1 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/09(木) 18:50:55.80
ID:1u90rza50 式子内親王「そう結うわけで、
身の回りの世話は貴方の役目っ」もそもそ
男「何で俺がそんなことやら無きゃいけないの」
式子内親王「わたし皇族なんだよ?」
男「だから?」
式子内親王「貴方、日本人じゃないの!?」
男「日本人だよ」
式子内親王「だったらとっとと奉仕する」
男「……」
式子内親王「早く早く! 急に寒くなったなぁ、もう」
3 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10 /09(木) 18:52:47.13
ID:1u90rza50 男「おーい。ないしんのー」
式子内親王「なによ」
男「お前まだ布団かぶってんの?」
式子内親王「体温低いのよ」
男「ホットチョコ缶買って来たぞ」
式子内親王「感心な態度ね」
男「コンビニついでだからな」
式子内親王「褒めて取らすわ」
男「気にすんな。……飲んでいいんだぞ?」
式子内親王「プルトップあけなさい」
男「?」
式子内親王「手を出すと寒いでしょっ。
気が効かない庶民ねっ。いいからあけなさい」
男「お前、飲まなくて良いや」
5 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/09(木) 18:56:56.08
ID:1u90rza50 式子内親王「む。むぅ」
男「なんだよ」
式子内親王「そこの漫画とって」
男「あいよ」
式子内親王「ぷくくく」
男「ないしんのー。いい加減布団から出ろよ」
式子内親王「やぁよ。暖かいんだし」
男「重いだろ」
式子内親王「あたしは皇族なのよ。十二単で鍛えられた
ハイスペックボディなのよ?
これくらいの布団なんかなんでもないわ」
男「ハイスペックなら寒さは我慢しろ」
式子内親王「やーめーてーっ!? 布団は取らないで~!」
6 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10 /09(木) 19:01:54.42
ID:1u90rza50 式子内親王「むー」
男「どうした、ないしんのー」
式子内親王「漫画読んじゃった」
男「そか」
式子内親王「他には無いの?」
男「無い」
式子内親王「飽きたー。何か出してー。すっごいの」
男「無いよ」
式子内親王「貴方それでも未来人なの」
男「ここはその未来で俺の部屋だ。お前が過去人間なんだ」
式子内親王「わたし皇族なのよ!?」
男「訳わかんねぇ」
式子内親王「なんかだしてー。遊んでーっ」
男「……むぅ。ほら、携帯だ。
これでテキストサイトでも読んでろよ」
式子内親王「おおっ! 小さい箱琴!」
8 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10 /09(木) 19:05:56.90
ID:1u90rza50 男「おーい、ないしんのー」
式子内親王「なにー?」
男「メシができたぞ」
式子内親王「食べるー。むぅ、むぅ」
男「お前、結局一日中布団装備かよ」
式子内親王「暖かいのよ」
男「まったくだ。お前の脳みそがな」
式子内親王「いつでも駆け出せるようにアップは万全よ」
男「どこへでもいっちまえ」
式子内親王「で、ご飯は?」
男「チキンシチューライス」
式子内親王「おお! 未来食事。流動食! NASA的!」
男「お前本当に過去人間かよ」
式子内親王「もぐもぐ。そうよ? 才媛よ?」
男「才媛は布団かぶってシチュー食ったりしねぇ」
9 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10 /09(木) 19:10:37.71
ID:1u90rza50 式子内親王「ご馳走様でした」
男「おそまつさん」
式子内親王「いえいえ。お粗末なんてとんでもない。
大変美味でした。この味なら一日六回食べても飽きないわ」
男「そういうもんか?」
式子内親王「認めたくないけれど未来はさすがに未来ね。
貴方みたいな庶民がこんなに美味しいものを食べているとは」
男「いやそっちじゃなくて」
式子内親王「?」
男「一日六回も食事すんのかって話しだよ」
式子内親王「わたし皇族なのよ?」
男「だから何だよ」
式子内親王「む! ほら、昨日の冷たいのだしなさい!!」
男「麦茶かよ。判ったよ」
式子内親王「……四回くらいがはしたなくないのかしらね」
10 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:16:28.75
ID:1u90rza50 式子内親王「ぷくくく」
男「機嫌よいのか?」
式子内親王「いや、なんかすっごいのよ。恋空とかいって。
この時代の歌人ってなんかダラダラダラダラ長く書くのねー」
男「ケータイ小説だろ」
式子内親王「なにそれ?」
男「携帯電話……わかんねーか。
どこでも読める軽い文章のことだよ」
式子内親王「鴨長明がやってるよーなやつね」
男「?」
式子内親王「男に顔見せちゃうような恥知らずな女が
恋の歌詠んじゃったりして、なんか面白すぎる~」
男(褒めてんだかけなしてるんだかわからねぇ)
13 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:21:06.61
ID:1u90rza50 男「つか、さっきぐぐったけど。
ないしんのーも色々書く人じゃねぇの?」
式子内親王「そーよ。えっへんよ。才媛だからね。
恋の歌の達人よ。つまり恋の達人よ」
男「そうなんか?」
式子内親王「悩める子羊の救済者よ」
男「うさんくせぇな」
式子内親王「新三十六歌仙なのよ?」
男「でも三十六って多すぎねぇ?」
式子内親王「……」
男「それも『新』ってとこがさ。あれだよ。
『新四天王』とかもう登場時から雑魚くせぇじゃん?
ヤラレフラグっていうか」
式子内親王「わたし皇族なのよっ!?」
男「うわっ。怒るなよ」
式子内親王「不敬罪を適用するわよ。
貴方が靴下買うとき右側は黄色しか
売っちゃいけないって布告出すわよ」
男「地味な嫌がらせだなおい」
14 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:25:47.96
ID:1u90rza50 男「まぁいいや。どうでも」
式子内親王「恐れ入ればいいのよ」
男「恋愛マエストロのないしんのーは、あれなの?
元の時代へ戻ればやっぱラブなステディとかいるの?」
式子内親王「いないわよ?」
男「今はフリーなの?」
式子内親王「なに云ってるの。最初から居ないわよ」
男「へ?」
式子内親王「そこらの端女のように恥知らずじゃないのよ。
恋ってのは生涯一度くらいで十分なのよ。
で、後は夫に仕えて暮らすわけ」
男「おいおい。恋愛マスターじゃねぇのかよ」
式子内親王「マスターよ。達人クラスよ。
ジェダイでいえばヨーダよ。すごい勢いでライトセイバーよ」
男「でも恋愛経験は無しと」
式子内親王「歌とか小話なんて妄想で書くのよっ。
憧れが臨界ぶっちぎりで半端なリアルを蹴飛ばしたとき
はじめて脳汁でるような妄想が書けんのよっ」
男「うわやべ。こいつ腐だ」
16 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:32:06.45
ID:1u90rza50 式子内親王「あ。男性は別だからね?
やっぱある程度場数踏んでスマートな態度身につけないとね」
男「へー」
式子内親王「藤原俊成おじさまみたいにねっ!」
男「よく判らんな」
式子内親王「まー。そういうカッチョ良いひとがいたのよ」
男「へー」
式子内親王「カッチョ良いだけなんだけどね」
男「ほー」
式子内親王「だから貴方も相聞歌でも学んでおきなさいね」
男「へーへー。あ?」
式子内親王「?」
男「男には顔も見せないって、ないしんのー。
俺はいいのかよ? ずっと見まくりだぞ?」
式子内親王「庶民は数に入んないのよ」
男「……」
式子内親王「わたし皇族なのよっ!?」
男(なんかすげーダメ女だ。こいつ)
17 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:36:24.12
ID:1u90rza50 神無月四日
せっかく未来に来たのだから日記を書いてみようと思う。
清少納言も書いたというあれですよ。
彼女は冬は早朝が良いなどといってるけど、
それは嘘っぱちです。
もう全然嘘。
寒い。
とりあえず寒い。
目がさめると足の先が冷たい。
でもびっくりですよ。男の家にはお風呂があるのです。
湯殿ですよ。庶民の家に温泉が!!
しかも、いつでもはいれる! 温泉だからねっ。
ちょっと気に入りました。
湯治はよいものです!
11 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:18:33.22 ID:89iQI1lfO
支援支援支援支援15 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:28:55.53 ID:mRlGmdDj0
たまの緒よ 絶えねば絶えね ながらえば しのぶることの よわりもぞする
だったかな18 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:42:15.89
ID:1u90rza50 >>11
さんきゅなー
>>15
それのひと。
この限りなくマイナーなキャラに対して
一方的に萌えてやるのがこのスレの意義。19 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:47:14.33
ID:1u90rza50 式子内親王「男ー。男」
男「なんだよ」
式子内親王「湯浴みがしたい」
男「はいれば? すぐそこのドアだよ」
式子内親王「お湯張って」
男「へいへい」
式子内親王「あんまり熱くしちゃだめだからね」
男「ぬるめがいいのね」
式子内親王「そうよ。む、これはなに?」
男「シャンプーだよ」
式子内親王「ああ。髪を洗うのね」
男「あー。おまえ布団引きずって風呂覗き込むなよ」
式子内親王「なによ」
男「濡れたら大変だろ」
式子内親王「むぅ。寒いのよ」
男「早く風呂入ってあったまっとけ」
21 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:52:00.01
ID:1u90rza50 式子内親王「~♪ 良い湯ね~。さすが未来ね。
庶民の家にも湯治場がつくりつけとはねぇ」
式子内親王「部屋は一個だけど。まぁ、いいわよね。
狭いほうが落ち着くしね。生意気な供回りが一人だけど」
ちゃぷーん
式子内親王「髪の毛洗わないと。
なんだっけ。そうそうしゃんぷね。どれどれ。
こうかな」
びゅーるーびゅるー
式子内親王「おお。なんか出た」
びゅーるーびゅるーびゅーるーびゅるー
式子内親王「面白いわね」
びゅーるーびゅるーびゅーるーびゅるーびゅーるーびゅるー
式子内親王「無闇にいっぱい出るわね。楽しいわ」
22 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 19:56:15.31
ID:1u90rza50 男「あいつ本当に家事しねぇな。生活能力皆無だな。
一つ屋根の下ストーリーって
もっとこう甘酸っぱくねぇか? 常識で考えて」
男「漫画ちらかしやがってまぁ。
ほんと手間のかかるばか女だよまったく」
式子内親王「おとこーっ! おとこーっ!!」
男「どうしたっ!!」
式子内親王「お風呂が泡だらけにっ!」
ぽかっ
男「おめぇシャンプー使い切ってんじゃねぇよっ!!」
式子内親王「ぐっ。なによ! わたし皇族なのよっ!」
男「いいから掃除してから出て来い、あほ」
式子内親王「ふ、不敬罪なんだからねっ!」
男「メシ抜くぞ」
式子内親王「ばかーあほーっ。お前が卵を買うときに
可愛くてとても食べられないようなカエルの顔を
卵に落書きするように布告出すからねっ」
24 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:00:50.90
ID:1u90rza50 男「正真正銘のアホか……」
式子内親王「ばかーあほー」
男「風呂場ででかい声だすな、響く」
式子内親王「むぅむぅ」
男「それでいい」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「おーい」
男「……」
式子内親王「おーい。男ー。日本国民」
男「なんだよ」
式子内親王「着るもの」
男「あー」
式子内親王「着るものと布団」
男「布団は必須なのかよっ」
27 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:09:49.54
ID:1u90rza50 式子内親王「むぅ。良い湯だったわ」
男「髪の毛くらいちゃんと拭けよ」
式子内親王「貴方がやりなさい」
男「なんで?」
式子内親王「日本国民でしょ。皇族を敬いなさいっ」
男「敬ってるから自分でやれ」
式子内親王「敬ってるならいいのよ」ふきふき
男「……」
式子内親王「~♪」ふきふき
男「……」
式子内親王「~♪」ふきふき
男「あははは。Vipおもしれーっ」
式子内親王「……。……? ……っ!!」
男「どした?」
式子内親王「何で私が自分で拭いてるのよっ!
