1:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:22:12.55 ID:
Q6VgHWhM0
2:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:22:47.54 ID:
Q6VgHWhM0
彼はこのゲームを死なずにクリアしなくてはいけなくなった。
一度クリアした経験のある彼は
このゲームが実際大した難易度ではないことを理解している。
死なずにクリアすることも十分可能だ。
(さっきモンスターと戦ってみた感じでは
俺の力も素早さもゲームキャラ水準のものになってる。
問題ないはずだ)
「…怖くなった?」
5:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:23:48.61 ID:
Q6VgHWhM0
「そ、そんなことあるかよ!へっちゃらだ!」
虚勢を張って強がってみるが、意思に反して彼の足が震える。
(わかってても、こええよ…)
きつく握り締めた手にじっとりと汗が浮かぶ。
その上にふわりと優しく手のひらが添えられた。
柔らかな僧侶の手。
「・・・大丈夫。私がいるから。私がゆーしゃくんを守るから」
6:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:24:48.95 ID:
Q6VgHWhM0
僧侶は彼のことをまっすぐに見つめて
優しく微笑んだ。
その笑顔は彼の内に湧き上がってきた恐怖心を和らげ
暖かく包み込み、落ち着きを取り戻させていった。
7:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:25:35.97 ID:
Q6VgHWhM0
「お前にはなんでも分かっちまうんだな」
真っ直ぐに彼のことを見つめながら
僧侶がお日様のように朗らかな笑顔を見せる。
「当たり前じゃない。君のことずーっと見てきたんだからね」
9:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:27:04.78 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
事の始まりは、朝おっぱいの大きい美少女が
彼を起こしに来たことから始まる。
「おーい、ゆーしゃくーん」
「んん~まだ眠い」
「ほら起きなよー。今日は一緒に王様の所に行くんでしょ?」
「ん…んん」
10:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:27:47.50 ID:
Q6VgHWhM0
眠い目をこすって布団から顔を出した少年は
目の前に二つのバレーボールがぽよんぽよんと跳ねていることに気がついた。
否、これはボールではない。
(こ、これはもしや)
「あ、やっと起きたねー。相変わらず朝弱いんだから」
そこには妙なコスプレをした美少女がいた。
11:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:29:02.01 ID:
Q6VgHWhM0
窓から差し込む朝の陽光に照らされてキラキラと長い髪が閃く。
クリクリと丸い目、優しそうな目尻。
慈愛に満ちた微笑みはまるで天使のようだ。
その笑顔は彼を安らかな気持ちにさせていく。
(なんだまだ俺は夢の中にいるのか)
「さあさあ起きて起きて」
12:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:30:17.69 ID:
Q6VgHWhM0
美少女に急かされるまま起き上がった彼の目に
窓から見たこともない景色が飛び込んできた。
中世ヨーロッパのような街並みに城。
道を行き交う行商人や荷馬車。
どう考えても自宅前の通りではない。
(あかん。どうやったらこの夢覚めるんだ?)
13:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:32:19.32 ID:
Q6VgHWhM0
頭がぼんやりしてイマイチ記憶が定かではない。
思い返そうとしてみるも昨晩のことが思い出せない。
「おばさまが下で朝食を作ってくださってるよ。さあいこっ?」
(おかしいまだ目が覚めない。とりあえずこれは夢だ)
(朝から巨乳の美少女が俺を起こしにきてくれるなんてのは夢以外ありえない)
(ならば目の前でぽよぽよ揺れるこのおっぱいを破壊し
この幻想をぶち殺さねばなるまい)
14:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:33:12.72 ID:
Q6VgHWhM0
「えい」
ツンっ
「ふぇっ!?」
「え…」
彼の手には蕩けてしまいそうな確かな感触が伝わってきた。
マシュマロのように柔らかで心地よい。
15:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:34:09.72 ID:
Q6VgHWhM0
それは手が吸い付くようなまろやかさであり
もうずっと触っていたいと思わせた。
もみもみと手を動かす。
「ゆ、ゆ…」
「こ、これはまさか…!?げんじっ」
次の瞬間、強烈な頬への痛恨の一撃が彼を完全に覚醒させた。
「ゆーしゃくんのばかああああああ」
勇者
---------------------
HP:12
MP:10
所持金:0G
ステータス:バカ
16:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:35:53.14 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
「まったくもう!まったくもう!」
「いや悪かったって。悪気はなかったんだ」
「悪気しかなかったでしょ!セクハラだよ!セクハラ大魔王だよ!」
(やれやれ怒らせちまった)
ひと悶着を終え、彼らはシナリオに沿って?城に向かっていた。
勇者は道すがら街の名前や風景を確かめてみたが
察するにどうやらここはゲームの中らしい。
17:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:37:02.25 ID:
Q6VgHWhM0
(そういえば昨日ゲーム、ドラコムクエストをやってる途中で寝てしまったような気がする)
しかしいくら思い出そうとしても彼の記憶は
霧がかかったように曖昧で輪郭を得ないものだった。
「…とりあえず、まずはお城に行くよっ。王様に旅立ちの報告をするの。ゆーしゃくん、大丈夫?」
「ん?ああ」
ドラコムクエスト最初のイベント。
まずは城に行って、王様から100Gと銅の剣をもらう。
19:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:37:52.51 ID:
Q6VgHWhM0
(なんかしらんが夢ではないらしい。エライ事になったなあ)
だが悩んだところで解決しない。
彼はまずは流されるまま城に行ってみることにした。
隣にいる美少女を眺めてみる。
この娘は僧侶で勇者の幼馴染(という設定)らしい。
21:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:38:48.59 ID:
Q6VgHWhM0
優しそうな目元と小顔があいまって可愛らしさを際立たせる。
凛と整った眉からは、意志の強さも兼ね備えている印象を受ける。
青みがかった髪は美しく、乾いた街の風を受け、鳥の羽みたいにふわふわ舞っていた。
僧侶の服装に身を包んだ彼女の体から
スラリと伸びた手足が流れるような肢体を形成している。
24:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:39:30.83 ID:
Q6VgHWhM0
小柄で華奢ではあるが、バランスのいいスタイルと言えた。
ただ一つ。法衣に押し込められているにもかかわらず
不埒な自己主張をしてしまっているおっぱいを除いては。
「さ、お城に着いたよ。くれぐれも粗相のないようにね?」
25:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:40:13.02 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
「ようこそ来た。勇者よ!ついにお主の旅立ちの日が~」
(ねみぃ)
「~であるからして~英雄であったそなたの父の~」
(どうやらこのゲームクリアしないことには家に帰れなさそうだな)
「~では旅立ちに際してそなたに資金を与える。
そなたなら必ずや魔王を倒し、世界を救ってくれると信じているぞ!」
(まあ他にやりようも思いつかないし、とりあえずゲームクリアすっか)
26:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:40:55.42 ID:
Q6VgHWhM0
「ふぁあ~王様の話、長かったなあ」
「ちょっと、ゆーしゃくん!まだお城の中だよ!?」
「別にいいじゃねえか。俺は魔王を倒しに行く勇者様だぜ?
