【アイマス】今度は私の番【天海春香生誕祭】

2019-04-17 (水) 12:01  アイドルマスターSS   0コメント  
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:12:28.22 ID:DCOz1ogH0

春香さん、お誕生日おめでとうございます。それを記念して、はるちはの甘々なお話(当社比)でもお一つどうぞ。


それと、大したものではないですが軽いオリジナルな事務所設定らしきものもありますので、以下の点をイメージしておくと読みやすいかもしれません。

・世界観はOFAっぽい感じ。
・アイドルランクは、皆だいたいCランクくらい。
・千早、響、真はトリオユニットを組んでいるよ。

具体的に話に絡んでくるわけではないので、あくまでも雰囲気重視の設定だと思います。へぇ、そうなんだ……くらいの気持ちで読んでいただければと。


それでは、お楽しみいただければ幸いです。





2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:21:37.19 ID:DCOz1ogH0

 この前、古典の授業で習った【青天の霹靂】という言葉。意味は『雲一つ無い青空なのにいきなり雷が鳴り出すくらい、突然でびっくりする事の例え』──だったかな? 最近お仕事が色々立て込んでいて忙しかったせいか、ちょっとうろ覚えなんですけどね。だいたいそんな感じだったと思います。
 どうしてこんな聞きかじりの知識をご披露したかと言いますと、今の私がちょうどこれにピッタリ当てはまるような、そんな状況にいるからなんです……。

「春香……」
「え、ちょっ……ち、千早ちゃん!?」

 その囁きは耳のすぐ傍、肌をくすぐるような距離から聞こえてきました。あぁ、いったい全体どうしてこんな事に……。




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:27:55.68 ID:DCOz1ogH0


 始まりは遡ること五分ほど前。夕方にライブを控えた私は、いつも通りに家を出て、いつも通りの電車に揺られ、いつも通りの朝八時半に事務所に到着しました。集合予定には二時間以上の余裕がありましたけど、それでも気が急いて駅から早足で歩いてきたんです。

「おはようございまーす」

「おはよう、春香」
「おっはよー♪ やっぱり早いね」

 ドアの前ですぅはぁと息を整えて、いつものように挨拶をした私でしたが、返ってきたのはなんとも意外な二つの声。

「あれ?……真に、響ちゃん?」

挨拶を返してくれるのはてっきり小鳥さんだろうと思ってたので、ちょっとだけびっくりです。




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:39:09.97 ID:DCOz1ogH0


「それにしても、二人ともかなり早いね。眠くない?大丈夫?」
「何言ってるの、春香だって随分早いじゃないか。お互いさまでしょ?」
「私は、ほら、だいたいいつもこの時間だし……別にいいの!これからお仕事なの?」

その辺はあまりツッコまれたくないから、私の方からどんどん聞いていくことにしましょう。

「うん、そうだよ!今日はこれから、ロケで神保町巡りへ行くんだ!食レポとかもあるし、早めに終わったら色々買い物する時間もあるって言うし……今からスッゴく楽しみなんだ!えへへ、どんな本があるのかな~……」
「あ、そっか。響ちゃんって意外と読書好きだったよね」
「ふふーん、ま~ね~♪ 自分くらいになると、できるのは運動だけじゃないんだぞ?まさに文武両道、才色兼備ってカンジ!う~ん、自分ってやっぱりカンペキだね!」
「……ところでさ、真。今日ってその、二人だけ?……千早ちゃんは一緒じゃないの?」
「んも~、ムシすんなよ~」

 不満気な響ちゃんを横目に、もう一人、きっといるであろう“彼女”のことを尋ねます。

「もちろん千早もいるさ。今日はユニットでの仕事だしね」
「そっか……もしかして、まだ来てないの?」
「ううん、今は奥にいるよ。何か春香に話があるからって言ってたかな……とにかく行ってあげてよ」
「千早ちゃんが私に?……何だろ?」

 昨夜の電話では、そんな事言ってなかったんだけどな。私、何か変なこと言っちゃってたかな……。




5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:40:38.91 ID:DCOz1ogH0


 荷物を置いた私が奥へ行くと、そこには見慣れた後ろ姿がありました。台本読みの最中かもしれませんし、ここは驚かさないよう、とととんと肩を叩いてから挨拶しましょうね。

「おはよ、千早ちゃん。ねぇ、話って──」
「──春香!」

 すると言うが早いか、振り向いた千早ちゃんがいきなり抱きついてきたんです!

