1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:03:31.23
ID:C7ZRFgXD0
泥棒(ようし、この家に忍び込んでやる!)コソコソ
泥棒(カギがかかってない……ラッキー!)
ガチャッ…
コソコソ… コソコソ…
泥棒(家の中も静かなもんだ……間違いなく留守だな)
泥棒(お、あの部屋に金目のもんがありそうだ! ドアを開けて――)
ガチャッ
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:04:57.66
ID:C7ZRFgXD0
幼 女「んーっ! んーっ!」
父「ぐへへへ……大人しくしろ。父ちゃんが気持ちよくしてやるよ。なァに、すぐ終わる……」
泥棒(ええええええええええ!!?)
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:05:58.54
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「なにやってんだ!」
父「わわっ、あんた誰!?」
泥棒「空き巣だ!」
父「空き巣!?」
泥棒「えーと……自分の子供を虐待するなんてのは、悪いことなんだぞ!」
父「なんだとォ!?」
泥棒「空き巣パンチ!」
バキィッ!
父「ぐへえっ……!」ドサッ
泥棒「ハァ、ハァ、ハァ……倒しちゃった」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:07:00.76
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「君、大丈夫か!?」
幼 女「……ありがとう」
泥棒「ひどい傷だ……あいつにやられたの?」
幼 女「うん……いつもは殴るだけだけど、今日はスカートまで脱がそうとして……」
泥棒「親が実の子に……まったく世も末だ」
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:07:52.95
ID:C7ZRFgXD0
幼 女「ところでお兄さん、あなた空き巣なんだよね?」
泥棒「え、いや、まぁ……」
幼 女「お願い、仲間に入れて! あたしも空き巣を手伝わせて!」
泥棒「え!? それはちょっと……」
幼 女「でないと、通報しちゃおっかな~……顔も覚えたし」
泥棒「うぐっ……わ、分かったよ! 仲間にしてあげるよ!」
幼 女「やったーっ!」
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:08:55.01
ID:C7ZRFgXD0
幼 女「そうと決まれば、どこかに空き巣に入ろう!」
泥棒「ノリノリだなぁ」
幼 女「鉛筆転がして、どこにするか決めよっか!」
泥棒「いやいや、こういうことは慎重に決めないと……」
泥棒「さっきみたいに、家にいる人とはち合わせたら大変だ」
幼 女「そしたら、このナイフで脅すなり、刺すなりしちゃえばいーよ」ギラッ
泥棒「なんでそんなもん持ってるの!」
幼 女「今日という今日はお父さんの頸動脈かっ切っちゃおうと思って、準備してたの」
泥棒(俺はこの子を救ったんじゃなく、あの父親を救ったのかもしれないな)
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:09:26.05
ID:C7ZRFgXD0
次の家――
泥棒「この家は誰もいなさそうだ……ここにしよう」
幼 女「うん!」
泥棒(カギはかかってない……)コソッ…
幼 女「おじゃましまーす!」
泥棒「わっ、声出しちゃダメ!」
泥棒(金目の物がありそうな部屋といえば……あっちかな)コソコソ…
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:10:47.26
ID:C7ZRFgXD0
老人「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」
老人「ううっ……ワシはこのまま一人寂しく死ぬのか……」
泥棒(またかよ!!!)
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:11:50.85
ID:C7ZRFgXD0
幼 女「今にもくたばりそうだね。トドメ刺しちゃう?」
泥棒「いやいやいや、ダメだって! 助けなきゃ!」
泥棒「大丈夫ですか!?」ユサユサ
泥棒「うーん、全然ダメだ……」
幼 女「あれしかないんじゃない? マウス・トゥー・マウス」
泥棒「それしかないか……ええい、ままよ!」
泥棒「ふんっ!」ブチュッ
老人「!?」
泥棒「お゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
老人「お゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:12:35.46
ID:C7ZRFgXD0
老人「いきなり何すんじゃ!」
老人「おかげで、止まりかけてた呼吸と心臓がすっかり元通りじゃ!」
泥棒「すみません……」
老人「お前たち、何者じゃ? 地域のボランティアか何かか?」
泥棒「いえ、空き巣でして」
老人「空き巣!?」
泥棒「だけど、ここはお留守じゃなかったんで、すぐ出ますから!」
幼 女「おじいちゃん、じゃあねー!」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:14:18.09
ID:C7ZRFgXD0
老人「待てい」
泥棒「え」
老人「ワシも連れてってくれ」
泥棒「いや、だけど、俺たち空き巣ですよ?」
老人「家に一人でいてもつまらんからのう」
老人「それに、ワシを孤独死寸前にまで追い込んだ今の世の中に、復讐してやりたいんじゃ!」
泥棒「……分かりました、いいですよ」
