P「留美さん」 留美「何かしら」

2018-10-25 (木) 07:01  アイドルマスターSS   0コメント  
1: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:18:24 ID:UqP


P「すみません、仕事手伝ってもらって」

留美「いいのよ、ふたりで協力した方が早いでしょう? 合理的よ」

P「そうかもしれませんけど、留美さんはアイドルなのに…」

留美「アイドル、ね。まだ見習いよ。それに職業病なのかしらね、こういうお仕事をしていると気が紛れるの」

P「留美さん…」





2: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:19:00 ID:UqP


留美「ああ、気にしないで。前の職場のアイツと違って君のお仕事を手伝うのは楽しいもの。それに資料の整理をしていると色々参考になるしね」

P「…ありがとうございます留美さん。でも」

留美「でも?」

P「俺の仕事を手伝う暇もないくらい売れっ子にしてみせますから!」

留美「…ふふ、やっぱり面白いわね、君って」




3: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:19:42 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「改めてドラマ初出演、おめでとうございました!」

留美「もう、何度目よそれ」

P「はは、すみません。でも本当に嬉しくて…」




4: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:20:14 ID:UqP


留美「まさかはじめてのお仕事がドラマのお仕事だなんて思わなかったわ。本当に私、ドラマに出たのよね…?」

P「はい! テープが擦り切れるくらい見返しました! 」

留美「テープって。今時?」

P「はは、さすがに冗談ですけど。でも、セリフも表情も完璧に覚えるくらい見ましたよ!」

留美「ありがとう。けど、なんだか照れくさいわ…」




5: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:20:41 ID:UqP


P「留美さんすっごく綺麗でした。目がキリッとしていて凛々しくて…」

留美「…目、ね」

P「はい! 留美さんの目、すっごく素敵です」

留美「…そんな風に言われたのはじめてよ私」

P「え、そうなんですか?」

留美「ええ。「怒ってるの?」とか「感じ悪い」とか。「君の顔じゃ営業は無理だな」なんて言われたこともあったわね」

P「何ですかそいつら! 見る目がないですね!」




6: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:20:58 ID:UqP


留美「君と両親くらいよ。そんなに私の目を褒めてくれるの」

P「留美さんはその意志の強さが現れた目がいいんですよ。凛々しくて、頼りがいがあって…」

留美「そうかしら…」

P「…で、たまにその目元が緩む時が最高に可愛いなって」

留美「…か、可愛い…?」

P「はい! 可愛いです」




7: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:21:33 ID:UqP


留美「わ、わからないわ…いつそんな顔してた?」

P「ドラマの台本を受け取った時とか、撮影でOKが出た時とか、あと、ついさっきです」

留美「さっき? 打ち上げ?」

P「はい! 監督に花束を渡された時の留美さん、すっごく可愛かったです! ほら、写真見ますか?」

留美「ちょ、な、何撮ってるの! 消して!」

P「こんなに可愛いのに!?」

留美「可愛くないから…!」




8: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:22:27 ID:UqP


P「アイドルが何言ってるんですか!ほら、めっちゃ可愛いですってこの留美さん! 潤んだ目元と表情が…!」

留美「わかったから! 消さなくていいからしまって!」

P「えー…」

留美「えーじゃないわよ全く……本当に君、変わってるわね」

P「そうですか?」

留美「そうよ。こんな26の女をアイドルにしたのも、か…可愛い、なんて言うのも」




9: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:22:52 ID:UqP


P「それはきっと世間が留美さんの可愛さに気づいてないからですよ。俺がもっと留美さんの可愛さを発信しますからね!」

留美「も、もう好きにしてちょうだい……君、年上趣味なの…?」

P「え?」

留美「あーいや、なんでもないわ! さ! 明日も早いしもう帰りましょう!」

P「え、あ、ちょっと、留美さん!」

留美(…何を聞いてるのよ、私は…)




10: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:23:39 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「顔を上げてもらえると…」