わたし皇族なのよっ!!」
男「麦茶飲むか?」
式子内親王「ええ。ちゃんとお砂糖を入れたのだからねっ」
28 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:14:28.75
ID:1u90rza50 男「なー」
式子内親王「なによ? むぅ。
ちゃんと掃除したわよ。お風呂」
男「びちゃびちゃじゃねぇか」
式子内親王「なによっ。文句あるのっ?」
男「いや、まぁいいや」
式子内親王「それでいいのよ。貴方は庶民なんですからねっ」
男「芋ようかん食べるか?」
式子内親王「食べるっ!」
男「……」
式子内親王「もぎゅもぎゅ♪」
男「なー」
式子内親王「なに? あげないわよ?」
男「じゃなくてさ」
式子内親王「なによ」
男「お前腕細いな」
式子内親王「女らしいのよ」
男「いや、細すぎね?」
30 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:18:40.30
ID:1u90rza50 式子内親王「私くらいの上級者になると腕細いのよ。
清楚で儚げな深窓の美少女内親王とはわたしのことなわけ」
男「口は相当にあれだな」
式子内親王「黙りなさい。もきゅもきゅ♪」
男「……」
式子内親王「なによなによ。そんな目で見て」
男「別に?」
式子内親王「私、斎院なのよ」
男「斎院ってなにさ」
式子内親王「未来人もモノ知らないわね。
神社で託宣したり舞ったりする美少女のことよ」
男「ああ、巫女さんか」
式子内親王「うん、それね」
男「巫女は萌えだな」
式子内親王「萌えってなに?」
男「可愛くて素敵な有様のことだ」
式子内親王「内親王である私にとっては当然の賛辞ねっ」
男「いや、巫女とお前は別だから」
31 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:22:57.56
ID:1u90rza50 式子内親王「まぁ、とにかく斎院っていうのは
なかなか大変なのよ」
男「なんで? ああ。修行とかか? 舞の練習とか」
式子内親王「それもあるけどね。物忌みとかねー」
男「物忌みってなに?」
式子内親王「んー。まぁ、部屋に閉じこもって断食するのよ」
男「なんでまた!?」
式子内親王「穢れを避けるわけよ。神に仕える身だからね」
男「……ふむ」
式子内親王「このようかん美味しいわね~♪」
男「おまえ皇族なんだし。
そういう辛い役目は他のやつにやらせればいいんじゃね?」
式子内親王「ばっかじゃない。斎院ってのは皇族しかなれないの」
男「ああ」
式子内親王「しかもとびっきりの美少女しかなれないのよ。
わたしのような才女こそが相応しいのよっ」
32 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:27:28.17
ID:1u90rza50 男「でもなー。痩せてまでやることも無いんじゃね?」
式子内親王「いいのいいの。気にしないで。
皇族なんて別にほかに仕事も能も無いんだから。
戦いもしないわ畑にも出ないわで
ご飯食べて贅沢してるんだからこれくらいしないとねー」
男「そういうもんかな」
式子内親王「そういうもんよ。四季を愛でて、漢書を整理して、
政をやって、たまーに歌を詠んで暮らすのよ。
やっぱ少年よね。少年の肉のついてない胸板を細く撫でるような
禁断の少年愛と相聞よっ」
男「おまえって頭わるいのな」
式子内親王「わたしは才媛の誉れ高い皇族なのよっ」
男「シチューライス好きか?」
式子内親王「あれは美味しいわね。
さすがの皇族もびっくりだわ」
男「んじゃ、今日もそれな」
式子内親王「望むところよっ」
33 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:32:26.19
ID:1u90rza50 神無月五日
私は痩せているのだそうで、
肉が足りてない、と男が言うわけですよ。
この男は庶民でありながら現在私の家主。無愛想で口が悪いです。
だけど男の作るシチューライスなる物は
すこぶる美味であると記さなくてはなりません。
あれはびっくりグルメです。
思い出しただけでもおなかが減ります。
とにもかくにもこの口の悪い家主は
皇族である私を思うが侭に愚弄する。
もちろん私とて黙っているわけにはいかない。当たり前でしょ。
皇族である誇りに賭けてしかるべき報いを受けさせてやってる。
例えばこのように。
34 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:37:59.63
ID:1u90rza50 男「つべてっ!?」
式子内親王「すーっ。すーっ」
男「……。おい」
式子内親王「すーっ。すーっ」
男「寝てるのかよ」
式子内親王「すーっ。すーっ」
男「ちっ。冷たい足先を布団に突っ込むなっての。
お前にはおまえ自身が不当に占領した布団があるだろうが。
もどしなさいよ、っと」
式子内親王「すーっ。すーっ」
男「まだ早いな。もう一眠り。……ふわぁ、おやすみ」
式子内親王「すーっ。すーっ」
男「冷っ!? お、おまえっ」
36 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:42:42.04
ID:1u90rza50 式子内親王「すやすや」
男「寝てるのか?」
式子内親王「すーっ。すーっ」
男「寝てるなら鶯のマネを」
式子内親王「ほけきょ」
男「……」
式子内親王「すやすや」
男「お前な。このあほないしんのー」
式子内親王「むぅむぅ。まだ暗いじゃない」
男「なら起こすなよっ!」
式子内親王「足の先が冷たいんだもん」
男「お前は肉が足りないんだよ」
式子内親王「くっ。皇族に対して言いたい放題ね」
男「皇族らしい振る舞いを身につけろっての」
37 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:47:08.07
ID:1u90rza50 式子内親王「足の先っちょ冷たい」
男「……」
式子内親王「冷ーたーいー冷ーたーいー」
男「どうしろと?」
式子内親王「お布団とっかえて」
男「同じ布団じゃねぇか」
式子内親王「そっちのほうが暖かい」
男「なんで」
式子内親王「体温が違う」
男「そうか」
式子内親王「足の先っちょ冷ーたーいー」
男「わかったよ」
式子内親王「やった!」
男「うっわ、ほんと布団冷たいっ」
式子内親王「私は暖かい」
男「納得いかねっ」
式子内親王「もう寝る。静かにしてね」
男「酷っ」
式子内親王「ぬくーいっ」
38 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:51:51.94
ID:1u90rza50 神無月六日
昼にはあさりシチューライスを食べました。
あさりシチューはクラムチャウダーという名前らしいですが
私にはアサリの入ったシチューだとしか判りません。
今日始めて知ったのですが、このシチューという食べ物は
未来の倭国の発明ではなく異国からの入れ知恵なのだとか。
どこの誰だかわからないがなんて美味しいものを考えるのだろう。
父に頼んで太子の号を下賜すべきだと思います。
男が帰ってきたので早速からかって遊ぶことにします。
39 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 20:57:59.14
ID:1u90rza50 男「ただいまー」
式子内親王「おみやげ」
男「おかえりなさい、はないのかよ」
式子内親王「はいって。遠慮しないで」
男「しねーよ。俺の家だよ」
式子内親王「むぅむぅ」
男「相変わらず布団かよ」
式子内親王「これが落ち着くのよ。この確かな重みと暖かさが。
十二単に慣れたこの高貴な身体に安心感を与えるの」
男「ヴィジュアル的には着替えるのも不精な
引きこもりの腐女子にしか見えないぞ」
式子内親王「腐女子萌えね」
男「お前はなにを学習してるんだ」
式子内親王「ちがうの?」
男「まー。そういう性癖のバカも世界には存在するが」
式子内親王「またまたぁ。照れちゃってこのこの」
男「なんだかなぁ」
40 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:03:06.45
ID:1u90rza50 式子内親王「まあそれはそれとして」
男「なんだー?」
式子内親王「暇。遊びたい」
男「む。漫画は?」
式子内親王「もうハンターXハンター読みおわった」
男「そか」
式子内親王「キルアの新しい能力がすごくてね」
男「黙れ」
ぽかっ
式子内親王「くっ! わたし皇族なのよっ!?」
男「皇族だろうがなんだろうが読んでない漫画のねたはばらすな」
式子内親王「むぅむぅ」
男「ごめんなさいしろ」
式子内親王「すー。すーっ」
男「都合悪くなると布団に隠れて寝るのやめろっ」
式子内親王「口うるさい家主だわ」
男「ないしんのーっ」
式子内親王「判った。云わないわよ」
41 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:07:20.61
ID:1u90rza50 男「で?」
式子内親王「暇なのデス。なんかして楽しませて」
男「なにを?」
式子内親王「蹴鞠とか」
男「よりによって蹴鞠かよ」
式子内親王「蹴鞠出来ないの?」
男「ああ」
式子内親王「管弦は?」
男「楽器は口笛以外出来ない。そして口笛は下手だ」
式子内親王「うっわ、雅が一切無いわね」
男「ほうっておけよ」
式子内親王「趣味とかなにも無いわけ?」
男「Vipかな」
式子内親王「びぷ?」
男「詮索無用だ」
式子内親王「なにしてるのよ、普段」
男「改めて聞かれると困るな」
42 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:11:22.82
ID:1u90rza50 式子内親王「この部屋、貝合わせの道具も無いんだもんね」
男「そんなこといわれてもね」
式子内親王「むぅむぅ」
男「スマブラでもやりますか」
式子内親王「あれは男がホームラン攻撃しかしないからいや」
男「さいですか」
式子内親王「むぅむぅ」
男「仕方ないな。管弦は出来ないけど、なんかMP3でもかけてやるよ」
式子内親王「なにそれ」
男「音楽だよ」
~♪
式子内親王「おお!」
男「これでいいか?」
式子内親王「うんっ。風情だよね。やっぱり笙だよねっ」
男「たぶんサックス」
式子内親王「鳴り物だよねっ」
男「それはバスドラ」
式子内親王「鼓と馬頭琴だよねっ」
男「スネアとギター」
式子内親王「ビートルズはいいねっ!」
男「知ってるんじゃねぇか!」
44 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:16:48.68
ID:1u90rza50 式子内親王「やっぱり暮れかけね。
こうして楽の音に身を浸しながら見る夕焼けは格別ね」
男「そうかー?」
式子内親王「この部屋、夕焼け綺麗だもの」
男「西日が当たるきっつい部屋なわけですが」
式子内親王「黒い鳥の帰るのが二羽三羽、
夕日にかかるって風情があってとても良いわー。
というのには同意するわ」
男「なんだそりゃ」
式子内親王「清少納言よ」
男「聞かなかったことにしよう」
式子内親王「清少納言知らないの!? 有名人なのに」
男「いやそうらしいデツネ。ないしんのーも有名人らしいでつよ」
式子内親王「?」
男「いいんだよ、気にしないで。もうここはこの時代なんだから」
式子内親王「よく判らないわ」
男「馬鹿だからな」
式子内親王「っ! わたしは皇族なのよっ!」
男「はいはい」
47 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:21:06.71
ID:1u90rza50 神無月九日
男はバイトなるものに毎日出かけます。
仕事だそうです。話を聞いても今ひとつ判りにくいのですが
民草の間にある食事処で給仕のような仕事をしているそうです。
膳の司のようなものらしい。
そういう仕事をしているから、
こんなに美味しいシチューが作れるのかと尋ねたら
すごく嫌そうな顔で教わったのだといいました。
なにがいけなかったのかな?
