ダンテ「学園都市か」【MISSION 23】

2011-05-15 (日) 09:58  禁書目録SS   8コメント  
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まとめ→ダンテ「学園都市か」 まとめ

595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:32:09.81 ID:SfXE9/Wko
―――

耳を劈く雷鳴の重唱。
内臓も振動するほどに揺れる大気と大地。


それらは、ある点を境にぱったりとやみ。



今度は静寂が一帯を包んだ。


その中で微かに響くのは、空気が焼きついたような『聞きなれた』独特の音。

そして辺りが微弱な電気で満たされている事を示す、
全身の毛が逆立つこの感覚。



それらを感じながら、
白井黒子は暖かい胸に顔をうずめていた。

北島の北西端、港倉庫区の一画にて。


御坂美琴に抱きとめられながら。



黒子「……」

辺りが静かになってどれくらい時間が経っただろうか。

数十秒か、それとも数分か。

ともかくそんな静かな時間とこの温もりは、

黒子の心を落ち着かせ、
冷静な思考を呼び戻すには充分な要素であった。



596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:33:04.01 ID:SfXE9/Wko

黒子は、意を決するかのように一度空気を飲み込んだ後。


黒子「…………終わり……ましたの?」

御坂の胸に頬を当てたまま、恐る恐るそう口を開いた。


御坂「済んだわよ」


すると、額のすぐ上辺りから返ってくる優しげな声。

その返答を聞いて黒子はすぐさま瞬間移動。
御坂の胸から脱して、1m程離れた所に飛び。


黒子「……お……お見苦しいところを……」


小さく咳払いしては、そう言いながら取り繕う。

だが赤くした鼻をすすり、
目尻に未だ雫が残っているこの顔では焼け石に水。

どんなに涼やかに振舞おうとしようが、
より一層泣きっ面を際立たせるだけだ。

そんな黒子を見て、御坂は小さく可笑しそうに笑っていた。

その笑みには、しばらく出張していた先の家主の『常に軽薄なノリ』に影響されたものか、
どことなくからかっている様な色も見えていた。

黒子「………………な、なんですの」

御坂「なんでも。さて、と……」

ふーんと鼻を鳴らした後、
再度クスリと笑っては左手に眩い電撃を走らせては。

『わざとらしく』手持無沙汰を紛らわすかのように、
小手先でその閃光を弄り始めた。



597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:34:04.50 ID:SfXE9/Wko

と、そんな御坂の左手の反対側。

黒子「その……右手のは……」

黒子の視線が、彼女の右手の先にあるものに止まった。

長い長い『真っ黒な鞭』といった表現がしっくりくるか、
そんなモノが御坂の右手から伸びていた。

一見すると前にも見たことがある砂鉄剣だが、だが似て非なるものだろう。

先ほどこの黒い鞭がしなっては、
瞬く間に周囲の悪魔達を細切れにしたとおり、明らかに普通ではない。

それにこうして見ていると、妙なざわつきというか。

いや。

黒子「(……この感じは……)」

この雰囲気は紛れも無く。
そう、『悪魔を見ている』ようなモノだった。


御坂「前にも言ったっけ?これ変形するのよほーら」

訝しげな表情の黒子の言葉に、
別段何でも無いように簡単に答える御坂。

その彼女の言葉に合わせ、
黒い鞭は躍り上がるように動き出しては空を切り。

見る見る御坂の右手先に巻き取られていき、あの『大砲』の形に収まった。

黒子「ほぉお……なんと……」

御坂「本当すごいわよね、雑魚は電撃とこの変形で充分だから、弾節約で大助かりだし」

黒子「な、なるほど……」


御坂「ここまで使えるようになったのはこの島に来てから何だけどね」


黒子「?」


御坂「原因はわかんないんだけどこの島に来てからやけに調子良くって」



598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:37:26.20 ID:SfXE9/Wko

黒子「といいますと?」

御坂「気のせいとかじゃなくて、実際目に見えて力が増してるの」

『大砲』が正確に元の形状に戻っているか、
レバー等を引いては動作確認しながら、御坂はそう言葉を続けた。


御坂「力がよく馴染むっていうか、意識するだけで動くっていうか……」



御坂「……演算してる感じがまったくしないのよね」



黒子「……お姉さまは、AIMストーカーのように外部の演算補助?とやらをお受けで?」

御坂「ううん。ミサカネットワークとは通信接続だけ」

そこで一通り確認し終わったのか、
よしっと小さく呟いては黒子の方に向き直る御坂。

黒子「み、みさかねとわーく?」

御坂「あ……と、とにかく演算補助は受けてないわよ」

黒子「ほう……」

御坂「まあ、原因はほぼ確定してるわね。大方、ぶっとんだこの場所の影響とかでしょ」

黒子「確かにここでは、何がどうなってもおかしくありませんわね」



599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:39:00.41 ID:SfXE9/Wko

御坂「……」

黒子「……」

と、そこで唐突に来る数秒間の沈黙。
黒子が何かを言おうと口を開きかけたが。

御坂「さて」

御坂からの区切りの一言が、その言葉の発信を遮った。

御坂「個人的な話は後にして」

黒子「……」

御坂「まず、ここ周辺の雑魚は今ので全部焼き殺したから、一応安全確保はできたわよ」

御坂「あの倉庫の中にいるのは?」

黒子「……アメリカ軍とこの島の生き残りの方々ですの。彼らの護衛を土御門さんから承ってますの」


御坂「アメリカ……アメリカね……そういうこと……」

アメリカ、その単語を耳にした御坂は、なにやら頭の中で確認しているのか
そう呟きながら一人頷いた。

そしてその隙を見逃さず。


黒子「…………………………………………お姉さま…………あ、あの…………」


黒子は再度切り出した。
先ほど遮られてしまった話を。

個人的な話は今はするべきではない、ということはわかってはいるけれど。

それでもどうしても話したいことがあったのだ。



600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:40:11.81 ID:SfXE9/Wko

御坂「ん?」


黒子「あの…………わたくし…………その……ここに―――」


御坂「何も言わなくていいから」

だが、その話の先はまたしても封じられた。

なぜなら御坂にとって、その言葉を聞く必要が無かったのだから。

御坂美琴はわかっていたから。
黒子が何を言おうとしているかは。


御坂「黒子はさ、黒子の理由があってここに立ってるんでしょ」


『やっぱり』お見通しだったのだから。


黒子「―――……」


御坂「じゃあ、私が言うことは何も無いわね」


御坂はそうなんでもないように、爽やかに笑いかけながら。

人差し指を弾くように伸ばしては、その指で黒子の手にある杭を指した。
レディから譲り受けた、奇妙な文様が刻まれている大きな杭を。


御坂「そんなの持ってる時点でわかるって」



601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:42:33.50 ID:SfXE9/Wko

御坂「あとさ、隠し事しても丸わかりだからね。顔見れば一発でわかるわよ」

そして御坂は、軽く言葉を続けていった。
学校帰りの喫茶店で話し込むいつものような声色で。

御坂「たまーに私のパンツ借りてるのとか、さりげなく枕とかシーツ交換してるのもとかも」

黒子「う゛……そ、そんな事をい、今……」


御坂「そうね、ここらへんの話は帰ってからじっくりたっぷり、ね」


黒子「……はいですの」



御坂「とにかく」


そして、御坂はゆっくりと黒子の方に歩を進めては。



御坂「黒子、一緒に来たいってんなら、正直に言いなさい。断りはしないから―――」




御坂「―――だって、私の横はあんたの席なんだから」




黒子とすれ違うような位置、
そこで足を止めては彼女の頭に軽く左手を乗せた。



黒子「―――……」


御坂の口から発された言葉は、願っていもいなかったもの。
どれだけ聞きたいと思っていた言葉か。


だが―――。


黒子は一度深く、深く息を吐いては大きく吸い。


黒子「いえ……遠慮しておきますの。もうこりごりですわね」


そう答えた。
ため息を混じらせつつ、小さく笑いながら。


御坂「……そう……」



602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:43:57.00 ID:SfXE9/Wko

白井黒子は確かに望んでいた。

御坂美琴の傍で戦うことを。

彼女と共にどこまでも行くことを。

でも。


黒子「今回でもうはっきりわかりましたの」


わかってしまったから。
白井黒子という人格は、『向いていなかった』ことに。

彼女はこの地獄で、心が壊れた自分を。
自分がいかにして壊れていくかを、知ってしまった。


どれだけ耐え忍んでも、どれだけ強く思っても、
黒子は佐天のようにはなれない。

御坂美琴のようにはなれない。


それを確信してしまった。


御坂美琴が突き進んでいく世界は、己のにとってはあまりにも闇が強すぎた。

己はとてもその中を進むことは出来ない。
いや、やろうと思えばできるだろうが、『失うこと』があまりにも怖かった。


心を失ってしまうことが。


心の中から、御坂美琴の姿が消えてしまうことが。


だから―――。



603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:45:48.54 ID:SfXE9/Wko

黒子「わたくし……白井黒子は―――」


御坂の横で飛び回る未来も、見えることは見えるけど。
その道の果てにある結末は、どうしようもないほどに真っ黒だというのがわかってしまっているから。

そこを避けてしまったら、臆病者、負け犬、敗者、脱落者、そんな風に言われるかもしれない。
でもそれでもいい。

だから、壊れてしまってお姉さまが心から消えてしまうなんて絶対に嫌だ。

わが身可愛さか、と言われても構わない。

お姉さまを好きな自分のまま生きていたい。


お姉さまの笑顔で喜びを感じる自分のままでいたいから―――。



黒子「―――もうお姉さま、御坂美琴にはついていけません」



追いかけるのはやめる。

好きだから。

どうしようもなく好きなのだからこそ。



黒子「ですからわたくしは―――」



そして、だからこそ。



黒子「―――お姉さまのお帰りを待つことにしますわね」



待つことに決めた。

追いつけないのなら、じっと待っていよう。

彼女が帰ってくる家で、彼女の居場所をとっておこう。

数多の『非日常的』戦場を巡った彼女が、
ふとした時に立ち寄れては、そのスス塗れの羽を休める『日常』を。


御坂「……黒子」



604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:47:30.69 ID:SfXE9/Wko

黒子「お姉さまは思う存分悪魔を狩ってきて下さいまし」

そして黒子は笑った。
赤くなった鼻を鳴らしながら。

黒子「わたくしは……そうですわね。迷子や万引き少年の相手でもしてますの」

可笑しげに、楽しげに。
どことなく悲しげに。


御坂「そっか……」


二人で共に進むことは、これ以後は無い。

命を預けあうことも。

同じ戦場に立つことも、もう無い。

この島で最後だ。

二人の生きる世界は、この戦場が終われば完全に分離するのだ。


御坂は、黒子の横から更にもう一歩進め、
今度こそ『すれ違い』。


御坂「……じゃあ、『今回』は『じっくり』味わっていかなきゃね。黒子」


横顔を彼女の背中へ向け、そう笑いかけた。


黒子「ええ、『さっさと』終わらせて帰らせていただきますの」


その言葉に黒子は、振り向きながら同じように笑いかけて返した。


御坂美琴の横顔と。


この戦場以降はもう見ることは無いであろう、
御坂美琴の『戦士としての背中』を見つめながら。



605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:48:23.11 ID:SfXE9/Wko

そんな黒子にを見て、御坂はにやりと口の端を上げては前を向き。

御坂「じゃあ、とりあえず向こうの人たちの話も聞かせて」

確かな足取りで歩み始めた。
アメリカ軍の者達がいる、3っつ程向こうの倉庫に向け。

その後に黒子も続き歩いていこうとしたが。

御坂「黒子、あんたはテレポートで先に行って手当てしてなさい」

御坂は背を向けたまま彼女に告げた。

黒子「なんの。かすり傷ですので」

それに対し黒子はそう答えた。

実際はとてもかすり傷とは言えなかったのに。

数針は縫うであろう裂傷が太ももにあるし、
左手先は酷い凍傷で、痛みも激しい。

しかし、ここは我慢せざるを得ない。

医療品は底を突いているため、
致命傷でもない限り節約しなければならないのだ。



606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:49:19.43 ID:SfXE9/Wko

そしてテレポートしないで、あえて痛みの中歩く理由は。


御坂「……じゃあ、先に行ってせめて休んでいn」


黒子「結構ですの。わたくしはお姉さまの斜め後ろ、この位置が大好きですので」


この御坂の後ろ姿を、少しでも長く目に焼き付けたかったから。


この位置に立っている感覚に、できるだけ長く浸りたかったから。


御坂「…………そう。なら問題ないわね」


黒子「ええ。何も」

と、そういったやり取りの後、ふと。

御坂「あ、そうそう。大事なことがあったんだ」

前を歩く御坂が何かを思い出しかように声を挙げ。



御坂「黒子、音声通信繋がる?」



振り向きそう問いかけてきた。

黒子「?」



607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:50:46.80 ID:SfXE9/Wko

その言葉を受け、
首を傾げながら言われるがまま黒子は通信を試みたところ。

黒子「AIMストーカー。こちらCharlie 4」

黒子「……」

黒子「AIMストーカー、AIMストーカー。こちらCharlie 4、応答を」

黒子「…………誰かッ!……応答を!」

御坂「やっぱりあんたの方もねぇ……」

通信を試みる黒子のその一部始終を見て、
御坂はため息混じりに口を開いた。

御坂「私だけの故障かなって思ってたんだけど。ほら、私は黒子達と違ってこれの接続だし」

耳にあるイヤホン式の通信機を指差して。

黒子「……これは……」

AIMストーカーの能力が何らかの理由で停止した、
というのは考えられない。

なぜならこうしている今も、
周囲に悪魔がいるかどうかなどのデータが随時送信されてきているからだ。


黒子「一体どういう―――」


だがその原因を探るのは、後回しにせざるを得なかった。


御坂が表情を一変させては、黒子の言葉を軽く挙げた右手で制し。


御坂「…………」


鋭い目で、とある方向を凝視し始めたからだ。


黒子「……」

その御坂の反応は、
何者かの存在を察知したということであるのは一目瞭然。

黒子もそれにすぐさま順じ、
右手の杭を握り軸足を後ろにずらしては構えた。



608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:52:18.66 ID:SfXE9/Wko

が、そんな『警戒態勢』もすぐ解かれることとなる。

3秒後、御坂はレーダーなどから更なる情報を得て確認したのか。

今度はふーっと息を吐きながら、また先ほどの表情に戻っては。

御坂「大丈夫だから!一帯は制圧してあるわよ!」

凝視していた方向へと声高に叫んだ。

黒子「……?」

するとその声で一つの人影が現れては、
倉庫をいくつか飛び越えてこっちにやってきた。

それは真っ黒な戦闘服に大きなバックパックを背負った、
御坂と同じくらいの身長の、黒髪のショートカットの少女であった。

黒い戦闘服に日系の女の子、とくれば十中八九仲間の能力者であろう。
そう確信して、黒子もようやく息を吐き出しては警戒を解いた。


御坂達の下にやってきた黒髪の少女は、
二人の傍に軽い身のこなしで着地しては。

「いやー、なんか通信がバグってて困ってたの」


「いきなり出て行ったら、焼き殺されるくさかったし」


首を傾けながら、そんな風に零した。

ただ、元々そういう調子の人物なのか、
そう言葉では言うもその表情は変化に乏しく、声色も一定。

御坂「……んん、まあ、このタイミングでいきなり来られるとね」


そう合いの手を入れながら、御坂はふと思った。
この少女は妹達にどことなく似ている、と。

無感情というわけではないが、
あまり感情を顔や声に出さないタイプなのだろう、と。



609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:53:43.63 ID:SfXE9/Wko

「えっと、レールガン?」

続けて黒髪の少女は、
ミーティングで見覚えがあるであろう御坂にそう名を確認し。

御坂「ええ」

「私はWhiskey 5 。ムーブポイントの命令でCharlie 4に合流しに来た」

御坂「(Whiskey……ってAIMストーカーの……)」

「うーん、と、この辺りにいるって聞いたけど」

御坂「Charlie 4はこk」


黒子「わたくしがCharlie 4ですの」

そこで黒子が割り込むようにして名乗った。

「あ、よろしく。えーっと、命令は聞いてる?」

黒子「ええ。拠点を確保して、生存者と部隊の負傷者を収容、その守護」


と、そこで。

黒髪の少女は、再び御坂の顔をじっと見ては、何かを待つように黙った。

御坂「っ……えっと……」

彼女は、上官に当たる御坂に確認を求めていたのだ。

建前上は、一応幹部なのだから。
それに順当に従えば、ここにいる者の中では最高指揮官に当て嵌まる。



610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:55:44.49 ID:SfXE9/Wko


だがそれは建前上だけ。


この二人は専門知識もたっぷり書き込まれているし、
何よりも黒子はジャッジメントで、黒髪の少女の方は暗部での組織活動経験がある。

それに比べて、御坂は超がつくド素人だ。

やや粗末な言い方をすれば、戦闘能力が高いだけで、
作戦運用だの指揮だのでは全く役に立たないのだ。

御坂「えっと、私はあくまでも助っ人的な?者で指揮とかできないから、と、特に気にしないで」

御坂「そういうのはど、どうぞ、二人に任せるから」


「了解。それとこれ、衛星通信機」

そこで黒髪の少女は再び黒子に向き直り、
背負っているバックパックを親指で示した。

「AIMストーカー曰く、この島のせいで使い物にならないくさいみたいだけど」

黒子「そうですの……」


「それと医療品もたくさん」


黒子「―――医療品!!んまあまあ!!!たっ!!!助かりますの!!!」


医療品、その言葉で黒子か食いつくように少女に寄り。

「結構な数あるから、じゃんじゃん使って」

黒子「ええ!ちょうどさっき重傷者が一人……!!さあ急ぎますの!」

彼女の肩に触れながら。

黒子「お姉さま!飛びますので!」

凍傷なのも忘れてしまっているのか、
痛々しい左手を御坂の方へと差し出した。

御坂「あっ……と、私はちょっと歩きながらやることあるから、先行ってて」

だが、御坂はそれに対しこう言葉を返して。

黒子「―――で、では!!お先に!!!」

そして黒子と黒髪の少女の姿が消失した。



611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/15(金) 23:58:53.86 ID:SfXE9/Wko

その後。

一人その場に残った御坂は、
一度ゆっくり息を吐いては吸い。

御坂「土御門?」

御坂「ムーブポイント?」

御坂「……メルトダウナーぁ!!」

御坂「AIMストーカー!!」

各幹部達へ呼びかけたが、やはり応答は無し。
ここまではもうわかっていたこと。

それを踏まえて御坂はこう、静かに続けた。



御坂「……………………あんた達は聞えてるんでしょ?」



そしてその声に応答してきたのは。


『はい。お姉様』

『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん』

『はいはい聞えてまっす』

妹達であった。

ミサカネットワークとの通信、
それがこのイヤホン型通信機の本来の使い方だ。


御坂「どうなってるのこれ?そっちから何かわかる?」


『AIMストーカーが形成しているリンク網自体は問題ありませんが、当のAIMストーカーが何もしていません』

『ミサカ達の演算補助が活発に機能してますので、何か別の事に能力を集中しているみたいですね』

『悪魔の移動に関するデータは自動で随時送信されているみたいですが、相互通信機能はダウンしてます』

複数人の妹達が相手をしてくれているのだろう、
その声は、それぞれの言葉の端々が重なっていた。



612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/16(土) 00:01:34.90 ID:B8FgFp9Lo

御坂「じゃあ……あんた達でAIMストーカーの『網』を乗っ取ってさ、リンク先の人達の情報取れる?」


『無理です。リンク末端者の知覚情報取得はAIMストーカーの能力によるものでして、』

『AIMストーカーが知ろうとしなければこっちにもデータが上がってきません』

『あ、でもつっちーはマイク付通信機でリンクしてましたから、通信機が生きてれば音が拾えそうです』

御坂「(つっちー……)」

『こういう時、能力に頼らない純粋機械は強いですね~』


御坂「それでもいいわね。それでお願い」


『ですが無理です。ミサカ達にはその権限がありませんので』


御坂「めんどくさいわね……私の権限とかで許可できる?」


『いけます。一応お姉様も指揮クラス権限をもらってますので』

『知らなかったんですか?作戦要綱にちゃんと明記されてましたが』

『だいぶ逞しくなってきたと思っていましたが、やっぱり素人っ気は抜け切ってませんね』

御坂「はいはいはいゴメンナサイわかったから私の権限でやって」

『じゃーんじゃーん、ここで運命の選択。どれにしますか?この五つの中から選んで下さい』

『①AIMストーカーのリンク経由で原音を流す。②ミサカの生朗読。③上位個t』

御坂「一番で」


『『『合点承知ィっっ』』』


御坂「…………」



613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/16(土) 00:02:54.23 ID:B8FgFp9Lo

『ぴんぽんぱーんぽーん。では少々お待ちください。今、つっちーの通信機の遠隔操作を試みてるところです。ぴんぽんぱーんぽーん』


御坂「……………………」


『…………』


御坂「……………………」


『一応言わせてもらってもいいですか?ミサカ達があえてこのノリなのは、そっちは殺伐としているようですので、少しでも気分が晴れればt』


御坂「アリガトわかってるから急いで」


そう御坂は、
今や小慣れた手際で妹達をあしらいながら。


色とりどりの鮮やかな閃光で染まる『南の空』と。


場違いな『陽光』の下、真っ黒なカーテンのようなものが蠢いている、
土御門がいると思われる方角を、それぞれ険しい表情で一瞥し。


御坂「…………」


漏れ出してくる強烈な圧を肌で一通り感じては、踵を返し。


黒子達が先に向かった倉庫の方へ向けて、
ひとまず歩を進めていった。



―――



621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:34:54.69 ID:jOMVFZ+Ro
―――

『神が存在すること』を信じるか?

そう問われれば、天界魔術師達は皆迷わずYESと答えるだろう。

普段使っているその力は神から引き出しているモノなのだから、
信じる信じない以前の問題だ。

魔術に携わる者ならば、当然誰しもが『存在すること』を知っている。

存在を認めないという事は力を受け入れられない、
結果、魔術が使えないのだから。


では『神のこと』を信じるか?、と問われると。

また、神を愛しているか?、と問われると。


多くの者達は同じくYESと答えるだろうが、
全員ではない。

神を知っているのと神を愛するのとは全く別であり、
少なからずNOと答える者達がいる。


神がいることは知っている、
神の力を借りたい、
でも神自身のことは愛していないし信用していない、と。


そんな事を臆面もなく口にできる者達が。



彼、土御門元春もまた、そんな『冒涜者的』な魔術師の一人である。



622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:36:00.47 ID:jOMVFZ+Ro

とはいえ、当然最初から神を愛していない・信用していない、
というわけではない。

一般意識的には宗教性が特に希薄な日本であっても、
魔術界ではそれなりに信仰心が大事とされており、

敬虔な十字教徒と比べればさすがに程度はささやかなものだが、
もちろん土御門もある時期までは一応しっかりと信仰はしていた。

ある時までは。

幼い頃に才を見出され、土御門本家に養子入りし。
天才と言われながら、正式な陰陽師として陰陽寮に所属して。

多数の任務で目覚しい成果を挙げ。
伝説級の陰陽術をいくつも習得し、
僅か齢12でありながら陰陽博士にまで駆け上がり。


そんな中のある日。

彼の明晰な頭脳は気付いてしまった。
枷が突然外れたように唐突に。


信仰し愛している神と、この魔術の向こうにある神が。
明らかに『別物』としか思えない点に。


そんな剥離感に。



623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:37:46.36 ID:jOMVFZ+Ro

それは、普通は気付かない僅かなズレ。
違和感を覚えたとしても、その根源を把握できずに普通は気のせいだと済ませてしまう。

だが聡明な彼の意識は、はっきりとその違和感を認識して捉えたのだ。

そして魔術の奥を知れば知るほど。
研究し学べば学ぶほど。

『神典に出てくる神々』と『今の魔術の神々』との性質の違いが明確になっていく。

程度の差が有れど、
例えば十字教でも神や天使の優しさや人格、情ははっきりと様々な文献に記されている。

だがしかし。

古の記述にはそうあっても、今の魔術から見える神はそうではない。

それも優しさがない・人格が違うというレベルではなく、
人格そのものを感じないのだ。


まさしく『ただの機械』のように。


神典や伝承に記述されている人格があるとは、到底考えられない。

いや、天の存在にも人格があるかもしれないが、
少なくとも人間界との関係においては、その人格は一切絡んでいないのだ。

もしこれが人格を通したの上での結果だとしたら、
人間側見れば人類の敵だとしても良い位に歪んでいるだろう、

そう結論せざるを得ない程に、現実ははっきりと示していた。



624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:39:25.65 ID:jOMVFZ+Ro

この点に気付いてしまった者が、
それまでと同じように信仰を持ち続けられるかどうかは難しいところだろう。

少なくとも『全く同じく』信仰し続けることは不可能だ。


ある程度の心の整理と、この問題を自分なりに解釈することが必要だ。


元々相手は人知を超えているのだから、
人には想像がつかない隠れた意思があるのだろう、とするか。

そうならばそうなのだと現実を受け止めるしかない、とするかなど。

ただどちらにせよ、
この問題について更に探求しようという方向に思考が進む者はいない。

いたとしても、『真実』に辿り着く事は不可能だ。

まず余りにも困難な探求で挫折する。

また、もしその挫折を越えたとしても、
今度はセフィロトの樹に繋がれている者達に働く『潜在意識』がその先を阻む。


そしてその先には、天による『実力行使』が待っている。


これら障害を越えて『真実』に到達した者も、
非常に極僅かだがいるにはいる、だがその者達は例外だ。

ずば抜けて秀でた才と叡智を有し、
更には天にも負けぬ運と力を味方にした本当に一握りの者達だけである。



そして土御門元春は、
そんな『例外者』などに、到底及ぶようなレベルではなかった。



625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:41:05.79 ID:jOMVFZ+Ro

確かに彼は、非常に難度の高い伝説級の陰陽術をいくつも習得し、
任務では凄まじい成果を挙げ、10代半ばになる前に幹部職にまで駆け上がり。

いずれは組織を背負って立つトップ集団の一人、
更には陰陽長官の座も狙えるかもしれないとされたが。


―――だが、それだけ。


『才ある優秀な魔術師』であったが、『それだけ』。

魔術界隈に特に名が広まることは無く、魔術史に名を残す事も無い。

魔神の座が約束されるような100年に一人の天才ではない。

魔術史に革命を起こす1000年に一人の天才ではない。


所詮『普通の天才』。


そんな土御門元春のこの問題への探求はすぐに挫折し。
最終的にそういうものだと受け止めるしかなく。


そして魔術の先にある存在は機械・プログラムのようなもの、
と現実を認めてしまってその結果。


彼の神への視線は冷めて。



彼は信仰を失った。



626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:43:14.91 ID:jOMVFZ+Ro

ただ、彼が信仰心を失った原因の全てが
この事を要因とするわけではない。

むしろこれは『最後の一押し』に過ぎず、
実際は、当時の彼の周囲状況が最大の要因であった。

傍から見れば成功を約束されている者に移っただろうが、
実際はそうではなかった。


彼の歩むその足は空回りし、
歩む道はとことん暗く淀み、


その道筋は狂いに狂い果てて―――。


とにかくそんな日々の中で
彼が天の人格を感じることは一度も無かった。

絶望の淵に追い込まれて、
天に救いを求めたのは一度や二度ではない。

血に染まった己の手を悔やみ、
天に懺悔しては願った事も一度や二度ではない。

それでも一度も。


魔術、それも数々の伝説級の領域に足を踏み込んでいながらただの一度も、だ。



そこにこの剥離感の件、それで彼は信仰心を失った。
いや、失ったと言うよりは『止めた』のだ。

信仰することに何の意味がある?と。

何が得られる?

意味があるか・何が得られるかという考えは冒涜的だと言うが、
だからどうだというのだ?