留美「……今はムリよ」

P「そんなに恥ずかしがることでは…」

留美「恥ずかしいわよ…!」




11: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:24:04 ID:UqP


P「猫を可愛がってた留美さん、可愛かったですよ?」

留美「あー! もう言わないで! あんな、あんな緩んだ表情で、猫撫で声で…! は、はっくちゅん!」

P「あ、ティッシュ使いますか?」

留美「……いただくわ」

P「もしかして、猫アレルギーなんですか?」

留美「……ええ」

P「そうですか…でも留美さんは、猫大好きな人、なんですよね? そうなのかなとは思ってましたけど」




12: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:24:43 ID:UqP


留美「……ええ。悪い?」

P「悪いだなんて…むしろ、留美さんのこともっと可愛い人だなって。留美さんちょっと猫っぽいなって思ってましたし」

留美「そうやって可愛い可愛いって君は…! 私なんかが猫ちゃんくらい可愛いワケが…!」

P「どんだけ猫を可愛いものとして崇めてるんですか……あ、「猫ちゃん」って呼ぶんですね」

留美「…うぅー…」

P(可愛い…)




14: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:25:13 ID:UqP


留美「……というか、どうして君、こんなところにいるのよ」

P「え? ああ、事務所に忘れ物しちゃったんです。この道を横切ると近道になるから…」

留美「よりによって…」

P「はは…すみません」

留美「……いいわ。君は悪くないもの。そのかわり見てなさい。明日からのお仕事、もっと完璧にこなしてみせるから」

P「…」

留美「…どうしたの?」




15: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:26:00 ID:UqP


P「……留美さん」

留美「…何よ」

P「前々から思ってたんですけど…留美さんって、「可愛い」って言われるの、嫌いですか?」

留美「……嫌い、ではないわ。ただ、柄じゃないだけよ」

P「柄じゃない…ですか」

留美「ええ。こんな愛想のない女に「可愛い」なんて言葉はもったいないと思うの。そういうのはもっと若い子とか、同世代でも、美優さんとか瞳子さんとか…」




16: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:26:36 ID:UqP


P「…留美さんは、もっと自分を認めてもいいと思いますよ」

留美「え?」

P「確かに留美さんの売り方は「クールビューティ」とか「格好いい理想の女上司」みたいなイメージですけど、それはあくまでもアイドルとしての軸となる売り方を築くためであって留美さんが可愛くないだなんて思ったことありませんよ」

留美「そ、それは君が…失礼だけど、変わってるから…」

P「自分の可愛さを認めずに俺のせいにしないでください」

留美「な、何よそれ…」




17: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:27:04 ID:UqP


P「…これ、明日渡すはずだった留美さんへのファンレターです。俺、嬉しくて写真撮っちゃいました」

留美「……あ」

P「ね? 「最終回で和久井さんの演じる弁護士が微笑むところ、可愛かったです!」「ギャップに思わずトキめいちゃいました!」って書いてあるでしょう? しかもこれ、10代の女の子からですよ?」

留美「私を…」

P「前のドラマのディレクターさんともこの間話したんですけど言ってましたよ。「和久井さんはたまにすごく可愛い表情をするね」って。この子やディレクターさんも変わり者ですか?」

留美「そうとは思わ…ないけれど」




18: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:27:38 ID:UqP


P「美優さんや瞳子さんを可愛いってさっき言いましたよね?」

留美「え、ええ」

P「あのふたりも顔立ちはどちらかと言えば大人びた美人さんですけど、どうして留美さんは綺麗よりも可愛いって思うんですか?」

留美「それは…上手く言えないけれど、可愛いじゃない。一緒にいて癒されるというか」

P「留美さんもですよ」

留美「え」




19: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:28:22 ID:UqP


P「出会った頃の留美さんはちょっとピリピリしてましたけど。でも、ドラマの仕事をしてから留美さん、雰囲気が柔らかくなって、色んな表情を見せてくれるようになって。
一緒にいると元気をもらえて癒されて。そんな留美さんが画面越しでも、クールな役でも伝わるんですよ。「あ、この人可愛いな」って」

