( ^ω^)百鬼夜行のようです 【第一話 百伶百利な御仁の元へ。前編】

2010-08-16 (月) 13:07  ( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   0コメント  
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まとめ→( ^ω^)百鬼夜行のようです【まとめ】

1 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:36:37.12 ID:s1tvVy26O



 しゃんしゃらしゃんしゃら、鈴を振る。
 とたとんとたんた、地を蹴って。

 きゃらりきゃらりら、人の声。
 ざかざしざかざか、草履が鳴く。


 狐の面を被った男がひとり、くらりくらりと踊っては、扇を片手に声高らかに何かを叫ぶ。

 其れは丸で唄の様に、しゃんと通る拍子木の様な声で。


「さあさ さあさあ皆々様! 寄るがよいよい 見るがよい!」

「只のけぐるいじゃあ御座いやせん この私 なんと狐に御座ります!」

「さあさ さあさあご覧あそばせ皆々様! 狐について歩いておいで!」




6 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:39:53.34 ID:s1tvVy26O

「初めに見えるは狐の嫁入り、お次に見えるは狂い踊りし鎌鼬!」

「正体不明は狢の男、首を斬られた祟り神たる犬神御仁!」

「雷操るは金色なる怪手物 魅せるは花魁女郎蜘蛛! 愛しき可愛し蛇女!」

「かたわの天狗に哀れな覚! 血飲むは樹木子、飲ませし烏、喰らい尽くすは悪鬼羅刹に魑魅魍魎!」

「嗚呼、見目麗しきはきらびやかなる女達! 身の毛も弥立つ怪手物共の大行進!」

「獣に蟲に無機物に、幽霊、人間、なりそこない!」

「悲しい女に哀れな男、人も妖怪も入り交じり、百鬼夜行が始まるよ!」

「さあさ さあさあ寄っておいで見においで! 狐についてこっちへおいで!」

「両のおめめを見開いて、その目へ焼き付けてご覧よ百鬼夜行!」

「さあさ さあさあ狐についてこちらへおいで!人も見られる百鬼夜行を見においで!」





12 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:42:32.09 ID:s1tvVy26O

「アア そいつは違うよお嬢ちゃん、それは狐じゃありゃしない」

「そいつは鳥でも獣でもない浮気者、蝙蝠についてっちまえば堕ちるは彼岸!」

「その蝙蝠のおぞましい程の残虐非道さを教えてあげよう、教えてあげようそれの行い!」

「好いた女を閉じ込めて、その子を引き裂き奪い去り、とある夫婦をも引き裂いた!」

「悲しい悲しい赤子を拾い、歪み壊れ綻びた魂へと育て上げた!」

「嗚呼それは罪深き蝙蝠! そんなもんについていってはいけないよ! 良い子良い子だこちらへおいで!」

「こっちこっちさ、アアそうそう、狐について歩いておいで!」

「こっちゃあ極楽はらいそ常世の国! 現にゃありゃせん悦楽ばかり!」

「そっちは彼岸だ地獄だ針のむしろだ! 焼けた土をなめさせられる前にこちらへおいで!」

「さあさ さあさあ始まるよ! 世にも可笑しな妖怪たちの大行進!」


「さあ、百鬼夜行を見においで!!」




17 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:45:29.05 ID:s1tvVy26O

 ててはは居らぬは幼き男児。
 お山の上で泣いておられた哀れな赤子。

 赤子が何処から来たのかも、
 赤子が何方のお子なのかも、
 だあれも知らず、知るすべもなく。

 ただただ赤子が泣いているので、優しき夫婦がその子を拾った。

 この子の親になりましょう。
 この子の名前は何にしましょう。
 この子が幸多く生きられますよう。
 我らがこの子を育てましょう。

 ほうら、たかいたかい。
 そうら、良い子だね。

 皆がお前を愛してくれるよ。
 皆がお前を認めてくれるよ。
 我らの息子と皆が愛するよ。
 お前と血は繋がらずとも、皆がお前の親だから。

 そうら、良い子だ、もうおやすみ。
 坊やよいこだねんねしな、お山の上の可愛いお子よ。

 我らの可愛い可愛い息子よ。
 坊や、よいこだねんねしな。
 足らぬお腕で、抱いてあげるよ。




20 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:48:22.07 ID:s1tvVy26O



 肉付きのよろしい男が、ぼんやりと縁側から空を見上げていた。
 目の前にある赤と白の、椿を模して作られた和菓子にはかじられた跡。

 それから手を離し、熱い茶の注がれた湯飲みを片手に息を吐く。
 赤茶けた癖のある髪が、ふんわりと揺れた。


「僕は、思うお」


 ぽつんと、男が呟く。
 呟きを聞くのは、机を挟んだ向かい側で寝そべる浴衣の男。

 青鼠色の浴衣を着た男はもそりと身を起こして、瓦版から向かいの男へ顔を向ける。
 相変わらず外を見ている男に、首を傾げて問いかけの言葉を口にしようとした。


「あやかしは、減りゆく」


 しかしその言葉は口から発せられる前に、癖毛の男に遮られた。





26 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:51:04.67 ID:s1tvVy26O
 生成りの着物に焦げ茶の羽織。
 首から小さな竹筒を下げて、茶を一つすする。