お?そこのあんた。丁度いいや、その鉄の槍譲ってくれよ」
「いえ、これは城の備品ですので」
「いいじゃんか魔王倒しに行ってあげるんだからさ
硬いこと言うなよ。なんならその鉄の鎧でもいいよ?
堅物だけに」
「ゆーしゃくん!」
27:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:42:06.12 ID:
Q6VgHWhM0
僧侶に首根っこを掴まれる。
「ゆーしゃくん、いくらなんでも非常識だよ!」
「だって英雄アルテガの息子に期待してる云々とか言ってたじゃん?
なんでこんな装備しかくれないんだよ、おかしいだろ」
はあ、と僧侶が浅いため息をつく。
呆れた表情で勇者を眺めた。
28:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:43:12.91 ID:
Q6VgHWhM0
「ゆーしゃくん、それはリップサービスだよ。
そりゃおじ様は偉大な方よ?
でも毎日旅立つ冒険者が何人いると思ってるの?
そんなことでいちいち特別扱いしてたらキリがないでしょう?」
「こうして100Gと銅の剣を支給してもらえただけでも破格の対応だよ?
王様のご期待に沿えるようがんばろうよ、ね?」
「ちぇ、うるせーなぁ。もういいよ。ちょっと街ブラついてくるわ」
「ゆーしゃくん!…もうっ」
30:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:44:36.92 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
僧侶のお小言から逃げ出し、勇者は街を歩いて回ってみた。
城下町の中央通りは、軒に連なる露店からの威勢の良い掛け声や
街人たちの賑わいで溢れかえっていた。
元々異国文化に憧れのあった勇者は、そんな活気に満ちた
ファンタジー世界の雰囲気に自然とワクワクしてしまうのだった。
「そういえば、ゲーム上はあそこの家のタンスに薬草があったな」
31:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:45:46.54 ID:
Q6VgHWhM0
回復アイテムを求めて家を訪ねる。
「あら、ゆうしゃちゃん。こんにちは」
ドアを開けると壮年の女性が話しかけてきた。
お腹が膨らんでいるあたり、おそらく妊婦だろう。
「あ、はい。ちわっす。おじゃまします」
「この前は子供とあそんでくれてありがとうね」
「え?あ、はい」
32:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:46:35.03 ID:
Q6VgHWhM0
「今日はどうかしたの?なにか用事?」
「あの、ちょっとアイテムを」
「?子守りしてもらった時に、もしかして部屋になにか忘れ物したの?
それなら2階ね。旦那がタンスにしまってるかもだから、
勝手に持って行ってどうぞ」
「うぃっす」
(ふむ。これはゲーム的には薬草をゲットせよという意味だろう)
34:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:47:22.71 ID:
Q6VgHWhM0
ガサガサ
「えーと確かタンスの中だから…」
「ゆーしゃくん…な、なにやってるの?」
背後からエンジェルボイスが聞こえてきた。
その声は微かに震えている。
35:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:48:39.36 ID:
Q6VgHWhM0
「え?ああ僧侶。ちょっとここにな」
勇者は人妻の下着を手に入れた。
マヒャッド級の凍てつく視線が勇者に降り注ぐ。
「…」
「イヤマテゴカイダオレハヤクソウヲダナ」
「ゆーしゃくんのへんたああああああああいいいいい」
勇者
---------------------
HP:9
MP:10
所持金:100G
ステータス:へんたいバカ
38:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:50:02.23 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
魔王を倒す冒険の旅には、頼れる仲間が必要だ。
勇者は出会いを求めて、裏路地にある酒場に向かっていた。
大通りの大きな酒場では冒険者と言っても子供扱いされ
まともに取り合ってもらえなかったのだ。
(一応奥さんにフォローしてもらったが)
チラリっと後ろを伺う。
後ろから距離を保って僧侶がついてくる。
天使のような笑顔は、もはや勇者に向けられることはない。
(このままじゃ出会うより先に別れそうだ)
39:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:51:02.03 ID:
Q6VgHWhM0
酒場の戸を開く。
中はガランとしていた。
(さすがに昼間から人はいないか)
「夜になっても人はいないわよぉ~」
カウンターの奥から気怠そうな声が響いてきた。
ボサボサの髪の女が、ゆっくりと立ち上がると
体を引きずりながらにじり寄ってきた。
42:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:51:59.77 ID:
Q6VgHWhM0
「どうせ王様に言われて仲間探しに来たんでしょ~?
