【デレマス】白菊ほたるの復讐代行

2019-03-04 (月) 00:08  アイドルマスターSS   0コメント  
1: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:24:18.77 ID:hQC3TSV30

シリアスギャグです



2: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:25:50.63 ID:hQC3TSV30


これから話すことは、俺の失敗談だ

一切を包み隠さず話す。よく聞いてほしい






3: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:26:50.89 ID:hQC3TSV30


彼女と出会ったのは、5月頭の、雨上がりの曇り空が重苦しい夕方だった。気圧が低く、かつて手術した膝が痛んだのを今でも覚えている

俺はとあるアイドルプロダクションのプロデューサーとして働いている。担当するアイドルは八神マキノと綾瀬穂乃香。

それから、白菊ほたる

ほたるは他の二人よりも後に担当することになった。他の事務所から移籍してきたらしい。

「あの、その……これから、お願いします……」

か細い声だった。13歳だし気弱そうだし、そういうタイプの女の子なのかと思った。しかし、そんな女の子がアイドルを志すのは珍しくないので不思議とは思わなかった

アイドルとは、輝いている存在である。老若男女を分け隔て無く虜にする偶像であり、いつの時代だって憧れられる存在なのだ

そんなアイドルになる――変身願望とでも言うべきなのだろうか、今の自分とは違う自分になることを望むような人がアイドルになることなんて、この世界にはありふれた話だ。

だから不思議とは思わなかったし、だからマキノや穂乃香とは少し接し方を変えなければならないとも思った

「今日から私が白菊さんのプロデューサーとして担当させていただきます、よろしくお願いします」

表情をくずし、彼女に右手を差し出した。しかし彼女はうつむいたままで、私の手には応えなかった。しまった、最初から距離を詰めすぎたか。

俺は右手を引っ込めて、代わりに話題を差し出した

「先輩から聞きましたが……他の事務所から移籍されたそうで。あなたのことを知りたいし、少しそこら辺のお話を」

伺っても、と言う前に。彼女はうつむいた顔をより一層悲しくさせた。

失敗した。デリケートな部分に突っ込んでしまったか





4: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:27:30.00 ID:hQC3TSV30


事務所の移籍には様々な理由がある。契約更新もあれば、彼女ほどの年齢なら進学などもあるだろう

それから、いじめやハラスメント。性的な方面への強要。それらに耐えかねてこの事務所に来た、というのも考えられる。

事情をよく知らないのに移籍してきた理由について尋ねるのは悪手だった。センシティブな問題を孕みそれによる傷がまだ癒えてないとするならば、俺の仕様としていたことは愚行以外の何物でも無いからだ

雰囲気は最悪。打ち破るための次に言うべき言葉を探していたところ、応接室のドアが開いた

「こんにちはプロデューサーさん。あっ、この娘が前に言ってた新しいアイドルの方ですか?」

「穂乃香」

担当アイドルの綾瀬穂乃香だった。学校帰りなのか、制服のまま事務所へ来たらしい。

「初めまして、綾瀬穂乃香です。これからよろしくお願いします」

「あっ……白菊ほたる、です。その……」

重苦しかった空気が、穂乃香が来てくれたおかげで和らいだ。俺はそのとき胸をなで下ろしたのを覚えている。

「穂乃香、もし時間があればでいいんだけど、白菊さんにこの事務所を案内してくれないか?」

同じ初対面ならば年の離れた俺よりも、同年代の女子の方が安心するだろう。そういう判断と、他にもいくつかの理由から、俺は穂乃香に事務所の案内を頼んだ。穂乃香は快く了承してくれた