 そうしてまた、少し置いてから口を開いた。


「減りゆくあやかし、時はながれし、僕らは置いてゆかれる」


 何を言いたいのかと、青鼠色の浴衣の男は眉を寄せる。
 頭に巻いた手拭いを外して、足をただし、正座をする。

 真面目に話を聞こうと正面を向いた浴衣の男に、癖毛の男は顔をそちらへ向けた。


「かなしいお、減りゆくあやかしが
 僕らの家族が、少しずつ、消えてゆく気がして」


 僕はかなしい、と更に続け、俯く。
 それを見た浴衣の男は膝に手をやり、やっと口を開き、言葉を吐いた。


「しかし坊っちゃん、時が流れりゃ、あやかしは人へとうつりかわる
 そいつは時と、時代と同じ、あやかしが人となる事を求めたんだ」




31 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:54:06.41 ID:s1tvVy26O

「解ってる、解っているお、だって、この町はあやかしが人を求めて集う場所
 ここが、平穏を求めるあやかしにとって、極楽とも言える場所だと」

「だったら、」

「それでも、かなしいんだお」

「…………」

「人を求めたあやかしが、人となる
 それはきっと、祝福すべき事だと理解はしているお」

「……それでも、納得は出来ねェか?」

「納得も、しているはずだお、けれど心がそれを拒絶するんだお」


 寂しさと云う利己的な感情が、と繋げ、そっと湯飲みを机に置いた。
 ことん、と音をさせてから、薄い湯気がふわりと舞った。




35 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:56:07.53 ID:s1tvVy26O

「全てのあやかしが人となるまで、そう、遠くはないはず」

「……ああ、だな」

「僕は思う、あやかしがあやかしを捨てる事が悲しいと。故に、僕は考えた」

「?」

「最後に、あやかしがあやかしである内に、この魂にその光景を刻み付けようと」

「つまり、?」

「僕は成そうと思う、」



 男は着物の袖に手を入れて腕を組み、向かいの男へにっこりと笑みを見せた。



「百鬼夜行を、成そう」



 その笑顔は、ひどく朗らかであった。




41 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/30(土) 23:58:06.02 ID:s1tvVy26O





     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【第一話 百伶百利な御仁の元へ。 前編】



 さあさ、さあさあ、はじめよう。



 妖怪共の散華が前に

 其の魂へ、刻み付よう

 百鬼夜行。




43 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:00:13.54 ID:EQ4NiwvpO

('A`)「…………寝言は寝てる時に言えよ、坊っちゃん」


 青灰色の浴衣を着た、どこか気だるそうな男がそう言い放った。
 溜め息混じりに頭をがしがし掻いて、正座から胡座に体勢を変える。

 それを見て、むっとした様に頬を膨らませる男。
 まるで焼いた大福だと、頭の端で思った。


( ^ω^)「何でだお? そんなに、無茶な事かお?」

('A`)「あのな、百鬼夜行はそう簡単に出来る事じゃあねェのよ」

( ^ω^)「わかってるお、日に時、妖怪が多く必要だと」

('A`)「坊っちゃんよ、百も知り合い居んのか?」

(;^ω^)「お」

('A`)「この町は小さかねェ、百以上の妖怪だって居るだろうさ
   だがよ、そいつら全員が百鬼夜行を手伝うと思うか?」

(;^ω^)「お……そりゃ、中には手伝いたくないってのも居はするだろうお……」

('A`)「……」

(;^ω^)「……」




47 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:02:13.83 ID:EQ4NiwvpO

 重ッ苦しい沈黙に、坊っちゃんと呼ばれる男は俯いてしまわれた。

 その向かいに座る男も、坊っちゃんをいじめたい訳では無いだろうが
 しかし現実的に考えれば、百鬼夜行と云うのは、なかなかどうして簡単な物ではありゃあしない。

 しょんぼりと俯く坊っちゃん。
 暫くそれを黙って見ていたが、良心がしくしくと痛み始めたので、男は口を開く。


('A`)「……まァよ、無理って訳じゃあ、無いだろうけどよ」

( ^ω^)「おっ」

('A`)「どうしても見てんなら、やり遂げるってんならよ、俺も手伝うさ」

( ^ω^)「ほ……本当、かお?」

('A`)「ったんめェだろうが、俺を何だと思ってやがんだ」

( ^ω^)「甘やかしいのどくお」

('A`)「喧しいわ甘ったれが」


 坊っちゃんと、どくおと呼ばれた男が暫し顔を見合わせて、
 に、と楽しそうに笑ってみせた。




51 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:04:42.90 ID:s1tvVy26O

 この町は、人とあやかしが共存する町。
 安息を求める妖怪が集い、妖怪を捨てて人となりて生きる場所。

 大きい訳ではない、けれども小さい訳でもない町。
 此処の人間は妖怪を嫌わず、人として迎え入れる。
 妖怪と云えども、その心は優しく、平穏だけを求め生くるのだ。

 とは云え、全ての妖怪が妖怪を捨てたい訳でもなく。
 優しくお人好しな妖怪共ではあるのだが、求むは平穏、人となる事を望まぬ者もそりゃあ居る。


 甘く優しいだけではない、苦悩に苦痛も溢れる町。

 その町の大地主、の、息子。

 それがあの、大福餅の様にふやけた笑顔が特徴的な男。


 妖怪を愛してやまない、坊っちゃん、その人である。


 お人好しで甘ったれ、酒も飲まず煙草も呑まぬが甘味を好む大の男。
 それが、町でも有名な愛され者の坊っちゃんなのだ。




53 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:06:33.72 ID:EQ4NiwvpO

 生成りの着物に焦げ茶の帯、焦げ茶の羽織で赤茶けた癖毛。
 首から小さな竹筒下げて、手には何時でも一面の扇子。
 人の良さそうなふやけた笑顔は、大福と云うに相応しい。

