私ひとりの言葉では、信じてくれそうにありません)




57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:03:15.71 ID:UGSbS4XK0


鳳翔「……あ、間宮さん、丁度よいところへ」

間宮「あら鳳翔さん、それに比叡さんも。どうされました?」

鳳翔「ちょっと、味見して頂けませんか?」

間宮「いい香り……カレーですね?」ペロッ

間宮「ふんふん……荒削りですけど、スパイスの効いたいいお味ですね」

鳳翔「ほら、比叡さん、ね?」




58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:04:11.55 ID:UGSbS4XK0


比叡「……でも、司令には半分も食べてもらえませんでした……」

鳳翔「…………」

間宮「ん? このカレー、提督にお出ししたんですか?」

比叡「はい……」

間宮「あー……えーと……」

間宮「比叡さん、実はですね……」




59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:07:02.61 ID:UGSbS4XK0


間宮「実は提督……辛いのが苦手なんです」

比叡「…………え?」

比叡「じ、じゃあいつも食べてるあのカレーは?」

間宮「辛いのはダメでもカレー自体は大好きみたいで、あのカレーは駆逐の娘たち用の甘口カレーなんです」

比叡「…………え? え?」

鳳翔「そうなのですか?」

間宮「はい。一度普通のカレーをお勧めした際に、こっそり教えて下さったんです」




60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:10:20.08 ID:UGSbS4XK0


比叡「そ……そんな……」

鳳翔「すみません、比叡さん。私がそのことを知っていれば……」

比叡「そんな! 鳳翔さんは何も……私が、司令のことを考えずに暴走したから……」シュン

間宮「……比叡さん、今からでよければ、甘口カレーの作り方をお教えしますよ?」

鳳翔「私もお手伝いします。……もう一度、がんばりましょう?」

比叡「間宮さん……鳳翔さん……」

比叡「……はい。ご教授……お願いします……!」

間宮・鳳翔「ええ、喜んで」




61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:12:07.00 ID:UGSbS4XK0


 ・
 ・
 ・

比叡「できた……」

間宮「教えた私が言うのもなんですが、とてもいい出来ですよ」

鳳翔「ええ、先ほどにも増して気合が入っているのを感じました」

比叡「お二人のおかげです……本当に、ありがとうございました」

鳳翔「いいえ、比叡さんの努力の結果ですよ」

間宮「その通りです。さ、もう一度提督のところへ――」




62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:13:01.18 ID:UGSbS4XK0


提督「比叡! ここにいたのか……」

比叡「! 司令……」

提督「…………」

比叡「…………」

提督「その……」

比叡「あの……」




63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:14:32.49 ID:UGSbS4XK0


二人「さっきは、すまん!」「さっきは、すみませんでした!」

二人「「……え?」」

比叡「私、本当は司令のためにカレーを作ったのに、好みも何も考えないで……」

提督「せっかく比叡が作ってくれたカレーなのに、目の前で残してしまって……」

比叡「で、でも、間宮さんと鳳翔さんに教わって甘口で作り直したんです! これを……これを食べて下さい!」

提督「いや、悪いが……」

比叡「え……」




64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:16:42.16 ID:UGSbS4XK0


提督「……さっきのカレーがまだ残っているだろう? もう一杯もらえないか」スッ

比叡「え……もしかして今まで、あのカレーを食べてたんですか!?」

提督「ああ。時間がかかってしまったが……」ヒリヒリ

比叡「う……」ジワ

提督「お、おい、比叡?」




65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:18:32.18 ID:UGSbS4XK0


比叡「司令は……何で司令は、そうなんですかぁ……」グス

提督「ひ、比叡、泣くな……泣くなって」

鳳翔「……提督、女の子を泣かせたらどうすればいいか……お解りですよね?」

間宮「私たちは失礼しますので。それでは……」

提督「…………」

提督「比叡……」ギュ

比叡「司令……司令ぃ……」ギュッ




66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:20:36.65 ID:UGSbS4XK0


 ・
 ・
 ・

提督「……落ち着いたか?」

比叡「ん……すみません」

提督「構わんさ」ポンポン

比叡「…………」




67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:22:05.78 ID:UGSbS4XK0


提督「…………」

比叡「……あの、司令」

提督「なんだ?」

比叡「私は……」

