1:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:30:23.84
ID:jznThvKz0
志保「おはようございます」ガチャ
P「んっ……ぉほぉ~~~~」グリグリ
志保「………」
P「ああ、おはよう志保」
志保「お疲れさまでした」
P「待て待て、なんで帰ろうとしてるんだ」
志保「え?」
P「『え?』はこっちのセリフだよ。朝一番に言う言葉として、もっと他に適切なものがあるだろう」
志保「お世話になりました」
P「事務所を辞めるつもりか」
志保「すみません。いきなり想定外の音波を受信したせいで少し混乱していました」
P「音波って……ちょっと孫の手でマッサージしてたら気持ちよくて声が出てただけだろう」
志保「ちょっとじゃありません。凄惨な声が出ていました」
P「志保は難しい言葉を知っているなぁ」
志保「……そんなに気持ちいいんですか。それ」
P「ん? ああ、すごくいいぞ。社長からもらったんだけど、俺の身体にばっちりフィットって感じだ」
志保「肩、凝ってるんですね」
P「そうだな、特に最近は結構自覚症状が……俺も若くはないってことか。あ、でもこれで志保の好みのおじ様に近づいたかも」
志保「私、ただのおじさんは別に好みじゃないです」
P「手厳しいな、はは……と。そろそろ会議の時間だ。行かないと」
志保「ちょっと待ってください」
P「え?」
2:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:31:08.87
ID:jznThvKz0
志保「多分、お昼過ぎまで会えないと思うので渡しておきます。今日のお弁当です」
P「あ、そうか。今日は作ってきてくれるって言ってたな」
志保「忘れるほどのものなんですね。私の手作りお弁当……」
P「いや、そういうわけじゃなくてだな……」
志保「冗談ですよ」クス
P「ほっ……」
志保「ほら、早く受け取ってください」
P「ありがとう。いつもおいしいお昼ご飯が食べられて、本当に助かってる」
志保「プロデューサーさんに恋人ができるまでは、こうして用意してあげますから」
P「かなり長期戦覚悟だな」
志保「そういう覚悟はしないでください」
P「はい」
志保「はい。では、いってらっしゃい」
P「こうしてると、なんか本物の新婚夫婦みたいだな」
志保「おじいさん、孫の手はこの前買ったばかりですよ」
P「50年くらい飛んだな」
3:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:31:51.37
ID:jznThvKz0
P「ただいまー……あ」
志保「すぅ………」
P(お休み中か……机の上に台本があるし、読んでるうちに疲れちゃったか)
志保「………」スヤスヤ
P(こうして寝顔を見てると、本当に年相応って感じなんだけどな。無垢で無邪気な中 学生で……)ジーー
志保「………」
志保「そんなに面白いですか? 私の寝顔」
P「あ、ごめん。起こしちゃったか」
志保「いえ。もともと眠るつもりはなかったので、むしろ助かりました」
P「コーヒーでも飲むか?」
志保「淹れていただけるんですか」
P「普段は俺がよく淹れてもらってるからな」
志保「なら、お願いします」
P「了解」
4:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:32:50.62
ID:jznThvKz0
P「どうぞ」コト
志保「ありがとうございます」
P「どういたしまして」
志保「………」フーフー
P「いただきます」ズズッ
志保「………」チラ
志保「いただきます」ズズッ
志保「あつっ」
P「ん、んんっ!」
志保「今笑ったのを咳払いで誤魔化しませんでしたか」
P「そんなことはないぞ」
志保「……まあ、いいですけど」フー、フー
P「コーヒー飲んでると、生きてるって感じがするなあ」
志保「カフェイン中毒とか、気をつけてくださいね」
P「大丈夫大丈夫」
志保「最近暑くなったり寒くなったり忙しいので、体調には気を遣ってください」
P「体調か……」
志保「何か、心当たりでも?」
P「恋の病とか?」
志保「………」
P(あ、これ下手な冗談やめろって睨まれる流れだな……)
志保「誰ですか」
P「え?」
志保「いつ、どこで、誰に恋したんですか」
P「あ、えっと。……ごめん、冗談」
志保「………冗談?」
P「うん」