 体格はやや太め、年齢は二十やそこらではあるのだが、顔だけを見ると幼い印象を受ける。
 身長は高めだが、余り大男と云った雰囲気は無く。

 それが内藤と云う姓を持つ、坊っちゃんの姿形。
 少々変わった言葉使いは柔らかく、耳に優しい物である。


( ^ω^)「さ、てと……それじゃ、先ずは何から始めるべきかお?」

('A`)「そうさな、取り敢えずは情報収集だろうよ」

( ^ω^)「どんな妖怪が何処に居るか、手伝ってはくれそうか」

('A`)「ああ、百鬼夜行は俺も初めてだからな」

( ^ω^)「じゃあ、知恵を貸してくれそうな人の所に行くかお?」

('A`)「だァな」




58 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:08:41.36 ID:EQ4NiwvpO

 よっこいしょ、と坊っちゃんが立ち上がり、ぱちんと音をさせて扇を閉じた。
 閉じたそれを帯に差し込むと、二人が居る間から廊下へ向けて声を上げた。


( ^ω^)「しょぼん、しょぼん! 出掛けるおー!」


 『むっきゅう!』


 坊っちゃんの声に直ぐ様反応した、何やら小動物な様な声。
 それは音もなく廊下を進み、するりと襖の間をすり抜ける。

 ぽふん、と坊っちゃんの胸まで飛んできたのは、襟巻きによく似た姿のあやかし。


(´・ω・`)「むきゅー!」


 ふかふかと柔らかな毛並みを持ち、むきゅむきゅと甲高く鳴くは管狐。
 坊っちゃんの首から下げた竹筒を住処とするそれは、しょぼんと云う名を持つ愛玩動物。

 名の通り、しょぼんはしょんぼりと少し下がった麿眉をしており、何処と無く愛嬌がある。

 そしてすりすりと柔らかな毛を擦り付ける様に坊っちゃんへ頬擦りし、首にふんわりと絡み付いた。




61 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:10:43.52 ID:EQ4NiwvpO

('A`)「相変わらずだなァ……ッたく」

( ^ω^)「まあまあ、甘ったれのしょぼんも可愛いおー」

(*´>ω<`)「むきゅん!」

('A`)「余り甘やかすなよ、一応は飼い主なんだから」

( ^ω^)「おー……」

(´・ω・`)「むきゅー?」

(*^ω^)「かいぐりかいぐり可愛いおー」

(*´>ω<`)「むきゅきゅん!」

('A`)

('A`)「お、俺だってふさふさしてれば!」

( ^ω^)「喧しいおアジの開き」

('A`)「喧しいわ豆大福」




64 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:12:24.89 ID:EQ4NiwvpO

 あやかしがあやかしを捨て、平穏を求める。
 平穏を求めるあやかしは、人畜無害で心優しい。
 人を傷付ける事はなく、その優しさ故に、あやかしはあやかしを捨て行く。

 あやかしとして生きぬあやかしは、人となるしかない。
 それが町のあやかしの望みであろうとも、消え行くあやかしの魂は哀しきもの。


 町の中のあやかしは、人畜無害で優しい者共。
 しかし町の外にも、あやかしは存在する。


 町の外のあやかしは、秩序もなく荒くれ者で悪たればかり。
 人を傷付け人を拐い、場合によっちゃあ町のあやかしも拐う事がある。
 町と外で、敵対とまではいかないが、対立しあうあやかし共。

 時には町へ外のあやかしが飛び込んで悪さをする時もあるが、
 そんな時は、あやかしを残し持つあやかし共が退治して外に放り出す。


 あやかしは、決して良い子ばかりな訳じゃあない。




69 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:14:25.79 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「ん、しょぼんまた何か作ってたのかお?」

(´・ω・`)「むきゅ」

( ^ω^)「この匂いは……ぜんざい!」

(´・ω・`)「むっきゅん!」

( ^ω^)「おっおっ、当たりかお! しょぼんの甘味は美味いからおー」

('A`)「落ち着け、俺が作る方が美味い」

( ^ω^)「お前さんが落ち着けお」

('A`)「しょぼんに作り方を教えたのは俺だ、俺のが美味いに決まってらァよ」

( ^ω^)「お前さん最近は台所に立とうとせんお」

('A`)「寒いの」

( ^ω^)

('A`)

( ^ω^)「しょぼん、水風呂の用意を」

('A`)「止めてッ!」




75 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:18:13.64 ID:EQ4NiwvpO
( ^ω^)「お前さんは鬼なのに、何でそう弱々しいのかお……」