愛しき人に向けるような心を、『鉄の塊』の如く『物』へ捧げて一体何が―――。



627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:45:07.57 ID:jOMVFZ+Ro

そんな風に信仰することを止めた彼を、
その後も周囲の状況は追い込み、追いやり。

激昂し、苦悩し、絶望し尽くしたその果てで、
自身のどうしようもない限界にぶち当たり。

そこで抗う意志が折れてしまい、
いつしか心さえ冷め始め。

形の無いモノや証拠の無いモノ、それらの存在全てを信用することも止め。
理想を描くことも希望を抱くことも無駄としたその末に。


どうしようもない現実を、『悲惨なほどに合理的』な姿勢で受け止める。


『それだけ』しか出来なくなってしまっていた。

いや、それだけしかやろうとしなかった。

学園都市の試験に合格し『何も知らず』に喜ぶ土御門舞夏、
それを、土御門元春はただただ黙って見ていることしかしなかった。

それは仕組まれた罠だ、と告げる事も。
俺のせいだ、全て俺のせいで、と独白する事も。

何も言わずに彼女の腕を掴み、
全てから二人で逃げ出す事も可能であったはずなのに。


できたのに、しなかった。


既に彼の心は、抗うことを諦めてしまっていた。



628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:48:06.60 ID:jOMVFZ+Ro

確かにこれまでの怒り、憎しみ、恨み、
それら負の感情は彼の心の底に積もり積もっていた。

だが、それがこの状況を変える力になる事は無かった。

いや、それらを闘志に結びつけたところで、
状況を変えるほどの力にならないことを知っていたから。

それどころか、より状況を悪化してしまうのが確実だったから。

当時の彼に許された唯一の選択肢は、
状況に抗うことなく、できるだけ波風立てずに現状を維持すること。

土御門舞夏を『守るだけ』。


土御門舞夏を『救う』ことは選択できなかった。


土御門舞夏を『解放』することは選択しなかった。




そして彼は、学園都市にやって来て。



学園都市、イギリス清教、陰陽寮、
それら各所のとの間で交わされた『取引条件』に従い、能力開発を受けて力を捨てた。



特に抵抗は無かった。

ここまで堕ちてしまったのも、いわばこの力のせい。
巨大だが状況を覆すほどではない、という中途半端なこの魔術の才のせいでもあるのだ、と。

むしろ、無かった方がマシではなかったか、と。



630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:51:49.82 ID:jOMVFZ+Ro

「己の事を、『限界を恐れぬ者』と?」


「違う。君は似て非なる『限界を知らぬ者』だ」


その後、学園都市に来て半年たった頃、
アレイスターの口から告げられたこの言葉。

正にその通りであった、と彼は受け止めた。

土御門元春、その名の少年は限界に気付かずに突っ込み。
限界にぶち当たり、限界に恐れてしまって進むことを諦めてしまったのだ、と。


心は折れて朽ち、信念はタダのガラクタと化した、と。


学園都市とは、彼にとってまさに『流刑地』であった。
死ぬまで決して軽くならない負い目を前にして、己が業と向き合い続ける。


そんな牢獄―――。



―――そう思っていた。



上条当麻、という男を知ってしまうまでは。



631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:52:43.09 ID:jOMVFZ+Ro

いや、『知ってしまう』という
あたかも偶然の結果のような言い方は語弊があるだろう。

あの中学に入り、あの男と同じクラスになり、同じ寮の隣部屋、
それも全ては予め決められていた事。

あの男に接近する事も命令だった。

アレイスター=クロウリーの腕となった
彼に下された多数の任務の内の一つが、

上条当麻の日常的な監視と潜在的な『誘導』だった。


それは、土御門にとっては朝飯前の仕事。

相手の正確を読み取って、
好まれる・信用される人格を演じる事などお手の物。

幼少の頃から叩き込まれ染み付いた技術で、
何度これで相手の心を掴み、一体何人を手の平の上で転がし、


一体どれだけの数の、『預けてくれた背中を刺して』誅殺したか。


今までずっと、ずっと日常的にやり続けてきたこと。

なんら難しくも無い、淡々とこなせる日常任務―――。

―――だっただろう。


相手が上条当麻でなかったのならば。



632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:54:28.51 ID:jOMVFZ+Ro

上条当麻とは、単純そうでありながら掴み所が無い男。

裏表が無くストレートで、心は熱くて情に厚い男。

普段は馬鹿としか言いようが無いアタマなのに。
ここぞと言う時にはやけに頭が柔軟になり冴える、本当に馬鹿なのか本当は聡明なのか良くわからない男。

はっきり言ってこの男は、
土御門にとっては軽蔑し見下すタイプの人間だった。

凄惨な現実を知らず、知ろうともせず、死んだ方がマシという苦痛も知らず、
幼稚な善を掲げ身勝手な理想を押し付ける、そんな低俗で迷惑極まりない者。

なんとも目障りだった。


だがいつからだろう。


そんな男が、眩しく見え始めたのは。
その光が取り繕った仮面の下までしみ込んで来て、
冷め切った心が刺激され始めたのは。


所詮こんな『一般人の正義感』なんざ、現実を知れば。

限界にぶち当たれば。

殺し殺されが当たり前の領域に触れしまったら。

尻尾を巻いて無様に逃げだしてしまうと思っていたのに。


違っていた。



上条当麻は『正真正銘の馬鹿』だった。



633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:56:41.69 ID:jOMVFZ+Ro

どんな壁にぶち当たっても逃げようとはせず。

もうどこか美しく思えてしまうほど、彼は我を貫き通し続ける。


何があっても諦めない、呆れ返ってしまうほどの『往生際の悪さ』。


己の限界を知っていながら限界を恐れない、『鈍感過ぎる馬鹿さ加減』。

土御門に欠けていたモノを持っている土御門がなれなかった者。
それが上条当麻であった。

そしてそんな男と日常を過ごしていく内。


妬んで羨んで、いつしか信用して心を許してしまっていた。


上条当麻という熱気に当てられてしまっていたのか、
冷め切ってしまっていた心が再び熱を持ち始めていたのだ。


心の底から、土御門舞夏以外の者を信頼したのはいつ以来だろうか。


楽しい事を楽しいと思えたのはいつ以来だろうか。

まさか妹の事を進んで喋るなんて、
ここまで信頼性の高い関係を今まで築けたことがあっただろうか。


心の底から笑ったのはいつ以来だろうか―――。



634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 01:58:23.37 ID:jOMVFZ+Ro