志保「………」
5:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:33:20.96
ID:jznThvKz0
志保「顔、こっちに近づけてください」
P「こうか?」ズイ
志保「そのまま動かないでください」
P「ああ」
志保「………すぅーっ」
つんつんつんつんっ
P「いてっ! 志保、いたいたいっ」
志保「………」ツンツンツンツン
P「む、無言でデコを突っつくのはやめてくれ!」
志保「つんつんつんつんつん」
P「無言じゃなくなってもダメだって!」
志保「まあ、プロデューサーさんの額が赤くならないうちにやめておきます」
P「助かった……」
志保「冗談の種類には気をつけてください」
P「わかった。志保も女子中 学生だもんな、色恋の話は動揺しちゃうよな」
志保「きっとそういうことだと思います」
P「なんか他人事みたいな言い方だな」
志保「自分の心は、自分でもよくわからないことがありますから。そういうことにしておいたほうが、きっと安全です」
P「?」
志保「それより、プロデューサーさんはこの後空いてますか」
P「ああ……午後は、特に予定ないけど」
志保「なら、たまにはレッスンを見てくれませんか。この後、ボーカルレッスンなので」
P「わかった」
志保「ありがとうございます」
6:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:35:20.53
ID:jznThvKz0
トレーナー「はい! では今のところをもう一度!」
志保「~~~♪」
P「相変わらず志保の歌声は綺麗だな……」
トレーナー「プロデューサーさんもご一緒にどうですか?」
P「えっ? 俺もですか」
トレーナー「見ているだけだと退屈でしょうし。北沢さんもいいですよね」
志保「私も、プロデューサーさんの歌声には興味があります」
P「ええ……わかりました。後悔しないでくださいよ」
トレーナー「後悔?」
30分後
トレーナー「あ、あはは……これは」
志保「ひどい音痴……」
P「お恥ずかしながら、これが実力です」
志保「そういえば、大人組の人達が『プロデューサーさんはカラオケ行きたがらないんですよねー』って言ってたけど……こういうことだったんですね」
P「人の歌を聴くのはもちろん好きなんだけどな」
トレーナー「すみません。無理言って参加していただいて」
P「いえいえ、たまには自分で歌うのも嫌いじゃないですし」
トレーナー「あはは……時間なので、今日のレッスンはここまでにしますね」
志保「ありがとうございました」
P「ありがとうございました」
トレーナー「お疲れさまでした! では、私はこれで失礼します」ソソクサ
ガチャ、バタン
P「……気を遣わせてしまったな」
志保「………プロデューサーさん。この後も、予定はないんですよね」
P「そうだけど。でも、志保も今日はこれでレッスンは全部終わりのはず――」
志保「はい。なので、ここからは自主レッスンです」
志保「……付き合ってくれますよね?」
P「……それって、まさか」
志保「そのまさかです。一緒に、歌いましょう」
P「いや、でも俺は」
志保「やればいいじゃないですか。できるようになるまで。私も……ううん、私達も、そうしてきたんですから」
志保「自分で歌うの、嫌いじゃないんでしょう?」
P「……そんな真剣な目で言われると、断れないな」
志保「もともと、断らなくていいんです」
P「わかった。よろしくお願いします、先生」
志保「はい」
7:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:36:14.09
ID:jznThvKz0
夕方
P「………は~~」
P「志保は、鬼トレーナーの才能があるな」
志保「褒め言葉ですか」
P「半分恨み節も入ってるかな」
志保「じゃあ半分しか受け取りません」
P「鬼だ……」
志保「ふふ……でも、よかったじゃないですか」
P「何が」
志保「ちゃんと、歌えましたよね? できるようになったじゃないですか」
P「ちゃんとって言えるのか? あれだけやって、歌詞のワンフレーズ分音を外さなかっただけだぞ」
志保「プロデューサーさんはアイドルじゃないんですから、完璧に仕上げる必要はないんです」
P「それはそうだが、ならどうして俺にレッスンだなんて」
志保「そんなの、決まってます」
志保「うまく歌えると、気持ちいいでしょう?」