男のことはよく判りません。
未来人というのは複雑怪奇です。
50 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:25:30.65
ID:1u90rza50 男「ただいまーっと」
式子内親王「おかえり」
男「おう」
式子内親王「それ、なに?」
男「梨だよ」
式子内親王「おおおーっ!」
男「食ったことあるのか?」
式子内親王「あったりまえよ! 梨っていえば
日本書紀のも登場する重要な果物なのよ」
男「へー」
式子内親王「はやく、はやくっ」
男「おー。切ってやるよ」
式子内親王「わくわくだね」
男「お前は子供かよ」
式子内親王「未来の梨だよ!? すごいかもよ! 例えばさ!」
男「なに?」
式子内親王「勝手に自分で皮がむけて割れて皿に乗るとか!」
男「……」
式子内親王「で『食ベテ良イヨー』って鳴くのっ!」
男「怖ぇぇぇー」
45 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:19:46.05 ID:E87mD0Sg0
一人で黙々と書き続けるお前に感動した46 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:20:55.57 ID:zn2yFh/r0
支援49 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/09(木) 21:23:32.56 ID:Ipetjs0GO
自分でオナニーしてるから他人の支援なんて関係ないんだろな素晴らしい51 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:30:35.76
ID:1u90rza50 いや支援嬉しいよ。くじけそうになるときありがたいよー。
でもあれだ。
実在の人物萌えSSとか需要がないのは判ってるからさー。
好きなように書いてるからオナといえばオナなのだ。
レスが出来ないのは、お猿と投下の関係でだよ。
レスしちゃうと4分投下が出来ないのだ。
無言投下みたいで、ごめんな。56 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:35:03.19
ID:1u90rza50 式子内親王「しゃくしゃく♪」
男「もぐもぐ」
式子内親王「しゃくしゃく♪」
男「どうよ」
式子内親王「これは相当にすごいわね。瑞々しくて
甘いわ、びっくりよ!」
男「良かった」
式子内親王「ふっ。私もまだまだ甘いわね」
男「なにが」
式子内親王「さすが未来! かってに皮がむけるのも
捨てがたい魅力だけど、味を進化させたのねっ!
うかつにもその方向性は想像しなかったわっ」
男「しろよ」
式子内親王「しゃく♪ 美味しいわね~」
男「だなぁ。美味いな」
式子内親王「いつもこんなの食べてるの?」
58 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:先行6差で逃げ書き中 2008/10/09(木) 21:40:50.75
ID:1u90rza50 男「いやぁ、こんなのはめったに食べないな」
式子内親王「あら。もしかしてすごく高価なの?」
男「そういうわけじゃないんだけど」
式子内親王「?」
男「男の一人暮らしだと、
どうしても果物とかは中々食べないな」
式子内親王「ふぅん」
男「経済的な貧しさというより、
精神的な貧しさに起因するような気がするな」
式子内親王「雅が足りてないのね」
男「そうなるな」
式子内親王「私がきたから雅やか濃度が上がって
梨が発生して食べられるようになったわけねっ」
男「まぁ、そうとも云えなくは……ないのか?」
式子内親王「感謝することねっ!」
男「へいへい」
式子内親王「美味しいわぁ。梨大好き!」
59 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:44:56.64
ID:1u90rza50 神無月十一日
男に臨時収入があったらしいです。
よく判らないがFXで売り抜け大成功などといっていました。
余りにも喜んでいたので、おめでとうね、と云ったら
びっくりした顔をしていました。
礼もいえないと思われていたらしい。屈辱です。
臨時収入でえび入りのシチューライスを作ってもらいました。
びっくりした。
美味しいを越えている。
冬の夜空にひらめく稲妻のように、
一瞬のきらめきの後、遅れるようにして感動が広がる。
なんて素晴らしいご馳走だろう。
えび入りのシチューライス。私の人生に刻まれた。
61 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:49:47.72
ID:1u90rza50 男「どうした」
式子内親王「感動してるの。美味しぃ~」
男「そんなに好きか」
式子内親王「うん、うんっ!」
男「いっぱい食え」
式子内親王「いいのかな、こんなに美味しくて」
男「たいしたものじゃない」
式子内親王「そんなこと無いよ?
えびとたまねぎは甘くて美味しいよ?」
男「そりゃ良かった」
式子内親王「うはーん。ご馳走様でしたっ!」
男「お粗末さまでした」
式子内親王「うわぁ、美味しかったよ。私は満足だよっ」
男「そうか」
式子内親王「だいたい清盛とおなじくらいヘブン状態だよっ」
男「Vip用語覚えるのだけはどうにかならんかな」
式子内親王「言葉は文化だもの。覚えちゃうものだよ」
62 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:54:57.87
ID:1u90rza50 男「もう十日か」
式子内親王「うん?」
男「ちったぁ肉ついたか」
式子内親王「まぁね。多少は。……なによ。
美味しいものにはちゃんと感謝してるんだからねっ」
男「よし、週末出かけるぞ」
式子内親王「えーっ。いやだ。パス」
男「なんでだよ」
式子内親王「高貴な人間は陽の光に当たらないのよ。
どうしてもというのなら牛車用意してくれる?」
男「この時代のどこに牛車あるんだよっ」
式子内親王「ぇー」
男「えー、じゃねぇよひきこもり」
式子内親王「だって私ニートだもん」
男「胸はるなよ」
式子内親王「別に外出たくないよ。おうちでVipしてるよ」
男「ほんと腐れだな」
式子内親王「む。それでいいのっ」
男「せっかく未来に来たんだしよ」
式子内親王「だって」
男「だって?」
式子内親王「……」
63 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 21:59:43.41
ID:1u90rza50 式子内親王「それにさ。ほら、十二単も、
最初の夜でビリビリになっちゃったしっ!」
男「ぐちゃぐちゃだわな」
式子内親王「着て行くものも無いしさ。
焚き染める伽羅も無いしさ。扇さえ持ってないしさっ」
式子内親王「えーっと寒いしさ!
お布団に包まっていたほうが良いと思うよ。
そうだ! そうしよー! やっぱ休みは家でVipでしょ!」
男「ふーん」
式子内親王「あっ。なんか馬鹿にしてない?
馬鹿にしてるね。その視線。むぅ。庶民の癖にっ!!
私は皇族なんだからねっ!!」
男「皇族ならびびんなよ」
式子内親王「怯えてなんかないわよっ」
男「服スレ読んでるとか?」
式子内親王「あそこ読むとマジで外に出て行けなくなるのよ」
男「あー」
式子内親王「生まれてきてごめんなさいな気分」
男「あー」
65 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 22:04:23.35
ID:1u90rza50 男「近場回るだけなら、俺の服でも大丈夫だろう」
式子内親王「だって男の服でしょ」
男「そうだよ」
式子内親王「わたし女なんだよ」
男「未来世界では、区別は緩めなんだよ」
式子内親王「男装?」
男「んー。まぁ、そう、なのかな」
式子内親王「男装か……。それって白拍子?
男装の美少女? うわ、なんか良いかも。タブーにふれる
ゾクゾク感かもしれない。新しい地平に目覚めそうっ」
男「こいつ脳を開いたほうが良い気がするんだよな」
式子内親王「うーん」
男「行く気になったか?」
式子内親王「……うん」
男「そか。週末な。臨時収入はいったしな」
式子内親王「仕方ないから、皇族のわたしが
庶民の生活というものをこの眼で確かめてあげる。
貴方はその随行としてついてくる事を許可するんだからねっ」
男「俺がついていくのか?」
式子内親王「うん」
男「どうにかならんのかなぁ、こいつの言動」
66 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/09(木) 22:07:20.83
ID:1u90rza50 神無月十二日
今日は男と遊んだ。オセロというゲームをやった。
楽しい。
最初に4回半ほど負けたが、そのあと学習しましたよ。
16回連続で男を負かしたところで泣いて謝ってきたので
謝罪を受け入れてあげた。
ふふん。皇族には度量も必要なのだね。
そのあと、男の作ったシチューライスを食べた。
今日はかりふらわという野菜が入っているのだという。
ほろほろとくずれてなんとも不思議な味わいだ。
大変美味かったので美味いと伝えると
そりゃ良かったな、といわれた。うむ、良い事だ。
87 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 00:53:21.05
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「おなかがいっぱいになった!」
男「おう」
式子内親王「いっぱい!」
男「おう」
式子内親王「他に何かいうことはないのっ?」
男「お前の腹だろうが」
式子内親王「むぅ」もそもそ
男「いい加減布団かぶるのやめたら?」
式子内親王「やだ」
男「さいですか」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「暇ねー」
男「そうなん? 携帯小説とかは?」
式子内親王「おなかいっぱいでそういう気分じゃない」
男「そっか」
式子内親王「貴方、ちょっと座りなさい」
90 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:03:42.18
ID:1IBD/bxU0 男「へいへい、なんですか」
式子内親王「頭をこっちに。髪の毛を梳きます」
男「なんで?」
式子内親王「梳きたいから」
男「……」
式子内親王「文句ある?」
男「えー」
式子内親王「わたし皇族なのよっ!」
男「へいへい」
式子内親王「む。頭の位置が低いわよっ」
男「そうか? こうか?」
式子内親王「今度は高すぎよっ」
男「ぐぐ、なんかすげぇ不自然な姿勢だな。
なんか腰の角度が……っパなくキツイんすけど」
式子内親王「惰弱な意見ね。普段の修練のほどが知れるわ」
男「屈辱ポーズの練習なんかしてねぇよ」
式子内親王「むー。だらしないわね。ここに来なさいっ」
ぎゅむっ
男「……」
92 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:08:42.75
ID:1IBD/bxU0 しゅるん、しゅるん♪
式子内親王「ふんふん♪」
男「……」
式子内親王「おお。しゅるん♪」
男「えっと。なんだ。楽しそうな」
式子内親王「黙りなさい平民。あなた、これはかなり
光栄なことなのよ。感謝のあまり失禁しないように
気をつけたほうが良いくらいよっ」
男「そうかなぁ」
しゅるん、しゅるん♪
式子内親王「髪を梳くなんて楽しいわ」
男「そうなんか」
式子内親王「指の間をするすると抜けていくの。
ひんやりして小川の小魚のよう」
男「そんなたいした髪じゃない」
式子内親王「歌人ってのは主観的な心理領域の住人なのよ」
93 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:13:00.06
ID:1IBD/bxU0 男「なんか、くすぐってー」
式子内親王「我慢なさい」
しゅるん、しゅるん♪
式子内親王「ふんふん♪」
男「むー」
式子内親王「ん。出来た」
男「変な髪形になったりして無いだろうな?」
式子内親王「失礼ね。梳いただけよ」
男「そっか。何の意味があるんだ?」
式子内親王「意味?」
94 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:17:04.75
ID:1IBD/bxU0 男「髪型変えるんじゃなければなんだ?
整えたのか? 洗髪的な発想か?」
式子内親王「意味なんて無いわよ?」
男「そうなのか」
式子内親王「ただの遊びよ」
男「まぁ、いいけど」
式子内親王「?」
男「くすぐったかったけど、気持ちよかった。
髪の毛触られるのって悪くないなー」
式子内親王「うっ」
男「なんかお前が来て始めて癒された気がする」
式子内親王「わたし皇族なのよっ!