アレイスターはこれも仕組んでいたのか。

土御門元春という人間が上条当麻を慕い、

たた任務という形式上だけではなく、
上条のためなら望んでその身を犠牲できるように、と。

恐らくそうだろうが、
当の土御門にとってはそんな事などどうでもよかった。


例え仕組まれたものでも、本物は本物なのだから。



上条と土御門の友情は本物だった。



その心は本物だ。

土御門は心を取り戻したのだ。

沸々と、失っていたはずの衝動が日に日に込みあがってくる。

もしかしてもう一度。

俺は戦ってもいいのだろうか、と。

また、馬鹿馬鹿しい理想と希望を追いかけてもいいのだろうか、と。


上条当麻のように―――。



―――『大馬鹿者』になってしまってもいいのだろうか、と。



もう迷うことは無かった。

一度堕ちに落ちた男、土御門元春はそこから再び『始まった』。


今度こそ『救う』ため。


守るだけではなく、『解放』するために。



635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:00:52.89 ID:jOMVFZ+Ro

信仰を失い。
心が冷め。

戦う意志が潰え。

敗北を認め、力を捨て。


到達した最果ての流刑地。


だが、そこは実は『第二の始まりの地』で。


上条と出会って心を取り戻し。

上条に当てられて戦う意志を取り戻し。


認めた『敗北』の印は返上し。


再び抵抗を始めて。

小さな事から着実に『手駒』を揃えていき。


インデックスと上条の出会い、
そこから爆発的な加速をし続けるこの世界から振り落とされないよう、
懸命にしがみ付いては抗い続け。


そして学園都市の裏側で、
かつて己と同じように一度堕ちた『クズ達』と共に立ち上がり、遂に『表舞台』に躍り出て。


『幼稚な理想』を守るためにこの島に来て、抗うための力を取り戻し――――――。



やっと触れることが出来た。



やっと会えた。




――――――本物の―――。



636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:02:07.46 ID:jOMVFZ+Ro

それは何とも不思議な感覚だった。

どう言葉で形容したらいいか。

周りの環境は変わっていないはずなのに、
見える情景はとにかく爽やかで、そして暖かくて。


土御門『―――』


眼前向こうに待ち構えるのは、圧倒的過ぎる闇の怪物。


赤き縦スリットの瞳孔を有す、体長30m近くにもなる『黒豹』。


体の表面を逆立つ毛のように震わせ、
底なしの不安感を覚えさせるおぞましい異界の唸り声。

体に纏わりつく濃厚な闇、いや、その体自体が実体感が不安定であり、
まるで背後の景色に黒色の絵の具が滲んでいるよう。

その姿は想像を絶する程に恐ろしく。
余りにも存在が大きすぎて、勝算なんかこれっぽっちも見えない。


在りし日の己なら、真っ向勝負は100%避けていただろう。
きっと、きっと『同じよう』に諦めて敗北を認めてしまっていた。

だが。

今は『あの頃』とは違う。


今の己は一人ではない。

大切だと胸を張って言える友がいる。

一緒に戦ってくれる仲間がいる。

背中を預けれる戦友がいる。


そして。


手を差し伸べてくれる『神』が―――。




―――『慈母』がここにいる―――。



637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:03:30.22 ID:jOMVFZ+Ro

『彼女』は、無条件で手を差し伸べてきてくれている。

救いの手を。

助けの手を。


だからこちらも素直に、全てを受け入れるのだ。


信じろ。

信頼しろ。

身を委ねろ。

心を閉ざしていた錠を全て打ち破り。

その中身を全て曝け出せ。


伝統に乗っ取った祈りも、作法を厳格に守った儀式も必要ない。
賛美の為に連ねる言葉も、信仰心を示す美的な詩も必要ない。


ましてや、『機械染みた魔術的作業』など。


ただ慕い、ただ愛し、ただ信頼しろ。


その繋がりがそのまま―――。




―――力になるのだから。



638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:04:55.67 ID:jOMVFZ+Ro

そんな少年の心を、魂を乗せて。


赤い隈取が刻まれている白狼は、駆け抜けていく。

『黒豹』へ向け真っ直ぐに。


速く、速く。


純白の毛を靡かせしなやかに。

軽やかな四肢先が、瓦礫で覆われた大地に跡を記していくたびに、
そこから美しい花や緑が湧き上がる。

それは、漏れ出した慈母の力による『生』。


だが白狼が大地に植えた生は、すぐに散っていく。
彼を串刺しにしようと、地面から『影の槍』が突きあがってくるからだ。

しかしそんな邪悪な槍は、白狼の体には掠りもしない。


それに苛立つかのように、影の槍が益々勢いを強めては林立していく。

槍の突きあがる方向も、
垂直だけではなく様々な角度で、行く手を阻むように。

その速度、密度、量、どれも凄まじく、
さながら巨大な剣山が無秩序に敷き詰められたかのよう。


だがそれでも、影が光を汚すことはできなかった。


地を這うような低さですり抜けては。

軽やかに跳ね疾風のように飛び抜け。

そして影の槍の上を軽々と伝い、一気に距離を詰めて行き。


黒豹の5m程前、そこで踏ん張るように前足を広げ、急停止し―――。



―――『断神』―――。




『一閃』



639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:06:47.06 ID:jOMVFZ+Ro

その刹那。

土御門の意識内では、
こんなイメージが浮かび上がっていた。

目に映る景色をキャンバスにし、黒豹の頭先から地面までを縦断するように―――。


―――墨汁で一筆。


そのイメージは、

慈母の力の動きが
人間の認識に合わせて変換された像なのか。

それとも、これが慈母『そのままの目線』なのかはわからない。

だが表現しろと言われれば、
土御門は迷わず『墨汁で一筆』とする。

まさにそれがしっくり来るのだ。

そしてその瞬間。

イメージ内で描いた線と同じ場所に。


鋭い閃光と共に、とんでもない規模の力が走り空間を切り裂いた。


それはまさしく、どんな物でもどんな存在でも
一撃で寸断してしまうだろうと思える程の。


だが、相手も相手。
こっちについている慈母は規格外の存在であるが、同じくこの黒豹も規格外。


土御門『(―――ッ)』


この『一閃』の直撃を受けても、黒豹は無傷であった。
全く微動だにしていない。


空間は完全に破断されていたのに、
影だけは傷一つ無い。


この影だけは。



640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:08:09.11 ID:jOMVFZ+Ro

その瞬間、土御門の『目』はこの時の力の動きを
かろうじて捉えていた。


そして違和感をはっきりと覚えた。

『感触』がおかしい、と。

単に、黒豹の防御力がこちらの攻撃力を上回っただけ、
というわけでは無さそうだ。

なにか『カラクリ』がある、と。


白狼は四肢で素早く横に跳ね、
方々から突き出してくる槍を再度かわしながら。


土御門『(―――結界、か?)』


結界、そう思い浮かべると。

記憶、知識、推測といった慈母からの認識が続々と流れ込んでくる。


だがそれらはどれもぼやけており、
土御門の意識ははっきり認識できなかった。

なぜか。

それは、土御門がまだ『受け入れきっていない』から。


土御門『(くそっ―――俺はまだ―――)』


己は荒み、捻くれ、淀み過ぎてしまったようだ。
ここに来てまで、それが未だこびり付いてしまっている程。

慈母はどこにも疑う余地が無いのに、
この捻くれきった心は未だにどこかで疑って警戒してしまっている。

ダメだ。

それではダメだ。

もっと素直に、もっと純真に。


もっとしっかり心を開かなければ―――。



641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:08:53.62 ID:jOMVFZ+Ro

黒豹本体は今だ最初の位置から動いていない。
余裕の表れか、まだこちらの様子を伺っているのか。


それとも、『ハンター』の姿に相応しく、



『一撃必中』のタイミングを見計らっているのか。



そして白狼へ向けての攻撃パターンも変わっていく。

白狼に向け今までと同じように、
槍が方々から突き上がりかけた瞬間。


その槍の形が突如変わる。


一気に膨張しては太くなり、そして『広がり』。

指先が鋭い『巨大な手』へと変形した。
その大きさは、白狼の体を手の平の中に閉じ込めてしまえそうな程。


土御門『―――!』


しかもその手達は、今まで真っ直ぐ機械的に延びていた槍とは違い、
こちらを追いかけて掴もうとしてくる。

当然、猛烈な速度で。

その手は対象を掴むどころか、
爪で大地を削り取っては握り砕いていき。


白狼が紙一重でかわすたびに、周囲が抉り飛び、
大量の粉塵が舞い上がっては大地が震えていく。



642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:11:13.72 ID:jOMVFZ+Ro

この密度とこの速度では、
いくらこの白狼でもただ回避し続けるには厳しいものがあった。

そこで。


『断神、一閃』


再び一筆。


今度は『手』に向けて。

この影の手を切り捨てるべく。


だが。


土御門『―――…………』


結果は、黒豹本体に仕掛けたのと全く同一。

一閃に篭められているのは凄まじい力にもかかわらず、
本体ではない『周囲の影』ですら、傷無し。

弾くどころか、その勢いを僅かに殺すこともできなかった。


『一閃』の威力が劣っていたというわけではない。

むしろあの無数の槍や『手』の中の一本と比べたら、
遥かに『一閃』の方が強い。

そう、『ちゃんと』真っ向からぶつかり合ったら、
決して押し負けることは無いのだ。


防ぐのに失敗したその影の手を、
寸での所でかわしながら土御門は確信する。


黒豹は何らかの『非常に特殊な力』でその身を、いや『影全て』を守っている。
しかもそれは、この慈母の力すら遮ってしまう程の鉄壁だ、と。


ただ、その詳細を知るにはもっと慈母を受け入れては力を引き出し、

そして黒豹に攻撃を与えて確かめねばならない。

土御門は更に深く、更に多きく、その心を開いていく―――。



643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:12:53.16 ID:jOMVFZ+Ro

そんな風に、
この白狼に湧き出してくる力が徐々に高まっていくのを察知してか。

影の攻撃が更に苛烈になって行く。

無数の手や槍は、壁のようになって立ち塞がり。
延びた先端は上部を封鎖し。

地面からは、新たな槍や手が突き上がり。


そして。


土御門『―――』


白狼も、徐々に回避が厳しくなっていき。

そんな状況の中で、
『回避方向はたった一方』という瞬間が来て。


そこで、黒豹本体が遂に動いた。



黒豹は、この一撃必中のタイミングを伺っていたのだ。



確実に来るその回避コースめがけて、避ける手段の無い一撃を。



白狼に負けないほどにしなやかなその体を躍動させ。

その速度は、周りの槍や『手』が止まって見える程にレベルが違う。

そして衝撃波も振動も音も発することは無く、力も漏れ出しはしない。

完璧な力の集中収束。


むき出しになっている牙は、その口にだけではない。

肩、胸、背中、あらゆる箇所の影が形を変えては、
前方へ向けて『牙』と『刃』となって延びていく。



白狼を串刺しにし―――。



その純白の衣全体を、真っ赤に染め上げるべく―――。



644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:14:01.74 ID:jOMVFZ+Ro

それまでのこの白狼であったら、貫かれてしまっていたであろう。
だが。

この白狼は、常に力が溢れ上がっていっている。
1万分の一秒前単位で、過去と現在を比べても明らかに違う。

『天にいる本物』と比べたら、まだまだ小さいものではあるが、
だが着実に、そして正確に本物に近づいてきているのだ。

突進してきた黒豹。

白狼が貫かれその巨体に潰されるかと言うその瞬間。


延びた牙と刃の漆黒の先端が、その柔らかな毛皮にあと1mまで迫った時、その間に―――。




『鏡』が虚空から出現した。




淵が真っ赤な炎で彩られている『銅鏡』が。


それは正真正銘の『天界の宝具』。


魔術的に言えば、『オリジナルの聖遺物』―――。



645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:15:37.37 ID:jOMVFZ+Ro

ただ。



結果は先ほどと『同じ』であった。



『鏡』をもってしても、

黒豹の攻撃は弾くことはできず、
それどころか勢いを少しも殺すこともできない。


だがしかし。


黒豹の牙と刃は刺さりは『しない』。


間に入った『鏡』は、貫かれることも砕かれることも無かった。


白狼は。

勢いそのままで押される鏡、
その背に己が背中を当てては、あえて『脇に押し出され』。


結果、鏡・黒豹と、白狼の位置関係はすれ違うようになり。



そしてすれ違うかと言うその瞬間。


白狼は牙をむき出しにしては口を大きく開き。



黒豹の首元へと―――。



646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:16:53.57 ID:jOMVFZ+Ro

黒豹の30mに比べて、白狼は体長は2m程。

だが、両者程の領域の者達にとって、
お互いの『物理的なサイズ』など、あまり関係ない。




―――白狼は、黒豹の首に噛み付き。



四肢を大きく広げては踏ん張り。



剥き出しになった牙の間からうなり声を漏らしながら。

影の残像・黒い尾を引きくその巨体を、
勢いを殺さぬまま一気に引き寄せてはぶん回し。


周囲の影の槍・手の壁へと凄まじい勢いで叩きつけた。


金属やガラスがぶつかり合うような、強烈な激突音。

界が軋み、空間が凹むほどの猛烈な衝撃―――。


その瞬間、叩き付けられた黒豹の表面が波打ち、その形が崩れた。
さながらテレビ映像にノイズが走ったよう。


だが、白狼の手はこれだけではなかった。


像が乱れてる黒豹の懐に『円』を描き、その上部に『へた』のように短い線を引く。


止めとばかりに、そんなイメージを思い描く―――。



『爆神―――輝玉』



次の瞬間。

色鮮やかな、大きな『花火玉』がその描いた所に出現し。


炸裂した。



647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:18:40.24 ID:jOMVFZ+Ro

無駄に広範囲を吹き飛ばすのではなく、
適度な範囲内を極限まで破砕する、非常に濃度の濃い強烈な爆発。

その閃光に照らされる中、白狼は一旦距離を開けるべく100m程後方に跳ねた。

その後を追い、開放された鏡が宙を飛んでは、
白狼の背中に乗るような位置に。


そして白狼は、軽やかな足取りで地面に着地し。


土御門『…………』


閃光が収まりつつあった爆心地をじっと見据えた。

視線の先では薄くなっていく光、
その中から姿を現す『影』。


土御門『…………』


やはり傷一つついていなかった。


『輝玉』の凄まじい炸裂も、『一閃』と結果は同じ。
影同士をぶつけても結果は同じ。

そして、今やより慈母の力に染まっている土御門の『目』には
それ以上の事が見えていた。


あの黒豹がどのように攻撃を防いでいるのか、
その原理はまだわからないが、その『系統』がはっきりとわかったのだ。



648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:20:28.50 ID:jOMVFZ+Ro

それはとにかく非常に厄介な―――。



この黒豹は『最悪の組み合わせ』だった。



『この系統の防御』は、魔帝の創造、覇王の具現のような、
俗に言う『力』とは違う『固有の特殊能力』の類だ。


と、魔帝や覇王を例えに出してしまっては、
非常に希少で強力な系統だと聞えてしまうかもしれないが。


種族や個体ごとに固有の特殊能力を持っていることなんて、魔界では極ありふれた事。


そしてこの黒豹の使ってる系統の防御も、