('A`)「風邪防止って何時でも羽織着てる奴に云われたかァねェよ」

( ^ω^)「うっさいアジの開きの骨」

('A`)「存在が疎ましいってか」

( ^ω^)「しかし無いと寂しいものです」

('A`)「嬉しい様で嬉しくねェな」


 どくおは頭に巻いた手拭いを外して、前髪に隠された生え際の辺りを撫でる。
 痩せた指先に当たり、前髪から顔を出したのは小さな二つの突起。

 生え際の左右から生えるのは、小さくも確かな角。
 白に近い薄い茶をしたそれを指先でつついてから、髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜて隠した。


('A`)「大体、俺ァ鬼は鬼でも、餓鬼だ。そこまで強かァ無いんだよ」

( ^ω^)「お……あ、その……どく、」

('A`)「おら準備しろ、出掛けンぞ」

( ^ω^)「おっ、は、把握だお!」




77 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:20:31.39 ID:EQ4NiwvpO

('A`)「不本意だが裏の神社行くぞ、オラオラさっさとしやがれ」

(;^ω^)「ちょ、蹴るなお! 蹴るな! 僕一応はお前さんの主人!」

('A`)「知らん」

(;^ω^)「ひでえお!?」


 どくおに足を蹴られ、坊っちゃんが慌てて外着の羽織を取りに立ち上がり、部屋を出て行く。

 その後ろ姿を見送ってから、どくおは胡座をかいて再び頭をかき混ぜる。
 深々と溜め息を吐いてから、手拭いを頭に巻き直した。


 早く、人間になりたいもんだ。

 どくおの小さな呟きに、しょぼんが近付き、薄い頬へ額を擦り付けた。
 その額を細い指で撫でてやり、少しだけ笑う。


('A`)「……あんがとよ」

(´・ω・`)「むきゅ……」

('A`)「…………明日は、俺が菓子作るわ」

(´・ω・`)「……むっきゅん」




82 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:22:33.99 ID:EQ4NiwvpO


从 ゚∀从「で?」

( ^ω^)「お知恵拝借に参りましたお」

('A`)「百鬼夜行の手伝いも頼みに来た」

从 ゚∀从「一応云っておくがね、私は人間で…………」

(;^ω^)「はい百鬼夜行についてのお知恵拝借ゥウーッ!!」

从 ゚∀从「私は巫女と云えど一応は人間なのだよ、知恵と云われてもねエ」


 二人がやって来たは、裏手にある一つの神社。
 そして目の前に要るのは、長い赤髪を一つに纏め、前髪で左目を隠す巫女。

 巫女の名は、はいん。
 顔も声も中性的で、薄っぺらな体つきからも性別を特定し難い。
 巫女装束だから巫女と分かる程度であり、煙管を片手に賽銭箱に腰を下ろす姿だけでは巫女には見えず。


(;^ω^)「え、ええと……そこを何とか姐さん……」

从 ゚∀从「私は長く生きてるとは云え人間だ、君達の力になれるかイ?」

( ^ω^)「そ、その長生きから得られたお知恵を僕らにも分けて欲しいんですお……」

从 ゚∀从「まア構いやしないがね、それくらいは」

  『巫女ォォオオオオオッ!! 居るかァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

(;'A`)「耳いてェッ!」




88 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:26:04.75 ID:EQ4NiwvpO

(;^ω^)「な、なんだおっ!?」

从 ゚∀从「アア、煩いのが来たね」

(;'A`)「この煩さァ……」

ノパ⊿゚)「巫女ォォオオオオオッ!!」

从 ゚∀从「アアはいはい、此処に」

ノパ⊿゚)「貴様ァ! 今煩いって云ったかッ!?」

从 ゚∀从「うっさい」

ノパ⊿゚)「堂々と云われたァッ!!」

(;'A`)「まァ待て……俺らが先に話してたんだ……」

ノパ⊿゚)「何だ!? 聞こえんぞォッ!!」

(#'A`)

(;^ω^)「ま、まあまあ……」

(#'A`)「煩ェ上にうざったらしい……これだから雌は……」




90 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:28:19.18 ID:EQ4NiwvpO

 三人の間に、大声を上げて入って来るは、これまた赤髪の女。
 しかしはいんよりは小さく幼く、動きやすそうな黒い装束を纏っている。

 がさがさと草むらから飛び出したその女を見て、各々が呆れた様な反応を見せる。


从 ゚∀从「で、ひいとは何の用だイ? 煩い」

ノパ⊿゚)「箒が折れたァッ!!」

从 ゚∀从

从 ゚∀从「何本目だイ?」

ノパ⊿゚)「今月七本目!!」

从 ゚∀从「一日に何本折れば気が済むんだイ君は」


 このひいとは、はいんの元で働くあやかし。
 怪力の、蟻の妖怪である。

 根は真面目で働き者なのは良いのだが、怪力故に神社の備品を毎日の様に破壊していた。

 そして、




92 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:30:28.47 ID:EQ4NiwvpO

从 ゚∀从「…………店賃、待ってくれるかなお坊っちゃん……」

(;^ω^)「……待ちますお」

从 ゚∀从「……アア、百鬼夜行だったね……私に出来る事ならば手伝うさ……」

(;^ω^)「あ、有り難いお……」

(;'A`)「大丈夫かよ……」

从 ゚∀从「ははっ……餓鬼にまで同情されるとは、私も落ちた物だねエ……」

(#'A`)「この糞女ァ」

从 ゚∀从「女嫌いが変に気を遣うと気味が悪いよ」

(#゚A゚)