提督「…………」




68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:23:19.88 ID:UGSbS4XK0


比叡「……私は、司令のことが好き、みたいです」

提督「……そうか」

比叡「はい……」

提督「……嬉しいよ。俺も、ずっと比叡が好きだったからな」

比叡「本当、ですか?」

提督「ああ」




69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:26:06.69 ID:UGSbS4XK0


比叡「でも私、金剛お姉様みたいに美人じゃないし、鳳翔さんや間宮さんみたいに料理も上手くないし」

比叡「それに、司令への好意をずーーっと自覚できないくらい馬鹿だし……」

提督「俺の中での比叡は、誰にも負けないくらい可愛くて、誰にも負けないくらい努力家で」

提督「そして、無愛想な俺のことを好きだと言ってくれる、最愛の人だ」

比叡「司令……」




70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:26:57.12 ID:UGSbS4XK0


比叡「そんなこと言われたら……また泣いちゃいますよ……」

提督「なら、また抱きしめてやるよ」ギュ

比叡「……今度は、抱きしめられたくらいじゃ泣き止まないかもしれません」

提督「……比叡は、意外と欲張りなんだな」

比叡「はい……私は、欲張りなんです……」




71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:28:13.24 ID:UGSbS4XK0


比叡(司令を、今すぐ私のものにしたい。そう思ってしまうぐらい……)

提督「比叡……」

比叡「司令……」

比叡(…………えいっ)チュッ

提督「! …………」

比叡「…………っん」

提督「…………」




72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:29:18.57 ID:UGSbS4XK0


比叡「…………司令」

提督「……うん?」

比叡「……負けませんから」

提督「……?」




73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:30:13.06 ID:UGSbS4XK0


比叡「司令がどんなに私のことを好きでも」

比叡「私はそれよりもっともーっと、司令のことを好きでいますから、ね」

提督「…………はははっ」

提督「俺も……負けないからな」

比叡「……はいっ」




74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:31:53.63 ID:UGSbS4XK0


比叡(絶対に、負けません……あなたが、私の未来を示してくれるなら……)

比叡(どんなことがあっても……比叡は、負けません)

比叡「司令……」ギュ

比叡「司令司令司令っ」ギュウ~ッ

比叡「――大好きです、司令!」



  ひとまず 完




75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/12(日) 23:34:11.33 ID:UGSbS4XK0


書いてる分(本編)はここまでです
明日気が向いたら、ちょっとだけおまけを書くかもです




78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/13(月) 14:44:03.93 ID:QYgRTmZPO


比叡かわいい




80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/13(月) 20:27:36.46 ID:gTzqUAXEO

すっきり読めて乙
この比叡素晴らしいじゃないか




81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/13(月) 21:50:42.22 ID:uLA4cRtY0

比叡が可愛くてつらい



82: 1 2015/07/13(月) 22:56:50.37 ID:9F+9NTxv0


こんばんは、>>1です。読んでくださった皆さんありがとうございます
自分で読み返してると拙い部分ばかりが目に付くので、かわいいとか言って頂くと本当に嬉しいです

それではちょろっとおまけを書いてみます
リアルタイムで書くのは初めてなのですが、たぶんスピードは遅いです。気長に構えておいて下さい




83: 1 2015/07/13(月) 23:04:49.98 ID:9F+9NTxv0


 おまけ1・比叡と提督とカレーライス

 ――ある日

比叡「司令、お昼できましたよ~」

提督「おう」

比叡「(コト、カチャカチャ)……さ、どうぞ」

提督「今日もカレーか」

比叡「はい。今日は、夏野菜のカレーです」

提督「ふむ……いただきます」




84: 1 2015/07/13(月) 23:17:24.61 ID:9F+9NTxv0


提督「うん……トマトがいい感じに利いてるな」

比叡「あ、解ります? 今日のカレーは水をあまり入れず、野菜の水分を活かしてみたんです」

提督「なるほど……鳳翔と間宮に教わってるだけあって、めきめきと料理の腕を上げてるな」

比叡「えへへ……司令が毎日、おいしいって言ってくれるからですよ」

提督(あ、その表情可愛い)