庶民としてもっと敬いの気持ちを持ちなさいっ」
95 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:22:02.31
ID:1IBD/bxU0 神無月十二日
男の髪を梳いてしまった。
楽しかった。
困ったことにちょっと気持ちよかった。
96 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:26:03.82
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「……むーっ、Webも目が疲れたわね
おとこー、おとこー。麦茶のみたーい」
しーん
式子内親王「そだった。男は出仕……じゃなくて
バイトいってるんだった。自分で入れなきゃね」
いそいそ
式子内親王「んきゅっ。んきゅっ」
式子内親王「それにしても……。850年だもんねー。
そりゃ倭国も様がわりだわっ。全然さっぱり判らないし。
歴史とかもあり過ぎでよく判らない。
異国に負けるのはともかく西域じゃなくてそのもっと
向うと戦争するとはね~」
97 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:30:12.69
ID:1IBD/bxU0 くりっく、くりっく。
式子内親王「なんか色々変わっちゃってまぁ。
変わってないのは月と四季と山々くらいのものね。
――なんだ。じゃ問題ないじゃないね」
式子内親王「……」
式子内親王「いやいやぁ。乙女の身だしなみも基準も
大変更でつよ。もう偉いことでつよ」
式子内親王「だいたいねっ」
どんっ!
式子内親王「戦争に負けたからミニスカートが
流行るってのはどういう了見ですかね」
式子内親王「あんなはしたない衣装が流行って……。
っていうか、衣装じゃないよねっ。
むしろ衣装の欠如だよねっ!!」
式子内親王「む、わたしいま良いこといった? いった?」
98 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:34:15.64
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「とにかく、あんなのが流行るとは
我が神国日本も大没落ですよ!
別雷命のサンダガですよ。皇族として看過できない
重大な事態ですよっ。それになんですかっ。
おっぱいまで半分だしちゃってまぁ! 護国の危機ですよっ」
しーん
式子内親王「……」
式子内親王「やっぱ時代時代の服装ってのはあるわけだし
時代時代の美醜の感覚ってのもね……」
式子内親王「えーい! そういうとこまで負けてどうするのよっ
えいっえいっ。このえっちっちフォルダめっ!」
くりっく、くりっく。
式子内親王「こっちは国産4祈祷エンジンなのよっ。
祈りの力よ神風よっ。無駄な肉がないっ。
空力特性に優れたシンメトリカルデザインなのよっ。
高速巡航時の安定性に優れた貧乳よっ。
だいたい貧しいって文字がいけないわ。
清貧よ。いやむしろ積極的な入寂思想よっ。
エコロジーっ! それは地球に優しくわたしに優しくないッ。
ふーっ。ふーっ」
式子内親王「うわぁ。でかけたくないー。ひきこもってたいーっ」
99 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:39:10.54
ID:1IBD/bxU0 神無月十四日の一
審判の日が来てしまった。
朝早く目が覚めたので男に内緒でお風呂の準備をする。
正直気が重くてしょうがないのです。
外になんか出かけたくない。
きっとわたしは過去人間として
未来人の中で笑いものになるのでしょう。
余りにも気が重くて腹が立ったので、
男の枕をそっと抜いてやった。首が痛くなると良いのに。
そんな悪戯はさておき、あれでもいまは家主です。
好意を持って外に連れ出してくれるというのだから
恥をかかせるわけにもいきません。
湯浴みを済ませなければ。
今日は布団をかぶっているわけにも行かないのです。
ああ! 雷とかふらないでしょうか!!
101 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:43:12.34
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「こ、こうかな?」
男「おう、いんじゃね?」
式子内親王「どっかおかしくない?」
男「平気だよ」
式子内親王「ちゃんと見なさいよっ」
男「見たってば。シャツもいい感じだし、いんじゃね?」
式子内親王「むぅむぅ」
男「なんだ? 布団がないと不安なのか?」
式子内親王「そんなことないわよっ。
わたしは皇族なんだからねっ! 臆病で惰弱な
態度とは無縁の世界の王者よ。ヘラクレスオオカブトよっ」
男「んじゃいくか」
式子内親王「ちょっと、まっ! あ、あのっ」
男「なんだよ」
式子内親王「顔を隠す扇がないよ……?」
男「未来ではそういうのは使わないんでーっス」
式子内親王「ううう。何で皇族たる私が下賎の
女のような恥辱をっ」
男「ほら。いくぞー」
103 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:47:49.70
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「街だ……」
男「お前、初めて空中から現れたときは
夜中だったもんな~。昼間の街は初めてじゃね?」
式子内親王「うん」
男「緊張してるな」
式子内親王「う、うるさいっ。多少は仕方ないのっ」
男「まぁな」
式子内親王「な、なんか。目立ってない?
あたし、じろじろ見られてないっ!?」
男「あー」
式子内親王「や、やっぱり何か変かな!?
未来人のコスプレしてるのがばれたかなっ」
男「せめて変装って云えよ」
式子内親王「隠しきれない皇族のオーラが
高貴な波動となって私に注目の熱い視線を
注がせてるのかなっ」
男「あー」
式子内親王「ど、どうしよっか!? おうちに戻ろうかっ。
そ、そ、それとも戦りますかっ。おめおめと
虜囚の憂き目はみないんだからねっ」
104 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:52:09.06
ID:1IBD/bxU0 男「おちつけ」ぽかっ
式子内親王「むうっ」
男「別にとって食われりゃしないよ」
式子内親王「判らないわよっ。850年もたてばっ」
男「つまりな。お前の髪の毛が長くてだな」
式子内親王「へ?」
男「この時代には、そんな腰まであるような
ロングのストレートの立派な黒髪ってのは少ないんだよ」
式子内親王「へ? あ。そういえば、見ないわね……」
男「だから見てるんだよ」
式子内親王「髪は女の命よ」
男「そうな」
式子内親王「いいの? 隠さなくて?」
男「別に、珍しいだけで悪い事してるわけじゃないんだよ。
それに……。あんまりその髪が綺麗ですごいから
みんな見とれてるだけだ」
式子内親王「……綺麗かな」
男「ああ、綺麗だぞ。ちょっと見ないくらいな」
式子内親王「そか……。ま、まぁねっ! わたし皇族だからねっ」
男「やれやれ」
105 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 01:56:35.05
ID:1IBD/bxU0 男「とりあえずここだ」
式子内親王「ここは?」
男「あー。服を買うところだ」
式子内親王「ふむふむ」
男「ないしんのーの今着てる服は俺のなので」
式子内親王「そうよ?」
男「ここでもうちょっと女向きのに変える」
式子内親王「十二単とか?」
男「ねーよっ」
式子内親王「ううう。よく判らないから任せるわ」
男「俺だって男だから判らねぇよ」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「じゃぁどうすんのよっ! 役立たずっ!」
男「とにかく入るぞっ」
店員「いらっしゃいませ~」
式子内親王「う、うかがい、まし、ました」
男「そういうのは云わなくていいの」
106 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:02:19.71
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「(小声)じゃ、ど、どうすんのよっ」
男「(小声)任せろ」
式子内親王「(小声)う、うんっ」
店員「どうされましたー? お見立てしましょうかぁ?」
男「あー。うん」
式子内親王 びくびく
男「こいつ、帰国子女なんです。服がないから適当に見繕って
くれません? えーっと、予算は、これ、こんなもんで。
ものとしては上下一式に、下着は四セットくらいと、
シャツかワンピか二枚くらいで。
――で、いいよな?」
式子内親王 びくっ。こくこく。
店員「判りましたぁ。あの、日本語のほうは……」
男「あー。文法とか単語とか怪しいけど、大体はー」
式子内親王「(小声)何いってるのよ。あんた達のほうが
大和言葉が乱れきってるでしょっ!!」
男「(小声)だーっ。今はあわせておけよっ」
店員「判りました~。あらあら、美人なお嬢様ですね!
こちらへどうぞー。採寸だけ先にしますね~」
108 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:06:46.60
ID:1IBD/bxU0 神無月十四日の二
正直かなりいっぱいいっぱいでした。
斎院になるための修行の日々がなければ
心を砕かれてしまっいましたよ。まったくもう。
あの店員のうるさいこと!
もちろんそういう女房(※1)はあの頃もいたわけだけど、
耳元でかしましいこと、この上ありません。
何度口の中に冬瓜を突っ込んでやろうかと思ったか!
結局、黒と白の服を選んでもらいました。
とにもかくにも露出の少ないものをという
希望を出した末にぐるぐる回り道をしての選択です。
この時代の服はどれも布地が少なすぎ軽量すぎます。
そしてなにより、肌の露出が多すぎます。
それはそれで時代の特徴だと思うので尊重しますが
皇族の私が慎みのないような装束を着るわけにもいかないのです。
男に奇異の目で見られなければ良いけど。
※女房:女性の使用人。和風宮廷メイド。
109 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:12:13.18
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「むぅ」
男「どうした」
式子内親王「疲れた」
男「そっか。……そこ、座るか」
式子内親王「うん」
男「なんか飲むか?」
式子内親王「いらない」
男「固くなるなよ。少しは慣れたか?」
式子内親王「少しはね」
男「服はどうだ?」
式子内親王「やっぱり十二単に比べると軽くて頼りないわね」
男「ふむ」
式子内親王「でも、この服は好きかな。だって脚も黒くて
露出が全然ないし! 軽くて頼りないのは一緒だけど
布地は多いしね。それになにより、歩きやすいわね。
それだけは認めなくっちゃ」
男「女も出歩く時代だからな」
110 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:16:17.56
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「おとこっ」
男「なに?」
式子内親王「えーっと。それで、どうなのよっ」
男「何が?」
式子内親王「この衣装よっ」
男「あー。うん、いい値段だったな」
式子内親王「えっと、ありがとね。
いつもお世話になって服まで買ってもらって
この服も気に入っていて嬉しいです。はい。
私もあなたに奉仕されて感謝しています
ってそういうことじゃなくてッ!」
男「ふむ?」
式子内親王「どっか変なところはない? ってことよ」
男「ないよ」
式子内親王「む、むぅ」
男「だいたい買ったばっかりで変だったら不良品だろ」
式子内親王「馬鹿じゃないっむーっ」ぽかっ
男「う、ううっ」
式子内親王「そうじゃなくっ」
男「うー?」
111 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:21:23.98
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「もういいわ。んで、次は何?」
男「いや。服も買ったし、昼飯食って、散歩したし。
海も見えたしな、遠くにだけど」
式子内親王「ええ。そうねっ。あれは綺麗だった♪」
男「海は見たことあるのか」
式子内親王「まぁね、沢山じゃないけど」
男「夜ご飯なんだけど、どうする? 何か希望があるか?
食べてみたいものとか。ネットばっかりやってるから
いろいろ知ってるんだろう?」
式子内親王「ホットドッグは中々美味だったわね」
男「そうかそうか」
式子内親王「でもやっぱりご飯が食べたくなっちゃうところが
日本民族なのよね。〆にはそれって云うか」
男「夜はご飯にするか?」
式子内親王「男のシチューライスがいい」
男「いいのか? なんか外食奢るぞ?」
式子内親王「ううん。それがいい」
男「そっか、んじゃ。帰るかっ」
式子内親王「うんっ!」
男「……あーっと。服さ。似合ってるぞ?」
112 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:27:07.95
ID:1IBD/bxU0 神無月十四日の三
夜は家に帰ってシチューを食べました。
男の作るこの料理にはいわく云いがたい
摩訶不思議な成分が含まれていて恥ずかしながら
皇族のわたしとしてもその魅力には抗し難いのです。
本日のシチューには牡蠣が入っていました。
有明のですよ。
未来でも中々のご馳走なのだと、男が言っていました。
一緒に買い物に行ったので、梨もかってきたのです。
未来の食生活はワンダフルです。
びば! 未来!