でもお生憎様。冒険者たちなら大通りに出来たルミーダの酒場に
ぜ~んぶとられちゃったわよぉ~」
気だるげに話す女は二十代前半から半ばくらいに思われた。
鼻筋の通った顔立ちは大人びた女性の雰囲気があり、結構な美人である。
仕草のせいかどこか幼さも残しているように思われる。
スレンダーな体つきはモデルのように流麗で
どんな服装でも似合いそうだった。
しかし今はその上品そうな顔立ちも身なりも
乱れた髪と酒に酔って紅潮した様子のせいで
台無しになってしまっている。
45:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:53:08.41 ID:
Q6VgHWhM0
「…なんだってぇのよぉ~。
みんな新しい方大きい方って。
なんでうちじゃだめなわけぇ?
そりゃうちは小さいし古いけど
だからってみんな出て行くことないじゃない!
薄情ぼうけんしゃどもぉ」
グラスになみなみ注がれたウイスキーが一息に飲み干される。
48:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:53:59.81 ID:
Q6VgHWhM0
「だいたいわたすも冒険者になりたかったんだっぺ。
魔法使い学校に通うために田舎さから出てきて
学費のためのバイトが、気がつけば卒業後も働くはめになり。
あげくオーナーには店畳むから出て行ってくれって言われるし。
どげんかせんといけん!」
(うわあ完全にグチだらけの酔っ払い女だよ。
めんどくさいことになる前に逃げ出そう)
「あ、それじゃ自分はこれで」
「まちなさいよぉ。あんたも逃げ出す気?」
51:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:55:15.25 ID:
Q6VgHWhM0
ずずぃっと女が這い寄ってくる。
勇者に向かって、口から酒臭さが撒き散らされた。
「あら?なかなか可愛い顔してるじゃない」
勇者の顎にすっと手が添えられる。
酔っ払い美人のにじり寄りに
思わずおおぅと唸って赤面しそうになった勇者だったが
いち早くその流れを僧侶が遮った。
「だ、だめですっ!」
52:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:56:05.32 ID:
Q6VgHWhM0
「ん~?あんたは?そうりょぉ?」
ジロジロと僧侶の全身を舐めまわすよう見ていた女だったが
ある一点を見たとき、ピクリと眉をしかめた。
「…なにその凶悪なものは。それでも聖職者なの?」
ムニュ
「ひぁ!?」
54:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:57:08.86 ID:
Q6VgHWhM0
「むぅ~なんなのよこの胸は!ありえないでしょ!
こんなエロスな乳は、聖職者の風上にも置けないわ!
堕落よ破戒よ冒涜よ!」
モニュモニュギュウギュウ
女の手が僧侶の胸をこれでもかこれでもかというほど
強く握り締めた。
法衣の上からでも分かる弾力のある僧侶の胸が
魔法使いの手のひらから溢れ、弾けてしまいそうな程ひしゃげる。
「い、いやぁ~!や、やめてください~」
56:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:58:01.86 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
「なるほどあんたは、街の英雄アルテガの息子ってわけね」
魔法使いは、僧侶の胸に八つ当たりしてすっきりしたせいか
酔も醒めたらしくケロっとしている。
逆に胸を縦横無尽にいじめ抜かれたれた僧侶は
ぐったりと床にヘタリこんでいた。
(なんか面倒な予感がプンプンなんですけど)
57:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:58:32.43 ID:
Q6VgHWhM0
女はそんな勇者の考えを察してか
ニヤリと笑うと言葉を待たず命令をしてきた。
「ちょうど良かったわ。あなたたち私の世界進出の野望に付き合いなさい。
まずはこの田舎大陸から出ることが必要よ。
実は先日から謎の暴風が付近の海上で発生してるらしく、海路での渡航ができなくなっているの。
冒険者たちは今は封印された旅の扉を探しているわ。」
58:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:59:15.34 ID:
Q6VgHWhM0
「私の入手した情報によるとあの川向こうに見える塔のてっぺんに
外の世界に行くための手がかりがあるらしいわ」
「あの塔に食料を運んでるという商人がいるらしいの。
人づてに聞いた話だと抜け道があるらしいわ。
まずはそこまで行くわよ!」
(まあ、シナリオ通りだしな。別にいいけど)
「ふぇぇん…今日はセクハラの日です…」
勇者一行はナズミの塔に向けて旅立った。
その後ろをキラリ眼光を光らせ、追うものがいるとも知らずに。
59:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 21:59:57.46 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
ベーレの街
アリナハンの北西。
大陸の北に位置し、森に挟まれたここは
こじんまりとした閑静な田舎町である。
大陸北部の人々はこの町を中心として生活を営んでいる。
ナズミの塔へ続く抜け道を求めて
勇者一行はこの町に来ていた。
60:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:00:49.33 ID:
Q6VgHWhM0
(途中、スライムや大カラスと戦ったけど
やっぱり俺の能力はゲームキャラ水準になってるな)
銅の剣を振り下ろした時、自分が予想していた以上の手応えを覚えた。
肉を裂き、骨を砕く鈍い感触。
それにも慣れていかねばならない。
この世界では死ぬことは許されないのだから。
「ふぃ~歩き疲れたわ~。今日はこの宿屋で一泊しましょ」
61:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:01:31.93 ID:
Q6VgHWhM0
マントを羽織り、魔法帽子を被り、すっかり魔法使いらしい格好にイメチェンした
酔っ払いバイト女こと、魔法使いが提案する。
酔っ払っていない彼女は快活でキビキビしており
とても付き合いやすい姉御肌という感じだった。
僧侶とも打ち解けたらしく、道中はガールズトークに花を咲かせていた。
(おかげで俺はぼっちだ。会話に入っていけない。ぼっち勇者だ。くそう)
62:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:02:26.36 ID:
Q6VgHWhM0
「魔法使いさん、確認してきましたら、三人分泊まれる空きがあるみたいですよ」
「そう。じゃ決まりね」
(!?まてまて
ドラコムクエスト的には
四人一部屋。まさか同じ部屋で…)
63:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:03:12.01 ID:
Q6VgHWhM0
「うおお鼻血があああ」
「どうしたのあんた?」
「ゆーしゃくん大丈夫?」
(ええ、ええ大丈夫ですとも
ついに俺の冒険が始まる。
そして伝説へ・・・!)