「行きましょうか、ほたるさん」

穂乃香が先導して、ほたるさんを連れて行く。それを見届けてから、俺はスマホである人物へコンタクトをとった。

「もしもし、ああ、マキノか? ちょっと調べて欲しいことがあって……」

外法ではあるが、本人が言いたくないのなら違う手段を執るしかないだろう

帰りに、スクーターに乗った大学生に思いっきり水をかけられた。近所の子どもの集団に

「うわー! おし○こだー! あのおじちゃんおし○こ漏らしてるー! あの歳でおし○こ漏らしてるー!」

と言われた。腹が立ったので

「お兄さんと呼べ!!」

と怒鳴った。おし○こは三日前に漏らしたばかりだったので否定しなかった。





5: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:27:56.25 ID:hQC3TSV30


後日。

ほたるは穂乃香から、俺の事をいくつか聞いたらしい。間接的でだが、信頼を得ることが出来て良かったと思った。

「その…最初にあったとき言えなかった事で…」

彼女は俺へ、これまでのことを語ってくれた。

これまでに事務所を転々としてきたこと。その事務所が次々に倒産したこと。物を良く無くすこと。知り合いが事故、入院……まあ他にも多くのこと。

彼女はこれらの経験から自分の事を「疫病神」なのだと思っていること。





6: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:28:24.04 ID:hQC3TSV30


俺は彼女の話を聞いてもあまり驚かなかった。事前にマキノが調べてくれたとおりだったからだ。

しかし、他人が調べたことと、本人が口から言うことでは受け取れる物が違う。

「その……ご迷惑をおかけするかも……」

彼女の口調は弱々しく、痛々しかった。それでも、今にも泣き出しそうな彼女が背負っている物の大きさと、今彼女がこの『アイドル事務所』にいる事実が、大きすぎる不幸に立ち向かわんとする不屈の意志のような物が、あまりにも愛おしくて、輝いていた。

危なかった。もう少しで感極まって抱き締めてた。そうなってたら彼女がまた事務所を移すことになってしまう。俺が性犯罪者になることで。





7: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:29:06.87 ID:hQC3TSV30


今にも泣き出しそうなほほたるに、何を言えば良いのだろうか。彼女の過去を知ったが、それはあくまで聞いた話であって、実際に体験した彼女より知っているわけじゃない。

だから、彼女について適当なことは言えない。「疫病神じゃないよ」とか「事務所は元々倒産する予定だったんじゃない?」とか、そういうことは絶対に言えない。

そして、無責任なことを言うつもりもない。だから

「迷惑じゃない、大丈夫だ。だから……俺を信じて欲しい。俺も君のことを、どうなろうと信じるから」

としか言えなかった。

すると、彼女は堰を切ったように涙を流し始めた。

「……信じても……良いんですか? 信じる権利が……私にも……」

素っ頓狂なことを。信じることに権利なんか必要ないだろうに。

彼女は目元を手で拭っている。俺はそんな彼女の前に手を差し出した。

「ひぐっ……触ると、不幸がっ、ひっく、移って……」

「かまうもんか」

触ったくらいで移る不幸なら、跳ね返してみせる。

涙が付いた右手を握ると、暖かいことが分かった。これまでアイドルだった彼女の、これからアイドルになる彼女の意志が伝わった気がした。

初めて彼女が笑うのを見た。困ったような笑顔だった。美しい笑顔だった。





8: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:29:37.67 ID:hQC3TSV30


心を開いてくれたのか、さっきは語ってくれなかったことも言ってくれた。

「『お前の不幸のせいで…』って、倒産した事務所の社長に言われたことがあって。」

彼女が語る過去は辛く重苦しかった。俺が同じ年齢の時、こんな事を言われて耐えられただろうか。いや無理だ、絶対に。サッカーしかしてなかったガキだったからな。カブトムシ口に入れて「痛ぇ~~」って泣いてたガキだったぞその頃の俺。口から血流して泣いてた頃だぞ

……13歳の女の子には、過酷すぎる運命だ。俺は憐憫の情と、同時に怒りを覚えた。

怒りの元には、彼女へ暴言を吐いたその社長だ。『お前の不幸のせいで』だと? ああそうかお前は、自分の会社がつぶれた原因をアイドルとして頑張っている女の子一人に背負わせたのか。

見ず知らずの人間に、ここまで腹が立つのは初めてだった。直接言われた彼女は、その社長に怒りを持っているのだろうか。それとも言葉通りに思い込み、自分で背負い込んでしまったのだろうか。どっちだとしても、胸クソが悪かった。





9: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:30:06.03 ID:hQC3TSV30


ほたるとこれまでのこと、これからの事を話してから数時間後。俺はマキノの部屋へ赴いていた。

「なんでそんなことを調べさせるの?」

「知識は……知っていることは、多いに越したことはないだろ」

マキノに頼んだ調べ物、それは白菊ほたるがここに来る前、最後に所属していた事務所の社長についてだ。

「……調べるわ」

マキノはため息を吐いた後、PCの画面に向き直る。俺は彼女の作業が終わるまでただ待った。待つ間暇だったので一人でぴにゃこら太の形態模写をしてた。足をくじいてくるぶしを痛めた。