提督「……ところで、カレー以外の料理はどうなんだ?」

比叡「うっ!」




85: 1 2015/07/13(月) 23:25:45.81 ID:9F+9NTxv0


提督「……その反応からすると、芳<カンバ>しくなさそうだな」

比叡「うぅ……カレーはほぼ毎日作ってるので自分でも自信が付いたんですけど……」

比叡「それ以外の料理だと、レシピを見ながらでもなぜかどこかでドジをしてしまって……」シュン

提督「……まあ、焦らずゆっくり経験を積んでいくしかないだろう」

比叡「んん……でも……」

提督「……?」




86: 1 2015/07/13(月) 23:32:51.28 ID:9F+9NTxv0


比叡「……レパートリーが充実する頃には、お婆ちゃんになっちゃってるなんてことになったら……」

提督「……さすがに、それはないだろう」

比叡「そりゃあ、もしもの話ですけど……でも、もしもそんなことになったら……」

提督「なったら?」

比叡「お婆ちゃんになった私じゃ、その……し、司令に……貰ってもらえない、じゃないですか……」

提督「…………」




87: 1 2015/07/13(月) 23:39:05.46 ID:9F+9NTxv0


提督「……比叡」

比叡「はい……?」

提督「そんな心配なら、無用だ」

比叡「……司令は、お婆ちゃんになった私でも、貰ってくれるんですか?」

提督「そんなわけなかろう」

比叡「(グサッ)……うぅ、そんな」グス

比叡「いやです、司令……見捨てないでぇ……」




88: 1 2015/07/13(月) 23:45:13.48 ID:9F+9NTxv0


提督「勘違いするな、比叡」

比叡「……ふぇ?」

提督「俺が、お婆ちゃんになるまで長い間、比叡を独り身にしておくわけがないだろう」

比叡「……へっ?」

提督「料理のできるできないは関係ない。俺が比叡と一緒になりたいと思ったら、その時にお前を貰う」

提督「……それだけのことだ」




89: 1 2015/07/13(月) 23:50:59.77 ID:9F+9NTxv0


比叡「…………」

比叡「……司令ぃ」グス

提督「……よしよし」ポンポン

比叡「……カレーしか作れない私でも、本当に大丈夫ですか……?」

提督「比叡のカレーなら、毎日食っても飽きんさ……というか、実際に毎日食ってる」




90: 1 2015/07/14(火) 00:17:38.39 ID:5rOPLqh60


比叡「んん……でもでも、やっぱり私、司令にもっといろいろなものを作ってあげたいです」

比叡「間宮さんの作るお味噌汁や、鳳翔さんの作る肉じゃがに負けないお料理を、食べさせてあげたいです!」

提督「……うん、その気持ちは嬉しいよ」

提督「……比叡のそういう優しさと努力が、俺は好きなんだ」

比叡「ひえっ!?」




91: 1 2015/07/14(火) 00:38:59.41 ID:5rOPLqh60


比叡「も、もう! 最近の司令は、すぐそうやって歯の浮くようなことを言うんですから!」

提督「……自分に正直になっただけなんだが」

比叡「~~~~」

比叡「っとにかく! これからも料理の練習は続けますから!」

比叡「いつか絶対、司令を驚かせてみせますからね!」

提督「ん……楽しみにしてるよ」

比叡「……負っけないんだからぁ~!」



 比叡と提督とカレーライス 了




93: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 00:46:24.80 ID:5rOPLqh60


案の定時間がかかったので今日は一編のみで寝させて頂きます
あと1、2編くらいは書くつもりです




95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/14(火) 02:32:48.67 ID:4GkCfrMLo


あまり見ない比叡主役素晴らしい




98: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 20:29:27.75 ID:5rOPLqh60


 おまけ2・比叡と提督と姉妹艦

 ――ある日の午後

提督「…………」カキカキ、ポン

提督「これ頼む」

比叡「はい」バサ、トントン

提督「んんん……ひと段落ついたか」ゴキゴキ

比叡「お疲れ様です、司令」




99: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 20:35:20.59 ID:5rOPLqh60


提督「ちょっと休憩したいな……すまんが、茶を入れてくれるか?」

比叡「はい、少々お待ちを……」

比叡「……あ、そうだ」

提督「ん?」

比叡「そういえば今日はですね……お姉様と榛名と霧島、三人ともお休みなので」

比叡「お姉様の部屋でお茶会をしてるはずなんです。せっかくだから、そちらに顔を出してみませんか?」




100: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 20:42:40.64 ID:5rOPLqh60


提督「お茶会……そんなことをやっていたのか」

比叡「姉妹艦だけのささやかなものですけどね」

比叡「全員の休みが合うことってあまりないので、お互いの近況報告なんかも兼ねて」

提督「なるほどな。……しかし、そんな場に俺が顔を出しても構わんのか?」

比叡「そんな大仰なものじゃないですから……誰も気にしませんよ」

比叡「……そ、それに」

提督「ん?」

比叡「し、司令はもう……金剛型の身内、みたいなものじゃないですか///」




101: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 20:47:26.16 ID:5rOPLqh60


提督「……比叡も言うようになったな」

比叡「……いつものお返しですっ」

比叡「ま、それはそれとして、お姉様の部屋に行ってみましょうよ」

提督「そうだな……ちょっとお邪魔させてもらうか」




102: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 20:58:54.24 ID:5rOPLqh60


 ・
 ・
 ・

 (コンコン)

比叡「(ガチャ)お姉様、お邪魔しますね~」

金剛「ヒエー? 今日は秘書艦の当番だったのでワ?」

比叡「ちょっと休憩中でして……司令も一緒ですよ」

金剛「What!?」

提督「……よ、よう。入っても構わんか?」

金剛「あ、えと……」オロオロ

金剛「お、お二人様ご案内デース!」

榛名(金剛お姉様が取り乱してる……)

霧島(……ま、身を引いたとはいえ好いた男性に部屋を訪れられれば、そうもなるでしょう)




103: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:05:30.68 ID:5rOPLqh60


金剛「……どうぞデース」カタ

比叡「ありがとうございます!」

提督「すまんな」

金剛「い、いえ……」

提督「…………」

金剛「…………」

霧島(う……微妙な空気)

榛名(比叡姉様は……)

比叡「あー、久しぶりに飲むお姉様の紅茶は、おいしいですね~」

霧島(……能天気!)