留美「…」

P「…あと、仕事にストイックな性格を逆手に取るようで申し訳ないですけど、アイドルが自分に向けられる「可愛い」という声を否定しちゃダメです」

留美「……ズルいわよ、君は」




20: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:28:56 ID:UqP


P「すみません。でも、留美さんが「可愛い自分」も認めることが…もっと簡単に言うと、格好よくて可愛い、ありのままの和久井留美を素直に見せることが、これからのアイドル活動で必要だと思うんです」

留美「…可愛い。可愛い、ね」

P「はい。俺は留美さんを、最高に可愛い人だと思っていますよ」

留美「……ん。わかったわ」

P「わかってくれましたか」

留美「今まで可愛げがない女扱いされてきたから、心が自然と拒んでいたのかもね。可愛いって言われたり、思うことを」




21: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:29:23 ID:UqP


P「それは留美さんをそんな風にしか見ることのできない人間たちに囲まれていたからですよ。むしろそんな奴に留美さんの可愛いところを見せるなんてもったいないですよ」

留美「……くすっ。そう、そういうものなのかしらね…ありのままの、和久井留美で…」

P「はい。見せてやりましょうよ。最高にクールビューティで、最高に可愛いアイドル和久井留美を」

留美「クールビューティで可愛いって、欲張りすぎじゃないかしら」

P「欲張りましょうよ。アイドルは、女の子の憧れなんですから」




22: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:29:57 ID:UqP


留美「可愛い…かは私にはわからないけれど、ありのままの私を見せる…ね」

P「はい!」

留美「…私、そんなに大した女じゃないわよ?」

P「そうですか?」

留美「仕事しか取り柄がないから、それに縋っていただけで…もしかしたら、格好良くさえもないかもしれないわよ?」

P「そんな留美さんも見てみたいです。きっと素敵ですから。可愛いですから」




23: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:30:34 ID:UqP


留美「なんでも認めてくれるのね? ……いいわ。ありのままの私、もっと見せてあげる。ただ…」

P「ただ?」

留美「もし私がもっと自分を出して、それが世間に受け入れなくても……君だけは、私を素敵だって言ってくれる?」

P「…アブノーマルな趣味でもあるんですか?」

留美「茶化さないの。真剣なんだから」




24: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:31:32 ID:UqP


P「はは、すみません。勿論、どんな留美さんでも見てみたいです。そしてその魅力を伝えるのが俺の仕事なんですから」

留美「ふふ……ありがとう、P君」

P「はい! それじゃあ早速、動物番組の猫特集とかを…」

留美「そ、それはもうちょっと後でいいから!」




25: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:31:55 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「さっき、ペロと遊びました?」