「終わったわ」

ぴにゃこら太の捕食シーンに差し掛かった頃、マキノは作業を終えた。彼女が体をずらし、デスクトップの光をこちらに向ける。俺はそれをのぞき込んだ

「最後の事務所の社長……2年前だけどこれが顔写真、こっちが経歴で像宮大学卒で高校は」

「……教亭高校、だろ」

デスクトップに映されたソイツは、ほたるの社長だった人物は。

「……この人のこと、知ってるの?」

「20代で芸能事務所の社長をやってたこと以外は、な」

コイツは、俺の膝を壊した人間だ





10: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:30:46.39 ID:hQC3TSV30


俺と『コイツ』は教亭高校のサッカー部だった。

コイツが二年の頃に俺は新入生として入部し、トップ下のポジションを争っていた。

教亭高校のサッカー部は完全実力性で、力量が認められれば入部したばかりの新人でもベンチやスタメンに入ることがある。トップ下は三年のコンバートや受験のための退部が重なった結果、『コイツ』がレギュラーの座を勝ち取ることになった

故に、同じくトップ下を争う俺の事が『コイツ』は目障りだったらしい

「おい、お前が『スーパーパサーのプロちゃん』か?」

入部して一ヶ月したころ、俺に『コイツ』は話しかけてきた

「君と同中のやつが言ってたよぉ、なんでも優れた周辺視の持ち主なんだって? いやぁ、憧れるなぁ」

俺は『コイツ』に話しかけられて、ああ自分も先輩に認められたんだって嬉しくなった。今ではあいつの顔を思い出すだけで腹が立つが

俺はパサーとしてFWをアシストするのが好きだった。自分のパスでゴールが生まれる。信頼してくれるからパスを受けてもらえる。そう考えるのが好きだった。だからパサーとしてピッチに立つのが好きだった

「プロちゃん」ってのはあだ名で、合宿の時に決まって「フロ場」で「オチンチンをプラプラ」させて遊ぶからプロちゃんってあだ名になった。この経緯を知らない人には「プロ級だからですよ! ガハハ!」とか「ゴールをプロデュースするからですよ! ゲヘヘ!」と誤魔化している

「同じポジションのライバルだけど頑張ろうね」

そう語りかけてくる『コイツ』の顔は、今思い返せばまったっく笑っていなかった




11: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:31:11.19 ID:hQC3TSV30


それから4ヶ月後、部内の紅白戦にて。『コイツ』の故意なラフプレイで、俺は左膝の靱帯を断裂した

「あぁごめん、大丈夫かい?」

素知らぬ顔で、倒れ込んだ俺に『コイツ』は手をさしのべた。薄く開かれた瞳は、奥の方がドブのように濁っていた

結果、手術とリハビリを余儀なくされ、俺はレギュラー争いから落ちてしまった。『コイツ』が卒業してようやくスタメンになれたものの、残された時間はあまりにも短くて、左膝も満足に動かせないまま、悔いを残したまま俺はサッカーをやめることになった





12: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:31:51.16 ID:hQC3TSV30


俺にだって人並みの夢があった。高校で活躍してスカウトされてJ1の選手になって、日本代表の選手になって、日本人全員が期待するゴールの始まりのパスを出す。そんな叶えたかった夢があった。

でもその夢は終わった。『コイツ』に終わらされたんだ。

「その膝……この人が……そう、そうなの」

この事務所で、俺の過去を知る数少ない人間の一人であるマキノは、スラックス越しの左膝に目をやった。俺の顔は見なかった。きっと、酷い顔をしていたのだろう

夢が終わったことに対して、俺はそこまで未練は無い。もう済んだことだ。どれだけ怒りを持ってしても、過去を変えることは出来ないのだから

でも、『コイツ』は。俺の未来を終わらせるに飽き足らず、ほたるの未来にも重い枷を背負わせている。ほたるの未来を、輝いている彼女の笑顔に影を落とそうとしている。

「なんでこの人間を調べさせたのか、あなたはちゃんとした理由を言わないままだったわよね」

マキノは俺に投げかける

「復讐でもするつもり?」





13: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:32:29.42 ID:hQC3TSV30


「私も、あの娘とは色々お話したわ」

マキノがわざとらしく声を大きくしていう。いい娘よね、と前置きしてから

「優しくて、健気で、ずっと強い……ほたるはあなたが復讐することなんて、望んでいない。あなたがそんなことしたら、ほたるはきっと泣いちゃうわ。ううん、きっと穂乃香も」