104: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:17:31.80 ID:5rOPLqh60


金剛(……ふぅ、落ち着くデース、私)

金剛(私の今の望みは、テートクとヒエーが幸せになること……)

金剛(胸が痛まないと言えば嘘になりマスが、こうして二人の仲のいい様子を見られるのは喜ばしいことデス)

金剛「……テートクも、どうぞ」

提督「……ああ、頂くよ」

提督「…………」

提督「……うん、うまい」

比叡「ですよね! 司令もそう思いますよね! 来てよかったですね!」グッ

提督「うお、急に身を乗り出すな、危ない」

比叡「す、すみません、つい」




105: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:25:10.78 ID:5rOPLqh60


金剛「……ふふ」

提督「……金剛?」

金剛「二人が喜んでくれて……本当に、嬉しいデス」ニコ

提督「……!」

榛名(何でしょう、この……)

霧島(憂いと優しさを含んだ微笑み、例えるならば……)

比叡(まるで聖母……神々しいです、お姉様……)ポッ

提督「…………」ボー

比叡(……っは!)




106: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:37:16.90 ID:5rOPLqh60


比叡「司令! いくら金剛お姉様が美人でも、私がすぐ隣にいるのに見惚れるなんて……!」

提督「! い、いやそんなことは……」

比叡「ごまかしても解ります!」

比叡(私も見惚れてたからだけど……)

金剛「……どうどう、落ち着くデース、ヒエー」

比叡「う……お姉様」

金剛「テートクへの想いを自覚できなかったあのヒエーが、人並みに嫉妬をしていると思うと感慨深いデース」

比叡「んぐ……」

比叡(お姉様に背中を押してもらっただけに、何とも反論できない……)




107: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:41:11.89 ID:5rOPLqh60


金剛「……テートク」

提督「うん?」

金剛「オッチョコチョイで慌て者の妹デスが、幸せにしてあげてくだサイね?」

提督「……もちろん」

比叡「お姉様……」




108: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:44:59.79 ID:5rOPLqh60


榛名「……金剛お姉様、なんだか大きく見えます」

霧島「そうね……」

榛名「……比叡姉様、幸せそうです」

霧島「そうねー」

榛名「…………」




109: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:49:32.15 ID:5rOPLqh60


榛名「……榛名も、もうちょっとだけ積極的だったら」

榛名「もしかしたら、比叡姉様みたいに……」

霧島「……榛名、あなた」

榛名「! わ、私何を……黙ってて下さい、霧島!」

霧島「……いいの?」




110: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 21:53:14.98 ID:5rOPLqh60


榛名「いいんです……」

榛名「ああして、幸せそうな提督と、幸せそうな比叡姉様と、優しげな金剛お姉様がいる」

榛名「そんな風景が見られれば、十分です。……榛名は、それで大丈夫です」

霧島「……そう」

榛名「……はい」




111: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:00:00.62 ID:5rOPLqh60


金剛「ハルナ、キリシマ、何話してるデース?」

榛名「金剛お姉様……」

榛名「……何でもありません。ただの雑談です」ニコ

金剛「そうデスか? そろそろスコーンを出しマスから、どんどん紅茶のお代わりしてくだサイね?」

榛名「はい、ありがとうございます」

比叡「あ、お姉様! 私早速お代わりを頂きます!」

金剛「オーケイオーケイ、パーッとやりまショウ!」

霧島(……やれやれ)




112: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:05:45.66 ID:5rOPLqh60


 ・
 ・
 ・

提督「……さて、じゃあそろそろお暇するよ」

金剛「オウ、もうお帰りデスかー?」

提督「一応、執務の途中だからな」

比叡「はっ、そうでした」

提督「おい……」

金剛「お仕事なら仕方ありまセンねー」

榛名「またいつでもいらして下さい、提督」

提督「ああ、また機会があれば、ぜひ」




113: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:08:02.90 ID:5rOPLqh60


提督「それじゃあな」

比叡「お邪魔しました、お姉様」

金剛「Bye」ヒラヒラ

榛名(ペコリ)