びば! シチューライス! フォーエバー!
113 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:34:47.21
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「ごちそうさまっ!」
男「お粗末さまでした」
式子内親王「やっぱりシチューは神の食べ物ね」
男「そうかなぁ」
式子内親王「そうよそうよ。あなたもVipのみんなも
シチューに対する評価が低いと云わざるを得ないわね」
男「スレ立てたのかよ」
式子内親王「もう学習したのよ。美少女斎院はこの程度の
技術はあっというまに習得できるわけ」
男「なんかダメ人間化がすすんでるような」
式子内親王「いいのいいの。ああ、美味しかったぁ」
男「うわ。食ってすぐごろごろし始めたっ」
式子内親王「心地よいのよ」
男「っていうか、せっかく買ってやったのに
帰ったら速攻で脱いで布団装着かよ」
式子内親王「これが落ち着くんだもの」
男「なんだかなぁ」
式子内親王「暖かいし重いし隠れられるし最強よ」
男「こいつ変な皇族だ」
114 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:40:01.52
ID:1IBD/bxU0 男「あーそうだ」
式子内親王「なに?」
男「これやるよ」ぽいっ
式子内親王「?」
男「香水だよ」
式子内親王「香水? 香を水に移したものだったよね」
男「うん」
ふわっ
式子内親王「あ。これ……」
男「うん」
式子内親王「伽羅だ」
男「そう」
式子内親王「あ、あなたっ。こ、こ、これどうしたのよっ!
はや、はやっ」
男「え? え?」
式子内親王「どこから盗んできたのよ、こんな高価なものっ!
正倉院の宝物庫からでも盗んできたの!? まさか殺し
までしたんじゃないでしょうねっ!!」
男「違うっての!」
115 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:44:31.52
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「そ、そっか。この時代じゃそこまで高価で
貴重な宝物でもないわけね?」
男「まぁそうだな」
式子内親王「でも……。うん、ありがとうね。
懐かしい。沈香なんてかっこいい贈り物だよっ」
男「お、素直に感謝された」
式子内親王「失礼なっ。わたし皇族なのよっ!
しかるべき時に謝意を示す言葉くらい覚えてるわっ」
男「気に入ってくれりゃいいよ」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「ちょっと、つけてみよかな」
男「うん、いんじゃね?」
式子内親王「う、うん。じゃ……」
男「……」
式子内親王「……こうかな」
男「ちょこっとで良いらしいぜ?」
式子内親王「ん。判った」
116 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 02:49:30.62
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「どうかな? 甘くて落ち着く匂いだよねっ!」
男「えーと」
式子内親王「わっかんないかなぁ」
男「面目ない」
式子内親王「んー。もっとこっちこっち」
男「いや、良いから」
式子内親王「いいから、じゃないよ。確認しなきゃっ。
ほら、ここのね、首筋にね。いま髪かきあげるからね?」
ふわり。
男「っ!」
式子内親王「判った?」
男「お、おう」
式子内親王「すごいよね。有難うねっ!」
男「おう」
式子内親王「?」
男「なんでもない」
式子内親王「いやいや。見直しましたよ、男を!
こんなさりげない必殺プレゼントを持っているとは
まるで殺人ウィルスのように危険だよねっ」
男「どんなだよっ!」
121 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:24:58.73
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「これはさすがに何かお返しをしないとね」
男「いや、いーから」
式子内親王「むー。なによ。
わたしの好意がいやだというの?」
男「ないしんのーの好意は
たいてい迷惑な結果を生むからなー」
式子内親王「失礼な男ね。なにが欲しいの? 地位? 金?」
男「お前持ってるのかよ」
式子内親王「……えー」
男「だから気にするなって」
式子内親王「そういうわけには行かないわ。
これでもわたしは皇族なのよっ」
男「まったく無駄にプライドが高いんだから」
式子内親王「とは云ってもねぇ。あっちの時代なら
金子でも衣冠でも授けてあげられるんだけど……」
男「だからいいっての」
式子内親王「む!」
男「?」
式子内親王「む。来たっ。これよっ!!」
123 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:30:14.04
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「閃きましたっ。私の財産! それはこの
美貌と才気、そして鍛え抜かれた知性」
男「どうかなぁ」
式子内親王「そして恋愛マエストロとしての高名!」
男「あー」
式子内親王「わたし自らが恋愛相談に乗ってあげるわっ」
男「いらね」
式子内親王「うりうり。どうなの? 気になる娘の
一人でも二人でも三人でもいないの?
私に相談すればどんな悩みでも一発撃沈よ?」
男「恋愛経験皆無じゃねぇか、お前」
式子内親王「気になるスイートハニーがいないなら
将来の彼女のために時代を超えたアドバイスを送るわよ?
男だって年頃もいいとこなんだから。むしろそろそろ
結婚してて当たり前でしょ?」
男「850年前と一緒にすんなよ」
式子内親王「男は素材は悪くないんだから、
もうちょっと磨くところを磨けばイイ線いくよ?」
男「……」
124 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:34:59.62
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「ふふふふ。さくっと白状しちゃって
この恋愛☆天使まじぇすてぃっく内親王に
どかんと白紙委任しちゃいなさいっ」
男「怖っ」
式子内親王「なになに? 大体年齢は12歳くらいで
つるんとした幼女が良いの? おうけーおうけー。
平安じゃむしろ当たり前だからっ!」
男「うっさい」
式子内親王「……っ。そんなこといわないでさっ。
そんなに怖い顔しないで。内親王に相談してみなさいよ。
インド人だってびっくりよ」
男「余計なお世話」
式子内親王「余計なお世話ってことないでしょっ。
せっかく私が恩返ししようとしてるのにっ」
男「それが余計なお世話なんだよ。誰も頼んで無いだろっ」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「あ、あのねっ」
男「うるさいっ。この話題終了っ」
式子内親王「……」
男「いまから寝ます。準備しなさい」
126 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:39:37.47
ID:1IBD/bxU0 ――。
――――。
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「寝ちゃった?」
男「……まだ」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「あのね、さっきのはね」
男「だいたいさ」
式子内親王「うん……」
男「俺がそんなにがっついて見えるのかよ」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「そんなの判かんないよ。
……男の人と付き合ったことないんだもの」
男「恋愛のプロフェッショナル、迷える子羊の導き手じゃ
なかったのかよ。ないしんのー」
式子内親王「うー」
128 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:44:15.26
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「じゃさ。じゃさっ」
男「暗い中で騒ぐなって」
式子内親王「後朝の歌はどうなのよ?」
男「きぬ、ぎぬの、うた?」
式子内親王「そうよ。重要でしょ。男の器量が問われるわよ」
男「なんだそれ。そんなの知らないぞ」
式子内親王「なにって。あるでしょ? 後朝の朝に」
男「きぬぎぬのあさ、ってなんだよ」
式子内親王「それは、そのぅっ。ほら、あれよ。
男の人が……。その、好きな女の人のトコにね。
夜にね。その……尋ねていってね……。んっと」
男「ああ。夜のデートか」
式子内親王「そうそう! 夜のデートよっ!」
男「夜這いだろ、つまり。えろえろか」
式子内親王「っ! なんであなたはそういうことに
剛速球なのよっ。馬鹿っ。あほあほっ!」
男「蹴るなよ。暴れ動物っ」
式子内親王「ふーっ。ふーっ」
男「で、何の話なんだ?」
130 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:50:14.57
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「えっと、だから、ちょっと特別な
『夜のデート』を終えた朝が後朝の朝なのよ。
で、その朝に男が女に送る和歌が、後朝の歌よっ」
男「ふむ」
式子内親王「これの出来が男のランクを表すわけよっ。
腕の中に抱きしめた愛しい女性っ!
ついに溶け合った二人の体温っ。
紫雲たなびく桃源の野に遊んだ二人を引き裂く朝の光っ。
夜の帳で交わしたとろける蜜のような睦言。
その余韻醒めやらぬ前の追撃安価よ!!」
男「最後の行で台無しだぞ、お前」
式子内親王「それがつまり、後朝の歌なの」
男「判った判った」
式子内親王「判った? んじゃ作って」
男「へ?」
式子内親王「作・る・のっ。じゃなきゃ採点できないでしょっ」
男「何でそんなもん作るんだよっ」
式子内親王「男は和歌作る経験がないから、
後朝の歌で苦労するでしょ?