「二人は関係ないだろうが」

「関係大ありよ。二人とも、あなたの担当アイドルでしょ」

眼鏡越しの視線は、痛く俺に突き刺さる。

「……ほたるも穂乃香も、マキノも関係ねぇよ。俺は俺の膝とサッカー人生を台無しにしたやつを一発ぶん殴りたいだけだ」

このときだけは、自分の膝の故障を嬉しく思った。ああ、いい口実だ。

「……悪い人」

マキノは最後にそれだけ言った





14: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:35:15.30 ID:hQC3TSV30


それからの俺は『復讐』の2文字にとりつかれていた。その間にもほたるは人間関係を構築していって、前のように困ったような笑顔は減って、楽しそうな笑顔が増えて行った

彼女の宣告通りに不幸な事態は発生する物の、全ては対処が可能で仕事に支障は無かった

俺はこれが本来の白菊ほたるの姿なんだ、こんなにも彼女はすごいんだと思うと同時に、ヤツへの復讐心が大きくなっていく

しかし、ヤツの足取りは一向につかめなかった。本人が立ち上げた事務所の倒産後、雲隠れをしてしまったらしい。マキノならばどこにいるか分かるだろうが、あの日以降仕事以外の連絡は少なくなってしまった。「本当に考え直したりしないの?」「犯罪者になんてならないで」とかが代わりに送られるし、「休日どこかに行きましょう」という旨のメッセージは、以前よりも多く送られてくる様になった

そうこうしているウチに、穂乃香の誕生日が近づいてきた

復讐にばかりかまけているわけにはいかない。俺は教亭高校のサッカー部員ではなくプロデューサーなのだ。アイドルに楽しく仕事をしてもらうのが一番だ

「そうですね……あっ、そうだ! 近くのショッピングモールにぴにゃこら太のアンテナショップが期間限定でオープンするんです! 限定品の販売もあって買いに行きたいんですけど、その日は平日で……」

誕生日プレゼントに何が良いか聞くと、穂乃香はそういった。彼女が欲しいものを一つ一つメモしていく。ショップのオープンは21日で、一週間ほど早いバースデープレゼントになりそうだった

「あ、あの…29日の夜って、プロデューサーさんは何か予定とかありますか?」

「うん? いや、特にないけど……」

穂乃香の追加の発言も、一応メモしておいた。

「……やった♪」

当日はみんなで集まったりするのかもしれない。ささやかながらもパーティがあったりするかもな。楽しみだ





15: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:35:55.12 ID:hQC3TSV30


5月21日当日。俺は出勤前にショッピングモールへ。開店の1時間前に行ったが、既に10を越える人数が並んでいた。ぴにゃこら太って人気があるんだなぁ……なんか前の方で「メルカリ」とかの単語が聞こえるけど、きっと並んでいる間にもぴにゃグッズをチェックしているのだろう。熱心なファンには圧倒される。