一応力のごり押しでどうとでもなる、といえばなる。

もし、この系統の防御をそこらの雑魚が使ってたとしても、
慈母の力を持ってすれば力ずくで叩き潰せるだろう。

『創造』だって、魔帝という最強クラスの悪魔との組み合わせであるからこそ
あそこまでのスケールが可能であるだけで、

そこらの雑魚が同じ『創造』を使ったところで、
そのスケールは雑魚の身の丈に沿った程度だ。


と、それはつまり、規格外の存在がそのような力を有していたとすれば―――。


それがこの黒豹なのだ。


『この系統の防御』に、魔界トップクラスの諸神諸王の力。


結果、慈母の力すら完全に防ぐ『鉄壁』となる。



649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:22:49.89 ID:jOMVFZ+Ro

そして、その黒豹の防御の系統とは。




それは『完全干渉拒絶』―――。




―――『概念否定』だ。




『攻撃そのもの』を『無かった事』する、という余りにも『フザけてる』系統。



土御門『(……さて、どう崩すか)』


白狼、少年土御門は、
その牙を噛み締めては視線先の黒豹を睨んだ。

その鋭い獣の瞳で。


一挙一動も見逃すまい、と。


あの鉄壁の、『影の要塞』をどうにかして陥落させるべく。



シャドウ
『影』を完全に払うべく。



―――



650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/17(日) 02:23:35.18 ID:jOMVFZ+Ro
今日はここまでです。
次は火曜の夜に。



655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/17(日) 10:56:57.53 ID:lywXVeD5o
乙!!
何時読んでも引きこまれるわ




657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2011/04/17(日) 11:57:23.73 ID:xyaF7trIo
ああ、やっぱいいな我らが慈母はいいな!!



620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2011/04/16(土) 23:24:05.46 ID:eQluaY4po
魔神アリウスに勝てるのってあの時点じゃ魔剣士、魔女以外いないんだろうな。
本気アレイスターはわからんけど、あのルシ麦アッに対フィアンマの3人にエンジェル神裂の7人がかりでなら何とかなりそう。




659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2011/04/18(月) 15:12:37.49 ID:rrEmUtuAO
乙!
>>1の中じゃワンちゃんはどの程度の強さなのか知りたかったり。
ジュベレウスや魔帝が上ってのは読んでて何となくわかるんだけど。




660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/19(火) 22:44:41.72 ID:rfahUGyNo
>>620
幻想殺しさえあれば、その七人がかりでも充分勝機があります。
逆に言えば、幻想殺しが無ければほぼ不可能です。


>>659
『全盛期アマ公は四元徳の一柱よりやや強い』、
と考えておりますが、現時点ではやはり諸々の理由で力が衰えてます。

また煉獄から返り咲いたフォルティとテンパは、
今は戦争に向けパワーアップしつつありますので、アマ公と四元徳単体との戦力比も完全に逆転しております。

言い換えれば、一部の力のみでねこキングと渡り合える程まだまだ強い、ということですが。

(ちなみにゲーム大神におけるオロチ~常闇ノ皇の出来事は、
 このSS内では竜王が打ち倒されるより少し前の年代、としております)


それと、完全体ジュベが古今ひっくるめて、現時点でも余裕で最頂点です。

完全体魔帝・全盛期スパーダ・覇王らが、
三人がかりでの死闘の末にギリギリでぶっ倒した、としている位ですので。



662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2011/04/20(水) 06:00:12.16 ID:9CcFtUpZo
相変わらず解説までしっかりしててぱねぇ



663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2011/04/20(水) 23:48:30.69 ID:iSAyPfOAO
わかりやすい解説サンクス!



665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 00:57:22.20 ID:PbcyKJR0o

―――

果たして、あんな事をして良かったのだろうか、と。

彼女の望み通りとはいえ、
そして他に選択の余地が無いとはいえ、あんな―――。


オッレルス『…………』

オッレルスはそう、
先ほどルシアに行った『とある処置』を頭の隅で思い出しながら。


アックアと共に、
不気味に聳え立っている摩天楼を駆け抜けていた。

穏やかな光に照らされている地の中心、
土御門とシルビアがいるであろう場所に向けて。


オッレルス『…………』

あの少女、ルシアの事を考えたってもうどうしようも無いことはわかっている。
ここで引き返しても、彼女を元に戻すことなどもう無理だ。

だがそれでも考えてしまう。


あの表情が頭から離れない。



666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 00:58:10.83 ID:PbcyKJR0o

あの『人造悪魔』は、いや、
もうあの少女を『人造悪魔』と表現することなど到底できない。


『彼女』は同じだった。

同じ顔であった。

今まで保護してきた孤児達とも。

そして。

かつて、『天命』の下この手で殺めた子供達とも。



どの『人間の子供達』とも同じであった。


だからこそ。

オッレルスはこうして考えてしまう。


先ほど、自身が彼女に対して行った行為が、
どれだけ残酷なものであったかのかを。


彼女が『忌まわしき人造悪魔である』、という覆りようの無い現実を突きつけるあの行為は。



667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 00:59:12.63 ID:PbcyKJR0o

と。

そんな風に考えてはいたが、このことについて何かしらの答えを出せる時間があるほど、
目的地は遠くは無かった。

いや、元々この思索には出口は無いため、
どれだけ時間に余裕があっても途中で『打ち切り』になる結果は同じであるが。

摩天楼を駆け抜けていくと。

その連なるビルの林が突如途切れ、
瓦礫に覆われた広大な更地が姿を現した。

そして中央、この陽光の光源の真下には、ただ一棟だけ聳え立っている高層ビル。

その配置は、アックアにとってはかなり既視感のあるものだった。
もちろんオッレルスもすぐに『それ』を連想した。

今はもう見る影も無くなった、在りし日のサンピエトロ広場とオベリスクだ。


だが、その『オベリスク』の周囲の光景が目に入った瞬間、
そんなデジャヴなど過去のものとなってしまった。


オッレルス『―――ッ』



この場に近づく間も、凄まじい圧ははっきりと感じてはいたが。

だがここに来て直に目にして、
オッレルスとアックアは知ることとなった。

今まで感じていたその圧は『薄められていたもの』であったことを。



668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:00:27.11 ID:PbcyKJR0o

ここを照らしているあの陽光は、
『影の力』が外に漏れ出すのを抑えているのだろう。

暖かに感じるこの『天界』の光は、
ただそのような感覚だけではなく

実際にこの島にて戦う者達を守ってくれているのだ。

こんな高濃度の力が駄々漏れしていたら、
この北島全体に展開している少年少女達は
一部の飛び抜けた強者を除きみな卒倒してしまうだろう。


アックア『……』


オベリスクの周り一面を覆う、
不気味で不自然で余りにも色が濃い影。

アリウスに見た『頭で認識する』類のものとはまた違う、
本能をすり潰されていく感覚。


そして白き一筋の光が、
同じく莫大な力を放ちながらこの影の中で暴れていた。



669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:01:04.22 ID:PbcyKJR0o

莫大な力が凄まじい速度で渦巻いては激突。

それによる界の歪みのせいか、
オッレルスの目をもってしてもその『身分』を知ることまではできなかったが。


ともかく、二人ともすぐに悟った。
あの一筋の白い光の主が、この陽光の源である天の存在である、と。


と、そこで。

オッレルス『―――……』


オッレルスはふと、とある点に気付いた。

あの白い光の主は、
己が『知っている天』とは明らかに『違う』、ということを。


この光に覚えるとある一つの要素を、
オッレルスは今まで天から感じたことは『一度』も無かった。




こんなにも身近で近しげで、明確な―――。



―――そう、『感情』を感じる事は。



670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:01:48.25 ID:PbcyKJR0o

その点については、彼の後ろに続いていたアックアも強く感じていた。
いや、彼の場合はオッレルスとはまた少し違った。

アックア『…………』

彼は、その身に宿すガブリエルの力から妙な反応を覚えていた。
影ではなく、あの陽光の光源を目にした瞬間に。

その反応は今まで一度も感じることの無かった、奇妙な『揺らぎ』。

いきなり波打つような。

人間の感覚、感情に例えればそれは―――。



―――『驚き』―――。



―――『動揺』―――か。



アックアがあの光源を見た瞬間、
ガブリエルの力が『動揺』、と取れる反応をしていたのだ。


『感情』と呼べる反応をだ。


これは二重聖人、そして神の右席という立場の彼にとっては、
とてつもなくセンセーショナルな事だ。

少なくとも今まで見知ってきた天への認識概念が、
根底から覆ってしまいかねない程の。



671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:02:37.06 ID:PbcyKJR0o

だが今ここで、
やはりそれらのその意味を探るべきではないのは確かであった。


オッレルス『―――跳ぶぞ』


オッレルスはそう、
背後のアックアに向けて声を飛ばすと同時に、軽く地面を蹴った。

すると次の瞬間、彼の体は超高速で飛翔していった。
影の中央に聳え立っている『オベリスク』、シルビアと土御門がいるであろうビルへ向けて。

その後を、
背中から光を噴出させるように翼を生やしたアックアも続き、
二人は陽光の空の下突き進んだ。


影の真上を通過するとあって、
二人はかなり警戒はしていたものの。

特に妨害は無くすんなりと目的のビルに到達。

その屋上の中央には。


シルビア『オッレルス!』

飾り気の無い、
大きなロングボウを手にしているシルビアと。

そんな彼女の足元に座っている、
例のフォルトゥナの姫と思われる美しい女性がいた。

だが。

オッレルス『シルビア!……?』

もう一人、オッレルスがここにいると考えていた者の姿は、
そこには無かった。



672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:03:41.49 ID:PbcyKJR0o

土御門は『少年』と聞いていたが、この屋上には少年の姿など無い。
そもそもシルビアとキリエの二人しかいない。

アックア『……土御門元春はどこだ?』

先にその点を問うたのはアックアであった。
アスカロンを肩に乗せつつ周囲を見渡しながら。

それに対しシルビアが。

シルビア『アレだ』

ややイラついたような口調でそう、ぶっきらぼうに言葉を返しながら、
顎の先で指すような仕草でとある一方を示した。

その先は。

オッレルス『?あれって……?』

更地向こうで、凄まじい力を放って影とぶつかり合っている、


シルビア『アレだって。あの白いの』


あの、天界の者と思われる白い光であった。



オッレルス『―――何?』



そのシルビアの言葉に、オッレルスは耳を疑った。
彼女の言葉は、到底受け入れがたいものであった。

なぜなら。


オッレルス『―――アレが土御門……?』



オッレルスの『目』には、あの光が
『天の力を使っている人間』には見えなかったからだ。


紛れも無く、どこからどう見ても―――『天界の存在』だったのだから。



673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:06:06.24 ID:PbcyKJR0o

シルビア『オッレルス。彼女の胸の杭に詳細があるって』

オッレルス『そうか』

だがそんな疑問も、今この場での優先度は下だ。
今はとにもかくにもやらねばならない事がある。


オッレルスは足早にキリエの下に向かっては、彼女の前で屈み。

オッレルス『オッレルスです』

キリエ『キリエです』

オッレルス『では失礼』

軽くお互いの名前を言うだけの自己紹介を経て、
彼女の胸の杭に軽く触れた。

オッレルス『…………』


するとその瞬間に流れ込んでくる、土御門からの『伝言』。


俺が影から『制御基盤の核』を引き摺り出す、
それまでにお前は専用の術式を構築して、いつでも起動可能なようにしておけ、

そんな『殴り書き』の前置きから始まり。

そして都市全体に重なっているこの巨大術式の概要、
人造悪魔を停止させるために必要な術式の仕様等、

様々な情報と指示が大量に後に続いていった。



674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:08:00.29 ID:PbcyKJR0o

その量はとてつもなく、
そしてどれもこれも『無理難題』としても全くおかしくないものばかり。

術式を組み立てろ、と言っても、ただ組み立てば済むだけの部分は極僅か。

大半が、例えるならば『部品を組み立てて車の形にしろ』、というのではなく、
『素材採掘から始めて最終的に車を作れ』、という様なもの。


更に『俺には手が出せない、お前にしか完成させられない。頼むぞ本物の天才さんよ』、

という『注釈になっていない』土御門の『走り書き』が、
そのプレッシャーを一段と締め上げる。


オッレルス『…………』


5分前の己だったら、これは到底不可能な作業だろう。


そう、5分前ならば。

今は違う。
この目で、アリウスの中を見てきた。


『絶望』に触れてしまう領域まで沈み込んで『見て』きた。



オッレルス『……よし。わかった』



今なら―――『可能』だ。



675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:09:25.26 ID:PbcyKJR0o

己にしか作れない術式をもって、アリウスの『技の結晶』に挑む。


なんとも遣り甲斐のある『喧嘩』ではないか。


アリウスが『最強』への挑戦者ならば、己は『最高の魔術師』への挑戦者だ。


チャレンジャー
挑戦者。

立場・背後状況関係なく、その響きのなんと心地よいことか。

魔術師としての本能が一気に高揚する。

オッレルスは立ち上がると。

オッレルス『シルビア。ウィリアム。俺は今からしばらく「篭る」』

座っているキリエに手の平を向けるように、己の体の前に両手を突き出し。


オッレルス『俺とキリエさんを護ってくれ。頼んだぞ』


その言葉にシルビアとアックアは無言のまま頷き、
それぞれ屋上の淵にまで跳んだ。



そうやって二人が距離をあけた直後、
オッレルスの瞳が、遠くを見るようになっては虚ろになり。


オッレルス『(じゃあ、俺もなってみせようか―――)』


彼の意識は、その活性化する己が頭脳の中に集中されていき。


赤と金の光で形成された無数の文字列が、
彼の周囲に浮かび上がり。



オッレルス『(――――――真の魔神に、な)』



そして彼と足元のキリエを包み込むように『球状』に―――。


―――



676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:10:34.84 ID:PbcyKJR0o
―――