留美「あら、どうしてわかるの? もう咳は収まったのに…」

P「目、赤くなってますから」

留美「あ」




26: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:32:15 ID:UqP


P「お仕事前は気をつけてくださいね?」

留美「ふふ、そうね…」

P「それにしても留美さんは本当に猫が好きですね」

留美「猫ちゃん、可愛いじゃない。あの表情とか、もふもふしてるとことか、尻尾がふりふりしてるとことか…ああ、アレルギーがない人が羨ましい…」

P「何考えてるのかよくわからない感じが逆にいいですよね」

留美「そう! そうなの! でも人懐っこい子は意外と甘えん坊で…ペロちゃんとか…」




27: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:32:36 ID:UqP


P「あー…雪美ちゃんと一緒に寝てたりしてますよね。あれはいいものだ…」

留美「みくちゃんには感謝してもしきれないわ。写真も送ってくれるし、頭を撫でさせてくれるし…」

P「みくちゃんは相当猫のこと研究してますよね。「あー、そういう動きするなあ」みたいなツボをついてくるというか」

留美「私もそれなりに猫ちゃんの動きには詳しいつもりだけれど、みくちゃんは見事ね」

P「そういえば前に高垣さんのことを猫っぽいって言ってましたよね?」




28: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:33:04 ID:UqP


留美「楓さんね。あの人はいいわ…私はお酒そこまで強いわけじゃないけれど、ついつい飲みのお誘いに乗ってしまうもの」

P「何かいいことがあるんですか?」

留美「本人は自覚していないでしょうけれど…酔って寝っ転がる楓さん、すごく猫ちゃんっぽいのよ。ほら」

P「あー…確かに。飼い猫はぐでーっと寝ますねこうやって」

留美「そうなの。たまにお布団まで運ぶんだけどね、楓さんって身長があるじゃない? だから体がにょーんって伸びるの。にょーんって。それがまた猫ちゃんっぽくて可愛くて…オッドアイの猫ちゃんっているし…」




29: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:33:30 ID:UqP


P「ああ、言われてみれば確かに楓さん猫っぽいかもなあ。あまり話したことがないからかもしれないけど、ミステリアスな感じで…」

留美「そうなの! 他にも……って、ごめんなさい、熱く語っちゃって」

P「いえいえ! 楽しいですよ! そんな風に仕事以外の何かを語る留美さん、新鮮です」

留美「前にP君に「ありのままの私を見せろ」って言われてから、どうもこう、締まりがないというか…」

P「そんなことないですよ! お仕事してる時の留美さん、プロフェッショナルって感じがします」




30: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:34:05 ID:UqP


留美「それはそうよ。お仕事だもの。でも、プライベートな時に…」

P「いいじゃないですかプライベートなんですから。留美さんの話、もっと聞きたいです」

留美「私というか、猫ちゃんの話になってしまったけど…」

P「いいんですよそれで」

留美「そう…なら、そうなのよね」

P「そうですそうです」

留美「……ありがとう。ところで、P君は猫ちゃんは好きなのかしら…詳しいようだけれど」




31: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:34:25 ID:UqP


P「あー…好きですよ。知識はないですけど、実体験なら」

留美「実体験…?」

P「あれ? 言ってませんでした? 俺、実家が猫飼ってるんですよ」

留美「え!?」

P「俺が就職した時はまだ子猫だったけど、最近は立派になって…」

留美「…実家に」

P「え?」

留美「P君の実家に今度お邪魔してもいいかしら!?」




32: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:35:13 ID:UqP


P「ええ!?」

留美「あ…こほん。ごめんなさい。つい」

P「あ…いえ。ウチの両親、テレビとかあんまり見ない人だから留美さんみたいな綺麗で可愛い人を連れて帰ったら恋人だと思われちゃいますよ」

留美「あ……そ、そうなの」

P「流石にそれは困るでしょう?」

留美「そう……なのかしら?」

P「そうですよー」

留美(そうかしら…)




33: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:35:48 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「その、楽しいですか?」

留美「ええ、楽しいわよ?」

P「でも、俺ばっかり打ってるから…」

留美「私がバッティングセンターに来る理由ってストレス発散だもの。それも思いっきり空振りしてね。それよりは本来のバッティングができる人を見てる方が健全でしょう?」




34: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:36:18 ID:UqP


P「まあ、そうとも言えますけどっ…」カキーン

留美「あら、ナイスバッティング」

P「野球は子どもの頃やってたんですよー。4番サードで」

留美「それは…すごいことなんじゃないかしら?」

P「まあ少年野球ですから。あの頃が人生で一番モテてた気がしますっ」カキーン

留美「ふふ、そんなことないわよ」

P「そうですかね」

留美「P君の周りにはいつもたくさんの女性がいるじゃない」




35: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:36:46 ID:UqP


P「それは…仕事仲間でしょう。俺のこと好きな人なんていませんよ」

留美「そう……なのかしらね」

P「そうですよ」

留美「……ねえ、次、変わってくれないかしら?」

P「お、打ちますか?」

留美「空振りするの」

P「狙ってみましょうよ。たくさん振ってるからフォームも安定感ありますし。せっかくなら欲張ってホームランを!」




36: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:37:25 ID:UqP


留美(欲張って、ね…)

留美「…わかったわ。やってみる」

P「はい!」

留美(…もし次の一球を当てられたら…)

留美「ーっ!」


カキーン!