P「………」
P「そうだな。ありがとう、付き合ってくれて」
8:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:36:55.97
ID:jznThvKz0
帰り道
志保「プロデューサーさんが私をアイドルとして育ててくれたおかげで、いろんなことを知れました。いろんな経験、いろんな気持ち」
志保「だから……私からも、何かを教えてあげたかったんです。私が知ることのできた気持ちの少しだけでも、分けてあげられたらって。そう思ったんです」
P「志保は優しいな」
志保「別に、普通です」
P「おかげで俺も、歌うことの楽しさを知れた気がする」
志保「気持ちよかったですか?」
P「ああ。少しはみんなの気持ちがわかったと思うよ」
志保「よかったです。これからも、時々練習していきましょう」
P「多分毎回リセットされると思うから、そのたびに志保に一から教え直してもらおう」
志保「ちゃんと復習してください」ツンッ
P「ひょっ!?」
志保「………?」
P「ちょ、脇腹をいきなり突っつくのはやめてくれ。変な声が出ちゃうから」
志保「………」
つんっ
P「ひゃんっ!」
つんつんっ
P「おほっ!?」
志保「………」ツンツン
P「きゅふっ!? 志保、どういうつもりで」
志保「ふふ……孫の手よりよっぽど気持ちよさそうな声ですね」
P「いや、確かに刺激的だがこれは気持ちいいわけじゃなくて」
志保「そんなに気持ちいいんですか? なら、もっと小突いてあげます」ニヤリ
P「あ、悪魔だ……」
9:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:37:25.96
ID:jznThvKz0
志保「今日はハロウィンですから。コスプレは用意していないので、行動で悪魔を演じます」
P「お菓子ならあるぞ。だから今すぐやめてくれ」
志保「今はプロデューサーさんのおかしな声が聞きたいです」
P「くそっ、ちょっとうまいことを……ひゃうんっ!」
志保「そんなに笑って……ひょっとして、デレましたか?」
P「デレてない!」
志保「私と同じですね。また、気持ちを伝えられました」
P「なんかいいように解釈されてるような気がしてならない」
志保「どうでしょうか。とにかく、まだまだ伝え足りないことが、たくさんありますから」
P「それを言うなら、俺だって志保に伝えたい気持ちはたくさんあるぞ」
志保「私のほうがたくさんあります」
P「いやいや、俺だって負けてない」
志保「プロデューサーさんは普段からそのまま気持ちを口にしているじゃないですか。だから、私のほうが残弾は多いはずです」
P「だったら志保も普段からさらけ出せばいいじゃないか」
志保「変態……」
P「なんで!?」
志保「自分で考えてください」スタスタ
P「あ、ちょっと待てって」
志保「………」
志保「とにかく」クルッ
志保「……そこまで言うなら、覚悟しておいてください」クスッ
志保「いつか、全部伝えてやりますから」
P「………」
P「わかった。いろいろ、覚悟しておく」
志保「長期戦覚悟で、お願いします」フフ
おしまい
10:
◆C2VTzcV58A 2019/10/28(月) 20:39:16.73
ID:jznThvKz0
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
シリーズ前作
北沢志保「メイドの土産に教えてあげます」
その他過去作
黒埼ちとせ「私の、すけべ魔法使い」
田中摩美々「おはようからおやすみまで」
などもよろしくお願いします
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/29(火) 02:59:10.52 ID:FE+IdI26o
キャラだけ知ってれば楽しめるお手本みたいなssだった
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/28(月) 23:31:35.56 ID:LOrudcmDO
乙
見てて、によによするぐらいにはじれったいなぁ。もう襲っちゃえよ
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1572262223/
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