今のうちに作っておけば安心じゃない」
131 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:54:34.97
ID:1IBD/bxU0 男「あんな。そもそもそんな習慣は現代にはないの」
式子内親王「……そんなの」
男「?」
式子内親王「そんなの、知ってるわよっ。馬鹿っ。
でもしょうがないでしょっ。今のわたしには
他に出来そうな恩返しがないんだからっ」
男「……」
式子内親王「こんなことしか出来ないんだから
あなたも付き合うくらいはしなさいよっ」
男「ったく。はぁ~」
式子内親王「……」
男「だいたいさ、それって好きな女を抱いて
嬉しい気持ちを歌うんだろ?」
式子内親王「そうね。もう一度会いたい、とか。
夢のような時間でした、とか。
そういうのがメインテーマね」
男「百歩ゆずって、いまは無いような習慣の和歌を
作るってのはいいよ。でもさ、好きな相手もいないのに
そういうの作るって違くねぇか?」
132 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 03:59:32.36
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「君待つと閨へもいらぬ真木の戸に
いたくなふけそ山の端の月――」
式子内親王「ううう」
式子内親王「自分の心臓の音がばれちゃいそう」
男「……そだな」
式子内親王「こんなに緊張したのは宮入り以来よ」
男「俺も同じだ」
式子内親王「覚悟完了?」
男「うん」
式子内親王「判ったの?」
男「判った」
式子内親王「本当に判ったのっ?」
男「俺も内親王の事、好きだ。後朝の歌、作らせてくれ」
式子内親王「内親王じゃない。式子って呼ぶことっ」
男「了解」
134 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:05:34.16
ID:1IBD/bxU0 ごそごそ、ごそ。
式子内親王「んぅ。ふふふっ。男のお布団侵入!」
男「うわ、ひゃっこい。」
式子内親王「ごめんね。体温低いのよ。わたし」
男「まぁなぁ。最初っからだもんな」
式子内親王「うん。自分でもちょっと困る。
えっと……だから。あのさ」
男「なんだ?」ぎゅっ
式子内親王「あ……」
男「どした?」
式子内親王「ううん。こうされたかっただけ」
男「そっか」
式子内親王「男……。背中、なでなでしてる」
男「うん。してるよ」
式子内親王「手つきがやらしい」
男「あんなっ。こういうのは仕方ないだろっ」
式子内親王「ふふふふ」
135 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:09:41.16
ID:1IBD/bxU0 男「えっとさ。……今更云うのもあれだけど」
式子内親王「なに?」
男「いいのか? お前。ほらさ、曲がりなりにも
斎院っていうのとか、それに……皇族なんだろ」
式子内親王「うん」
男「……」
式子内親王「でも良い。やめる」
男「そんなあっさりと」
式子内親王「男のものになりたいの。
神様のものだった身体も、父様のものだった名前も、
皆のものだったこの心も。
全部、
ぜんぶ男のものになりたい」
男「――」
式子内親王「男に抱きしめられて、男を抱きしめて。
押し広げられて、持ち上げられて、波にさらわれて
風に打ち上げられて、月まで、星まで届きたい」
男「……。うん」
式子内親王「大好き」
男「大好きだ」
136 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:14:10.90
ID:1IBD/bxU0 神無月十五日 未明
やってしまった。
やってしまいました。
それだけは絶対してはいけないと思ってたこと。
でもどうしてもどうしてもしてみたかったこと。
男と肌を重ねてしまいましたっ。
好きだったです。
隠してきたけど、八つ当たりしてきたけれど。
一番大好きになってしまっていました。
一緒にいたくて、じゃれたくて、我慢できなくて。
どうしようもないほど破裂して、触れてしまいました。
困ってます。大ピンチです。斎院としても皇族としても
抹消措置レベルの大失態。絶対やってはいけないことなのに。
なのに、幸せです。
幸せすぎておかしくなりそうです。
恥ずかしくて、嬉しくて、からだの中全部が
甘い蜂蜜で満たされたみたいにじんわりと幸せで
こうして日記を書いていても、にやにや笑いが止まりません。
困ったなぁ。
全然困った気分になれなくて困ったなぁ。
138 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:18:15.06
ID:1IBD/bxU0 男「たっだいまっと」
式子内親王「おかえり~っ」
男「ん? なんだ?」
式子内親王「おかえりなさいっ」
男「うん」
式子内親王「……」ぽむぽむ
男「……」
式子内親王「……んっ」ぽむっ
男「それ、なに?」
式子内親王「ここに来なさいってこと」
男「ふむ? まぁ、行くけどさ」
式子内親王「うぇ~いっ!」だきっ
男「なにすんだ。おまっ」
式子内親王「うへへへへ」ぎゅむっぎゅむっ
男「布団お化けかっ。お前はっ」
式子内親王「おーばーけーだーぞーっ」ぎゅーっ
141 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:28:08.30
ID:1IBD/bxU0 男「ないしんのーは子供ですかっ」
式子内親王「だってこうしたかった」じぃっ
男「う゛」
式子内親王「それにですねっ」
男「なんだよ」
式子内親王「今なら特別サービスで、布団お化けの
布団の中をこっそり見せるよ?」
男「え?」
式子内親王「(小声)見たい?」
男「……えーっと。うん」
式子内親王「えちぃよ?」
男「う、うん」
式子内親王「ふーふーふーっ」
男「……うう」
式子内親王「ちらりっ♪」
男「うっわ。……ないしんのー。それ犯罪だろ」
式子内親王「ふえ?」
142 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:32:48.70
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「そかな。こないだ買ってもらった
下着なんだけどな。かなり可愛い気がするんだけど」
男「いや、その……黒髪が絡み付いて、えろい」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「あはっ。あは」
男「あはは」
式子内親王「……」
男「……」
式子内親王「いや、ごめんね」
男「こちらこそ」
式子内親王「こほんこほん。おーばーけーだーぞーっ」
男「布団お化けかっ。お前は~っ」
式子内親王「うへへへ」ぎゅーっぎゅーっ
男「君は子供ですかっ」
式子内親王「……後でもっとしてもいい?」
男「こほんこほんっ」
式子内親王「お化け、えちぃこと要求する」
男「えっと、うん。……します」
式子内親王「うぇ~いっ!」だきっ
男「~っ!」
144 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:37:23.10
ID:1IBD/bxU0 神無月十八日
ゆらゆらと揺れる天秤の上のような気分で毎日が続きます。
とても困ったこと。とてもまずい事をしている。
絶対に秘密にしなくてはいけないのだけど
こっそりと逢引を重ねているのが幸せでたまらないのです。
男がバイトに行っている間も男の事を想うのです。
自分の中にこんなに憧れに似た強い気持ちがあるのが驚き。
このままでは馬鹿になってしまう!!
確かに道に外れる恋をしているかもしれないが
わたしはこれでも才女で鳴らした式子内親王なのだ。
あまり馬鹿になるわけにはいかない。
馬鹿になったら男にだって嫌われてしまうのです。
これからはクールな知的女性でいくのだ!!
146 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:41:55.82
ID:1IBD/bxU0 男「ないしんのー」
式子内親王「つーん」
男「?」
式子内親王「つーん」
男「熱出たのか?」
式子内親王「違っ」
男「ふむ? まぁいいか。梨むけたぞ」
式子内親王「っ! ぅぅ。ぅ。つ、つーん」
男「なんだよそれ」
式子内親王「クールな才女皇族っ」
男「そうなのか?」
式子内親王「そうなのよ」
男「判ったから、梨を食うぞ」
式子内親王「わたし才女?」
男「うん、才女、才女」
式子内親王「じゃ食べる」
男「おう」
148 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 04:46:33.74
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「しゃくしゃく♪」
男「もぐもぐ」
式子内親王「甘くて瑞々しくて、美味しいっ」
男「お前梨好きだもんな」
式子内親王「うん、大好きっ」
男「……」にこっ
式子内親王「はっ! ま、ま、まずい。これではわたしの
知的才女のイメージがっ。食べ物をもらって喜ぶ
腹ペコキャラだと誤解されかねないわっ!」
男「理解だろ」
式子内親王「うう、こんな梨なんて。梨なんてーっ」
男「おいおい」
式子内親王「しゃく♪ 美味しいわ~っ」
男「……」
式子内親王「でも美味しいのは男と一緒に食べるから!」
男「そっか。んなら……嬉しいけどよ」
式子内親王「やっぱ男の一人もいない恋愛歌人は
役立たずねっ。妄想だけでは出会えないこのリアルさよっ」
男「腐はなおらないんだなー」
160 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:23:59.63
ID:1IBD/bxU0 神無月二十日
玉の緒よ絶えねば絶えね長らへば 忍ぶることの弱まりもぞする
161 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:29:33.02
ID:1IBD/bxU0 男「うっわ。最悪だな」
ぴかっ!!……ゴゴーン
男「近いし、全身びしょびしょだ。
10月になっても台風とはね~まいるねこれは」
がちゃん
男「ただいまー。ないしんのー」
式子内親王「おかえりなさい」
男「やられたー。途中で降られたよ~」
式子内親王「雨でびっしょりだー」
男「うん。お風呂はいる。スイッチ入れて」
式子内親王「うん」
とてとてとて
男「おーい、ないしんのー」
式子内親王「なーにー」
男「からだ冷えてる。このままはいるー」
式子内親王「わかったー」
162 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:33:53.27
ID:1IBD/bxU0 じゃぷーん。
男「うっわ、暖まるな。生き返る~」
男「ふぅ~」
男「あったけぇー」
男「んー。あいつとももう二十日かー。
最初はどうなることかと思ったけど、このごろは
なんか……いいよな」
男「今日はなに作ってやろうかな。部屋の掃除してるかな?
まぁ、いっか。してやれば。あいつ寒がりだからなぁ。
今日なんか布団の中でずっと寝てたんじゃないかな」
男「にんじんとたまねぎと……。今日はベーコンで
作るかな。こんどラヴィオリ入りのもつくるか」
ざざーん。きゅっきゅ。
男「あいつ、本当に美味そうにくうからな。
皇族なのですよっ。なんていってもスプーン完全装備だし」
男「ま。その辺が愛しいんだけどな」
163 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:39:26.62
ID:1IBD/bxU0 神無月二十二日
今日は男と一緒にシチューを作った。
男は別に良いよ、座ってて、といったのだが
あれはどうもわたしを軽んじているきらいがあるのです。
たとえ男の恋人になったとはいえわたしは内親王!
卑しくも皇族です。
シチューライスのひとつくらい作れないでどうするのですか。
このあいだVipをよんでたら
「料理の出来な女は死ねばいいと思うやつの数→」
なんてスレが立っていたことはこの際一切関係がなく
わたしのプライドの問題であると言い切れます。
164 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:45:20.35
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「わ。わわっ」
男「ころころ転がさないで」
式子内親王「ジャガイモが逃げたのよっ」
男「本当に不器用な」
式子内親王「……屈辱的だわっ」
男「包丁は危ないから、こっちのピーラー使って」
式子内親王「ぴらー?」
男「皮むきだよ。こうやって持って」
式子内親王「ふむふむ」
しゃぁー。
男「こすると皮がむける」
式子内親王「おーっ!」
男「理解?」
式子内親王「うんうんっ。わたしにもやらせなさいっ」
男「ほい」
しゃぁー。
式子内親王「おお、剥けた!」
男「その調子」
165 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:49:27.84
ID:1IBD/bxU0 男「じゃこのにんじんの皮剥いて」
式子内親王「わかったわ。この美少女内親王に任せなさいっ」
男「俺はこっちのジャガイモ剥くからな」
しゃー。
式子内親王「おっ」
しゃー。
式子内親王「おおっ」
しゃー。
男「どうだ」
式子内親王「絶好調ね」
しゃー。
式子内親王「楽しい~。無駄にいっぱい剥ける!」
男「あほですか」 ぽかりっ
式子内親王「むぅむぅっ! なんでぶつのよっ!」
男「君の食べてきたシチューにはこんな薄膜作りの
にんじんが入ってましたかっ」
式子内親王「うう。全部やっちゃった……」
166 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:53:51.89
ID:1IBD/bxU0 男「で、肉を炒めながら入れて」
式子内親王「海老とか?」
男「魚介は火を通しすぎると身が固くなることが
多いので、後入れでやる」
式子内親王「勉強になるわね」
男「んで、野菜も一緒に入れる、と」
式子内親王「野菜も。ほほう」
男「ここで弱火に」
式子内親王「弱火に」
男「コンソメの元投入」
式子内親王「こそめね。わかった」
男「で、お湯を入れる」
式子内親王「お湯ね。じゅる」
男「悪を取りつつ牛乳もいれる」
式子内親王「牛乳。じゅる」
男「そんでシチューのもと」
式子内親王「じゅるじゅる」
男「いいからよだれを拭け」
式子内親王「はっ!?」
168 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:00:27.59
ID:1IBD/bxU0 神無月二十五日
本日は男がおやすみだった。
ので!
いっしょに二人でDVDを見まくることにっ。
男とくっついているのは、好きです。
かなり好きです。
シチューとどちらか選ぶとすると迷うくらいです。
体全部が暖かい海になって、男に触れたところから
こぼれて流れ込んで行きます。
潮騒というのは好きな人に触れたときの心臓の名です。
うわぁー。
なんかとても恥ずかしく、やるせなく、まどろっこしい。
この気持ちをそのまま取り出して
男に見せられればいいのにっ。
わたしばかりめろめろで困ってしまいます。
167 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 09:55:14.87 ID:BYcze4zxO
>>1
前も途中まで読ませてもらったよ
最初、デジャブかと思った
素直に言う。おもしろいよ169 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:04:37.14
ID:1IBD/bxU0 >>167
感謝。タイトルでもうちょっと人呼び込めたら
よかったかもだけど(新ジャンル「皇族」とかさ)
ドマイナースレに迷い込んだと思って勘弁を!
過疎スレっぽい感じだから反応嬉しいよ!