P「お…おおー! すごいすごい! 留美さん! ホームランですよホームラン!!」

留美「わ…私もびっくりしてるわ…」




37: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:38:04 ID:UqP


留美(そうよね…どうせ狙うなら…欲張って、ホームランを…!)

P「ーと、もうこんな時間ですねそろそろ夕飯時ですし、帰りましょうか?」

留美「……ねえ」

P「はい?」

留美「もしよかったらなんだけど…この後、一緒に過ごさない?」




39: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:38:26 ID:UqP


P「え」

留美「一緒に買い物でもして…その後夕ご飯を」

P「……なんか、それって」

留美「ええ。デートよ。してみない?」

P「…その、俺でよかったら、是非!」

留美「!」




40: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:39:08 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」コーホー

P「それ、苦しくないですか…?」

留美「苦しくないと言えば嘘になるわ。でも、アレルギーで猫ちゃんと戯れられない方がずっと苦しいもの」コーホー

P「そうですか…」




41: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:39:34 ID:UqP


留美「雪美ちゃんからペロちゃんに伝えてもらったおかげで警戒もされないし…ああ、これが望んでいた瞬間…! ありがとうP君、こんないい物見つけられたのは、君と買い物したおかげよ!」コーホー

P「いえいえ…」

P(確かにアレルギーをシャットアウトしてくれるんだろうけど…ガスマスクを着けて猫を可愛がる留美さん、シュールだ…)




42: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:40:00 ID:UqP



瞳子「あの光景も見慣れてきたわね」

美優「人間の適応力はすごいですよね」

瞳子「私ね、あの留美さんを見た時から何かに似てるなって思ってたのよ。既視感というか」

美優「何にでしょうか?」

瞳子「アレね、ダースベーダー」

美優「ああ…既視感の正体はそれですね」


留美「はにゃーん…♪」




43: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:40:24 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「よかったですね」

留美「…そうね」

P「…顔、ニヤけてますよ」

留美「! だ、だって…しょうがないじゃない」




44: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:40:43 ID:UqP


P「そうですよね…だって」

留美「私にあんな小さい子のファンがいたなんて…!」

P「俺も正直びっくりしちゃいました。留美さんのファンの方って社会人くらいの人が多いから…」

留美「「ドラマを見て怖い人なんだと思ったけど、猫を可愛がってるシーンを見て可愛いお姉さんだって思った!」ですって」

P「俺のプロデュースの狙い通りですね! ギャップですよ!」

留美「ふふ、さすが私のプロデューサー君ね。私、あんな可愛い子の憧れになれたのね…」




45: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:41:22 ID:UqP


P「正真正銘のアイドルですよ留美さんは。俺の目に狂いはなかったです!」

留美「瞳子さんも美優さんも、そして私も……やっぱり君って、年上趣味なのかしら?」

P「あー…どうでしょう? 年の離れた姉がいるんで、それかなー…小さい頃は姉にべったりだったので」

留美「あら、初耳」

P「なんか、シスコンみたいで恥ずかしいじゃないですか」

留美「私には話してもいいの?」

P「あー、はい。留美さん、なんだか俺のお姉さんみたいな人ですし」




46: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:41:40 ID:UqP


留美「似ているの?」

P「まあ、そうですね。しっかり者だけど、可愛らしい人というか……あ、やっぱりシスコンっぽいですよね? あはは」

留美「…」

P「留美さん?」

留美「実はね、ちょっと提案があるのよ」

P「あ、はい。なんでしょう」

留美「あ、そんなにかしこまらなくてもいいのよ。その…私、P君って呼んでるでしょう?」




47: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:42:16 ID:UqP


P「はい」

留美「Pさんって呼んでもいいかしら?」

P「え?」

留美「ああ、その、嫌ならいいのよ? ただ、君付けって職場の先輩後輩みたいというか、私たちはパートナーなわけで、対等な関係だから、ああでも、本当に、なんとなくそう思っただけで」