アスタロトの首、と言ってもその様はどう見ても肉塊。

かろうじて原型を留めている大きな二本の角が、
わかる者にだけこの肉塊が何なのかを示していた。


ネロ『―――ん、ああ、これか』


正面15m程からのアリウスの視線に応え、
思い出したかのようにそう口を開いては。


ネロ『目障りだったからな―――』


右手にあるその『肉塊』をアリウスの足元に放り投げた。


ネロ『―――ぶっ殺させてもらったぜ。「全員」な』


アリウス『…………』


それをアリウスは無言のまま、
特に動揺もせずに静かに見下ろした。
変わり果てた魔界の十強が一、恐怖公アスタロトの姿を。



ネロ『まあ、俺は止めを刺した「だけ」だがな』



677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:11:16.63 ID:PbcyKJR0o

アリウス『……』


己とはまた違う第三者がアスタロトを叩きのめした、と言う事を匂わせるネロの口ぶり。

それを裏付けるかのように、
このアスタロトの首にはいくつか独特の、
強烈な力の『残り香』がついていた。

アリウス『…………』


その数は三種。

まず一つ目はもちろん、止めを刺したネロ。


もう一つは―――ダンテ。


そして、残る一つは。


アリウス『……魔女、か』


アンブラの魔女。
それもネロやダンテに引けを取らない、とんでもなく強大な者。

こんなレベルの三人を相手にしてしまったら、
やはりさすがのアスタロトといえどもどうしようもなかったであろう。
(そもそも一対一でも無理な話だ)



678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:12:13.93 ID:PbcyKJR0o

そしてこのアスタロトの死に様は、とある一つの事実を裏付けていた。

やはり『今』この瞬間。

この島の外で己の意識外で魔女やバージル、
ダンテ達が何かをしているのは間違いない、という事だ。


アリウス『……』


ただその事については後でいいだろう。

今はこの主賓、『ネロ』を―――。

己は覇王とスパーダの力の片割れを既に手に入れた。
そこにネロの魂と魔剣スパーダが揃えば。


覇王には既に『勝った』。



次はスパーダに『勝つ』。



それが成されれば、
その時点で己より強い存在は最早いなくなる。

完全なるスパーダと覇王、その二強の力を宿した後はゆるりと。


フィアンマが手に入れるであろう『創造』を奪い、
残るスパーダの息子達や魔女を狩っていけば。



『証明』は完遂する。



679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:14:04.09 ID:PbcyKJR0o

と、その時。


ネロ『さてとだ、お互い―――』


そんな言葉と共に、
ネロは己が脇の地面にレッドクイーンを突き立てては手放した。

そしてその空いた左手を突き出すと。


そこに異形の大剣、魔剣スパーダが地面に突き立てられている形で出現。


ネロ『―――前置きは無しにしようぜ―――』


ネロはその柄を左手で握っては引き抜き。



ネロ『―――さっさとやろうじゃねえか』


その切っ先をアリウスに向けては、
軽く揺らしながら笑った。

漲る憤怒と闘気で震えている、熱の篭った声を放って。



アリウス『―――……』



そしてそのまま―――魔人化。



何の躊躇いも無く、
己が力と魔剣スパーダを解放したのだ。




この『人間界』のデュマーリ島で『躊躇いも無く』、だ。



680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:15:08.12 ID:PbcyKJR0o

アリウス『(―――そういうことか。なるほどな)』

そこでアリウスはそう、小さく心の中で呟いた。


紫と赤黒い光を纏っている、魔剣スパーダを有す『魔騎士』の姿を見据えながら。

一つ、わかったのだ。

覇王との戦いを終えた後に気付いた『例』の事案。

解放された魔界による侵食速度の、
その一見すると『停止』していると錯覚してしまう程の『遅さ』。


魔女の技と莫大な力、そしてオリジナルの『神儀の間』によって生み出されたこの奇妙な現象。



それが、このネロの力による人間界の破壊をも防いでいる、と。



いや、厳密に言えば『防いでいる』のではなく
『まだ負荷かがかかり始めていない』、といったところか。

魔界の侵食と同じく、ネロの力による破壊も極端に『遅くなっている』のだ。


と。


ネロ『おいオッサン。早くしろ』


魔騎士の姿となったネロは再度スパーダの切っ先を揺らしながら。



ネロ『―――コイツが欲しいんだろ?』



681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:15:51.97 ID:PbcyKJR0o

アリウス『―――……その通り』


その煽りに、
ひとまずこの件の思索は中断してアリウスは乗った。

一本踏み出しては
アスタロトの首をまるで気にも留めずに踏み潰し。


アリウス『―――いや。それだけでは足りない―――』


己が力も解き放つ―――。


瞬間、溢れ出した光に包まれるアリウスの体。

それは一見、神々しく清廉な光に見えてしまうも。
本質は穢れに穢れた『暗き光』。


そして、その輝きの中から姿を現す―――。



アリウス『―――「お前そのもの」も頂こう』



―――揺らめく炎のような光で形成されている体。


天を向く、二本の大きな角。



巨大な一対の光の翼、その姿は―――。



アリウス『―――お前の「全て」をな』



―――覇王アルゴサクス。



更に覇王の姿となったアリウスの左手先が変形し。

ネロが纏う光の中にあるのと同じ、『紫の光』で形成された大きな『刃』となった。



682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:18:45.32 ID:PbcyKJR0o

ネロ『はっ、そいつは無理な話だ、「全身タイツ」野郎―――』


そのアリウスの姿を見てネロは
残酷なほどに楽しげに、恐ろしいほどに嬉々とした表情で。


ネロ『「俺」が誰の「モノ」かはもう、とっくの昔に――――――』


魔剣スパーダを脇に引き、腰を落として―――。



ネロ『――――――決まってるんでな』



―――その直後。


アリウスが立っていた場所が、
紫色の光の『槌』で『丸ごと』叩き潰された。


その槌はネロの『魔の拳』―――。


―――デビルブリンガー。


そして、その破壊による破片が巻き上がるよりも速く。
物理的な衝撃が分子間を伝達していくよりも速く。

デビルブリンガーが引き戻されるよりももっと速く―――。

アリウスは、既にネロへの間合いへと詰め―――。


その紫の光の刃を彼の喉元へと―――。



683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:21:12.11 ID:PbcyKJR0o

ネロ『Hu―――』

その突きを魔騎士は僅かに半身、体を横に移動させ回避。

直後、一瞬前まで彼の喉があった空間を突き抜けていく、
人間界に軽く穴を開けてしまうような刃。


そしてネロは脇に引いていたスパーダで、
叩き上げるかのような左下からの逆袈裟斬りを放った。


目の前の覇王の体を分断する『刃線』で。

が、その瞬間。

アリウスの姿が消失し、スパーダの刃は何も無い空間を裂いていった。


ネロ『Si―――』


しかしネロは動じず、
切り上げた慣性をそのまま利用して、振り向いては。


今度はその刃を叩き降ろす。



『背後に現れたアリウス』に向け―――。


ネロ『Yeeeeeeeeaaaaaaaaaaaaaaahhhhhhhh―――!!!!!!』


しかし、振り下ろされた刃は覇王の体を破断することは無かった。

アリウスは『紫色の刃』で、
その刃を防いでいた。

何事もなく耐え、そして問題なく打ち流していたのだ。


魔剣スパーダ、その『究極の破壊』を冠する刃を。



684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:22:55.17 ID:PbcyKJR0o

飛び散る光の雫と、鋭い衝撃。
歪む大地と空間。

                ジ イ サ ン 
ネロ『(ハッ―――スパーダの力を使ってるってか―――)』

アリウスは打ち流した刃でそのまま、
再びネロの喉下へと突き。



ネロ『(―――――――――胸糞悪ぃ)』



それを、ネロは今度は避けようとはせず。



ネロ『Fuuuuuuuuuuu―――』



初撃から引き戻されてきたデビルブリンガーを再び握りこんでは。



ネロ『――――――ck Off!!!!!!!!!!!!!!』


覇王の腹部めがけて叩き込む。

その衝撃で刃先がぶれ、アリウスの刃は喉元ではなく魔騎士ネロの面、
頬に当たる部分を切り裂いていき。

天高くぶち上がっていくアリウスの体。


そして即座に跳躍してそれを追うネロ―――。



685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:23:50.10 ID:PbcyKJR0o

闇夜の大空を、二筋の光が切り裂いていく。

一方は完全復活した覇王とスパーダの力の片割れを掌握した『人間』。
そしてもう片方は、覚醒状態の魔剣スパーダを有する魔人した魔剣士。


それらが激突しては弾かれて、
再び引き付け合ってはまた激突を繰り返しながら空をどんどん昇って行く。

縦横無人に空で打ち合う二人は、次第に島の上空からも逸れ。

その戦場を淀む大海の上に移していく。


ネロ『―――Hu!!!!』

あまりにも危険すぎる刃と拳。


アリウス『―――ッ!!』


そして翼と蹴りの応酬。


その戦いは、『人間界の中では存在できるはずが無い規模』の力の衝突。

とことん破壊的な、何人も踏み入れられない究極の領域。

とにかく破滅的な、正真正銘の究極の『怪物』同士の戯れ―――。



お互いの刃をいなしては弾かれ、
デビルブリンガーと翼が激突しては、蹴りが交差し。


ネロ『―――Die!!!!』



そしてお互いが振りぬいた刃が、『真正面』から激突する。



アリウス『―――ォオッ!!!!!!!!』



686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:26:47.80 ID:PbcyKJR0o

光が溢れ、一瞬だけ周囲が一気に明るくなる。
さながら間近に万の太陽が出現したかのように。

その『光の衝撃』が大海を叩き一気に蒸発させていく中。


ネロは海面に『着地』した。


沈むことなく、まるで地面に降り立ったかのように。

普通の事だ。

ここまで力を解き放てば、
『ただの物理現象』などどうとでもなる。

何が有り得なくて何が有り得るのか、それは力の持ち主の意向で決まる。
それが大悪魔、神と呼ばれる者達の領域だ。


ネロ『チッ……』


そして、そんな彼を100m程の高さの宙から見下ろしているアリウスが、

右手を軽く掲げた―――。


アリウス『―――もっとだ。もっとそのスパーダの血を滾らせてくれ』



―――その瞬間。


アリウス『―――「舞台」が合った方が「気分」も乗るだろう?』


暗き大海原だった景色が一変する。

ネロ『―――ッ』


その『場所』は見慣れた石畳道路の上。


歴史ある『あの街』の。



―――ネロの故郷、フォルトゥナの。



687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/24(日) 01:29:41.51 ID:PbcyKJR0o