( ^ω^)「喧嘩したら店賃取り立ててどくおを川に投げ込むお」

从 ゚∀从「済まない、つい遊んでしまった」

(#'A`)「おま、遊んで……」

( ^ω^)




94 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:32:19.12 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「ひいと、百鬼夜行を手伝ってくれんかお?」

ノパ⊿゚)「構わんッ!!」

( ^ω^)「有り難いお、取り敢えずこれで箒を買ってきなさいお」

ノパ⊿゚)「うむッ!!」

( ^ω^)「その前にその二人を境内から階段の下まで投げてくれお」

从;゚∀从「ちょ、ま、悪かったすまなかったごめんなさい!」

(;'A`)「ごめん本当に悪かったごめん!」

ノパ⊿゚)「投げるぞォォオオオオオッ!!」

从;゚∀从「待て待て待て待て待ってくれ賜え!?」

(;'A`)「餓鬼じゃ蟻の怪力には勝てねぇえええええ!!」

( ^ω^)「ひいと、取り敢えず下ろすお」

ノパ⊿゚)「うむッ!!」

ノパ⊿゚) チェッ




96 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:34:27.02 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「次に喧嘩したら、投げて貰うお」

从;゚∀从「あ、アア……すまなかった……」

(;'A`)「久々に戦慄したぜ……」

( ^ω^)「しょぼん、明日も菓子をたのむお」

(´・ω・`)「むきゅ?」

(;'A`)「ごめんなさいィッ!?」



( ^ω^)「で、これから妖怪達に協力を仰ぎに行きたいんだお」

从;゚∀从「ど……どこから行けば良いか、かイ……?」

( ^ω^)「だお、顔馴染みと云えどいきなり行っても迷惑だろうしお」




98 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:36:04.44 ID:EQ4NiwvpO

从 ゚∀从「何、君の好きな所に行けば良いじゃアないか」

( ^ω^)「お? だから、」

从 ゚∀从「ほら、君のよく行く」

('A`)「ああ、甘味処か」

从 ゚∀从

('A`)+

从#゚∀从


 どくおとはいんは、仲が悪い。


( ^ω^)「甘味処……」

( ^ω^)

(*∩ω∩)キャッ

 _,
( 'A`)

从 -∀从=3




102 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:38:11.75 ID:EQ4NiwvpO

(*^ω^)「よ、よしじゃあ甘味処から行くお!」
 _,
( 'A`)「……おう」

从 ゚∀从「私はお勤めがあるからね、手が必要ならまたおいで」

( ^ω^)「おっ、有り難うだお、はいんの姐さん!」

从 ゚∀从「アアはいはい、またね」


 手を振って、巫女と神社から別れを告げる。
 坊っちゃんは何処かうきうきした顔で、どくおはそれを見てげんなり顔。

 首にしょぼんを巻いて、坊っちゃんは軽い足取りで階段を駆け降りて行き


(; ω )そ「あでっ!?」


 転んだ。




103 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:40:07.21 ID:EQ4NiwvpO

(;'A`)「坊っちゃんよォ……お前、がきじゃあねんだから……」

(;´ω`)「お、お恥ずかしいお……」

(;'A`)「はしゃぎ過ぎだ、ッたく」

(;´ω`)「すまんお……」

('A`)「ほら怪我ァねぇか? 行くぞ」

( ^ω^)「お……大丈夫だお、行くお!」


 目的地である町一番の甘味処を目指し、二人並んで歩き出した。

 膝を少し擦りむいたが血は出ていないし、何処も痛みはしない。
 それよりも、こうして並んで歩く事が、道行く人々を目で追う事が楽しくて。

 人や妖怪が入り交じり、其処らじゅうを歩いている。
 それを見るのは楽しくて、何処となくわくわくする物で。

 坊っちゃんは幼い頃から、道端に座り込んで歩く人々を見るのが好きだった。




106 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:42:50.64 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「しかし、町も賑やかになったおー」

('A`)「だァな、昔はもちっと静かだった」

( ^ω^)「賑やかなのも良い事だお?」

('A`)「ああ、活気があるって事だしな」

( ^ω^)「だお、人いっぱいは楽しいおー」



人il.゚ヮ゚ノ人「ねぇねぇ見て、あれ可愛いわ!」
  _
( ゚∀゚)「歳考えたらどうよ」

人il#.゚ヮ゚ノ人「お坊っちゃん……わむて怒るわよ」
  _
( ゚∀゚)「本当の事だろーが、わむて幾つよ」

人il#.゚ヮ゚ノ人「お坊っちゃん……」




109 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:44:35.66 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「お、あれ美味そうだお」

('A`)「俺が作る方が美味いしこれから甘味処に行くんだぞ」

( ´ω`)