P「俺は、構いませんけど」

留美「え……本当?」




48: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:42:46 ID:UqP


P「はい。留美さんがそれでいいのなら」

留美「そ、そう。それなら……Pさん」

P「は、はい。留美さん」

留美「…」

P「…」

留美「Pさん」

P「る…留美さん」

留美「…恥ずかしいわね、なんだか」




49: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:43:13 ID:UqP


P「そ、そうですね。やっぱり、やめ」

留美「慣れていかないとね、Pさん」

P「あ、はい」

留美「さて! それじゃあ握手会の成功を祝して飲みにでも行こうかしら、Pさん!」

P「は、はい留美さん!」

留美(…やった、やった♪)




50: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:43:45 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「いよいよ明日ですね」

留美「ええ、そうね」

P「緊張しますか?」

留美「ふふ、当たり前よ」




51: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:44:13 ID:UqP


P「そうですよね」

留美「…明日、私と瞳子さんと美優さんで、このステージに立つのね」

P「…はい」

留美「「私、明日武道館のステージに立つのよ」って秘書時代の私に伝えたらどんな顔するでしょうね」

P「信じないんじゃないかなあ」

留美「ふふ、仕事のストレスでおかしくなったと思われるかもしれないわね」

P「出会った頃の留美さん、懐かしいですね…」




52: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:44:40 ID:UqP


留美「覚えてる?」

P「忘れませんよ。でも本当に留美さん、綺麗で、可愛くなりましたね…出会った頃よりずっとずっと」

留美「……ありがとう。可愛い、ね」

P「ええ。可愛い人です留美さんは」

留美「……ええ」

P「あ、認めますか?」

留美「ファンのみんなが、仲間が、そしてあなたがそう言ってくれるんだもの。信じるわ」

P「留美さん…」




53: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:45:36 ID:UqP


留美「…見ててね、Pさん。明日のステージ」

P「はい。3人の姿、心に刻みます」

留美「あれから数年、もうアイドルとしては若くはないのかもしれないけれど…」

P「そんなの関係ありません」

留美「ふふ、そうよね。私の人生、たくさんの遠回りをしてきた気がするけれど…全部の道に価値があるのよね。秘書をして挫折したことも、Pさんに出会えたことも、アイドルになれたことも…」

P「はい。一度挫折しても前を向いて輝く女性の美しさ、可愛さがあるんです。瞳子さんも、美優さんも、そして…留美さんも」




54: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:46:13 ID:UqP


留美「その輝き、存分に見せつけるわ」

P「はい!」




55: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:46:44 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「ここにいたんですね」