霧島「…………」




114: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:14:30.95 ID:5rOPLqh60


提督「……お、そうだ」

比叡「はい?」

提督「明石にちょっと話しておきたいことがあったんだ」

提督「工廠に寄っていくから、先に戻っておいてくれるか?」

比叡「解りました。作業の続き、準備しておきますね」

提督「うん、頼む」




115: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:17:07.52 ID:5rOPLqh60


提督「…………」テクテク

霧島「…………司令」

提督「ん……? 霧島? どうした?」

霧島「……司令に、どうしても伝えておきたいことがありまして」

提督「……何だ?」




116: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:23:20.97 ID:5rOPLqh60


霧島「司令が、もしも比叡姉様を捨てたら……」

提督「おい!? 何の話だ!?」

霧島「もしも、ですってば」

提督「むう……」

霧島「もしもそんなことになったら、詳しくは言えませんけど色々な理由で、困る人間がけっこういるんです」

提督「…………」

霧島「だから絶対、そんなことはしないで下さいね」

提督「言われるまでもない、と言いたいところだが」

提督「霧島にとっては重要なことなんだな?」

霧島「……」コク




117: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:27:00.57 ID:5rOPLqh60


提督「……解った。約束するよ」

霧島「…………」

提督「天地神明に誓って、比叡を捨てたりはしない。必ず幸せにする」

霧島「うん……お願いしますね」




118: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:36:54.19 ID:5rOPLqh60


 ・
 ・
 ・

霧島「…………」

霧島「はぁ……」

霧島「困る人間が『けっこういる』ねぇ……」

霧島(金剛姉様、比叡姉様、それに榛名まで……)

霧島「……私が相談する相手、いなくなっちゃたじゃない」

霧島(……まあ、比叡姉様の話を聞いた時点で諦めてはいたんだけど)

霧島「もし司令と比叡姉様が別れたら、私、本当に困りますから」

霧島「……本当にお願いしますよ、司令……」



 比叡と提督と姉妹艦 了




119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/14(火) 22:38:42.09 ID:xGq6a2iyO

乙です 切ない



120: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/14(火) 22:40:26.57 ID:5rOPLqh60


ジト目の比叡が書きたかったはずなのに、姉妹艦たちの切ない話になってしまいました
最後の1編はイチャラブにしてバランス取ります(?)