('A`)「しょぼくれても駄目だ、おら余所見してねェで行くぞ」

(;´ω`)「ひ、一つだけ……」

('A`)「駄目だっつうに」


  _
( ゚∀゚)「しかし、賑やかなもんだな」

人il.゚ヮ゚ノ人「ね、羨ましいわこんなに楽しそうなんて…………妬ましいわ」
  _
( ゚∀゚)「止めろわむて、あれ食うか」

人il.゚ヮ゚ノ人「あら、美味しそう……ごへいもち、ですって! 食べてみましょっ!」
  _
( ゚∀゚)「へいへい、二本くれよ…………っと!?」

(;^ω^)「おっ!?」




112 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:46:20.12 ID:EQ4NiwvpO
  _
(;゚∀゚)「いって……ンだぁ?」

(;^ω^)「お、す、済みませんお! お怪我ありませんかおっ?」
  _
( ゚∀゚)「おう、そっちは大丈夫か?」

( ^ω^)「はいですお、済みませんでしたお」
  _
( ゚∀゚)「俺も道の真ん中に立ってたんだ、気にすんなや」

( ^ω^)「有り難う御座いますお、失礼しますお」
  _
( ゚∀゚)「おー」



(;^ω^)「あ、焦ったお……恥ずかしいお……」
 _,
( 'A`)「だァから余所見すんなつったんだよ! 阿呆が!」

(;´ω`)「ご、ごめんなさいお……」
 _,
( 'A`)「五平餅くらい俺が焼く!」

(*´ω`)




114 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:48:24.88 ID:EQ4NiwvpO

人il.゚ヮ゚ノ人「大丈夫? お坊ちゃん」
  _
( ゚∀゚)「おー、平気」
   _,,
人il.゚-゚ノ人「もう、お坊ちゃんにぶつかるなんて……」
  _
( ゚∀゚)「謝ってたしどうでも良いだろーが」
   _,,
人il.゚-゚ノ人「でもぉ……」
  _
( ゚∀゚)「餅食えや餅、焼きたてだ」
   _,,
人il.゚-゚ノ人「むー……いただきます……」
  _
( ゚∀゚)「…………」

人il*.゚~゚ノ人「むぐぐ……ん、おいひーっ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、うめーな…………何か、見覚えあったなさっきの」

人il*.゚~゚ノ人「むぐ?」
  _
( -∀-)「何でもねー」




116 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:50:10.40 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「……」

('A`)「あん? どした、坊っちゃん」

( ^ω^)「お、何でもないお……ただ、なんか」

('A`)「?」

( ^ω^)「さっきの人、見覚えがあった気がして……」

('A`)「そうか? 俺ァ初めて見る顔だったけどな」

( ^ω^)「おー、じゃあきっと気のせいだお、どくおが知らないなら僕が知る筈無いお」

('A`)「んだな、ほら店着いたぞ」

(*^ω^)「お!」
 _,
( 'A`)


 少し先に見える甘味処を見つけると、坊っちゃんは嬉しそうに駆け足で向かった。

 その胸にもやもやと蟠っていた何か等、もう忘れた様に。




117 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:52:21.47 ID:EQ4NiwvpO

 甘味処にしては大きな店構え、店先の長椅子にも店の中にも客が入り賑わっている。
 店で働くは可愛らしい娘ばかりで、誰もが看板娘。

 店の名は、可愛屋。
 女手一つで育て上げたその店は、今や町一番の甘味処。

 店主たる女は訛りの強い言葉に気の強い性格で、姿は歳を感じさせない愛らしさ。
 しいて挙げる特徴と言えば、その腕の数と飼う妖怪。


o川*゚ー゚)o「ん、いらっしゃいな内藤の坊っちゃんに鬼っ子ちゃん、よう来たねぇ」

( ^ω^)「おっおっ! こんにちはですお、きゅう姐さん!」

('A`)「よう、邪魔するぜ」

o川*゚ー゚)o「珍しいやないの、二人で来るやなんて」

('A`)「今回はただの客じゃあねェからな」

o川*゚ー゚)o「何や、店の味でも盗みに来たんか?」

('A`)「いや俺のが美味いから」

o川*゚ー゚)o




118 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:54:09.33 ID:EQ4NiwvpO

 坊っちゃんとどくおに話し掛けたのは、焦げ茶の髪に可愛いかんばせ、四本腕の女店主。
 きゅうと呼ばれたその店主は、どくおの頬を引っ張りながら微笑んだ。


o川*^ー^)o「こちとら本職や、遊びで菓子作ってんちゃうんや坊主」

<;'A`)「すんやひぇんすんやひぇんいひゃいっす」

o川*^ー^)o「これでおまんま食って店の娘らにお金払てんねん、滅多な事云うんは止めてもらおか」

<;'A`)「ごえんらひゃいもういいまひぇん」

ミセ*%ー゚)リ「あ、内藤さんらっしゃいませ! ご注文は?」

( ^ω^)「お、みどりちゃんかお、取り敢えず団子頼むお」

ミセ*%ー゚)リ「みせりだから、みどりじゃないから、団子一丁ー!」

( ^ω^)「みどりちゃんは何時も元気だおー」
  _,
ミセ*%-゚)リ「みせりだっつうに、つかどくおさんほっといて良いの?」

( ^ω^)「構わん、やれ」




121 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:56:36.10 ID:EQ4NiwvpO
ミセ*%ー゚)リ「珍しいねー内藤さん、どくおさん連れてくるなんて」