留美「ええ」

P「ほんの数時間前まではすごい熱気だったのに…まるで嘘のように静まり返ってますよね」

留美「そうね…」

P「この寂しい感じは、いつまで経っても慣れません」




56: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:47:20 ID:UqP


留美「そう? でも、終わりがあるからこそライブの一瞬が輝くのよ」

P「そう…なんですよね。うわー、留美さんたちって、こんなみんなの視線が集まるところで歌ったり踊ったりしてるんですよね」

留美「ええ、そうよ」

P「なんか…スゲーや」

留美「ふふ、何よそれ」

P「いや、俺だったらもうガチガチになっちゃいますよ」

留美「私だってそうよ。不安で不安で、怖くてたまらないわ」




57: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:47:44 ID:UqP


P「それでも、留美さんはやり遂げたじゃないですか」

留美「ええ。それはね……応援してくれるファンのみんな、スタッフの皆さん、一緒に舞台に立ってくれる仲間、そして…Pさん、私の大切なプロデューサーさんがいたからよ」

P「留美さん…」

留美「…私を、アイドルにしてくれてありがとう。Pさん」

P「はは、なんですか改まって。照れますよ」

留美「……わかってると思うけど、私のアイドルとしての寿命は多分もうそんなに長くないわよ」




58: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:48:23 ID:UqP


P「……はい」

留美「まあ、流石にそうよね。三十路近いし、どんどん新しい若い子たちが出てきてるし」

P「でも、それと同じくらいアイドルを夢見てこの世界に来てくれる20代の方も最近多いんですよ」

留美「あら、そうなの?」

P「はい。その流れを作ったのはウチの事務所の人たちと…瞳子さん美優さんそして、留美さん、あなたもですよ」

留美「…ええ」




59: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:49:52 ID:UqP


P「夢をいつまでも見るっていいなって。前を向いていれば挫折しても次の夢が生まれるんだって。青臭いけどそんなメッセージを堂々と言えるようになったって思うんですよね。自惚れもあるでしょうけど」