幼 女「やったーっ! 空き巣トリオ結成!」
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:15:39.74
ID:C7ZRFgXD0
幼 女「じゃあ、次はどこを狙うー?」
泥棒「うーん……また家に人がいるってのは勘弁だから、今度こそ慎重に……」
老人「面倒じゃのう。いっそ空き巣はやめて、強盗にしたらどうじゃ?」
老人「これでも柔道五段の腕前じゃぞ?」
幼 女「あたしもそっちの方がいいー! ナイフ使いたいー!」
泥棒「絶対ダメ!」
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:16:29.23
ID:C7ZRFgXD0
幼 女「じゃあお兄さん、空き巣空き巣いうけど、今までどのぐらいの数こなしたの?」
老人「10? それとも20ぐらいかの?」
泥棒「……ゼロ」
幼 女「え?」
泥棒「ゼロだよ! 悪いかよ!」
幼 女「なーんだ、性知識は豊富だけど、本番こなしたことない状態だったんだ!」
泥棒「嫌なたとえ方すんな!」
幼 女「あたしなんか、この年で実の親から本番させられそうになったのに」
泥棒「重すぎるジョークやめろ!」
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:17:42.35
ID:C7ZRFgXD0
老人「しかし、お前さんはなぜ空き巣になろうと思ったんじゃ?」
泥棒「俺は散々貢いだ彼女に捨てられ、友達に騙されて借金を背負わされ」
泥棒「勤めてた会社は給料未払いで倒産、親兄弟にも厄介払いで絶縁され……」
泥棒「借金のカタでなにもかも持っていかれ、家の中も、心も、文字通り空っぽになってしまった」
幼 女「踏んだり蹴ったりだねぇ~」
老人「さらに投げられたり叩きつけられたりって感じじゃな」
泥棒「こんな空っぽ尽くしの俺に相応しいのは空き巣だな、と思って空き巣を始めたんだよ」
老人「なるほどのう。志望動機としては上々じゃ」
泥棒「だから、空き巣以外のことはしたくないんだッ!」
幼 女「そんな力強くいうことじゃないけど、分かったよ。協力する!」
老人「ワシもじゃ! 絶対空き巣を成功させようぞ!」
泥棒「二人とも、ありがとう!」
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:19:17.86
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「よし、決めた!」
泥棒「次の家はあそこにしよう」
幼 女「かなり大きいし、お金いっぱいありそうだね」
老人「家の中に誰かがいる様子もないしのう。こりゃ穴場かもしれんぞ」
泥棒(三度目の正直……今度こそ成功させてみせる!)
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:20:37.07
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「よし、決めた!」
泥棒「次の家はあそこにしよう」
幼 女「かなり大きいし、お金いっぱいありそうだね」
老人「家の中に誰かがいる様子もないしのう。こりゃ穴場かもしれんぞ」
泥棒(三度目の正直……今度こそ成功させてみせる!)
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:21:14.69
ID:C7ZRFgXD0
家の中――
泥棒「うわっ……! 埃だらけだ……」
幼 女「いやぁぁぁっ! 蜘蛛の巣! やだ、取って取って~!」ネバー…
老人「こりゃ……留守の家どころか廃墟じゃな」
泥棒「廃墟を家探しするのは、空き巣とはちょっと違うなぁ」
泥棒「二人とも、ここはもう出よ――」
「誰ですか~?」
三人「!?」ビクッ
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:23:01.59
ID:C7ZRFgXD0
老人「人がおったのかぁぁぁっ!? まずい、目撃されてしまったぞ!」
幼 女「通報されちゃう! 早く刺して! 刺してぇぇぇっ!」
泥棒「…………!」
「あ、私を殺したいんですか? ご心配なく……」
泥棒「へ?」
「私、もう死んでますから」
泥棒「ってことは、あなた……」
幽霊「はい、幽霊なんです」
幼 女「なーんだ」
老人「んもう、ビックリさせおって……」
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:24:04.93
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「俺たちは空き巣トリオなんですけど……あなたは何者ですか?」
幽霊「私、この家の主です」
幽霊「ずっと引きこもっていたら、引きこもってるうちに死んじゃいまして」
幽霊「成仏もできず、ずっとこの家をさまよってたんです」
泥棒「そうだったんですか……」
幽霊「私にあなたたちに何かできる力はありませんし、このまま出ていってもらって結構ですよ」
幼 女「うん、そうしよ!」
老人「こんな辛気臭いところに用はないわい」
泥棒「……」
20:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:25:06.40
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「あの、よかったら……この家、掃除しますよ」
幽霊「え、しかしそれは……」
幼 女「なにいってんの! もう帰ろうよ!」
老人「そうじゃ! 入った家を掃除する空き巣なんて聞いたことないわい!」
泥棒「だけど、この人は幽霊だから自分じゃ掃除できないだろうし」
泥棒「ずっとこんな汚いところで暮らすのは死ぬより辛いだろうから……」
幼 女「あ~もう! しょうがないな!」