( ^ω^)「そんなに珍しいかお?」

ミセ*%ー゚)リ「来る度にああやって姐さんにどつかれてるじゃん、だからあんま連れてこないんでしょ?」

( ^ω^)「どくおはちょっと阿呆なんだお」

ミセ;%ー゚)リ「何で連れてきたの……」

( ^ω^)「お、それがちょいと用事があって」

ミセ*%ー゚)リ「用事? お嫁さん貰いにきたの?」

(*´ω`)" ビクッ
  _,
ミセ;%д゚)リ「否定しようぜ」
 _,
( 'A`)「頼み事があって来ただけだ」
  _,
ミセ;%д゚)リ「うわっ、どくおさん顔怖ッ」
 _,
(#゚A゚)
  _,
ミセ;%д゚)リ「更に怖ァッ!?」

o川*゚ー゚)o「みどり、遊んでないで仕事戻り」
  _,
ミセ;%Д゚)リ「姐さんまでみどり呼ばわり!? わかりましたよもう団子焼くよ!!」




122 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 00:58:43.84 ID:EQ4NiwvpO

 緑の髪をして、手拭いで右目を隠した娘っ子が店の中へと戻って行く。
 そして入れ違いに、一人の娘が団子を片手に店から出てきた。

 きゅうに団子を渡そうとすると、お前が行けと微笑まれて娘は首を傾げる。

 店へ戻って行く四本腕の背中を見送って、団子を渡す客を探すと
 娘は少しだけ驚いた顔をして、僅かに笑った。


ξ゚⊿゚)ξ「お待たせしました内藤さんどくおさん、お団子です」

(*^ω^)「お! つん!」

('A`)「よう、蟒蛇娘」

ξ゚⊿゚)ξ「お今日は、今日はお揃いなんですね」

(*^ω^)「お! はいんの姐様のとこから来たからお!」

ξ゚⊿゚)ξ「はいんさん? 何かあったんですか?」

('A`)「ああ、ちょっと相談にな」

ξ゚⊿゚)ξ「?」




123 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:00:08.58 ID:EQ4NiwvpO

 つんと呼ばれた娘は、黄色い巻き髪を二つに結わえ、前掛けで濡れた手を拭いていた。
 勝ち気そうな顔に疑問を抱いた表情を浮かべて、髪を揺らして首を傾げる。

 坊っちゃんはそんなつんを、団子を頬張りながら幸せそうな顔で見つめていた。

 この看板娘が、坊っちゃんの一番のお目当て。
 幼馴染みであるつんの為に、毎日の様に足を運んでいるのであった。


( ^ω^)「そうだお、つんにもお願いしたいんだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「? 何をですか?」

( ^ω^)「今度、百鬼夜行をする事になったんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ…………良いですよ、お手伝いさせて頂きます」

(;^ω^)「お、は、話を聞く前に……?」

ξ゚⊿゚)ξ「分かりますよ、百鬼夜行のお手伝いでしょう?」

( ^ω^)「そうだお、それで理由は、」

ξ゚⊿゚)ξ「妖怪が減っているからでしょう?」

(;^ω^)「お……そ、その通りだお……」




127 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:02:13.12 ID:EQ4NiwvpO

('A`)「よく分かるな……」

ξ゚⊿゚)ξ「長いですから、内藤さんの事ならある程度は分かります」

(*^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ「ところでどくおさん、はいんさんはお元気でしたか?」

('A`)「俺に聞くな、蟻は相変わらずだった」

ξ゚⊿゚)ξ「ひいとさんでしたら、さっき箒を片手に走ってましたよ」

('A`)「箒は新しそうだったか」

ξ゚⊿゚)ξ「値札がついてました」

('A`)「折れてたか」

ξ゚⊿゚)ξ「折れてました」

('A`)「買った側からまた折ったか……」

ξ゚⊿゚)ξ「八本目って叫んでました」

('A`)「…………真面目は真面目なんだがなァ……」

ξ゚⊿゚)ξ「真面目さ故に、でしょうか……」




128 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:04:07.90 ID:EQ4NiwvpO

ξ゚⊿゚)ξ「ところで、先刻みせりちゃんをみどりちゃんと呼んでいませんでしたか?」

( ^ω^)「呼んだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「何故、みどりちゃん? 髪の色ですか?」

( ^ω^)「それもあるけど、みどりちゃんは字が下手でお」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ」