「え、ちょ……ち、千早ちゃん!?」

その突然のハグに、もう目はしろくろ鼻はひくひく、手なんて置き処に困って宙をさまよっちゃってますよ……。




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:42:57.07 ID:DCOz1ogH0


 そんな戸惑う私を余所に千早ちゃんはこう続けました。

「春香、大丈夫?」
「え、えっと~……何がかな?」
「ううん、それは分からないんだけど……」
「えぇっ、分からないの!?」
「ご、ごめんなさい」

いや、隠してるんだから分からなくて当然なんですけどね。でも、つい大きな声が……こっちこそごめんね、千早ちゃん。話の腰を折らないように、そっと謝ります。

「でもね、昨夜の電話だとどこか様子が変だった気がしたの。それで……」
「う、それは……」
「それに今日の貴女、目はちょっと赤いし、クマもできてるわ──昨夜、眠れなかったんでしょう?」

 少し身を引いた千早ちゃんはまっすぐに見つめてきます。そのあまりの距離の近さに普段ならドキドキしちゃう所ですが、この時の私はそれどころじゃあなかったんです。




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:43:58.00 ID:DCOz1ogH0


『あ~ぁ、やっぱり千早ちゃんには気付かれちゃったか』──そんな気持ちがまっ先にやってきました。




8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:47:53.30 ID:DCOz1ogH0

 ううん、私も気付いてました。でも認めたくなかった。
いつも通りにしようとしてるけど、心の中は不安でいっぱいだ、っていうことに。今日起きてからも……いいえ、昨夜もその前の日も、その前の前だって。自分ではしっかりと落ち着いていたつもりだったんですけど、内心ガチガチに緊張していたのを無理 矢理に押し込めていたんです。

「昨夜の電話ではおくびにも出さなかったけど、でもなんとなくいつもと違う感じがして……やっぱり春香は緊張してるのかもしれない、不安で眠れないのかもしれない。そう気付いたら、居ても立ってもいられなくなってしまって……私は、春香のために何が出来るんだろう、って色々考えたの」

 だから全然眠れなくて、クマだって作っちゃって……けどよくよく見れば、そう言う千早ちゃんの目だって少し赤いような気がします。ひょっとして、私と同じ……なのかな。

「それでね、私が同じように不安だった時にしてもらって嬉しかった事をしたらどうか、って思い付いたの。我那覇さんや真、そしてプロデューサーに『大丈夫』って言ってもらえてすごく楽になったから。今度は、私がそうしてあげる番なんじゃないか、って」
「千早ちゃん……」
「だから、いつも私が春香に甘えてた分、今日は『私にいっぱい甘えて、いっぱい頼ってね』って言いたくて──ねぇ、迷惑じゃなかった?」
「う、ううん!全然、全然そんな事ないよ!」

 んもぉ、そんな言い方するなんて、やっぱり千早ちゃんはずるいなぁ……すぅーっと変な力みが抜けてって、そのまま千早ちゃんに体を預けちゃいます。




9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:50:28.04 ID:DCOz1ogH0


「実はね、千早ちゃんの言う通りなんだ。私、昨夜はぜ~んぜん眠れなかったの。ううん、昨夜だけじゃなくて、何日も前から……多分、緊張でだと思うんだけどね」

 ……不思議ですね。こうしてると何でも話せちゃいそうな気がするんです。弱音でもなんでも、ね。

「今日のライブの事を考えるとさ、ほら、何だか膝が震えてきちゃって……えへへ、おかしいよね。これでも結構ライブはこなしてきたつもりだったのにさ、今さらこうなっちゃうなんて」
「いいえ、ちっともおかしくなんかない。貴女は、今日初めて『天海春香としてのソロライブ』をするんだもの。緊張して当然だわ……私もそうだったもの。ライブ前日なんて緊張で眠れやしなかったわ。貴女と同じよ」
「へぇ……千早ちゃんでも、そんな風に思ってたんだね」
「ふふ、もぅ当たり前じゃない。私のこと、いったい何だと思ってたの?」
「それはその~……えへへ、ごめんね♪」
「まったくもぅ、春香ったら……だからね、今日は絶対貴女に会っておきたかった。ライブの前に『貴女なら大丈夫だ』って、一言だけでもいいから伝えたかったの──ちゃんと言えて、本当に良かった」
「……うん、私も千早ちゃんに会えてよかった。ありがとう、千早ちゃん」