開店。俺は目当ての限定品(お一人様一つのスペシャルカラーぬいぐるみ)を無事にゲット。それと、29日に開かれるであろうパーティ用にぴにゃマスク等も合わせて購入した

紙袋を抱え、レジを後にする……と、そのとき。

俺はヤツと出会った




16: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:36:40.46 ID:hQC3TSV30


ほたるの未来を奪おうとした人間。ほたるに影を落とした人間。そいつが、そいつが、そこにいる

なんでヤツがこんな所に。ぴにゃ? スーツ姿だ。左膝。白菊ほたる……様々な思考が脳裏を一瞬で駆け巡る。しかしそんな思考よりもずっと早く、俺の体は動く

気がついたときには、ソイツをぶん殴っていた。

右の拳がジンジンとする。呼吸を忘れてしまったのか、肺が潰されるような錯覚を覚えた。背筋を一筋の汗が流れる

殴った。殴った。俺はついに、コイツを――――――





17: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:37:07.23 ID:hQC3TSV30






誰だコイツ









18: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:37:39.78 ID:hQC3TSV30


殴られ倒れた人物の顔をよく見る。背格好や髪型は確かにあいつに似ているが、顔が全くの別人だ。白目を剥いてしまっているが断言出来る。コイツは別人だ。

「しっかりしてください! しっかりしてください!」

俺は被害者に歩み寄り、肩を揺すったり叩いたりして意識を呼び戻そうとする。しかし依然気絶したまま。胸に耳を当てる。よし、生きている

「とーたん?」

俺が生存の確認をしているときに、後ろから声がした。呂律があやふやな、幼い声だった。

目をやると、4っつか5つ位の女の子がそこにいた。ぴにゃTシャツを着ているし、手には未精算のぴにゃマスコットがある。選んだ商品を父親の元に持ってきたのだろう

「おじちゃんだれ?」

「おじちゃ、おじちゃんはねぇ、うーんとねぇ……お、おにいちゃん、かなぁ……」

女の子はぱっちりと開いていた瞳から涙を流し始める

「とーたん、とーたんは、し、しんっじゃっ、たっのっ?」

大泣きし、しゃくり上げながら俺と気絶した父親を見る女の子。マズイ、泣き止ませないと

そう思った俺は、買っておいたぴにゃマスクを父親に被せた。

「と、とーたんはねぇ! 生きてる! いまぴにゃこら太になってるの! それだけ! ねぇ!」

俺はマスクドぴにゃの後ろに顔を持ってきて、なるべく高い声で

「ぴ、ぴにゃぁ~~~~!」

とぴにゃこら太の真似をした

「ほらとーたん生きてるね! はい! 今ちょっと顎が揺れて寝てるだけだよね!」

再びマスクドぴにゃの後ろに行き顔を隠す

「ぴにゃ、ぴにゃにゃ、ぴぃにゃあ!」

「おおそうかそれは良かったなぁ! ハッハッハー!!」





19: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:38:07.30 ID:hQC3TSV30


・・・

おまわりさん、これが事件の真相です

「いやだからなんであのお父さんを殴ったんだって聞いているんだ!」

違うんです! 間違えたんです! 殴る相手を間違えただけなんです!!

「間違えたって誰か殴るつもりだったのかお前!!」

はい!

「警察と法を舐めてんのか!!!」





20: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:38:48.04 ID:hQC3TSV30


「とりあえず! 今回は向こう側が気にしてないって言ってるから! 大事にしたくないという被害者の意志を尊重して! お咎めはないけれども! 二度と人を殴るような真似をするんじゃねぇぞ!!」

はい……すいませんでした……

あ、あのー、帰る前に警察官であるあなたに伺いたいんですが……元芸能事務所の社長で、名前が……あっその人3週間前に逮捕されてるんですか……へぇ……

詐欺と着服と横領と脱税で……へぇ……





21: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:39:14.30 ID:hQC3TSV30


警察署を後にする。まだ日が昇りきってない。正午まで1時間以上はあるだろう。

スマホが震える。起動して、来ていたメッセージを読む

『ほたるです。プロデューサーさん、何かあったんですか? 収録の時間なのにいつまで経っても来ないので、まさか何かに巻き込まれたり……』

『穂乃香です。放課後行きます! ぴにゃグッズ楽しみです! ありがとうございました!』

『もう復讐なんて考えないでね。そうそう、明日の晩は空いているかしら?』

担当アイドル三人からのメッセージだ。

『大丈夫、ちょっと電車が遅延しただけだ』

『ああ、放課後に。誕生日おめでとう』

『アイツ逮捕されたの知ってたのか…? 明日は特に用事は無いが、何かあるのか?』

返信を一通り終え、俺は駅に向かって歩く。ちひろさんは遅刻した俺をきっと怒るだろう。ああ、復讐なんてするもんじゃねぇな。

そういえば、ほたるの誕生日は4月だったな。来年の4月に、ほたるの誕生日を無事に祝えるようにプロデュース活動をしていこう。

〈おわり〉




22: ◆U.8lOt6xMsuG 2019/02/26(火) 03:40:59.17 ID:hQC3TSV30

ここまでです、ありがとうございました

「復讐した相手が全くの別人」というネタ、どこかで見たような気がする(元の方はお父さんのちんちんを大きくさせて女の子に命が消えてないことを知らせていた気がする)のですが、一体どこのネタなのでしょうか




元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1551119058/

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