アリウス『―――小道具と舞台装置も用意しよう』

更にアリウスは続けてそう口にすると、
右手先の指を軽く鳴らした。


アリウス『もっとその血を沸きたてるのだ―――暗き憤怒でな』


すると今度は。


ネロ『―――』


ネロの正面、町並みの向こうに現れる『白亜の巨人』。


それは『あの神像』―――。


かつて、教皇サンクトゥスが引き起こしたフォルトゥナ事変。



その時の『あの神像』だった。


ネロ『ハッ』


ネロは、そんな思わぬ舞台装置の登場に、
苛立たしげに軽く笑い。


ネロ『俺の「記憶」を「具現」か?―――随分と「洒落た演出」だな』




ネロ『―――ヘドが出るぜ』



692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:41:07.32 ID:S4+FJVwLo

そんな風に、ネロの口調は今だ皮肉めいた軽さを帯びていたも。

内面では確実に余裕が無くなってきていた。

怒り、憎しみ、殺意、
ありとあらゆる負の感情が爆発的に湧き上がる。

その人間的な激情が、彼の人間性を更に締め上げて。

同名の魔剣と血が共鳴し合い、魔が更に色濃くなっていく。

アリウスの絶望が用意する舞台、
それが更にネロを怒りに染め上げるのだ。


『絶望の具現』がここに映し出したのは
両手を広げる姿勢で宙に浮かび上がる巨大な神像だけではなかった。


逃げ惑うフォルトゥナの市民達までも―――。


ネロ『―――ッ』


それを目にした瞬間、
ネロはみしりと、己の頭の中から音が聞えたような感覚を覚えていた。


そして、ネロがそれについて何か言葉を発するよりも速く。


神像の胸の前の空間が突如輝き出しては、界が歪むほどの力が集中して行き。

そこから眼下のフォルトゥナ市街に打ち込まれる、
オレンジと赤が交じり合った巨大な光の柱―――。


地殻ごと捲れ上がり、吹き飛ばされる市街。
落ち着いた町並みを根こそぎ削り取っていく光の衝撃波。


そして耳を劈く無数の悲鳴と。


―――絶叫染みた断末魔。



ネロ『―――あ―――』



693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:41:49.62 ID:S4+FJVwLo

そんな破壊を目の当たりに瞬間。

ある段階の留め金が弾けたように、また一回り大きく膨らむ。
ネロの内なる魔が。

スパーダの血が。

爆発的な勢いで―――。



ネロは声も息も漏らさず、いや、かみ締める歯で漏らしもできず。
凄まじい形相で血走る目を見開き。


一気に跳躍しては、宙空で魔剣スパーダを振るい斬撃を放った。


神像の胸に直撃しては大きな溝を刻む、
紫が混じった巨大な赤黒い光刃。

白亜の外皮の破片が大量に飛び散っていく。


そしてその巨体を後ろに仰け反る事などさせない、
神像の頭を鷲掴みにする巨大なデビルブリンガー。


大きな魔の手は、
神像を前方へと引き倒しては街に叩きつけた。

ネロはその背に向かって、
真上から更に斬撃を何発も撃ち降ろす。

続けて、引き戻したデビルブリンガーも再度打ち降ろす。



694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:42:45.72 ID:S4+FJVwLo

そして20発以上、斬撃と魔の手を交互に叩き込んだ後、
ネロは魔剣スパーダを天に掲げた。


するとその瞬間。


刃が一気に伸びては中ほどで『折れ』。
大きな大きな『鎌』へとその姿を変えた。


その長さは100m以上にもなるか。

そんな『大鎌』を手にしたネロが、
外皮が剥がされ尽くした神像の背中に着地し。

次に始まったのは解体ショー。


神像には成す術も無く、いや僅かな反撃行動も取る余裕も無かった。


白亜の体は瞬く間に解体されていく。


鎌を太ももに引っ掛けては足を刈り取り、

デビルブリンガーをハンマーのように打ち付けては叩き潰し。

肩口に引っ掛けては腕を刈り取り。

また交互に魔の手で叩き潰し。


そして首を刈り取り。



ネロ『―――オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!』



―――叩き潰す。



修羅の如く様相のネロがバラしていくその光景は、
まさに壮絶の一言であった。



695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:43:48.76 ID:S4+FJVwLo

アリウス『見せてくれ。もっとだ。もっと―――』

そんな一部始終を見下ろしながら、アリウスは満足げに。
更に先を促すようにそう言葉を発した。

その声に、
ネロは弾ける様に振り向いては見上げては。


ネロ『―――Wanna see?! Huh?!』


血走った目と、灼熱が篭った声を吐くと、
それと同時に大鎌は一瞬で元の形状に戻った。


ネロ『―――So―――』


そしてネロが柄を一旦大きく引き、
上空のアリウスへ向けて突きを放つ動作をしたその瞬間。


今度は、真っ直ぐに刃が伸び。



―――『槍状』に―――。



ネロ『―――Fucking take THIS!!!!!!』


アリウス『―――ッ』


刹那。

200m以上も離れたアリウスの、
その覇王の頭部が貫かれ消失した。



光に包まれた『魔槍』の切っ先によって。



696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:44:36.22 ID:S4+FJVwLo

今の状態の人間界ではなければ、
跡形も無く界ごと抹消してしまうであろう『一槍』。

魔界でも、これほどの力を放てば小さな位階が丸々一つ崩れてしまうかもしれない。

魔界最強の『破壊』の象徴たるに相応しい、その一撃は覇王の頭部を奪い、
そしてその器も力も一瞬で貫いた。


宙でぐらりと、糸が切れたようにバランスを崩す首無しの覇王の体。


ネロ『Si―――!!!』


その体を、ネロはデビルブリンガーで瞬時に掴んでは握り潰し、
そして『残りカス』をも地面に叩きつけた。

だが、その叩きつけたデビルブリンガーを引き戻す前に。


『―――そうだ。もっとだ』



真後ろから、調子の変わらないあの耳障りな声。



697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:45:11.67 ID:S4+FJVwLo

ネロ『―――ッ』


振り向くと僅か15m程すぐ先に。

この神像の亡骸の背の上に、
たった今この手で『殺したばかり』の、『確実に』殺したはずの―――。


覇王アリウスが立っていた。


アリウス『―――もう少しだが、まだ足りん』


何一つ変わらぬ姿で、いや。

『何一つ』という訳ではなかった。
一つ、変化していた箇所があった。

それはアリウスの左手の『紫の光刃』。


その『形』が―――。




―――『同じ』になっていた。





ネロ『―――んだ―――それは?』





ネロの左手にある魔剣と。



698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:46:45.59 ID:S4+FJVwLo

殺したはずなのに一切のダメージ無くまたこうして立っている事
それ『自体』については、ネロにとっては想定範囲内であった。

なぜかのスパーダは、覇王を『殺さず』に『封印』したのか。
それを考えれば、自ずと答えは出てくる。


魔帝と同じく、その規格外の特殊能力のせいで『殺しきれなかった』からだ。


具現の力の性質も、ここに来る前に研究してよく知っている。


具現は、創造のように『無』から『有』を作り出すことはできない。
他者の精神からの『模倣』しかできない。

つまり、その力の根幹は他の存在に依存しているのだ。
と、このような表現では具現は単に創造の下位互換である風にしか聞えないが、決してそんな事ではない

それどころかある面については、創造を遥かに凌ぐ有用性を持つ。

その最たるのが、



―――覇王の存在を『認識した者』が存在している限り、覇王は決して消滅はしない―――。


というもの。

他者の精神に巣くう力、それが行き着いた究極の能力だ。

スパーダや魔帝に比べたら存在の格は一段下にも関わらず、
魔界三神として同列視されていたのはこれが理由だ。

『存在を抹消できるかどうか』だけを見れば、
魔帝の創造以上に困難な能力なのだ。



699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:48:05.19 ID:S4+FJVwLo

だが、それは『存在を抹消できるかどうか』という点だけを見ればの話。

覇王の単純な力そのものを圧倒的な攻撃力でとことんねじ伏せれば、
再具現化する前に封印する事が出来る。

現に、かのスパーダが『前回』そうしたように。

そしてダンテ・バージル・ネロの三人で、魔帝の力をとことん削り落とした時のように。


しかし。

それは言い換えれば、力を削りきることができなかったら、
封印作業の時間猶予が無い、ということ。

その実例こそ。


ネロ『(―――!)』


今この状況だ。


あれだけの一撃を受けて死んだにも関わらず、
覇王アリウスは『一切のラグ無く』瞬時に再具現化した。


しかも、肌に感じてわかる。


明らかに―――。


死ぬ前よりも、力が『巨大化』している。


それもあの魔剣スパーダを同じ形の、
『紫の光刃』というその光景が物語る通り。



―――スパーダの血族の力で。



700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:50:25.40 ID:S4+FJVwLo

再び、めきりと。

ネロは己のこめかみ辺りから、
そんな音を聞いた感覚を覚えた。

それは。

彼の内で渦巻く力が、更に肥大化した『軋み』。



『人』としてのネロの心が、その力に圧迫される『警告音』―――。



善なる正義の心から生み出される、
怒り・憎しみ・殺意という負の感情。

それが、魔剣と彼の血の中から『スパーダの力』をとことん引き出し続ける。

上限が無い。
底が無い。

この絶大なる破壊の力は、果てなく肥大していく。


ダンテでも、この魔剣を完全解放したのは魔帝との一騎打ちの時だけ。
それ以降はほとんど手に取ろうとはせず、覚醒させることなど一度もしなかった。


ダンテは魔帝と戦った際に、その一度で知ってしまったからだ。


『スパーダの血』に『魔剣スパーダ』は非常に危険な組み合わせなのだと。

『血』にこの魔剣の『破壊』の力が結びついた時、その力は際限なく肥大し続けていくのを。
それこそ、最終的に制御が困難な規模まで。


この魔剣は、単純に使い手に絶大な力を与えるものではない。
リベリオンや閻魔刀とも全く本質が違う。


刃に秘められている『破壊』は、
『創造』や『具現』と同じある種の特殊能力なのだ。

そしてスパーダはある時、魔帝や覇王のようにその身に宿し続けることはせず、
『魔剣』という形でその力を己から切り離した。


前述のダンテと同じ理由で、だ。


力を生み出したスパーダ自身にとっても、
その身に宿し続けるのはあまりにも危険な能力であったのだ。



701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:51:27.93 ID:S4+FJVwLo

そして、その危険性については。

ネロ自身も自覚している。

あの日、父に突き立てられて受け入れたとき、
自然にこの魔剣から知った。


その危険性をも含めて、ネロは『主』となったのだ。


別に迷いはしなかった。


そんな行為は、その頃に始まったことではない。
昔からこうして力を求めてきた。

何の力でも、どんな力でも、どんな方法でも構わない。



とにかく大切なものを守り戦える力ならば―――と。



そしてそれは今も同じ。


ネロ『…………』

一瞬、驚きの色を浮かべたその顔も、
すぐに再び憤怒の色に元通りに。


そして魔剣を肩に乗せるようにしては、前に低く姿勢を落とし―――。



702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:52:23.35 ID:S4+FJVwLo

―――内からの『警告音』は無視だ。



祖父が、ダンテが『避けていた』から何だというのだ。



『俺』は『俺』だ。


誰のレールの跡もたどらない―――。



―――俺は俺の『やり方』でやる。




今の力で覇王の力を削り切れぬのなら、更なる力で叩き潰すだけだ。



だからそのための力を―――。



ネロ『―――Haaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!』



―――もっと寄越せ。



ネロは前へと踏み出し。


更なる力をこめて、
アリウスへとその破壊の刃を振りぬいた。



703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:54:35.84 ID:S4+FJVwLo

それを受け止めるのは、『同じ形』をした紫の光剣。

耳を劈く激震と、眩い光。

二人は至近距離で刃を打ち合った。
双方とも一歩も引かずに。


打ち据えるたびに、お互いは己の芯が蠢くのを感じていた。


それは共鳴。

ネロの『スパーダの血』と『魔剣スパーダ』。

そしてアリウスの中の『スパーダの片割れ』。


その『三つ』の共鳴だ。


ネロがその血の真価を引き出せば引き出すほど。

魔剣スパーダが解き放たれるほど。
アリウスの中の『スパーダ』も『強引』に覚醒させられ巨大化していく。

一振りごとに、お互いの刃はその力を増していく。
同時に、その精神を圧迫する苦痛も。



704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:57:27.58 ID:S4+FJVwLo

しかし、ネロにとっては知ったことではない。
別段自暴自棄になっている訳でもない。

彼には絶対的な自信があったのだ。

いや、信じていた。


必ず勝てると。


皆の思いと心が願うこの戦争は、必ず。


必ず勝利する、と。


この世界を想う、大勢の人々の意志の強さを信じていた。



一方、アリウスの側でも―――。


アリウス『―――ッ―――くはッ!!!!』


打ち合いの中で時折漏らす、その苦悶の声も全て本物。

ネロと同じ事が今、アリウスの中でも起きており、
そしてネロと同じ苦痛をも味わっていた。

何一つ変わらぬこの絶大な苦痛をだ。



705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 22:58:49.27 ID:S4+FJVwLo

だが、これもアリウスが望んだ戦い。


爆発的な肥大の圧に耐え抜く。

人間の精神体が、最高圧最高純度のスパーダの力の噴火に耐える。
それも、このスパーダの孫よりも『長く』。


その先に、アリウスが求めている『答え』が待っている。


このまま共鳴しリンクし合い。そしてスパーダの『力達』がある臨界点を超え、
お互いの壁を破ってあふれ出した時。


一度放散したその力は、今度はより強い意志の元へと収束する。



一点へと。


その一点、そこの席に座れば、
このスパーダの力の全てを掌握した事になり。



―――『スパーダに勝つ』事となるのだ。



706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:01:02.74 ID:S4+FJVwLo

そしてアリウスは、
覇王の力で最後の一押しをする。


ネロの記憶の中から、彼の憤怒を更に荒げる起爆剤を引き釣り出す。

『ソレ』は。


アリウスが後方に軽く跳ねた直後、
彼が一瞬前までいた空間に出現した。


その存在の姿は『天使の騎士』―――。

片翼は広げ、もう片翼は左手に巻きついては『盾』になっており。

右手には『金色の大剣』。



ネロ『――――――』


当然、ネロは『ソレ』が『誰』なのかを一目で判別した。
胸の中の痛みと共に。


昔からキリエと己と『彼』の三人で、一緒に過ごしてきた『家族』であり。

己の剣と志の『最初の師』であり。


ただ理想のため、皆のためと純粋に願っていたその心を、
教皇に利用されては裏切られて、そして散った非業の善人で。


呪われし魔剣教団の気高き騎士団長で―――。


己にとって兄とも呼べる存在で―――。



今は亡き、キリエの実の兄―――。





ネロ『―――クレドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!』



707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:02:15.65 ID:S4+FJVwLo

ネロは思わず。
『何か』を一つでも考える余裕すらなく。

無意識の内に、彼の名を叫んでいた。
怒りの咆哮にも、悲しみの絶叫にも聞える声で。

次いで、瞬時に前に踏み出して。




―――『兄』を叩き斬った。




ネロ『―――』


横一閃に。

かつて失った、もう『一つ』の大切な存在の亡霊を、
己が心の中から払い除けるかのように。


そして、その返り血を浴びながら。



ネロ『―――オオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』



天に向かってその奥底からの激情を吐き出した。
それはそれは余りにも悲しげで、絶望と怒りと苦悶に満ち満ちて―――。

この瞬間、彼の感情の爆発と同時に。
それに伴って彼の内なる力も『最後の噴火』を起こし。



アリウス『―――ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!』



共鳴するアリウスの内でも全く同じ現象が起こり。

この場を満たすスパーダの力は、遂に臨界点を超えた。



遂に―――だ。



708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:04:27.84 ID:S4+FJVwLo

瞬間。


ネロ「―――ッッ―――」

光が霧散するように解ける、ネロの魔人化。
今の今までの激情が嘘のように引いていくのを感じる中、
異形の右手も輝きを失い、デビルブリンガーの発現も無くなり。

そして同じく、後方に跳ねていたアリウスの体も。


アリウス「―――」


覇王のそれから人型へと戻り。
左手にあった、魔剣スパーダと同じ形の紫の光剣も霧散した。

次いでフォルトゥナの街も、神像も、破断されたクレドの遺体もすべて掻き消え、
周りが漆黒の平らな地面に変わり。

この場を揺らしていたあの壮絶激昂極まりない光景が嘘だったかのような、
一瞬の完全なる静寂。


ここに全てが静止した。



そんな中、ネロは気付く。



今の今まで左手に握っていたはずの―――。



ネロ「―――なっ……?!」



―――魔剣スパーダが『消えていた』事に。


そして目にする。


消えていた魔剣スパーダが、『出現』する瞬間を。





―――アリウスの左手に。



709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:05:24.86 ID:S4+FJVwLo

一体何がどうなったのか、
この瞬間で理解するには誰であっても無理であったろう。

当然ネロの思考も、混乱して今にも停止しそうなまでに陥っていた。

だが、何が起こったかは理解できなくとも。

アリウスが今、何を味わっているのかは容易に知ることが出来た。
彼の様子で一目瞭然だ。


顔は蒼白になって強張り。
目は血走り。

体は、かなり力んでいるように小刻みに震えており。

その内面では、
最早桁外れの規模と濃度になった『スパーダの力』が激しく蠢いていた。

アリウスはその怪物を、己の精神力と覇王の力で、
何とか懸命に押さえ込んでいたのだ。


そう、何が起こったのかはわからずとも、
そんなアリウスの様相はネロにとって。


ネロ「―――レッドクイーン!!!!」


好機と見えた。


魔人化できずとも、デビルブリンガーが出でずとも。

魔剣スパーダが無くとも、『刃』はまだある。

長年の戦いで魔剣化してしまっているその愛剣が、
ネロの声に応えて飛翔して来ては、彼が掲げた左手に収まる。


そして一気に距離を詰め、アリウスに一太刀―――。



―――浴びせようと下瞬間であった。



710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:07:08.16 ID:S4+FJVwLo

ネロ「―――ッ」


何が『来たのか』は『見えなかった』。


だが。


何が起きたのかは、今度はわかった。


レッドクイーンは、中ほどからへし折れていた。

宙を舞う、その白銀の刃の先端。


続けて。


ネロ「…………?!」


血が溢れ出した。
『いつのまにか』斜めに裂かれていた、胸の深い切れ目から。

そして『驚き』から『痛み』に感覚がシフトするよりも早く。


アリウスが気付かぬ間に、
目の前にいた。


ネロ「がッ―――!!」


右手で、ネロの喉元を掴み挙げながら―――。



711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:08:16.04 ID:S4+FJVwLo

ネロ「ごッ…………ぐ……あ……」


次いでアリウスは、
血を吐くネロの顔を覗き込んでは。


アリウス『……残る……は……お前の魂だ』


搾り出すように、苦しげに。
己自身に向け確認しているかのように、一言一言。


アリウス『……「定着」……に……必要だ』


そう言葉を放ち、そして。



アリウス『―――寄越せ』



左手の魔剣を大きく引き、ネロへ向けて―――。



その瞬間だった。


突如、アリウスの背に二つの光の刃が激突してきた。
『金色の斬撃』が。


その放たれた方向に、ネロは見た。

アリウス越しに彼の斜め後方、100m程の所に―――。



―――両手に曲刀を握る、赤毛の少女が立っていたのを。



712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:10:24.16 ID:S4+FJVwLo

その時、ネロは彼女に何も『してあげられなかった』。


大丈夫か、とも。

ここから離れろ、とも。

そう声をかけてやることはできなかった。
いや、出来たとしても彼女は逃れられなかったであろうが。

『この状態』のアリウスからは、絶対に―――。


アリウスは、即座に彼女を『排除』した。


振り向きもせず、その右手からネロを話もせず、
そもそもそこから一歩も動かずに。

顔色一つ変えずに、まるで気付いてもいないかのように。


アリウスの背から放たれた赤黒い光の矢。

ルシアにとっても見えもしなかったのだろう、
彼女は一切の回避行動も取れずに、それに胸を射抜かれた。

そしてどさりと。

その場に倒れた。

糸が切れた操り人形のように。


ネロ「(―――ル―――シア!!!!!!!!)」



あっけなく。



しかし。



―――その数秒後だった。



不意にアリウスの表情が曇ったのは。

今の今までの苦痛の色ではなく、『疑問の色』に。



713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:12:35.90 ID:S4+FJVwLo

ネロ「―――?」

次いでアリウスは。

ネロを足元に振り落としては、
ルシアの方向に振り向き、空いたその右手を突き出した。

すると、ルシアの体が磁石に引き付けられるかのように飛翔し。
その右手に首をつかまれる形で収まった。


そしてアリウスは、ルシアの血に塗れた顔を覗き込んでは。


アリウス『……何を…………した?!!何……を?!』


同じく苦しそうに途切れ途切れだが、
先とは違い食いつくような勢いでそう言葉を放つ。




ルシア『2000年の……後に現れる……暗き血の絆に導かれし狩人……』



それに対し、ルシアは小さく笑いながら。
虚ろながらも確かな調子で。




ルシア『……そして……許されざる護り手を待て……』


そう口にした。

その言葉が何なのかは、
アリウスも地面に倒れこんでいるネロも知っていた。

かつてスパーダが『狩人への道標』と共に残した、


『覇王に纏わる予言』とされている言葉だ。



そう、『予言』だ。



714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:14:49.31 ID:S4+FJVwLo

そしてルシアは、満足げで穏やかな笑みを浮かべたまま。


ルシア『―――覚えてますよね?』


そう、言葉を続けた。



ルシア『私を……「何のため」に作ったか―――』



アリウス『―――』



―――『何』をするために『χ』作ったか―――。



イギリスのウィンザーであの日。



ルシア『あの日……私が何をしたか……―――』



アリウス『―――……まさ……か……』





『χ』を使って『何』をした?