ラストは書き溜めてからにしますので、数日お待ち下さい




125: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:44:58.46 ID:zn8RWDlP0


ラスト1編上げていきます
おまけと言うより本編その2って感じになってしまいましたが

セリフだけでは表現しきれない部分に、少しだけ地の分を使ってます




126: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:46:35.72 ID:zn8RWDlP0


 おまけ3・比叡と提督と観艦式

 ――大規模作戦を終えた、ある日

比叡「観艦式?」

提督「名目上はな」

比叡「どういうことです?」

提督「先日の大規模作戦、比叡はじめ皆のがんばりのおかげで、うちの鎮守府が最殊勲と判定されただろ?」

比叡「提督も勲章貰ってましたよね。……どこにやったんです?」

提督「あんな虚栄の証より、名誉駆逐艦の証がほしいね、俺は」

比叡「荒〈スサ〉んでますねぇ……それで、観艦式というのは?」

提督「ああ、そうだったな……」




127: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:48:03.19 ID:zn8RWDlP0


提督「『最も戦果を挙げた艦隊に、上層部の観閲を受ける栄誉を授けるとともに、祝勝会を開きその労をねぎらう』というのが上の言い分だが……」

提督「要するに、優雅に踊って飲み食いする口実がほしいだけさ」

比叡「はあ。それじゃ、断りますか?」

提督「……そうもいかんだろう。自分から立場を悪くするのも馬鹿げている」

提督「俺は地位や名誉に拘りはないが、俺の立場が安定すればお前たちの立場も守ってやれるからな」

比叡「それじゃせいぜい、堂々とやってやるしかありませんね」

提督「……そういうことだ」




128: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:48:54.11 ID:zn8RWDlP0


比叡「そうと決まれば、さっそく詳細を詰めないといけませんね」

比叡「観艦式は規模も重要ですが、やはり最も重要なのは、物理的にも精神的にも艦隊の中心となり、一身に視線を集める旗艦――」

比叡「いやこの場合、御召艦とでも呼ぶべきですか。その人選が何より重要ですね」

比叡「見栄えを重視すればやはり大和さんや長門さん……艦隊運動であっと言わせるなら通信機器の充実した大淀……?」

比叡「いや、ここは奇をてらって空母というのも……どう思います、司令?」

提督「…………」




129: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:49:38.64 ID:zn8RWDlP0


提督「……比叡に任せる」

比叡「私に選べってことですか? さすがに無責任ですよ、もうちょっとやる気出しましょうよ~」

提督「……いや、そうではなく」

比叡「へ?」

提督「比叡に、御召艦を任せる」

比叡「……っええええええ!」




130: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:51:14.01 ID:zn8RWDlP0


提督「……そこまで驚くことか?」

比叡「いや、でも……ええ? 私?」

提督「『昔』の観艦式では、何度も御召艦を務めたんだろう?」

比叡「そ、そうですけど……ここで言う御召艦と『昔』の御召艦じゃあ役割が違いますよ……」

提督「しかしな、御召艦は式典中以外は提督に同伴すること、と言われているし」

提督「だから、最も親しみと信頼を抱く比叡にやってほしいんだが」

比叡「う……そうまで言われたら、断れませんね……」




131: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:52:32.05 ID:zn8RWDlP0


比叡「……解りました。この比叡、気合! 入れて! 御召艦を務めてみせます!」

提督「うん、頼む」

提督「それじゃあ悪いんだが、人選と艦隊行動の詳細は任せていいか?」

提督「上との摺り合わせと諸々の準備品は、俺が担当するから」

比叡「はい! 司令の名を汚さぬよう、精一杯やらせて頂きます!」

提督「いや、そこまで気負わなくてもいいが……」

比叡「いえ、やるからには! 全力で! いきましょう!」

提督「……ま、手を抜いて上にケチを付けられるのもなんだからな」

比叡「私、何だか燃えてきましたよ~!」

提督「……ほどほどにな」




132: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:53:29.24 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

比叡「……さて、司令にはああ言ったけど」

比叡「場の雰囲気的にも、司令の好み的にも派手なパフォーマンスはよろしくないだろうし」

比叡「あくまで整然と、そして堂々と、って感じになるのかな」

比叡「まずは、サポート役……供奉艦を確保しに行こう」




133: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 21:54:16.41 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

提督「……さて、比叡にはああ言ったが」

提督「公人としてはともかく、私人としては楽しみな面もあるし」

提督「早速だが、明石にアレを発注しに行くか……」




137: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:00:47.11 ID:zn8RWDlP0

 ――重巡寮

比叡「うーん、誰に頼むのがいいかな……」

高雄「――比叡さん? 重巡寮にいらっしゃるなんて珍しいですね」

比叡「あ、高雄」

高雄「誰かに用事でも?」

比叡「…………」




138: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:02:16.91 ID:zn8RWDlP0


比叡(生真面目で規律に厳しい高雄)

比叡(『昔』供奉艦や先導艦を務めてもらったこともある)

比叡「……一人確保」ガシッ

高雄「……はい?」

比叡「もう一人ぐらいほしいな~。高雄は固いタイプだから柔らか目のタイプで」

高雄「……何なんですか?」




139: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:03:26.94 ID:zn8RWDlP0


古鷹「――高雄? それに比叡さん? どうかされましたか?」

比叡「……ふむ」

比叡(普段は温和だが、時に芯の強さを見せる古鷹)

比叡(彼女にも一度、供奉艦を務めてもらったことがある)

比叡「……二人とも、ちょっと来てもらっていいかな?」ガシッ

古鷹「え? ……え?」

高雄「だから、一体何なんですか~?!」




140: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:04:46.53 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

比叡「――というわけなんだけど」

古鷹「はあ、なるほど」

高雄「それで、私たちに手伝ってほしいと」

比叡「二人には『昔』も供奉してもらったことがあるし……お願いできないかな?」

古鷹「私は構いませんけど……」

高雄「まあ、鎮守府の代表と思えば悪い気はしません……いいですよ、お手伝いします」

比叡「ありがと~、助かるよ」




141: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:06:14.40 ID:zn8RWDlP0


高雄「それで、具体的には何を?」

比叡「まずは、式での全体の動きかなあ。もし分散して動く場面を作るなら、二人にその指揮を任せることになるし」

古鷹「それでしたら、ひとまず私の部屋でお話しませんか?」

比叡「いいの?」

古鷹「はい。加古は今出撃中なので、空いてますよ」

比叡「それじゃ、ちょっとお邪魔させてもらうね」




142: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:09:03.12 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

比叡(――それから数週間)

比叡(高雄、古鷹と綿密な打ち合わせを行った後、選抜したメンバーを集め、毎日予行演習を繰り返した)

比叡(司令に影響されたわけではないけれども、労をねぎらうと言いつついらぬ苦労を押し付けてくる上層部は、確かに自分たちの欲求を優先させているのでは……)

比叡(……と、私自身思わないでもなかったし、実際そういう不満を口にする子もいた)

比叡(時には艦娘としての誇りのためと説き、時には間宮アイスで機嫌をとり、どうにか士気を維持しつつ、ついに式典当日を迎えた)




143: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:10:09.90 ID:zn8RWDlP0


比叡(……そういえばあれから、司令とは事務連絡ばかりであまり話をしていない)

比叡(……いや、余計なことは考えず、まずはこの観艦式を堂々とやり遂げよう)

比叡「高雄、古鷹、それに皆、準備はいいね?」

比叡「……気合! 入れて! 行くよっ!!」




144: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:11:35.16 ID:zn8RWDlP0


偉いさん「提督クン、式の開始はまだなのかね?」

提督「……もう間もなくです」

偉いさん「先ほどからそればかりではないか。いいかね、君と君のところの艦娘の交通費、それにこの後の祝勝会の料理代に演奏代、その他もろもろ、我々がいくら予算をかけたと思っとる」