ママレードサンドをやるっ。170 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:09:34.77
ID:1IBD/bxU0 男「なーなー」
式子内親王「はい?」
男「えっと」
式子内親王「わたしは気持ちいいよ?」
男「むー」
式子内親王「男に膝抱っこされて布団に包まって
しがみついてるのは幸せっ」にぱっ
男「うー」
式子内親王「なによ? わたしが重いというのですか」
男「いや、そうじゃないけど」
式子内親王「じゃなによ」
男「お前、布団の中はいつも下着なの?」
式子内親王「うん」
男「……」
式子内親王「やなの?」
男「えっと」
式子内親王「ふーん」すりすり
男「~っ!?」
式子内親王「わたしは男に抱っこされるの好き。
抱っこしてくれてるなら、ずっと恩返しする」
男「え、えっと」
171 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:14:17.58
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「♪」すりすりっ
男「あの」
式子内親王「なに?」すりっ
男「式子さん」
式子内親王「はい」
男「DVDがみれません」
式子内親王「そうだった!」
男「そういうのは、えー。暗くなってからしましょう」
式子内親王「やです」
男「うわー」
式子内親王「わたし皇族なのよっ。庶民として
わ、わ……わたしの彼としてすりすりさせなさいっ」
男「ううう」
式子内親王「♪すりすりっ」
男「うー」
式子内親王「だって男、暖かくて大きな湯たんぽみたいで
気持ちよいんだもん」
男「ないしんのー」
式子内親王「えへへへ~」むぎゅーっ
173 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:19:05.82
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「ん~。わう」すりすり
式子内親王「えへへへ~」むぎゅーっ
男「……」
式子内親王「ふふふーん」すりすり。かぷっ
男「うー」
式子内親王「あったかーいっ」
男「えーっと。ないしんのー?」
式子内親王「なに」
男「そんなことしてると、さわり倒すよ?」
式子内親王「ダメです」
男「え?」
式子内親王「男は触っちゃダメ。わたしが一方的に
すりすりするのです」
男「なんで?」
式子内親王「わたしが皇族で男は庶民だからっ」
男「……」
式子内親王「やっほー。ぱわーいずじゃすてぃすっ!」すりっ
174 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:24:21.11
ID:1IBD/bxU0 男「ううー。一方的にずるいぞっ」
式子内親王「いいのです。……すりすり気持ちよいから」
男「だから、俺にも分け与えろって」
式子内親王「ダメ……。ダメだからね、絶対」
男「うー」
式子内親王「だぁめ。――触わっちゃ、だめ」すりすりっ
男「……くぅ」
式子内親王「男のくびすじ発見♪」かぷっ
男「ないしんのうっ」
式子内親王「かぷかぷっ♪」
男「触るからなっ」
式子内親王「だぁめ。禁止。……勅命だからねっ」
男「うー」
式子内親王「でも香り吸い込んでいいよ。
――もらった伽羅の香りだよ? わたしが男の
ものだって云う、証拠だよ?」
男「ううー」
式子内親王「沢山ぎゅーってしてあげる」すりすりっ
男「うわぁーっ。何か腹立つーっ」
式子内親王「これでいいのですっ!」むぎゅっ
176 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:28:32.67
ID:1IBD/bxU0 男「すぅーっ。すぅーっ」
式子内親王「男は、寝ちゃったかな」
男「……Zzzz」
式子内親王「寝ちゃったか」
男「……Zzzz」
式子内親王「寝顔は可愛いな。おっきな犬みたいで」
男「んぅ……」
式子内親王「ぷくくくくっ。可愛い~DVD途中なのにっ」
――。
――――。
式子内親王「雨も強くなってきたけど、男とお布団で
丸くなって……幸せだな」
男「……Zzzz」
――お料理は得意よ、専門にやれるくらい。
お裁縫もお掃除も習ったのよ。
ただ……人にしてあげる機会がなくて
式子内親王「この娘は、料理できるんだなぁ。いいなぁ
わたしも出来ないわけじゃないけど、わたしの育った
ところは、ガスコンロなんてなかったもんね」
177 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:33:37.59
ID:1IBD/bxU0 男「……Zzzz」
式子内親王「ん」なでなで
――Life isn't always what one likes.Is it?
男「んぅ……」
式子内親王「それはね。そうだよね。そんなものだよ」
男「……Zzzz」
式子内親王「なにごとも思うに任せぬやるせなさ
我が手にゆわうかみかたちさえ」
式子内親王「……」
男「すぅーっ。すぅーっ」
――ローマです! 無論ローマです。
今回の訪問は永遠に~
男「すぅーっ。すぅーっ」
式子内親王「……」なで、なで
男「んぅぅ。……Zzzz」
式子内親王「わたしはこのひとが大好きだな」にこ
178 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:38:36.26
ID:1IBD/bxU0 神無月二十八日
雨です。
今週はずっと降るらしいです。
お外にお出かけとかはしないので、今日は
家の中で男と一緒に本を読みました。
昨日図書館で借りてきた本です。
いや、それにしても図書館はびっくりです。
父様の書庫にも匹敵します。
そんな書庫が自転車でいける範囲に四つもあるそうです。
未来、恐るべし。
皇族や貴族だけじゃなくて
男も女も子供も含めた庶民がみんな読み書きが出来て
漢字も平仮名も判って、自由に操れて、書物に
接することが出来るのです。
ここは本当に自由な世界です。
そりゃね。シチューなんて素晴らしいものも
発見されるに決まってますっ!
180 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:44:46.80
ID:1IBD/bxU0 男「アイリッシュ・シチュー。
羊の国・アイルランドの、マトンとじゃがいものシチュー。
気候条件のきびしいアイルランドに生きた
先人達が生み出した料理」
式子内親王「お、美味しいのかなっ?」
男「写真が載ってるぞ」
式子内親王「すごいね。この黄色いのはジャガイモかな?」
男「ジャガイモを鍋に敷き詰めるみたいだな」
式子内親王「ほくほくするかな?」
男「うん、しそうだ」
式子内親王「むぅー」
男「羊は使ったことがないけれど、見る限り、
相当柔らかくなるまで煮込むみたいだな」
式子内親王「美味しそう!」
男「だなー」
ぺらりっ。
181 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/10(金) 10:47:12.17 ID:q7tTatB7O
つペンチ182 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 10:59:08.23 ID:Cv7/n0jZO
ラブラブすぎて
涙が出てくる支援184 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 11:15:14.55
ID:1IBD/bxU0 やばい。猿くらった。
ばいばいもんきー。さるげっちゅ。
ついでなのでご飯食べてくる。
空腹なのにシチュー談義とか
最早ド許せぬ。きゃつら最微塵までくだいてくれるわ。
保守してくれた人に代わらぬ感謝とママレードを。
ペンチはさ。何で人気出たか俺もわからねぇ。
付き合うならメンヘラよりも皇族だよなー。188 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/10(金) 11:53:09.63 ID:ACnqCldGO
読んでると
勃起とまらん
素晴らしい195 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 12:36:54.54
ID:1IBD/bxU0 男「ワーテルゾーイ。
ベルギー北西部ヘント地方の伝統的家庭料理で、
若どりを煮込んで、煮汁に卵黄入りの生クリームを
加えてとろみをつけるシチュー」
式子内親王「ベルギーってどこ?」
男「オランダの横」
式子内親王「横かー。これ作って届けてくれないかなぁ」
男「ちょと遠いんじゃね?」
式子内親王「これも美味しそうだよ?」
男「ああ、うまそうな。卵黄いりってところがそそる」
式子内親王「男は作れるの?」
男「横にレシピのってるしな」
式子内親王「うわーい」むきゅっ
男「侮れないな『世界シチュー大全』っ」
式子内親王「侮れないねっ異国の文化侵略だねっ」
男「侵略されてますか」
式子内親王「うん。主におなかが」
男「……」
式子内親王「……」
男「だよね」
式子内親王「ですよねー」
196 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 12:43:23.31
ID:1IBD/bxU0 ぺらりっ。
男「チリコンカルネ。
おお、チリコンカルネかっ。
牛肉と豆をチリパウダーで煮込んだ、
代表的なアメリカの料理の一つ。かつてメキシコ領だった
アメリカ南西部の料理で、料理名もスペイン語」
式子内親王「食べたことあるの?」
男「これはあるぞ。比較的有名だしな」
式子内親王「ど、どんなのっ?」
男「ピリッとした味の豆入り煮込み料理だ」
式子内親王「うわぁ……」
男「赤茶色のスープでマメがどっさり入ってる」
式子内親王「美味しそうだな。美味しいよね?」
男「美味いな」
式子内親王「うっわぁ。うらやましいな。
ねたましいな。これは不敬罪にあたるわねっ!
投獄するしか……」
男「目がまじだ」
式子内親王「食べたい、食べたい、たべたーいっ」
男「わーったわーた。そのうちなっ」
式子内親王「ん。今度ね。約束だっ!」
197 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 12:48:28.68
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「ふぅっ」
男「堪能したか?」
式子内親王「堪能した! すごいよ。『世界シチュー大全』っ」
男「うむ。まさかこれほどの破壊力を有するとは……」
式子内親王「おとこーおとこーっ」
男「どうした?」
式子内親王「大変だよ。我が日本の空腹艦隊が壊滅だよっ」
男「なに!?」
式子内親王「世界全土からの一斉射撃で全ての艦艇が
大破、もしくは撃沈よっ。もう戦闘能力は皆無なの。
このままゆっくり飢え死にしそうな気分だよぅ」
男「戦力差は?」
式子内親王「一対四万八千くらいっ」
男「泣きそうじゃね?」
式子内親王「遅いね。わたしなんかもう泣いてるしっ」
男「さすが皇族」
式子内親王「えへん。電光石火です!」
男「食べちゃうか?」
式子内親王「食べちゃおう!」
199 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 12:53:25.26
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「しちゅーっしちゅーっ」
男「じゃん!」
ふわぁっ。
式子内親王「良い匂い! 本日は?」
男「白菜と鶏のクリーム煮でございます」
式子内親王「ごはーんっ!」
男「ははーっ」
式子内親王「苦しぅないぞ。よそってよそって!」
男「任せろ」
式子内親王「いっただきまーっす!」
男「どうぞ&いただきます」
式子内親王「美味しい♪」
男「おう」
式子内親王「もっきゅもっきゅ」
男「もぐもぐ」
式子内親王「もっきゅもっきゅ♪」
男「もぐもぐ」
式子内親王「美味しいよぅ」
男「いや。涙ぐむほどじゃない」
200 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 12:57:46.63
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「あのさ、おとこー」
男「もぐもぐ。なに?」
式子内親王「えへへへ~」にぱ
男「うわ。だらしない顔」
式子内親王「なにを云うのよっ。わたしは
凛々しい美少女皇族☆リリカルエンペラーよ」
男「エンプレスじゃねぇの?」
式子内親王「……そうとも言うかしらね」
男「で、なによ」
式子内親王「なんでもない。えへへ」
男「へんなやつ」
式子内親王「ごちそうさま♪」
男「おそまつさまでしたっ」
式子内親王「男。男っ」
男「なに?」
式子内親王「今晩は手をつないで眠るっ」
男「なんでまた」
式子内親王「だってソレはやったことないし」
男「……またなんか携帯小説とかに影響受けてね?」
式子内親王「えへへ~」
男「それくらいなら、いつでも引き受けるんだけどさ」
201 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/10(金) 12:58:00.70 ID:SqdU4H6kO
内親王と見ると眞子内親王を連想して射精してしまう※参考画像202 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:04:13.64
ID:1IBD/bxU0 神無月 末日
うかうかと幸せになってしまいました。
うっかりと幸せになってしまいました。
男とくっついていると暖かくて優しくて憧れて
触れたくて確かめたくて確かめてもらいたくて
とてもじゃないけれど抵抗できませんでした。
楽しい食事、幸せな日々、溢れるような書物、新しい知識。
いつもとぼけてる表情で、優しくしてくれる男。
自由な、世界。
どこにでもいける、なんにでもなれる、世界。
ごめんなさい。
どう詫びても足りません。
なにを捧げてもいいから謝りたい。
でも、それでも。
触れてもらいたかったのです。
――もう、神無月が残って、いません。
203 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:08:26.13
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「えっと……」
式子内親王「そーっと。そーっと」
男「ZZZzzz……」
式子内親王「荷物はまとめてあるし。
他は何かあったっけ。パンツも入れた。
服も入れた。香水も入れた。おとこにもらったもの……。
あ、そだ。熊のほうの歯ブラシも」
こそこそ
男「ZZZzzz……」
式子内親王「これで、いいかな。いいよね。
……雷、近づいてきちゃったかな。
まだ、かな」
男「すぅーっ。すぅーっ」
式子内親王「うっわ、男可愛いなぁ! 可愛いなぁ!