 こうして抱きあっていると、千早ちゃんの温もりを、鼓動を、全身で感じられます。

──私は一人じゃないんだよ。

そう教えてもらってるみたいで、すごく安心できたんです。えへへ、あったかいなぁ。




10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:54:08.47 ID:DCOz1ogH0

 ですが、そんな優しい時間は呆気なく終わりを告げてしまいました。

「おーい、千早ー。出発するってさー」
「はーい──じゃ、私行くわね」
「えぇ~……」

 なぜならば、響ちゃんに呼ばれた千早ちゃんが、あっさりと離れていってしまったから──って、そりゃないよ~、千早ちゃ~ん。

「ふふ、そんな顔しないで?……続きは戻ってから、ね? 今日は、春香の言うこと何でも聞いてあげるから」
「………うん、約束だよ」
「えぇ、約束……じゃあライブ頑張ってね。こっちもすぐに終わらせて、必ず応援に行くわ」
「大丈夫!今の春香さんはもう元気百倍ですよ、百倍!──だからさ、きっと観ないと後悔するよ?……待ってるからね」
「分かったわ、楽しみにしてる──それじゃあ、いってきます」
「うん、いってらっしゃい!」

 やっぱり千早ちゃんはすごい。さっきまでの不安が嘘みたいに飛んでいっちゃいました。それどころか、武者震いが始まっちゃいそうなくらい、ワクワクしてる自分がいるんですよ!これってホントにスゴいことですよ。

「さてと……よーし、今日はトコトン頑張っちゃいますよ~!」

 こうして、千早ちゃんを見送った私は、これまでにないくらいの気合いとやる気で、ライブの構成表をチェックし始めたのでした。


おわり




11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:56:41.72 ID:DCOz1ogH0





はい。短いですが以上となります。お付き合いいただき、ありがとうございました。

最後に改めて、春香さんお誕生日おめでとう。いつも素敵に輝く君が大好きです。




元スレ
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:21:37.19 ID:DCOz1ogH0

 この前、古典の授業で習った【青天の霹靂】という言葉。意味は『雲一つ無い青空なのにいきなり雷が鳴り出すくらい、突然でびっくりする事の例え』──だったかな? 最近お仕事が色々立て込んでいて忙しかったせいか、ちょっとうろ覚えなんですけどね。だいたいそんな感じだったと思います。
 どうしてこんな聞きかじりの知識をご披露したかと言いますと、今の私がちょうどこれにピッタリ当てはまるような、そんな状況にいるからなんです……。

「春香……」
「え、ちょっ……ち、千早ちゃん!?」

 その囁きは耳のすぐ傍、肌をくすぐるような距離から聞こえてきました。あぁ、いったい全体どうしてこんな事に……。




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:27:55.68 ID:DCOz1ogH0


 始まりは遡ること五分ほど前。夕方にライブを控えた私は、いつも通りに家を出て、いつも通りの電車に揺られ、いつも通りの朝八時半に事務所に到着しました。集合予定には二時間以上の余裕がありましたけど、それでも気が急いて駅から早足で歩いてきたんです。

「おはようございまーす」

「おはよう、春香」
「おっはよー♪ やっぱり早いね」

 ドアの前ですぅはぁと息を整えて、いつものように挨拶をした私でしたが、返ってきたのはなんとも意外な二つの声。

「あれ?……真に、響ちゃん?」

挨拶を返してくれるのはてっきり小鳥さんだろうと思ってたので、ちょっとだけびっくりです。




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:39:09.97 ID:DCOz1ogH0


「それにしても、二人ともかなり早いね。眠くない?大丈夫?」
「何言ってるの、春香だって随分早いじゃないか。お互いさまでしょ?」
「私は、ほら、だいたいいつもこの時間だし……別にいいの!これからお仕事なの?」