―――『χ』を通して、何に『干渉』した―――?



715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 23:19:10.05 ID:S4+FJVwLo


χが作られた経緯と、スパーダの血に纏わるこの状況と。


そして、『許されざる護り手』と『暗き血の絆』という予言の内容。


それらが『暗示する事』を前に、アリウスの顔が遂に硬直した。


今まで、生涯一度も『止まる』ことがなかったその思考が、
ここに『停止』したのだ。


そんな彼に向け、
ルシアはいかにもわざとらしく小首を傾げては、


非の打ち所のない最高の笑顔で。





ルシア『――――――――――――「お父さん」?』




そう呼んだ。

これ以上無いほどにたっぷりと『皮肉』を混めて。

次の瞬間。


アリウスの体から、オレンジ色の光が漏れ出した。




アリウス『…………こ…………の―――!!!!!!!!!!』




アリウス自身の『最高傑作』の強烈な一撃によって、かき乱された覇王の力。




そこから連鎖して今、彼の内にて―――。





―――『全ての崩壊』が始まった。





―――



731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/07(土) 23:44:59.01 ID:8tI4DUueo

―――

とある倉庫の中にて。

白井黒子は一服つくように、
壁際にて深く息を吐きながら。

血と鼻を突く医療薬品の匂が充満している、薄暗い倉庫の中を見回しながら。

米軍の衛生兵と先ほど合流してきた黒髪の少女と共に、
負傷者の手当てを一通り済ませたところだ。

先ほどまでここは慌ただしい空気に包まれていたが、
ある程度済んだ今は穏やかになりつつある。

その反動か、手伝わされた無傷の民間人達は呆然と、
グッタリとしながら座り込んでおり。

中には限界に達したのか咽び泣いている者も。


一方で兵士達は数人が半開きの扉のところで外を警戒。

その他は倉庫の中にて、タバコを噴かして一服、装備をチェック、
負傷した兵のところを周ってはバカな掛け合いを交わす等々、この状況でも
それぞれが慣れた風に各々のペースを保っていた。


衛生兵はついさっき腕が飛んだ兵の傍にて、
別の兵士と何かを話しており。

その負傷した兵士を挟んだ反対側の位置には、
屈み込んでは心配そうな面持ちの佐天。

そんな佐天の背後にて、手についた血を自分の戦闘服に拭っている黒髪の少女。

そして御坂は倉庫の奥で、米特殊部隊のリーダーと何やら話し込んでいた。



732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/07(土) 23:48:12.60 ID:8tI4DUueo

そんな場の空気に従うように、
黒子の精神も徐々に落ち着いて来る中。

黒子「……痛……」

それに比例して思い出したように強まってくる痛み。

包帯でまとめて固定した、己が左手の薬指と小指からだ。
そこを発信源として、脈に合わせて激痛がリズムを刻んでいる。

その左手先に視線を落としながら、
壁に背を向けて寄りかかろうとすると。

黒子「…………」

腰辺りで何かがつっかえた。

それが何なのかは、
確認しなくても瞬時に思い出すことが出来た。

ここに来る際に、
とりあえずとベルトに無造作に差したあの大きな杭だ。

黒子「……」

右手で杭を抜き取り、改めて壁に寄りかかりながら、
黒子はその右手の物体に視線を向けた。



733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/07(土) 23:52:59.14 ID:8tI4DUueo

今の今までは投擲用ナイフで充分戦えてたし、
ギリギリの総力戦となった先でも、御坂の登場で結局使わずじまい。

逆にここまで来てしまったら、
むしろこのまま使わないで戦いが終わってしまう気がする。

いや、それ以前に自分が使っても、劇的に何かが変わりそうにも思えない。

この杭での戦い方はどうなるかと言えば、

手に持ってテレポートしながら刺す。
テレポートで飛ばして刺す。

今までと何一つ変わらない。
その程度だ。

なんともパッとしない使い方だろうか。

宝の持ち腐れとは、正にこのような事を言うのだろう。

黒子「…………」

自分にはもったいない、と感じてしまう。

レディが口にした値からも、相当な代物だという事がわかる。
この一本で、御坂が全財産叩いて買ったあの『弾薬袋』の数十倍もの値なのだ。

果たして、自分程度の者がそんな超良質な道具の効果を100%引き出せるかどうか。
その自問に対しては、黒子は首を横に振って即答する。

御坂と『同じ』になれてたらこの手で扱えてたかもしれないが、
戦士にはなれない、というのがはっきりと突きつけられてしまった以上、それも無い。

この素晴らしき武器は、『戦士になり損なった』黒子には身に余る一品であった。

黒子「…………」

そうやって黒子は暫しの間、遠い目で杭を眺めた後。
切り替える様にスッと視線を上げては、杭を腰のベルトに差し込んだ。
帰れたらレディさんに返そう、と静かに思いながら。

と、その視線を上げた先にはちょうど。


御坂「黒子~、ちょっと来て」

手招きしてこちらを呼ぶ御坂の姿があった。



734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/07(土) 23:54:15.88 ID:8tI4DUueo

その頃倉庫の別の一角では、

佐天がジッと睨むようにして見つめていた。
何やら会話している衛生兵達を。

腕を失った兵士の傍らにて屈みながら。
この兵士の容態は一体どうなのか、がとにかく知りたいのだ。

一通りの処置は終わったようだが、兵士はぐったりして気を失っているよう。

顔色も蝋人形のように蒼白で、
僅かな胸の上下だけがまだ生きていることを辛うじて伝えてくれている状態なのだ。

佐天「あ、あの!」

そしてたまらず、我慢の限界とばかりに声を飛ばした。

佐天「えっと……あっ……」

が、今度は言語の壁に焦り。

佐天「……あー、ヒー、イズ、オーケー?グッド?」

中々しっかりとした文が浮かんでこず、
口から出てくるのは簡素過ぎる英語のみ。

衛生兵は苦笑しては肩を竦めつつも、
何やら答えてくれてはいるもやはり聞き取れず。

とその時、背後から。

「とりあえずは大丈夫」

そう、簡単に意訳してくれた声があった。



735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/07(土) 23:56:14.68 ID:8tI4DUueo

先ほど黒子に連れられ御坂と共にここに来た、
あの黒髪の少女の声だった。

黒子と同じ『感じ』の服を着込んでいることからも、
佐天の目からでも仲間だということはわかる。

佐天「!」

その無表情な彼女は、
血に塗れた手を太ももに拭いながら。

「かなり危なかったけど、一応安定してるよ。今は」

佐天の横に歩いてきてはぶっきら棒な声色で続ける。

佐天「本当!?本当に!?」

「うん」

佐天「―――はっ……良かった…………」

佐天はそう、答えを再度確認をしては、
その場にへたり込んで大きく息を漏らし。

小さく安堵の笑みを浮かべた。

「……」

そんな佐天を、黒髪の少女は立ったまま黙って眺めていた。
特に表情に変化を見せぬまま。

血塗れた私服姿の佐天を。
そして10秒程経った後、再び口を開いた

「ところであんた何者?ここの日系人じゃないくさいし?ウチのメンバーでもないし」

これまた無愛想な声色で。



736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/07(土) 23:58:58.03 ID:8tI4DUueo

そんな冷ややかな空気の問いに、
佐天は彼女を見上げては、

佐天「あ……さ、佐天涙子です。柵川中学一年の……」

一泊置いて落ち着いて答えた。

「柵川中学って、もしかして学園都市の柵中?」

その答えに、黒髪の少女はピクリと眉を動かした。
ちなみにこれが、佐天が初めて見た彼女の表情変化であった。

佐天「はい」

「……」

佐天「……」

そして再びの暫しの沈黙の後。


「…………何してんのこんな所で」


その問いには、佐天は答えられる言葉を持ち合わせてはいなかった。

佐天「何…………してるんでしょうね私……」

苦笑いしながらそう、佐天涙子は口にした。
真っ赤な己の両手に視線を移しながら。


巻き込まれて巻き込まれて、
無我夢中でよくわからぬままここに至るのだ。

何をしてるか、なんてものは佐天自身わからなかった。


『何のため』に、は一応答えられるが。



737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:00:48.24 ID:+UusfXoNo

そう己の両手に視線をおとした佐天を見て、
黒髪の少女はいきなり屈んでは。

床に散らばっている医療類の中から、
ウェットティッシュに似た傷口洗浄用のシートを一枚。

「ん」

取り出しては佐天に差し出した。

佐天「あ……ありがとうございます」

「あとその服はもう諦め。そこまで染まったら落ちないよ」

佐天「…………」

軽く会釈してはそのシートを受け取り、手を拭く佐天。
そんな彼女に向け、少女は相変わらずぶっきら棒に口を開く。

「ねえ。レールガン達とプライベートで面識あるの?」

佐天「?」

「名前で呼んでるから」

佐天「……はい。いつも良くして貰ってます」

「友達?」

その問いには。

佐天「はい」

佐天は即答した。
当たり前のように、しっかりとした声で。



738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:03:28.20 ID:+UusfXoNo

「…………」

そして再度の沈黙の後。


「実は私も元柵中でね」


ボソりと、少女が独り言のように言葉を紡ぎ始めた。

「二年の夏に……色々あって転校したけど。まあそれで、その頃からの友達が私にもいたよ」

佐天「……」

佐天は敏感に気付いていた。
『友達がいた』、そう彼女が過去形で表現した事に。

「そいつも一緒に転校してね、んで学校だけじゃなく『本業』の方でも同じチームでさ」

佐天「……」

「どこでどんな仕事をするにも常にペアで、この大作戦でも『同じチーム』に配置」

佐天「……」

「そしてこんなところまで一緒に来たくらいの、腐れ縁な友達」

佐天「…………」

常に一緒、常にペア、
そう口にする今の彼女は『一人』であった事にも。

佐天はその点を聞こうとはしなかった。
わかってしまったような気がするから。

その先は聞くべきことではない、と悟ったから。



739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:05:18.17 ID:+UusfXoNo

御坂「Whiskey 5 さん!ちょっと来て!」

とその時、倉庫の奥から響いてくる御坂の声。

その言葉を耳にして。


「ん、終わり」


少女は立ち上がりながら、そう締めた。

無表情だった顔にニコリと笑みを浮かべて。

形は完璧だが温もりの無い、いや、以前はあったのに今は枯れてしまっているような、
そんな乾燥しきった笑みを。

そして『終わり』という単語の中にある意図も佐天は悟った。

この『会話』ひとまずの終わりと。
いつも一緒だったとある二人の『物語』が終わった、という二重の意味を含んでいた事を。

佐天「あの……!」

そこで佐天は、跳ね上がるように立ち上がっては。

佐天「……ルシアって女の子のこと、何か知ってませんか?」

今度はこちら側からの『友達のこと』を、少女の背中に投げかけた。

「るしあ?」

黒髪の少女は半身振り返っては、語尾を上げた疑問系でルシアの名を繰り返し。

佐天「赤毛でちっちゃくて綺麗な女の子で……この島に来てから何か、聞いてませんか?」

「さあ。私は何も」

そう、元のぶっきら棒な調子に戻った声で答えては。
クイッと、向こうの御坂のほうに首を傾けて。

「レールガンに聞いてみれば」

そう言い、着いてくるよう促した。

佐天「……はい」



740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:07:46.68 ID:+UusfXoNo

米特殊部隊のリーダー、御坂、黒子、その輪に黒髪の少女が合流し、
佐天はやや外れるように後ろに。

次いでリーダーが口笛を鳴らした後、

「少尉。ドク」

そう彼らに向け指で来るよう指示しながら呼びかけ。

「現在の状況と今後の件を確認したい」

そして彼らが輪に加わった所で、リーダーが皆に向けそう本題を切り出した。
(当然佐天だけは、言葉の壁でまるっきり理解していなかったが)

「まず負傷者の状況は?」

「他は二、三日は耐えられるでしょうが、」

リーダーの言葉に、
まずドクと呼ばれている衛生兵が口を開いた。

「『奴』はもって2時間です。早急に手術可能な施設に運ぶ必要が」

腕を失った隊員の方を、
人差し指と中指の2本で手刀を入れるような仕草で指しながら。

「島外への通信が回復できれば、本土から救護機を。片道40分といったところですね」

そこで少尉が口を開いたが。


御坂「この通信状態は、私達が扱ってる件が終息しないと回復しないと思うわよ」


「……と言うと?」

御坂「『敵の大ボス』がこの状況を作り出してるらしくて」



741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:11:43.70 ID:+UusfXoNo

黒子「それにそもそも、島外の通信が回復できたからといって、外部からどうにかできるとは思えませんの」

とそこで黒子も更に付け加え。

「私達を運んだ超音速機、結局一機も離脱できなかったし。無理に決行すれば無駄な犠牲と物資の損失を招くだけ」

黒髪の少女も後に続いた。


御坂「つまりどの道、私達の仕事が何らかの決着を見せない限りどうしようも無いの」


「……では、その決着が着くまでの時間は?」


御坂「恐らく、あと10分もしない内に」


その言葉で一同が暫し押し黙った。

そして沈黙の中でより際立つ、
倉庫の外、彼方からの凄まじい地響きと重苦しい威圧感。

御坂の言葉を裏付けるかのような戦囃子。

「……当然、お前達にとって『成功』と呼べるような結果でなければ、我々にとっても状況は好転しないのだな?」

そんな沈黙の後、再び話を切り出したのはリーダー。


御坂「もちろん」


それに対し御坂は一言、そう即答した。



742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:20:14.58 ID:+UusfXoNo

それ以上、リーダーはこの件については聞こうとはしなかった。
結果の見込みはどうか、などを聞く意味は無いと判断したのだ。

「そうか……では、」

数秒ほど思索混じりの間をおいた後、リーダーが話を切り替えかけたその時。

御坂「―――」

突如御坂が扉の方へと勢い良く振り向いた。
全身から、微弱な電気が大気に走る音を鳴らしながら。

その只ならぬ空気を周囲の者達は即座に読み取とり。

黒子は佐天の前に移動し、
やや乱暴だが仕方の無い動作で彼女を床に伏せさせ。

リーダーは肩にかけていたアサルトライフルを手に取りながら口笛を鳴らす。
それを合図に、隊員達が弾けるように動き出しては即座にそれぞれの位置に。

そして張り詰めた静寂の中。

御坂「…………100m。こっちに近づいてるわよ」

皆が息を殺し、外の気配を暫し伺っていると。


突如その屋外から声が響いてきた。



「―――Charlie 4ォ!!どこにいやがンだ!!?Charlie 4ォォォ!!!」


最高にイラついているとわかる、乱暴な女の声が。

御坂「……………………ウチのメンバーみたいね」

そんな声を聞き、御坂は肩を竦めながらそう口にした。


聞えてきた声のイントネーションに『既聴感』と言うべきなのか、
どこかで耳にしていたような感覚を覚えながら。



743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:23:13.89 ID:+UusfXoNo

「私が出るから続きしといて」

黒髪の少女がそう口にして、扉の隙間から能力を使って一瞬で飛び出して行き。
そして再び各々の位置に戻り、それぞれやっていたことを再開した。

「では……我々はとにかく待機するしかないんだな?」

黒子「ですの」

御坂「各チームからの負傷者も今ここに向かってきてるだろうから、現状ではここに留まるべきね」

黒子「ここはかなり頑丈ですし、合流してくるメンバーで戦力も増強可能ですの」

「お前達と同じ能力者か。それは頼もしいな」

「姪っ子と同じくれぇの子達頼みとは、全く我々も情けないもんですね」

黒子「いえ、経験的にはそちらの方が豊かだと思いますので、お互い様ですの」

「私達って単純な戦闘能力は高いけど、戦術に関してはぶっちゃけ凡人だし」

黒子「それに皆満身創痍のはずですので、あまりご期待なさらぬよう」

と、その時。

先ほどの怒号を撒き散らしていた声の主が、
黒髪の少女に連れられて倉庫の中に入ってきた。


その主はかなり小柄な、前髪を揃えた黒髪の少女であった。


黒子達と同じ戦闘服を着ているが、
黒いパーカーを袖を通さずにフードのみ被って羽織っており。

腰から背中にかけて、一見するとバックパックにも見える『何か』を装着していた。
良く観察すると、折り畳まれた『棒』のような物体がいくつもついている何らかの機械の類に見える。