( ^ω^)「前に自分の名前を書いて見せてもらったら、みどりにしか見えなかったんだお」

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ「……みせりが、みどり……?」

( ^ω^)「お」

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ「…………見えませんよ……?」

( ^ω^)「ですよねー」




131 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:06:05.62 ID:EQ4NiwvpO

 髪から簪を抜いて地面に文字を書き、首を傾げるつん。
 それだけ下手だったんだと坊っちゃんは呟いて、顔を見合わせて苦笑した。

 ずず、とお茶をすすりながら坊っちゃんがぼんやりと空を見上げる。

 高い空にきんと冷えきった空気。
 襟巻きにしているしょぼんの毛並みを感じながら、小さく息を吐いた。


( ^ω^)「つんは」

ξ゚⊿゚)ξ「はい」

( ^ω^)「つんは、人間になりたいのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「……」


 突然の問い掛けに、つんは背筋を伸ばして黙り込む。

 坊っちゃんの隣に座るどくおは頭に巻いた手拭いをずり下げて、目元を隠し、何も云わない。




133 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:08:12.15 ID:EQ4NiwvpO

 たっぷりの間を置いて、つんはひどく真面目な顔で口を開いた。


ξ゚⊿゚)ξ「私は、安息を求めます」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「あやかしとしての誇りは忘れません、今は亡き両親から頂いた蟒蛇の血を」

( ^ω^)「……お」

ξ゚⊿゚)ξ「残された私と妹、私には妹を育てる義務と決意があります」

( ^ω^)「つん……」

ξ゚⊿゚)ξ「働いて働いて、妹を育てねばなりません
      その為には、あやかしのままでは働きづらいのも事実」

( ^ω^)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「己から人間となる事はしません、それが蟒蛇としての意地
      しかし時の流れに任せ人間となる事を拒みはしません、それは、姉としての気持ち」

( ^ω^)「つん、」

ξ゚⊿゚)ξ「妹の為、私は流されるがままに、人間となりましょう
      人間となり、人間として働き、妹を養い育てるのが姉の務めですから」




135 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:10:24.82 ID:EQ4NiwvpO

( ^ω^)「なら、なら……つんとして、あやかしを亡くすのは……哀しい、かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「…………はい、人間となるは今までの私が死ぬと同義
      私達を産んで下さった両親の血を絶たせるも、同義」

( ^ω^)「お……」

ξ゚⊿゚)ξ「……だから、私も同じ気持ちです、内藤さん」

( ^ω^)「おっ?」

ξ゚⊿゚)ξ「己が人間となるのも、あやかしが人間となるのも、寂しく哀しいものですから」

( ^ω^)「…………つん」

ξ゚⊿゚)ξ「けれど、あやかしが人間になると云う事は
      幸を手にして、輪廻を重ねると云う事でもあると思います」

( ^ω^)「……そうだお、人間に、生まれ変わるんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「それは、祝福すべき事ではありませんか?」

( ^ω^)「っ……」




138 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:12:52.57 ID:EQ4NiwvpO
ξ゚⊿゚)ξ「……祝福、してあげましょう、皆さんを
      百鬼夜行を刻み付け、後は共に喜びましょう」

( ^ω^)「……お、祝福、するお」

ξ゚ー゚)ξ「…………私が人間になった時も、喜んで下さいね」

( ^ω^)「喜ぶお……祝福するお、つんを、人間を」


 つんにぽんぽんと頭を叩かれて、坊っちゃんは少しだけ笑った。



 減り行くはあやかし、増えるは人間。
 さりとてそれは、哀しむ事ばかりではなく。


 人もあやかしも生きる町

 喜び哀しみ織り混ぜて
 時は流れし、思いは募る。


 今はただ、百鬼夜行を夢見て日々を重ねよう。



 『一話前編 おわり。』




139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01 /31(日) 01:14:47.01 ID:H1TtR7TmO
おつ!



140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01 /31(日) 01:16:05.80 ID:hV7qEGzxO
おつおつ!!



120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01 /31(日) 00:56:21.37 ID:hV7qEGzxO
支援じゃおらあああああああああああああああ!!

031970.jpg



141 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:16:31.51 ID:EQ4NiwvpO

支援ありがとうございました。

逃亡だと思った人、ゆっくりして行ってね!

説明が遅くなってしまいましたが、プロットがあまりにひどい事になったので
前に書いた分は全て破棄して、一から始める事にしました。
あとさっさと復活しようと思ったら携帯規制マジファッキン。

以前の分を読んで下さった皆様、支援に乙、感想を下さった皆様、誠に申し訳御座いません。

二度とこの様な事がない様に、尽力して行きたいと思っております。
再びお付き合い下さる皆様、拙い物ではありますが、どうかよろしくお願いします。

あとスレで名前出す子は成仏しろ。


それでは、これにて失礼!




142 : ◆XCE/Wako2nqi :2010/01/31(日) 01:17:36.64 ID:EQ4NiwvpO
うっかりどっきり!

>>120
何これかっこいい!!ありがとうございます!!




147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01 /31(日) 01:25:19.72 ID:5nMoVkiLO
乙乙!楽しみが増えたよ



153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01 /31(日) 02:33:34.19 ID:0HXBvJ44O
読み終えた乙ゥ!
書き直し大変だろうが頑張れー



154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01 /31(日) 02:48:14.88 ID:nTMuubBw0
org608999.jpg


残ってて良かった!

楽しみに待ってます! 乙



157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/01 /31(日) 03:34:50.92 ID:pl2eqw+rO
おもしろい!



次→( ^ω^)百鬼夜行のようです【第一話 百伶百利な御仁の元へ。後編】


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( ^ω^)(´・ω・`)('A`)   コメント:0   このエントリーをはてなブックマークに追加
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