その辺はあまりツッコまれたくないから、私の方からどんどん聞いていくことにしましょう。

「うん、そうだよ!今日はこれから、ロケで神保町巡りへ行くんだ!食レポとかもあるし、早めに終わったら色々買い物する時間もあるって言うし……今からスッゴく楽しみなんだ!えへへ、どんな本があるのかな~……」
「あ、そっか。響ちゃんって意外と読書好きだったよね」
「ふふーん、ま~ね~♪ 自分くらいになると、できるのは運動だけじゃないんだぞ?まさに文武両道、才色兼備ってカンジ!う~ん、自分ってやっぱりカンペキだね!」
「……ところでさ、真。今日ってその、二人だけ?……千早ちゃんは一緒じゃないの?」
「んも~、ムシすんなよ~」

 不満気な響ちゃんを横目に、もう一人、きっといるであろう“彼女”のことを尋ねます。

「もちろん千早もいるさ。今日はユニットでの仕事だしね」
「そっか……もしかして、まだ来てないの?」
「ううん、今は奥にいるよ。何か春香に話があるからって言ってたかな……とにかく行ってあげてよ」
「千早ちゃんが私に?……何だろ?」

 昨夜の電話では、そんな事言ってなかったんだけどな。私、何か変なこと言っちゃってたかな……。




5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:40:38.91 ID:DCOz1ogH0


 荷物を置いた私が奥へ行くと、そこには見慣れた後ろ姿がありました。台本読みの最中かもしれませんし、ここは驚かさないよう、とととんと肩を叩いてから挨拶しましょうね。

「おはよ、千早ちゃん。ねぇ、話って──」
「──春香!」

 すると言うが早いか、振り向いた千早ちゃんがいきなり抱きついてきたんです!

「え、ちょ……ち、千早ちゃん!?」

その突然のハグに、もう目はしろくろ鼻はひくひく、手なんて置き処に困って宙をさまよっちゃってますよ……。




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:42:57.07 ID:DCOz1ogH0


 そんな戸惑う私を余所に千早ちゃんはこう続けました。

「春香、大丈夫?」
「え、えっと~……何がかな?」
「ううん、それは分からないんだけど……」
「えぇっ、分からないの!?」
「ご、ごめんなさい」

いや、隠してるんだから分からなくて当然なんですけどね。でも、つい大きな声が……こっちこそごめんね、千早ちゃん。話の腰を折らないように、そっと謝ります。

「でもね、昨夜の電話だとどこか様子が変だった気がしたの。それで……」
「う、それは……」
「それに今日の貴女、目はちょっと赤いし、クマもできてるわ──昨夜、眠れなかったんでしょう?」

 少し身を引いた千早ちゃんはまっすぐに見つめてきます。そのあまりの距離の近さに普段ならドキドキしちゃう所ですが、この時の私はそれどころじゃあなかったんです。




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:43:58.00 ID:DCOz1ogH0


『あ~ぁ、やっぱり千早ちゃんには気付かれちゃったか』──そんな気持ちがまっ先にやってきました。




8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:47:53.30 ID:DCOz1ogH0

 ううん、私も気付いてました。でも認めたくなかった。
いつも通りにしようとしてるけど、心の中は不安でいっぱいだ、っていうことに。今日起きてからも……いいえ、昨夜もその前の日も、その前の前だって。自分ではしっかりと落ち着いていたつもりだったんですけど、内心ガチガチに緊張していたのを無理 矢理に押し込めていたんです。

「昨夜の電話ではおくびにも出さなかったけど、でもなんとなくいつもと違う感じがして……やっぱり春香は緊張してるのかもしれない、不安で眠れないのかもしれない。そう気付いたら、居ても立ってもいられなくなってしまって……私は、春香のために何が出来るんだろう、って色々考えたの」