提督「…………」

偉いさん「そうした厚意について慮ってだな……」

提督「…………」

大淀『大変長らくお待たせしました。只今より――』

偉いさん「おっ、いよいよかね」

提督(……観艦式を見世物か何かのように考えてるんじゃないか、こいつ)




145: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:13:10.02 ID:zn8RWDlP0


 ――艦列は総計で25隻、戦艦比叡を中心に菱形を形成する。

 その内訳は、戦艦1、重巡2、軽巡3、駆逐艦15、軽空母4。比叡の威容を際立たせるため、あえて小型艦が多目の編成となっている。

 陸上からの観閲となるため、まず右手側から左手側へ航行した後、右後方へ間をおいて二回転針。

 観覧側に正面から接近した後、9隻、8隻、8隻の三つの梯隊に別れ、それぞれが連携しつつ縦横に移動する。




146: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:14:04.54 ID:zn8RWDlP0


提督(……見事だ)

偉いさん「いやあ、なかなか見応えがあるじゃないか」

提督「…………」



比叡「…………」スッ

 ――ボン、ボンッ、ドウゥゥン




147: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:15:04.01 ID:zn8RWDlP0


偉いさん「ひっ!? 砲撃ではないか! どうなっとる、提督クン!」

提督「……落ち着いて下さい。あれは空砲です」

偉いさん「……んなこた解っとるよ!(半ギレ」

提督(しかしどういうことだ? 空砲を撃つとは聞いていないが……)




148: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:16:26.11 ID:zn8RWDlP0


比叡(…………)

 ――一瞬、提督と比叡の目が合う。

 比叡はパチッとウインクすると、再び右手で砲撃の合図を送った――

偉いさん「おい、中央の戦艦、主砲をこっちに向けとらんか!?」

 ――ボボボボボッ、ボゥンッ




149: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:17:30.00 ID:zn8RWDlP0


偉いさん「ひぃっ!?」

 比叡以外の艦からは、明石の開発したくすだま状の砲弾が発射され、辺りに紙吹雪を散らす。観客からは歓声が起こった。

 そして比叡の主砲からは――

提督「……」パシッ




150: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:19:32.95 ID:zn8RWDlP0


提督(……丸めた紙?)ガサ

 ――艦隊の勇ましさをアピールするためのデモンストレーションです。このくらいのイタズラ、許されますよね?

提督(……もう一枚は)ガサ

 ――追伸、どうしても我慢できなかったので書いちゃいます

提督「…………」

 ――鎮守府に戻ったら、ぎゅっ、てして下さい

提督「…………」ニヤ




151: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:22:04.04 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

大淀「――お疲れ様でした、比叡さん」

比叡「ありがと、大淀」

大淀「私たちはこの後自由行動になりますが、比叡さんには提督が上層部と会食するのに付き添って頂きます」

比叡「ひぇぇ、休む暇もなしか」

大淀「時間の猶予はありますが……提督がお待ちですので、本館二階の左手突き当りの部屋に向かって下さい」

比叡「はーい、了解」




152: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:23:27.30 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

比叡「二階、左手、突き当り、と……あ、ここか」

比叡「(コンコン)司令ー? 入りますよー?」

明石「(ガチャ)お待ちしてました、比叡さん!」

比叡「……あれ? 明石? 司令は?」

明石「大丈夫です、この明石が仰せつかっていますから。さ、入って入って!」

比叡「???」




153: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:24:32.93 ID:zn8RWDlP0


明石「驚かないでくださいね、比叡さん……じゃーんっ!」

比叡「はえ……?」

比叡「…………ひえええええっ!?」

明石「提督のご注文で準備いたしました……比叡さん用のドレスです!」

比叡「ま、まさかこれを着ろって言うの!?」




154: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:25:28.62 ID:zn8RWDlP0


明石「当然です。比叡さんの美しさを、バシッと見せつけてやって下さいよ~」

比叡「いやいやいや、無理無理無理!」

明石「だ~いじょうぶです。着付けもお化粧も髪のセットも、この明石にお任せください!」ワキワキ

比叡「ちょっ……待って……」

比叡「ひええ~~~…………」




155: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:27:45.39 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

提督「…………そろそろか」

提督「(コンコン)明石、比叡、どうだ、用意できたか?」

明石『提督ですか? どうぞ入ってきて下さい!』

比叡『えっ! 明石ちょっと待……』

 (ガチャリ)