むぅーって顔してるなぁ。いいなぁ。いいなぁ
ずっと
――ずっと見ていたいなぁ」
男「んぅ……」
205 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:13:44.52
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「ごめんね……」なで
男「ZZZzzz……」
式子内親王「いや、その。ほら、最初はさ。
皇族パワーでひれ伏せさせて突っ走る予定でさ。
それこそ『玉の緒よ絶えねば絶えね』の精神で、
もう内緒で秘密で完璧隠蔽でさー」
男「すぅー……」
式子内親王「そういう。なんての?
うん。……自分ひとりの気持ちで持って帰る
つもりだったんだけどさっ」
男「ん。……くふぅ。ZZZzzz……」
式子内親王「面目ない。いや、わたしはあれなの。
正規の才媛として上手い具合にバランス取ってる
つもりだったんだけど、気持ちのほうがね。
ちょっとね。
わがままでさ。触れたくてさ」
男「すぅー……」
206 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:18:44.37
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「いやもう。だって触れちゃったら
告白したいじゃない。させちゃったけどさ。
気持ちが確認できたらちゅーとかもしたいでしょ。
ちゅーしたらもっと好きになっちゃうじゃない。
うん。
こまってたのだ。
ごめんね。
わたし酷いよね。ほんとうに、ごめ
んなっ
ごめんな、さいっ」
ぽたぽた
男「…………」
式子内親王「ごめんなさい。ごめんなさい」
ぽたぽた
男「それはさすがに聞き捨てならないな」
式子内親王「おとこ……」
男「しかも黙っていくつもりかよ。ひでぇなー」
式子内親王「ごめっ……さいっ」
ぽたぽた
207 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:24:56.31
ID:1IBD/bxU0 男「……」
式子内親王「ひどいよねっ。うん、酷い。
わたしだったら許さない。八つ裂きにして、串刺しにして
黄泉ツ平坂まで追っていくかもしれない。
だから、男に何されても良い。
ううん、ほんとは……。
男の手にかかれば帰らなくてもすむかも、とか。
そういう。
酷いことも考えてる」
男「どうしても帰らなきゃダメなのか?」
式子内親王「……うん」
男「こっちはイヤか?」
式子内親王「……ちがうっ」
男「じゃぁさ」
式子内親王「もう、神無月が終るから。
あのね。
加茂の賀茂別雷命が出雲から帰ってくるの。
わたしは斎院だったけれど、幼くて、好奇心でいっぱいで
いつもいつも憧れて、憧れて……
どうしても院の外、世界の外が見たくて
……賀茂別雷命の雷鳴に飛び乗ったの」
男「……」
208 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:31:19.04
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「賀茂別雷命が加茂に帰るから、
私もここにはいられない。たぶん、来たときみたいに
消えて、飛ばされるの」
男「……」
ピカッ! ――――ごごーん
男「っ!」
式子内親王「ね。……あれがお迎え」
男「お前……」
式子内親王「いや。ごめんねっ。ほんとうにっ。
いっぱい色んなものをもらって優しくされたのに
何のお返しも出来ないダメな居候でした。
その……。まぁ皇族なんてこんなものなのよっ。
でも庶民なんだからその辺は手加減して許して。
じゃなくて、許しなさいっ。勅命ですっ」
男「式子」
式子内親王「何か本当に夢見たいな毎日で
かなり幸せだったわよ。恋愛マエストロとしてのわたしの
美貌とテクニックも格段の進歩を遂げたこと」
男「あほ式子」
式子内親王「なによ、ばかっ」
男「無理やりな勢いつけんな」
210 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:37:25.62
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「~~っ!」
男「つけんな」
式子内親王「くっ。……うぐっ」
男「……」
式子内親王「うぐっ……。うっ……ううっ」
男「……」
ピカッ! ――――ごごーん
式子内親王「ううぅーっ。うぅーっ。
うぅーっ。ううううっ。……ず、ずるい。
いやだよ。
ほんとはおとこといたいっ。
辛いよぅ。怖いよぅ。
こんなのやだぁ。うーっ。ううっ」
男「……」
式子内親王「だって、まだ、なんにもっ。
いっぱい、いっぱい約束っしたのにっ。
ずるいよぅ。そんなのずるいよぅ」
男「……」
211 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:45:36.54
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「だって、まだ何にもしてないっ。
おとこと一緒にお風呂に入ってないよっ
夕焼けの散歩もしてないよっ
雪見だって、花見だってしてないっ
花火ってなんなのよっ向日葵なんて見てないよっ
アイリッシュシチューもワーテルゾーイも食べてないよっ」
男「……っ」
ピカッ! ――――ごごーん
式子内親王「まだ。まだ、後朝の歌だってもらってないよ」
男「……うん」
ピカッ! ――――ごごーん
式子内親王「好き」
男「大好き」
式子内親王「ずっと想ってても、いい?」
男「こっちは勝手にそうさせてもらうから」
式子内親王「ずっと歌う。ずっと、ずっとっ!!」
ピカッ! ズ、ドンッ!!
男「あほ親王っ! 馬鹿っこの勝手者っ。
一人で、一人で勝手にっ。なんだよ、こんなのっ」
212 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 13:49:52.39
ID:1IBD/bxU0 式子内親王(のりこ(しょくし・しきし)ないしんのう)
1149~1201
平安時代末期の皇族。女流歌人。後白河天皇の第三皇女。
賀茂斎院。萱斎院、大炊御門斎院などとも呼ばれた。
法号承如法。新三十六歌仙の一。
艶麗でありながら閑寂さをも併せもつ独自の歌の世界を持つ
新古今和歌集の代表的な歌人の一人。
四季の歌と特に恋歌に秀作が多く、自らを内に閉じこめるような
深沈とした憂愁のさまや、夢と現実との狭間にある曖昧な様子や
感傷的な追憶を詠んだ優れた歌を多く残した。
運命に対して弱い自分を守ろうとする
凛乎とした強さが歌のうちにあることなどから、
その生涯や恋愛についてさまざまな推測が成されるが、
いずれも推測のうちを出ない。
四千首もの歌を残し、彼女の歌は百人一首などで現代でも愛されている。
その優美な恋の歌とはうらはらに
その生涯で一度も結婚はしなかった。
218 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 14:11:33.49
ID:1IBD/bxU0 ――補稿
尋ぬべき道こそなけれ人しれず心は慣れて行きかへれども
(あの人のもとへ訪ねてゆける道はないのだ。
誰にも知られぬまま、私の心だけは何度も行き来して、
通い慣れてしまったのだけれども……)
式子内親王「……あ」
ちゅんちゅんっ
式子内親王「うわぁ。かっこわるっ。
また泣いてますよ、わたしっ。だっさー。
なんですかね。男のこと思い出してさ。
ずっとめそめそしちゃってさ。うわ、ださっ。
それでも皇族ですかってのねっ!」
ちゅんちゅんっ
式子内親王「それでも……さ。明け方の薄い夢にはさ
おとこの暖かい体温とか残っててさ。
うわぁ、我ながらもう嫌になっちゃうよ。
なんでこんなに好きかな。
何で夢の中だと、毎回毎回、あんなに悲しいかな~」
221 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 14:15:58.35
ID:1IBD/bxU0 式子内親王「なんかめそめそしてさぁ。おとこ……。
もう貰った伽羅の香だって薄れちゃったよ……。忘れたくないよ……」
男「あんなんでよければまた買ってやるぞ?」
式子内親王「……へ?」
男「よぅ」
式子内親王「……」
男「シチュー食うか? 色々作れるようになったぞ」
式子内親王「な、な、な、なっ」
男「お前、また雷の音と一緒にぶったおれてたんだ」
式子内親王「ど、ど、ど、どっ」
男「また神無月になったからじゃね?」
式子内親王「わ、わた、わたし皇族なのよっ!?」
男「知ってる」
式子内親王「賀茂神社のアイドル斎院なのよっ!?」
男「パニック状態だな」
式子内親王「う。ううっ。おとこだっ! おとこだぁっ!!」
男「そうだよ。叩くなよっ。馬鹿だなっ
いいか、ちゃんと後朝の歌だって考えた。
賀茂神社にそれで追撃かましてやったんだぜ。
聞けよ? あー。それはなっ……」
おわりっ。
222 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 14:19:36.09 ID:0FfSbj0xO
>>1乙すぎる223 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:age 2008/10/10(金) 14:20:41.28 ID:Ups2HsNMO
後日談とか読みたいでござる
このスレここで終わらせるのはもったいないでござる224 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/10(金) 14:21:31.86 ID:cdSgonVJO
>>1乙すぎてなでなでしたい
そして甘すぎる。誰か渋い茶をくれ225 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/10(金) 14:25:00.13 ID:7h8/eGR70
>>1乙
これは神無月の雷が鳴る日にはwktkしておけということだな226 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 14:30:53.05
ID:1IBD/bxU0 あんがとなー。保守とか、支援とか。
今回ばかりは本当に乙が目にしみるぜ。
ドマイナでいった報いか、途中で心が折れそうだったぜw
いいんだよっおれが内親王好きだからっ。
尚侍(ないしのかみ)によるエロ家庭教師モノと
どっちにしようか迷ったってのは内親王には内緒だ。
次やるならもっと気楽なのやりてぇっす。
じゃねー。皆にママレードサンドの祝福を!228 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 14:33:24.33 ID:pAAf4eDD0
今晩はシチュー食う。決定。230 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 14:42:23.39 ID:qfEe9qpSO
昨日の晩からwktkした甲斐があった
べ、別に後日談があったっていいんだからね!!234 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします mailto:sage 2008/10/10(金) 15:44:48.28 ID:ACnqCldGO
乙
今度またエロ家庭教師のほう頼むぜwww235 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 15:53:37.39 ID:CLFoRQ1mO
大変によいものを読ませていただいて…(´;ω;`)237 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 16:22:30.05 ID:eWR1ZxfZ0
>>1乙 素晴らしかった241 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 17:30:09.86 ID:5HoPx+7h0
最後まで読んでしまった
ウォン相場と交互で見てたからテンションがおかしくなったぜwwww
もう一個の方も頼むよー245 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2008/10/10(金) 18:28:38.96 ID:oZBnrVV/0
このラブラブっぷりは良かった
久しぶりに癒された
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