 だから全然眠れなくて、クマだって作っちゃって……けどよくよく見れば、そう言う千早ちゃんの目だって少し赤いような気がします。ひょっとして、私と同じ……なのかな。

「それでね、私が同じように不安だった時にしてもらって嬉しかった事をしたらどうか、って思い付いたの。我那覇さんや真、そしてプロデューサーに『大丈夫』って言ってもらえてすごく楽になったから。今度は、私がそうしてあげる番なんじゃないか、って」
「千早ちゃん……」
「だから、いつも私が春香に甘えてた分、今日は『私にいっぱい甘えて、いっぱい頼ってね』って言いたくて──ねぇ、迷惑じゃなかった?」
「う、ううん!全然、全然そんな事ないよ!」

 んもぉ、そんな言い方するなんて、やっぱり千早ちゃんはずるいなぁ……すぅーっと変な力みが抜けてって、そのまま千早ちゃんに体を預けちゃいます。




9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:50:28.04 ID:DCOz1ogH0


「実はね、千早ちゃんの言う通りなんだ。私、昨夜はぜ~んぜん眠れなかったの。ううん、昨夜だけじゃなくて、何日も前から……多分、緊張でだと思うんだけどね」

 ……不思議ですね。こうしてると何でも話せちゃいそうな気がするんです。弱音でもなんでも、ね。

「今日のライブの事を考えるとさ、ほら、何だか膝が震えてきちゃって……えへへ、おかしいよね。これでも結構ライブはこなしてきたつもりだったのにさ、今さらこうなっちゃうなんて」
「いいえ、ちっともおかしくなんかない。貴女は、今日初めて『天海春香としてのソロライブ』をするんだもの。緊張して当然だわ……私もそうだったもの。ライブ前日なんて緊張で眠れやしなかったわ。貴女と同じよ」
「へぇ……千早ちゃんでも、そんな風に思ってたんだね」
「ふふ、もぅ当たり前じゃない。私のこと、いったい何だと思ってたの?」
「それはその~……えへへ、ごめんね♪」
「まったくもぅ、春香ったら……だからね、今日は絶対貴女に会っておきたかった。ライブの前に『貴女なら大丈夫だ』って、一言だけでもいいから伝えたかったの──ちゃんと言えて、本当に良かった」
「……うん、私も千早ちゃんに会えてよかった。ありがとう、千早ちゃん」

 こうして抱きあっていると、千早ちゃんの温もりを、鼓動を、全身で感じられます。

──私は一人じゃないんだよ。

そう教えてもらってるみたいで、すごく安心できたんです。えへへ、あったかいなぁ。




10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:54:08.47 ID:DCOz1ogH0

 ですが、そんな優しい時間は呆気なく終わりを告げてしまいました。

「おーい、千早ー。出発するってさー」
「はーい──じゃ、私行くわね」
「えぇ~……」

 なぜならば、響ちゃんに呼ばれた千早ちゃんが、あっさりと離れていってしまったから──って、そりゃないよ~、千早ちゃ~ん。

「ふふ、そんな顔しないで?……続きは戻ってから、ね? 今日は、春香の言うこと何でも聞いてあげるから」
「………うん、約束だよ」
「えぇ、約束……じゃあライブ頑張ってね。こっちもすぐに終わらせて、必ず応援に行くわ」
「大丈夫!今の春香さんはもう元気百倍ですよ、百倍!──だからさ、きっと観ないと後悔するよ?……待ってるからね」
「分かったわ、楽しみにしてる──それじゃあ、いってきます」
「うん、いってらっしゃい!」

 やっぱり千早ちゃんはすごい。さっきまでの不安が嘘みたいに飛んでいっちゃいました。それどころか、武者震いが始まっちゃいそうなくらい、ワクワクしてる自分がいるんですよ!これってホントにスゴいことですよ。

「さてと……よーし、今日はトコトン頑張っちゃいますよ~!」

 こうして、千早ちゃんを見送った私は、これまでにないくらいの気合いとやる気で、ライブの構成表をチェックし始めたのでした。


おわり




11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/04/03(水) 02:56:41.72 ID:DCOz1ogH0





はい。短いですが以上となります。お付き合いいただき、ありがとうございました。

最後に改めて、春香さんお誕生日おめでとう。いつも素敵に輝く君が大好きです。




元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554225147/


関連記事

アイドルマスターSS   コメント:0   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
コメントの投稿