「じゃあ私たちの部屋はこっちだから。
あとで情報集めに酒場に行くわよ」
「ゆーしゃくん、寝過ごさないでね」
「ソウデスヨネ。ホントハワカッテマシタ」
64:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:03:51.53 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
「プッハー!このために生きてるぅ」
なみなみと注がれたビールジョッキを
魔法使いは一息に飲み干した。
テーブルの上に並ぶ、角ウサギの角切りステーキと一緒に
口に流し込んで行く。
「姐さん凄い飲みっぷりっすね」
65:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:04:54.36 ID:
Q6VgHWhM0
「あんたたちも遠慮しないでどんどん飲みなさいよ
さっき売ってきたモンスターの毛皮や採取した資源で
お金はあるのよ」
この世界ではモンスターの角や爪、毛皮や鱗は
魔法効果のある貴重な素材だ。
ゲームではモンスターを倒すとお金が入っていたが
そういう理屈だったんだなあと勇者は一人納得するのだった。
「私は僧侶ですのでお酒は・・・」
「自分も未成年なんで」
66:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:05:33.85 ID:
Q6VgHWhM0
「かぁっー!これだから最近の若いもんは!ノミニケーションって
言葉を知らねえっぺかあ?」
「姐さん。地が出てる」
「と、とにかく。ナズミの塔に繋がる手掛かりを集めましょう」
「ほほう?そなたらナズミの塔に行きたいのかえ?」
勇者たちが振り返った先にはニヤニヤ笑う老人がいた。
67:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:06:12.87 ID:
Q6VgHWhM0
彼の眼光は鋭く
なにやらを不思議な雰囲気纏っている。
ただの老人ではないのが伝わってきた。
「じいさん、ナゾミの塔について何か知ってんのか?」
「にょほほw知っておるとも」
「!教えてください。私たちどうしてもそこに行かないといけないんです」
「そうじゃのう。教えるのはいいんじゃが」
68:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:07:01.62 ID:
Q6VgHWhM0
スッと老人が目の前から消える。
戸惑う間もなく、僧侶の大きな乳房が背後から持ち上げられた。
「!?ぃやぁっ!」
「俺の僧侶に何してんだ!」
「僧侶ちゃんに何してんのよ!」
勇者と魔法使いが老人に掴みかかるが
老人はまるで宙を舞う羽のように
するりと二人の腕を掻い潜る。
そのまま魔法使いの背後に回り込むと今度は魔法使いの控えめな胸を揉みしだいた。
69:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:07:45.80 ID:
Q6VgHWhM0
「うーむ。やはりこっちは物足りないのう」
「エロジジイコロス!」
肘打ちをかわされた魔法使いは
距離を取って炎熱魔法ギラァを放とうとする。
店の中がパニックになろうとしたその時
僧侶が必死に魔法使いを制止した。
「魔法使いさん!お店の中です!」
「ぐぬぬぬ」
70:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:08:35.86 ID:
Q6VgHWhM0
「まあまあそう怒りなさんな。単なる挨拶じゃよ」
そういうと謎の老人は一枚の地図を投げてよこした。
「じいさん、これは?」
「その地図のところに塔に通じる洞窟がある。
行ってみることじゃな」
そのままニョホホホっと笑い声をあげて老人は酒場から消えてしまった。
「あんのエロジジイ!次に会ったらただじゃおかないわ!」
71:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:09:09.42 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
翌日、怪しい老人から渡された地図を頼りに
森を掻き分けていくと確かに洞窟があった。
エロジジイの言うことなんか信用すんな、と魔法使いはいきり立ったが
勇者にはなぜかあの老人を信じたくなる直感めいたものがあった。
「まあとりあえず他に手がかりもないんで」
(それにゲーム的にはだいたいこっちの方だったような気がするし)
発見した薄暗い洞窟を行く。
72:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:09:42.77 ID:
Q6VgHWhM0
洞窟の岩壁には地下水が染み出し
内部は湿潤な空気に満ちていた。
松明の明かりを頼りに進むが暗い洞窟は
底知れぬ闇に繋がっているような言いようのない恐怖を掻き立てる。
突如背後から奇声がする。
73:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:10:22.27 ID:
Q6VgHWhM0
飛びかかってきたコウモリモンスターの突進を交わし
3人は体制を整える。
「メェラ!」
魔法使いの放った火球魔法がモンスターに直撃する。
「バァギ!」
動きが止まったところに僧侶の風魔法が炸裂する。
真空の刃に切り裂かれ、コウモリモンスターは絶命した。
「まったくモンスターも多いし、ジメジメしてるし
ろくな場所じゃないわ」
「あ!出口みたいですよ」
洞窟の先に微かな光明が見えてきた。
74:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:10:51.64 ID:xppjNMIm0
怒涛のマシンガン
75:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:10:58.77 ID:
Q6VgHWhM0
(やれやれやっと出口か)
洞窟を抜けた勇者たちの目の前に
高々とそびえ立つナゾミの塔が姿を表した。
重々しい門を開き、中を覗き込む。
大きな広間が見えるが動くものはなく静かだ。
「行こう」
76:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:12:08.44 ID:
Q6VgHWhM0
細い通路を縫うように進む。
周りくねった回廊やたくさんの階段は侵入者を試しているようだ。
上につながる階段を何度も登り、ついに勇者たちは最上階にたどり着いた。
これまでの扉と比べて特段丁重な作りの大きな扉。
きっとこの向こうに何かがいる。
3人は意を決して扉を押し開いた。
78:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:13:00.62 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
しかし勇者たちの予想に反して中には誰もいなかった。
「だれかここで暮らしてるみたいですね」
室内は丁寧に掃除され、棚には綺麗な調度品が並んでいた。
「ご苦労じゃったのう。勇者どの」
突然の背後からの声。
まるで気配を感じていなかった勇者たちは
虚をつかれ、驚き振り返った。
79:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:13:58.55 ID:
Q6VgHWhM0
「じいさん!」
「エロジジイ!」
「おじいさん、どういうことですか?」
「なに。お主らに渡そうとしてた魔法の鍵をここに忘れてしまってのう
洞窟を1人で抜けるのも面倒じゃし、先にモンスターを倒してもらってたというわけじゃ」
「ずっとついてきてたのかよ」
「じゃあここは」
「ここはわしの別荘じゃよ」
80:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:14:35.38 ID:
Q6VgHWhM0
「ドウデモイイ。エロジジイコロス!」
「ホッホッホッそういう言いますな」
ほれお主らの探し物はこれじゃよ。
封印された旅の扉を解放する鍵じゃ」
「お、サンキューじいさん。それくれよ」
「ふむ。それはよいのじゃが条件がある」
「条件?」
81:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:15:20.86 ID:
Q6VgHWhM0
僧侶がさっと自分の胸を覆い隠す。
魔法使いは全力の閃熱魔法をぶちかます用意をした。
「ホッホッそう心配せんでも大丈夫じゃよ。
なあに簡単じゃ。ワシもそなたらの旅に同行させて欲しいのじゃ」
「ぜっったいいや!」
間髪入れず魔法使いが抗議の声をあげる。
僧侶も不安そうだ。
83:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:15:56.17 ID:
Q6VgHWhM0
「しかし同行させてもらえないなら、魔法の鍵は渡せんのう」
(他にシナリオを進める手立てもねえか)
「しょうがねえな。背に腹は変えられねえし」
「ホッホッホッ。恩に着るぞい勇者どの」
「まあしょうがないですね」
「私は絶対認めないから」
84:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:16:32.87 ID:
Q6VgHWhM0
かくしてじじい遊び人が仲間になった。
その後も遊び人は戦闘中でもろくに戦わず
役に立たなかった。
どうせすぐ飽きるだろうと思っていた勇者たちだったが
どんなに置き去りにしようしてもじじいは勝手についてきた。
やがて勇者たちは考えるのを止めた。
結局、怒る気力もなくなり、放置することになった。
86:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:17:21.26 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
「僧侶ちゃん!」
「あっ!」
バブルスライム?は謎の液を吐いた。
僧侶に謎の液がかかる。
僧侶に1のダメージ。
「このお!」
ピンク色のバブルスライム?に勇者の剣が突き刺さる。
87:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:18:07.29 ID:
Q6VgHWhM0
炎の魔法効果が発動し、バブルスライムを一瞬にして蒸発させた。
「僧侶!大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。毒には侵されてないみたい。
ちょっと足に液がかかっただけだから」
「良かったぁ。それにしてもピンク色のバブルスライムなんて
初めて見たわね。突然変異かなんかかしら?」
89:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:19:07.33 ID:
Q6VgHWhM0
「私も念の為あとで調べてみますね。
さあ行きましょう」
「にょほほっ」
「ああ。もうすぐ街だ。今日はそこで休もう」
ドクン
「・・・?」
ドクン、ドクン
(なに・・・?)
・・・ジュン
(!?)
90:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:19:39.93 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
勇者一行は旅を続け、徐々に魔王城に近づいていた。
敵も手強くなってきたが、なんとか3人(遊び人除く)は団結し
困難な冒険を乗り越えてきたのだった。
ここはアッソラームの街
魔王城に向かう途中にある大きな街の一つだ。
91:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:20:36.95 ID:
Q6VgHWhM0
もともとは華々しい賑わいを見せていた場所であったが、
今は魔王の脅威にあわせて人々が離れていってしまっている。
かつての栄華を思わせる大きな劇場が街の中央に鎮座する。
そこで行われる名物のベリーダンスも踊り手が随分減ってしまっていた。
92:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:21:22.12 ID:
Q6VgHWhM0
「酒よさけー!ってわけで私は酒場に情報収集に行ってくるわー」
魔法使いは久しぶりの大きな街に嬉々として外に駆け出して行った。
遊び人はいつも通り街に着くとどこかに消えてしまっていた。
(あの様子じゃ酔いつぶれコースだな。
あとで迎えにいかないと)
とりあえず勇者は旅の道具を買い出しに行くことにした。
「僧侶、買い出しなんだけど、一緒に行かないか?」
「・・・えっ?」
93:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:22:04.55 ID:
Q6VgHWhM0
ぼっーとしていたのか僧侶の反応は鈍いものだった。
疲れているせいかなんだか体も重たそうだ。
頬がほんのり赤く染まって見えた。
「なあ、なんか顔赤くねえか?風邪?」
勇者の手が僧侶のおデコに添えられる。
「!?」
(ちょっと熱っぽい?)
94:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:22:42.69 ID:
Q6VgHWhM0
「も、もういいからっ!」
勇者の手が僧侶のおでこから引き剥がされる。
(そんなに嫌がらなくてもいいじゃないかよ)
「ご、ごめん。ゆーしゃくん。わ、わたしちょっと調べ物があるから」
「そっか。疲れてるならあんまり無理しないで早めに休めよ」
(あーあ。僧侶に嫌われてんのかなあ、俺)
95:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:23:26.44 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
「にょほほ。勇者どのは、こと女性の事となると意気地がありませんのう」
買い出しを早々に済ませ宿屋に戻ろうとした勇者であったが
珍しく街中で遊び人に出くわした。
この神出鬼没の老人は正直普段から何をやっているのかよくわからない。
「んだよ。じいさん。からかいに出てきたのかよ」
97:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:24:07.57 ID:
Q6VgHWhM0
「ほほっ。そういうつもりはないですぞ。勇者どのにお願いがあってきたのじゃ」
「なんだよ」
「せっかくのアッソラーム。ここにはすごろく場というものがあると聞きます。
ぜひこの老い先短いじじいめにすごろくを体験させてもらえんかと思うてのう」
(狙いは俺のすごろく券か)
「いやまあ別にいいけどさ」
「ほほっ。人々を熱中させるというすごろく、楽しみじゃのぅ」
「じいさん、すごろくなんて単なる遊びだろ?
あんまりのめり込むなよ」
「勇者どの」
98:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:24:54.06 ID:
Q6VgHWhM0
勇者はぎょっとした。
あの遊び人がまっすぐ勇者の顔を見つめてくる。
にこやかに笑っているが、感情が読み取れない。
中庸で霞のように掴みどころがなく、何を考えてるのか分からない。
ただ目だけはひどく透き通っている。
まっすぐに見つめてくるその眼差しは底なしに深そうだった。
「遊びってのは本気でやるものなのです。
本気でやるから楽しいのです」
100:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:25:27.73 ID:
Q6VgHWhM0
勇者がたじろいでいると、遊び人はニマッと笑い
ぴらぴらと一枚の紙を取り出した。
「というわけで。わたくし、これからすごろくにベリーダンスと夜の街を満喫してまいりますw
このすごろく券はゆーいぎに使ってまいりますよぉ」
(あ、俺のすごろく券!
あいつ。いつの間に)
「にょっほほっーwww」
遊び人は走り去ってしまった。
「まったくあいつは盗賊かなんかかよ」
111:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:42:38.00 ID:
Q6VgHWhM0
アッソラームの街灯の灯りが懐かしい故郷の
夜の街を思い出させる。
学校に続く川沿いの道を毎日往復する。
購買でジュースを買い、校舎の中庭でのんびりお昼ご飯。
家に帰ればインターネットで好きな動画を見る。
当たり前の日々。
113:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:48:34.17 ID:
Q6VgHWhM0
なぜか現実の記憶が曖昧なままだ。
母や父は元気にしているだろうか。
「遊びに本気になれ、か
ゲームを本気で楽しんでたのって何歳の頃までだったかなあ」
ゲームに夢中になって過ごしていた
子供の頃を思い出し、ほんの少し切なさを感じる。
119:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:53:03.25 ID:
Q6VgHWhM0
―――――――
―――――
―――
そのころ宿屋には息を荒げて苦しそうに悶える
僧侶の姿があった。
「はぁ…はぁ…んっ…」
しかしその表情はとろんと惚け、頬は赤みを帯び
口元から一筋のよだれを垂らし恍惚とした表情に変わろうとしていた。
熱く火照った自らの秘所を押さえつけ
必死に耐えようとする。
123:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 22:59:52.30 ID:
Q6VgHWhM0
しかし我慢しようとするたび疼きは高まり
僧侶の秘所からトロトロと透明な液体が溢れてしまっていた。
「んっ…くふっ…だ、だめ…」
たまらなくなった僧侶は自らの濡れそぼった股間を覗き込んでみる。
タイツまでははっきりわかるシミを作ってしまっていた。
煩わしそうにタイツを脱ぎ捨てるとショーツからタイツに糸が引かれる。
しっとりと愛液で濡れてしまっている太股に腕を差し込む。
「あっ…んっ…やっぱり、調べた通りだ…あのバブルスライム」
124:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:04:44.36 ID:
Q6VgHWhM0
人間の性欲を掻き立てる催淫効果のある媚液を吐き出すという珍しいバブルスライムだ。
戦闘のあとどうにも疼きが収まらず、原因を調べていた僧侶だったが
足にかかったに媚液が体内に染み込んでしまったらしい。
半日以上もの間、媚液の効果に蝕まれ耐え続けた僧侶の体は
最早限界を迎えていた。
「いや…アソコが、あつい……せつないよぉ…」
125:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:09:42.76 ID:
Q6VgHWhM0
我慢できず、下着の上からそっとアソコに手を這わせてしまう。
「んっぅ!」
自身の軽いタッチだけで、僧侶の大切な場所はひくりひくりと震え
さらなる刺激を求めてしまう。
堪えようとすればするほど、下腹部の疼きは増し
蜘蛛の巣に絡め取られた蝶のように彼女の理性を奪っていく。
(だめ。自分でしても…この催淫効果は治癒できない)
127:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:15:16.10 ID:
Q6VgHWhM0
「はぁ…はぁ…はっぅ…んくぅ」
コンコン
「おーい、そうりょー。調子はどうだ?開けるぞー」
少しの間、迷い逡巡していた僧侶だったが、とうとう勇者に助けてもらう決意を固めた。
128:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:21:59.65 ID:
Q6VgHWhM0
「はぁ…はぁ…」
「お、おい。僧侶、大丈夫なのかよ?」
布団に包まっているが、僧侶は苦しそうに息を荒げていた。
(まさか昼間のバブルスライムの毒が効いてきたんじゃ?)