老人「リーダーのいうことじゃ。手伝ってやるわい!」
泥棒「二人とも、ありがとう!」
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:25:37.22
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「ハタキを……」パタパタ
泥棒「うえっ! すっげえホコリ!」ゲホゲホッ
幼 女「雑巾がけーっ!」ドタタタタタッ
老人「うおおおおおっ!」ドタタタタタッ
幼 女「あたしはウサイン・ボルトーッ!」ドタタタタタッ
老人「ワシはカール・ルイスじゃーッ!」ドタタタタタッ
泥棒「二人とも、もう少し静かに掃除しろ! てか爺さん、元気すぎだろ!」
幽霊「皆さん……」ウルッ…
22:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:26:38.69
ID:C7ZRFgXD0
ピカピカピカピカピカ…
泥棒「やっと終わった……!」
幼 女「キレイになったーっ!」
老人「ワシの頭よりも磨かれておるわい」
幽霊「空き巣トリオの皆さん、本当にありがとうございます!」
泥棒「なんのこれしき、これでだいぶ過ごしやすくなったでしょ?」
幽霊「いえ……私がもうここで過ごすことはありません」
泥棒「え?」
幽霊「この家がキレイになったことで、この世への未練は消えました。私は成仏します」
幽霊「そして――」
23:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:27:50.92
ID:C7ZRFgXD0
幽霊「実は私、生前に遺書を残していたんです」
幽霊「『死後、誰であれ、私の家を掃除してくれた者にこの家と遺産を託す』と……」
幽霊「正式な遺書ですので、おそらく効力はあるはず」
幽霊「どうかお三方で、私の財産をお受け取り下さい」
老人「おお、やったわい!」
幼 女「情けは人のためならずってホントだねー!」
キャッキャッ…
泥棒「……」
24:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:29:19.66
ID:C7ZRFgXD0
泥棒「あの……幽霊さん」
幽霊「はい?」
泥棒「よかったらまだ成仏せず、俺たちと一緒に暮らしませんか?」
幽霊「しかし、生きてるあなたがたの中に私なんかがいたら……」
幼 女「そうだよ! せっかくキレイになったんだから、大勢で住まないともったいないよ!」
老人「ワシももうすぐ死ぬ身として、死んだらどんな感じか先輩に話を聞きたいしのう」
幽霊「……では、お言葉に甘えさせていただきます」グスッ…
………
……
…
25:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:30:40.30
ID:C7ZRFgXD0
元泥棒(あれから、やたら面倒な手続きを経て、この家と莫大な遺産は俺たちのものになり――)
元泥棒(幼 女ちゃんは俺が引き取れることになり、爺さんもますます元気になった)
元泥棒(幽霊も成仏せず、俺たちと仲良く暮らしている)
元泥棒「新しい学校はどうだ?」
幼 女「うん、とても楽しい! 今日もワルガキどもをボコボコにしちゃった!」
元泥棒「クラスメイトをあまり虐待するなよ」
元泥棒「爺さんは?」
老人「ゲートボールで300ヤードかっ飛ばしたわい!」
元泥棒「ボールの行方がすごく気になる」
元泥棒「幽霊さんは?」
幽霊「家の中をゆったり漂いながら、この世にいる喜びを噛み締めてますよ」
元泥棒「あなたが一番まともだ……! 成仏させなくてよかった……!」
26:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:32:50.76
ID:C7ZRFgXD0
老人「そういうお前さんは?」
幼 女「働く必要なんてないのに、律義に就職活動なんてしちゃってさ」
元泥棒「俺は家に一人でいる人を世話したり、話し相手になってあげたりする仕事についたよ」
老人「とても元空き巣とは思えん職業じゃのう」
幼 女「だけど向いてるー! 絶対天職じゃん!」
幽霊「きっと大勢の孤独な人達を救うことになるでしょうね」
元泥棒「そううまくいくか分からないけど、頑張るよ」
27:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:34:44.98
ID:C7ZRFgXD0
元泥棒「じゃ、夕ご飯にしようか。幽霊さんにはお供え物を。いただきます!」
三人「いただきまーす!」
元泥棒(かくして、空っぽだったはずの俺の家と心は、こんなに賑やかになってしまった)
元泥棒(もう二度と、俺が空き巣をすることはないだろう)
元泥棒(だって俺には、こんな素晴らしい仲間達がいるんだから……!)
おわり
28:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 13:35:33.35
ID:C7ZRFgXD0
完結です
ありがとうございました
>>16は二重投稿になってしまい申し訳ありません
29:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 14:08:53.31 ID:31ojYA7io
キャラが生き生きしててよかった
30:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/01/29(水) 16:11:32.95 ID:MmWzJXc2o
イイハナシダナー
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1580270610/
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