比叡「!」

提督「……!」

明石「ふふん……どうです?」




156: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:30:03.19 ID:zn8RWDlP0


 ――比叡に用意されたのは、普段の元気一杯な雰囲気とは逆の、落ち着いた黒のロングドレス。

 露出した肩を恥ずかしがるように、手袋をした両手で自身の肩を抱いている。

 通常はピンとはねている髪先は入念に梳かれ、肩口に届くか届かないかといったところ。

 そして、いつも化粧っ気がないだけに格段に雰囲気を変えている薄化粧。白い肌、紅い唇、潤んだ瞳――




157: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:31:21.70 ID:zn8RWDlP0


提督「……綺麗だ、比叡」

比叡「…………ありがとう、ございます」ボソボソ

提督「…………」

比叡「…………」

提督「……やばい、どうしよう」

比叡「…………」




158: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:32:36.83 ID:zn8RWDlP0


提督「……このまま式場に連れて行きたい」

比叡「///」

明石「あ~、ゴホン。久方ぶりの逢瀬で燃え上がるのは解りますが、そろそろ会食に向かわれた方がいいのでは?」

提督「! そ、そうだな。行こうか、比叡」

比叡「は……はい」

明石「……後ほどゆっくりと、お楽しみ下さいね」ニヨニヨ

二人「///」




159: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:34:27.07 ID:zn8RWDlP0


 ・
 ・
 ・

 ――会食後、中庭にて

提督「はぁ~、ようやく終わった。これでしばらくあのオッサンどもの顔を見なくてすむ」

比叡「お疲れ様でした、司令」

提督「ああ。比叡こそ、十二分に頑張ってくれていくら感謝してもし足りんぐらいだ」

比叡「いえ、そんな……」




160: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:35:34.29 ID:zn8RWDlP0


提督「……それにしても」

比叡「……?」

提督「比叡がテーブルマナーや行儀作法に長けているのが……」

提督「そして今もそうだが、しとやかな振る舞いができるのが……正直、意外だった」

比叡「……御召艦ですから、これくらいは」

比叡「それと、服装のおかげですかね……」

提督「まず形から、みたいなものか……そうだ、比叡」

比叡「はい?」




161: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:36:30.21 ID:zn8RWDlP0


提督「よく似合っている……本当に、綺麗だ」

比叡「…………」

比叡(あー、どうしよう……)

比叡(胸がドキドキして、言葉が何も出てこない……)

提督「……少しフライングになるが」ギュッ

比叡「あ……」

提督「…………」

比叡「…………」




162: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:37:18.96 ID:zn8RWDlP0


比叡「……ダメです、司令」

提督「どうした?」

比叡「また、欲張りな私が出てきそうです……」

提督「……心配するな」

提督「俺ももう、我慢できそうにない……」グイ




163: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:38:07.58 ID:zn8RWDlP0


比叡「…………んっ」

提督「…………」

比叡「…………んっ、はぁっ……」

提督「ふぅ……」




164: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:39:04.30 ID:zn8RWDlP0


比叡「あ……」

提督「ん……?」

比叡「……口紅、付いちゃいました」

提督「…………」




165: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:39:58.62 ID:zn8RWDlP0


提督「……じゃあもう、何回やっても同じだな」

比叡「……そう、ですね」

比叡「…………んんっ」

提督「…………」

比叡「…………はぁぁ……」トロン




166: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:41:48.01 ID:zn8RWDlP0


比叡「…………司令」

提督「うん……」

比叡「……今度ドレスを着る時は」

比叡「……左手の薬指に、アクセサリーがほしいです」

提督「…………解った」

提督「……じゃあ……近いうちに、な」

比叡「……ほんと?」




167: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:42:38.87 ID:zn8RWDlP0


提督「ああ、約束だ……」

比叡「……約束、しましたからね」

提督「ああ」

比叡「…………」チュッ

提督「お……?」

比叡「……この首筋のキスマークが、証ですからね」

提督「……比叡は、本当に欲張りだな」

比叡「……誰のせいですか」




168: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:45:21.67 ID:zn8RWDlP0


比叡(ああ、こんなに幸せな夜を過ごしてしまったら、きっとまた――)

比叡(――司令のことを考えると、眠れない)

比叡(そんな夜を繰り返すことに、なってしまいそうだ――)



 比叡と提督と観艦式 了




 【艦これ】比叡「司令のことを考えると眠れない」
                          艦!




169: 1 ◆GFAFNejGqE 2015/07/17(金) 22:50:46.04 ID:zn8RWDlP0


以上で本作は完結となります。読んでくれた皆様ありがとうございました

また気が向いた時に次回作でお会いしましょう




174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/20(月) 19:08:25.47 ID:itKIMeFeo

比叡提督なんで死ぬほど悶えた
はあ、比叡かわいい・・




172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/18(土) 02:33:08.67 ID:POA/LDZZo

おつおつ
綺麗な締め方素晴らしい




171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/17(金) 23:41:46.45 ID:WTirdrZjo

>>1
比叡カレーを振る舞おう




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