留美「…うん」

P「そんなアイドルをプロデュースできて、本当に俺は幸せです」

留美「…私も、そんなプロデューサーさんに出会えて幸せよ」




60: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:50:16 ID:UqP


P「アイドルの夢から覚める時間まで、まだまだ頑張りましょうね!」

留美「ええ、まだ舞踏会の時計は12時を指していないみたいだし……でも、ひとつお願いをしてもいいかしら?」

P「はい、なんですか?」

留美「私がアイドルじゃなくなったら…私と旅行にでも行ってくれない? そうね、温泉なんてどうかしら。アイドルとしてではなく、ひとりの女性、和久井留美と」




61: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:50:34 ID:UqP



ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「…どうして俺は、膝枕をされているんでしょう…」

留美「それはね、あなたが温泉卓球に夢中になってヘトヘトになったからよ」

P「いや、でも…」




62: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:51:12 ID:UqP


留美「嫌ならやめるわよ?」

P「嫌ではない、ですけど…」

留美「ふふ、よろしい」

P「それにしても、元はと言えば留美さんがムキになるからなのに…なんでそんなに疲れてないんですか」

留美「アイドル時代に培った体力の賜物よ。それにね、負けっぱなしなのは嫌なの。手を抜かれるのもね。Pさん、たまにあからさまに動きが鈍るんだもの」

P「それはー」

留美「それは?」




63: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:52:20 ID:UqP


P「ー留美さん、浴衣がはだけて色々見えるから…」

留美「色々って?」

P「そ、その…鎖骨とか、えっと、ブラ、とか…」

留美「…こんなおばさんの下着なんて見えて興奮するかしら」

P「興奮って…それに、まだまだおばさんって年じゃないでしょう。アイドルを引退したのだってつい最近なのに、心が老けすぎですよ」

留美「耳をつねるわ」

P「痛いっ!」




64: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:53:07 ID:UqP


留美「あのねPさん、20代後半以降の女性には「老ける」なんて言ってはダメよ」

P「すみません…でも実際、肌だって綺麗だし全然出会った頃と変わってないっていうか、むしろあの頃より綺麗になったというか…」

留美「嬉しいことを言ってくれるのね。頭を撫でてあげる」ナデナデ

P「子ども扱いしないでくださいよ…俺だって中堅プロデューサーくらいの立ち位置なんですよ?」

留美「知ってるわよ。それでも、いつまでたってもPさんはPさんなの」

P「なんですかそれ…」




65: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:53:28 ID:UqP


留美「…」

P「…」

留美「……ねえ、Pさん」

P「……はい」

留美「……一緒に旅館まで来て、さらに一緒の部屋に泊まるなんて時点で予測できたかもしれないけど、言うわね」

P「……はい」

留美「私、Pさんが好きよ。ひとりの女性として」

P「…俺も、留美さんが好きです。ひとりの男として」




66: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:53:56 ID:UqP


留美「…」

P「…」

留美「……ありがとう、それと、これからもよろしくね」

P「……はい、こちらこそ」

留美「…Pさん、顔、見せて」

P「…はい。んっ…」

留美「……」

P「……」

留美「…ふふ、やっぱり、Pさんも好きでいてくれたのね。いつから?」




67: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:54:34 ID:UqP


P「どうでしょう…さすがに出会った時、ではないとは思うんですけど…でも、「可愛い人だな」って思ったのは最初からで…」

留美「あら、そんな瞬間あったかしら? 私、荒れてたわよ」

P「留美さん、他のお客さんの話を聞いていてこっそり笑ってたんですよ。覚えてないかもしれないですけど。その笑顔に惹かれて…」

留美「へえ…。…Pさんは気になる? 私がいつから…とか」

P「それも気になるんですけど……留美さんっ」ガバッ




68: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:54:56 ID:UqP


留美「きゃっ」

P「留美さんと……その」

留美「…ふふ、いいわよ。男の人だものね」

P「いや、こんな綺麗な人と両想になれて、キスまでしちゃったらこれはもう…浴衣、すごく色っぽいですし」

留美「私…据え膳かしら?」

P「はい」




69: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:55:37 ID:UqP


留美「ふふ、そう思ってくれるのね。それならたくさん味わってもらわなきゃ」

P「いただきます」

留美「ええ。でも、それが終わったら…たくさんお話ししたいわ。これまでのことと、そしてー」

留美「ー明るい未来の話を」




70: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:56:02 ID:UqP


ーーーーーーーーーーーーー


P「留美さん」

留美「何かしら」

P「その猫のぬいぐるみ、気に入ったんですか?」

留美「ええ、とっても。夫婦になってはじめての誕生日プレゼントだもの。ねー?」

P「ぬいぐるみに話しかける留美さんなんて、旦那さんしか見れませんね」

留美「ふふ、今度一緒にお出迎えしてあげるわ」




71: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:56:33 ID:UqP


P「はい。帰ってくるのが楽しみです」

留美「ふふ…♪」

P「…留美さん」

留美「なあに?」

P「…」

留美「…?」

P「…あー、何言おうとしてたんだっけ?」

留美「ふふ、どうしたの?」




72: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:57:20 ID:UqP


P「何か言おうとしてたことがあったんです…何かしら」

留美「何かしら?」

P「はい、なんだっけかな…?」

留美「…ゆっくり思い出せばいいじゃない。私たちにはたくさんの時間があるんだから」

P「……そうです、よね」

留美「ええ。だからとりあえず、私が話してあげるわね。これからはふたりの時間が3人の時間になることとか」

P「……え?」

留美「ふふ、驚いた?」




73: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:57:51 ID:UqP


P「え、それって、俺と留美さんの、え?」

留美「そうよ。2ヶ月目ですって」

P「や…やったー!」ギュウウウ

留美「こらこら、苦しいわよ」

P「あ、すみません、つい…!」

留美「いいの。喜んでくれてよかったわ」




74: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:58:13 ID:UqP


P「そりゃもう…! …あ」

留美「どうしたの?」

P「さっき言おうとしたことは忘れちゃいましたけど、代わりに今言いたい言葉が浮かびました」

留美「…何かしら」




75: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:58:36 ID:UqP


P「…留美さん、愛してます! これからも、ずっと、ずっと!」

留美「ええ、私もよ♪」




76: ◆dOYH2O5oOo 2018/10/20(土)01:59:46 ID:UqP


留美さん、婚姻届とか重いとかのイメージが先行してますけど
本当はすっごく可愛い人だと思います。笑うと目尻が下がるのが素敵。

それでは、またの機会に。




元スレ
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1539965904/

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