「おい!僧侶!」
129:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:29:08.00 ID:
Q6VgHWhM0
布団に駆け寄ると僧侶は起き上がったが
その頬は朱に染まり、熱っぽそうだった。
目は焦点が定まっておらず、ぼんやりとしている。
「待ってろよ、今医者呼んできてやるからな」
「はぁ…はぁ…待って!ゆーしゃくん」
134:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:38:08.33 ID:
Q6VgHWhM0
「なんだよ?おまえどう見ても具合悪そうじゃないか
昼間のバブルスライムのせいだろ?だったら早く医者呼ばないと」
「だから!…その、あの、これから治療して、欲しいの」
上目遣いでまっすぐに見つめてくる。
上気した僧侶の顔がなんだか勇者をたまらない気分にさせる。
「なんだよ?治療って」
136:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:46:11.29 ID:
Q6VgHWhM0
「昼間のあれね、催淫バブルスライムなの…」
「なんだそれ?」
「催淫粘液で、誰かをその、エッチな気分にさせちゃうスライムなの」
「え?」
「それで、ね…私今…」
かけ布団を外して出てきた僧侶は下着姿になっていた。
137:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:53:53.53 ID:
Q6VgHWhM0
普段は厚い法衣とタイツに包まれた僧侶の下着が
顕になってしまっている。
「ぁ…んっ…切ないの」
僧侶の可愛らしいブルーのショーツの中央がシミになるほどに
濡れそぼってしまっている。
その愛液が下着から漏れ、滑らかな太腿を伝い
膝下やベッドまでぐっしょりと湿らせてしまっていた。
139:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/14(日) 23:58:46.01 ID:
Q6VgHWhM0
「そ、そうりょ…」
「ふっぅ…この催淫効果は…うぁ…自分じゃ解消できないの
んん…誰かに、してもらわないとダメ…」
ベッドの上から腰をくねらせ、息を乱した僧侶が上目遣いで見つめてくる
僧侶の下腹部からポタリポタリと愛液が滴り落ちる。
「お願い…ゆーしゃくんにしか、こんなこと頼めないの」
140:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:02:57.71 ID:
N4VK9jZQ0
勇者はゴクリと生唾を飲んだ。
あの清楚な僧侶が乱れ、懇願してきている。
「おねがい…触って…ください
144:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:10:18.36 ID:
N4VK9jZQ0
―――――――
―――――
―――
「はぁはぁ…お願いゆーしゃくん、もう私…」
「いいんだな、僧侶?」
僧侶はコクりとうなづき、恥ずかしそうに顔を両手で覆ってしまった。
勇者はベッドの上から僧侶に覆いかぶさり、彼女のショーツに向けて
手を這わせていった。愛液で湿りきった
僧侶の内股をさすりあげる。
「あ…ゆーしゃくん、早くっ。私もう我慢できないのっ」
145:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:14:28.51 ID:
N4VK9jZQ0
「そうだろうな。だってこんなに」
いっきに僧侶のショーツの中央に向かう。
揉みほぐすようにそこに触れるとクチュリと音をたて
透明な粘液が勇者の手にまとわりついた。
「あ、ああっ…はぁっ」
149:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:18:06.07 ID:
N4VK9jZQ0
「僧侶、可愛いけど、そんな声出されると俺も辛いって」
下着をスリスリとこすられ僧侶の大陰唇はぽってりと膨らんでいる。
陰裂をヒクつかせ、その奥からは絶え間なく愛液をトロトロと漏らしていた。
「あ、はっ…ゆ、しゃくぅん」
我慢のたがの外れた僧侶は勇者の手を太腿で強く挟み
離すまいとしてしまう。
150:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:21:19.57 ID:
N4VK9jZQ0
自らの手で僧侶が快楽を感じ悶えている
そのことに健全な青少年の勇者が耐えられるわけがなかった。
「うあ、僧侶…」
思わず自らのいきり立ったモノを僧侶の太腿に押し付けてしまう。
固くしこったそれを柔らかな僧侶の太腿に押し当て
少しでも快楽を得ようと擦り付けてしまう。
「そ、そうだよね。ゆーしゃくんもつらいよね…」
151:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:24:48.97 ID:
N4VK9jZQ0
顔を恥ずかしそうに覆っていた手を解き
すっと僧侶が手を伸ばしてきた。
自らの太腿に押し付けられた勇者の下腹部にそっと触れる。
「うああっ、僧侶それやばいって」
「ん・・・はぁ、ゆーしゃくん続けて
ゆーしゃくんも辛いだろうから私も…」
153:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:29:12.96 ID:
N4VK9jZQ0
勇者のズボンがするりと脱がされる。
ギンッといきり立ったペニスが直接僧侶の暖かな手に包まれる。
ゆるゆるとした手の動きが勇者の射精欲を掻き立てる。
(わたし、おかしくなっちゃってる…)
僧侶は自らが扇情的な行為をしていることを恥じていた。
だが同時に彼の体に触れ、彼の体温を感じていることに喜びも感じていた。
154:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:32:58.12 ID:
N4VK9jZQ0
「んっ…はぁ…ゆーしゃくぅんっ」
勇者の手の動きが早まる。
僧侶の下腹部全体からジュワジュワと快感が染み出す。
粘着く愛液は僧侶の白い尻にまで垂れ落ちてしまっていた。
僧侶の腰がピクっピクっと跳ね、勇者の手に快感の合図を送る。
「あっ、あっ、ゆーしゃ、くぅん、わたしもう…」
155:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:35:23.57 ID:
N4VK9jZQ0
「うあ、僧侶、俺ももう」
無意識に腰を押し上げ、勇者の手に自らの秘所を押し付けてしまう。
少女は浅ましく性欲を貪っていた。
「あぁんっ、あはぅっ、あっあ」
「そうりょ・・・くっ」
157:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:38:21.71 ID:
N4VK9jZQ0
ビクビクと勇者のペニスが震える。
ビュルビュルと勢いよく放たれた白濁液は僧侶のブラを通り越し
首筋と頬を汚していった。
それに呼応するように僧侶も快感に打ち震える。
勇者の手が僧侶のクリトリスをショーツの上からこすり弾いた時
僧侶にも限界が訪れた。
158:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:41:25.93 ID:
N4VK9jZQ0
「あっ、んぅっ!」
ピクンピクンと陸に上げられた魚のように
僧侶は背中を反らせて全身を戦慄かせた。
彼女の体にじゅわじゅわと快楽の波が広がり
やがてゆっくりと引いていった。
―――――――
―――――
―――
160:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:44:47.89 ID:
N4VK9jZQ0
(うーん、やっぱり事情が事情とは言え、まずかったよなあ)
行為が終わってから二人はずっと黙ったままだった。
ベッドの上でお互いの痴態を見せ合うことになってしまったのだから無理もない。
(いくら下着の上からとはいえ、やりすぎちゃったかなあ
さっきから僧侶はずっと向こうを向いたままこっちを見てくれないし
僧侶怒ってるのかなあ…怒ってるよなあ)
(はあぁぁ…私ったらなんてことを…)
163:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:47:09.43 ID:
N4VK9jZQ0
一方で僧侶は羞恥に悶えていた。
(あんなはしたない格好…ゆーしゃくんの顔見れないよぉ…)
行為中の自分のことを思い出してみる。
あられもない姿を晒して、秘所を濡らし
甘い声で勇者に快楽をねだってしまった。
(ああああ、こんなの許されないよ。ごめんなさい神様。私は汚れてしまいました)
165:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:49:21.45 ID:
N4VK9jZQ0
勇者の手が自分に触れた感触を思い出す。
(でもゆーしゃくんに触れてもらえて嬉しかったかも。それに気持ち、よかった)
(…って私何考えてるのよ!?ダメダメっ!)
一通り恥ずかしさに感じ入った後、僧侶は急に不安になった。
(こんなはしたない娘。ゆーしゃくん嫌いにならないかな…)
166:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:52:30.74 ID:
N4VK9jZQ0
意を決して勇者の方を覗き込むとちょうど目がばっちりとあってしまった。
お互い恥ずかしさで顔を真っ赤に染め上げる。
なんとかこの気まずい空気を打破しようと勇者はとりあえず口を開いた。
「あ、その、なんだ?とりあえず"治療"は終わったんだろ?」
「え?あ、うん…」
「じゃ、じゃあ俺部屋に戻るからさ」
168:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:55:40.89 ID:
N4VK9jZQ0
気恥ずかしさのあまり勇者はあさっての方に視線を泳がせた。
そのことが僧侶の不安をますます大きくしていく。
(ゆーしゃくん・・・どうして私の方、見てくれないの?)
(これ以上僧侶と一緒にいたらおかしくなっちまいそうだ)
僧侶は目に涙を蓄えて不安に耐えていた。
重苦しい雰囲気が勇者にも伝わってしまう。
(これ以上僧侶に嫌な思いをさせたくないな・・・)
169:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 00:58:28.07 ID:
N4VK9jZQ0
勇者は部屋を出て行くことにした。
僧侶の方を振り返れない。
ドアが閉まる音がやけに無機質に二人の耳に響いた。
「ゆーしゃくんに、嫌われちゃった…」
僧侶の目から一筋の涙がこぼれた落ちた。
170:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 01:00:27.55 ID:
N4VK9jZQ0
前半おしまい。寝ます
もしスレ残ってたら後半今日書きます
175:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 01:22:16.81 ID:AwhAxA0z0
とても応援しているぞ
172:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/15(月) 01:02:47.61 ID:BYDJCGVu0
乙
嫌いじゃないよ
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