そして、フードの下の顔は。

先ほどの黒子の言葉を裏付けるかのように、右半分が真っ赤に染まっていた。

頬や額周りなどは、血塗れているだけで特に裂傷等は見当たらないため、
どうやら右目自体から出血しているようであった。



744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:25:20.80 ID:+UusfXoNo

「ドク。看てやれ」

「了解」

と、そこでフードの少女は、
その駆け寄った衛生兵をひとまず目で制止して。

息荒く、苦悶とイラつきの混じった唸り声を漏らしながら、
は御坂達の方へと歩んで来。

「……Charlie 4?」

黒子「わたくしですの」

「Juliett 4……合流しに来た」

黒子「了解。Juliett 4が合流」

そう形式的な会話を済ませた後、
その場にどかりと座り込んだ。

「……あァ゛……糞痛ェ……見えねェ」

そして衛生兵の処置を受けながら、そうブツブツと愚痴る。

「畜生……眼も全換装しとくンだった……」

御坂「………………」

御坂にとって『なぜか』、
やけに癇に障るイントネーションで。



745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:28:24.31 ID:+UusfXoNo

「私はWhiskey 5」

と、そこで黒髪の少女が自己紹介したのに続き、

御坂「あ、私は」

そのイントネーションに対する感覚は一旦おいておき、
己も名乗ろうとしたが。


「知ってるよ……レールガン、『オリジナル』様だろ」


フードの少女はボソリと、端正な顔を顰めつつそう返答した。
脂汗と血を滲ませながら。

御坂「―――……」

その返事は、特に煽っているつもりでもなく普通に答えたものであろう。

だがその言葉と言い方は、
御坂の激情に火を容易に付けてしまう類のもの。

少し前の御坂ならば、
嫌悪感や怒りを露にしていただろう。


だが『今の御坂』は表情をほとんど変えぬまま。

御坂「そう」

そう返答しただけであった。


隣にいた黒子でさえ、その芯が太くなった御坂には
特に違和感を抱くことは出来なかった。


黒子「……」

このフードの少女が口にした『オリジナル』という言葉が、
やけに頭に引っかかってはいたが。



746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:31:17.41 ID:+UusfXoNo

「……なァ、ところでどォなってンだよ。AIMストーカーの通信網ダウンしてンぞ」


御坂「…………あ~」

黒子「……そういえば、その件も問題ですの」

御坂「土御門の話だと、メインの作業でもAIMストーカーの網が必要らしいのよ」

「各ランドマーク掘り抜きの件だね」

御坂「そう。それで、とりあえずこのAIMストーカーの件は私に任せて」

黒子「と言いますと、お姉さまはここに残らないので?」


御坂「ええ。矢面に立つために私は来たんだしね」


肩にかけていた大砲を手にして強調するように、
杖の如く床を叩き。


御坂「レベル5が動かないでどうするのよ」


「はッ、レベル5ったってたかが『電撃姫』だろ。AIMストーカーの力にゃ干渉できやしねェよ」

とそこで、床にあぐらをかいているフードの少女が、
今度は挑発的な口調で言葉を放ったが。

それに乗るように。


御坂「―――私は『オリジナル』ですから」


御坂もやや煽るような口調でそう返した。



747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:32:14.59 ID:+UusfXoNo

黒子「(また『オリジナル』……?)


「……あァ、そォ」

そしてその言葉で、何かを納得したように呟くフードの少女と。

「確か並列化してるっていうあの……アレに今も繋がってるの?」

そう問う黒髪の少女。

御坂「音声通信だけだけどね。色々策を考えてるのよ」

それに対し、御坂は耳の受信機を指先で軽く叩きながらそんな風に答えた。


黒子「(繋がってる?並列化?)」

それらの会話を黙って聞いていた黒子の脳内では、
悶々と数々のワードと疑問が渦巻くが。

だが、ここの場で黒子は何かを問おうとはしなかった。

今の御坂が感情を制御する忍耐を持っている一方で、
黒子の精神もそれなりに基盤が固くなったのだ。

場をわきまえずに、
個人的な事をこれ以上出すほど幼稚ではない。


御坂の邪魔は決してしてはならないのだ。

黒子「……」

黒子は黙って飲み込んだ。
その蟠りを。



748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:34:29.85 ID:+UusfXoNo

佐天「あの!御坂さん!」

そこで会話の中に生じた間を見計らって、
佐天が後ろの方にて声を挙げた。

御坂「ん?」

佐天「ルシアちゃんのことで……何か聞いてませんか?」

御坂「ルシアちゃん……私が最後に見たのは、アリウスと戦ってる所が……かな」

佐天「それでどうなったんですか?」

御坂「さあ……その後の事は……」

佐天「……そう……ですか」

御坂「情報集めてみるから、何か―――」

とその時。

再び御坂の表情が一変した。

だが、今回は周りの者が警戒位置に着くようなことは無かった。

先ほどのような『警戒態勢』ではなく、
何かを注意して聴いているような仕草だったからだ。

耳の受信機を指で軽く押さえ、ピクリと目を鋭く細めて。

黒子「……どういt」

そして周りの者達が訝しげな表情で伺っていたところ。


御坂「―――ごめん!行って来る!!」


御坂は突如そう声を挙げ、電撃を迸らせては扉の方へと跳ね飛び。


御坂「黒子―――」


と、そこで彼女は一瞬振り向き、黒子に向けて。



749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:35:17.18 ID:+UusfXoNo

黒子「―――?」

黒子が何を思ってるか。
黒子が何を感じているかは。


御坂「―――帰ったらちゃんと話すから!」


黒子「―――」

お姉さまはやはりお見通しであった。

御坂美琴はその言葉を残し、扉の隙間から飛び出て行った。

黒子「……ふふ、ええ、お待ちしておりますの」

その消えていった姿に向け、
黒子はそう言葉を向けた。

小さく、呆れがちにも見える笑みを浮かべながら。

とそんな黒子に向けフードの少女が口を開いた。
眼帯状に包帯が巻かれてある右目を押さえながら。


「………………もしかしておたくら、レズってンの?」


黒子「いえ。わたくし側だけですの」



750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:36:51.52 ID:+UusfXoNo

「百合って良いよね。私はその気は無いけど。良いよね。良い」

そして黒子の返答と、肯定的な黒髪の少女の言葉に。

「…………げェ」

舌を出してそんな呻きを漏らした。

とその時。

戻ってきたのか、
扉の向こう側から飛び出したばかりの御坂がひょっこり顔を出し。


御坂「―――黒子!やっぱあんたも来なさい!」


黒子「……は?……はい?いえ、しかし……」

御坂「命令よ!『Charlie 4』!」

ずる賢そうな笑みで、
そう強引に同行するよう命を放ち。

黒子「……りょ、了解ですの!」


御坂「Whiskey 5!Juliett 4!ここを任せたわよ!」


「了解」

「チッ……了ォ解」

黒髪の少女とフードの少女にこの場を任せ、
そして米特殊部隊のリーダーと目配せしては軽く頷き。


佐天と目を合わせて。


御坂「大丈夫。きっと大丈夫だから」


そう彼女に声を投げかけては今度こそ、この倉庫から離れていった。
『後ろの定位置』に白井黒子を従えて。

―――



751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/08(日) 00:37:21.84 ID:+UusfXoNo
今日はここまでです。
次は月曜か火曜に。



752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/08(日) 00:55:45.61 ID:4duxGPkh0
1乙



755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2011/05/08(日) 01:42:35.97 ID:rU5XgfCgo
新約で出てきた浜面の噛ませにされたギャグみたいな名前の子か



756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県):2011/05/08(日) 01:44:44.88 ID:8IP23hKUo
>>755
股間に窒素爆槍ぶち込まれてェか




759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:52:29.32 ID:oWfNi2Njo
―――

空から差し込む、柔らかく穏やかな陽光。
その下に広がる荒れ狂う『影の大海』。

そんな矛盾した退廃的な情景が、
とある一棟のビルの周りに広がっていた。

『黒豹』が生み出す『影の波』は無数の刃となり槍となり、
何もかもを穿ち破壊していく。

その合間を軽やかに縫っていく清きの光、『白狼』。

ここでは今、彼ら二柱の圧倒的な力がぶつかり合っていた。

そしてこのせめぎ合いは傍から見れば互角に映るだろうが、
(この速度を判別できたらの話だが)、
実際はそうでもなかった。

攻撃のみに専念すれば良いのと、
攻撃と防御両方を意識するのとでは、難度がまったく違うのも当然。

土御門『―――……』

その『不利な後者』である白狼、土御門は、
影の鉄壁防御を破る策を未だ見出せずにいた。



760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:54:16.37 ID:oWfNi2Njo
もしかすると、あの影の防御には弱点が無いのだろうか。

正真正銘の『絶対なる鉄壁』なのか。

いや。

絶対などというものなど、あるわけが無い。

この黒豹よりも遥かに強大であろうスパーダの力だって、
かつて魔帝を殺しきれなかったという事実が『絶対』では無いと裏付けている。

そしてその要因である魔帝の『創造』の力だって、
無数の次元を隔てた程に格下も格下である『小物』、上条当麻が持つ幻想殺しで崩壊。

そんな幻想殺しも、純なる力の塊の前には役立たず同然。

つまり『例外が一つもない絶対』なんて物は存在しない。
『万能完全無欠』なんて存在は実在しないのだ。

魔帝やスパーダ等、そんな天辺の領域でも完全なる『絶対』ではないのだから。

そうくればこの黒豹の鉄壁だって―――とは言えるものの、
その弱点を見つけられなければ意味が無いが。


土御門『―――チッ』


影で形成された槍や刃、そして大きな手を掻い潜りながら、
慈母神の御業『筆しらべ』を繰り出すも悉く『否定』。

黒豹の影はこちらの攻撃をまったく受け付けない。

様々な角度、方向、タイミングで多種多様な筆しらべを放ったが、
どれも効果は無い。

弱点に繋がる情報は依然、ただの1つも掴めていなかった。



761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:55:34.11 ID:oWfNi2Njo

『目』には、黒豹の一挙一動のたびに多種多様な情報が映る。

だが肝心の所でどうしても認識が及ばず、理解することができない。
わかるのは上辺だけで、
その中身が全く判別できない。

なんとか認識できた情報も断片化されたままで、その先へと思考が繋がらない。

慈母の力に土御門元春の精神が追いついていなかったのだ。

慈母自身からすれば、
目に見えて求めている答えが映っているのかもしれない。

かの忠行からの賀茂家三代や、
安倍晴明のような超伝説的な陰陽師ならば、容易に慈母の認識を汲み取る事ができただろう。

専門外といえでも、
オッレルスのような本物の天才にはあちこちにヒントが見えるのかもしれない。

だが、土御門は違う―――彼らとは違う。

土御門にはまだ見えなかった。

土御門『(何か、何かを。何でもいいから何かを見つけろ)』

とにかく何でもいいから、
『思考に繋げられるレベル』の簡単な情報を見出さねばならない。


思考の着火点たる『きっかけ』さえ手に入れられれば、
鈍足であろうとも思考は先に進むのだから。



762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:56:43.01 ID:oWfNi2Njo

とは言うものの、この攻防の中で、
『攻防以外』に意識を向けるのも実際はかなり厳しい。

こちらのテンポを把握しつつあるのだろう、
黒豹の攻撃パターンは徐々に厳しいものになりつつあり、回避することが難しくなってきている。

影の槍や刃が毛先を掠る頻度も増えつつあり、
切断された白毛がダイヤモンドダストのように煌きながら中を舞っていく。

土御門『―――ッ!』

そして遂に『追いつかれる』。

僅かな反応の遅れによって、
槍の切っ先が白狼の腰上辺を切り裂いていく。

ただ、見た目は掠り傷程度であり瞬時に再生。

だがそんな見た目からは全く想像がつかない、
まるで骨まで抉られたような激痛がしつこく残留する。

だが白狼は、唸り声の1つも漏らさなかった。
いや、漏らす暇が無かったと言った方が良いか。

その直後、ずるりと黒豹の胴が斜め上に延びては。
間髪入れずに、その先端の上半身が白狼めがけて急降下。


そして白狼まで30m、この速度では紙一枚分にも満たない距離の所で、
黒豹の上半身が一気に『広がった』。


さながら一瞬で上方が黒く塗り潰された、
巨大なカーテンが出現したかのような光景―――



763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:57:53.14 ID:oWfNi2Njo

その『カーテン』はカーテンでも、白狼にふわりと覆いかぶさるなんて事はなかった。

白狼が四肢を駆使して、瞬時に後方に跳ね飛んだ直後、
影のカーテンは大地に激突した。

全体が刃となり槌となり、地面にめり込んでは半径50m程を一気に抉り取る。

いや、抉り取るという表現は語弊があるだろう。
少なくとも抉り取るという言葉から感じられる、物質間の『摩擦』は一切無かったのだから。

振動も轟音も、衝撃波も無い。

大地に穿たれた大穴、
一瞬前までその空間を埋めていた『抉られた分』はどこにも無い。

瓦礫となって爆散したのでも、瞬間的な圧力で蒸発したのでもない。

布で覆って物を消す手品のように、文字通り消失していた。

土御門『(……なっ……)』

アレは危険だ。

そう、この身に授かっている慈母の力も警鐘を鳴らす。

先ほど鏡で防いだ突撃といい、
黒豹本体から繰り出される攻撃はやはり次元が違う。

周りの無数の影の槍や手とは、破壊の質がかけ離れており、
その瞬間的な力の量は、慈母から授かっているこの力をも上回っている程だ。

ただこの点は、別の見方をすれば好ましいことでもある。

存在の基礎となる『本体』がある、
もしくはそれに類する『中心点』があるということなのだ。

そこを潰しさえすればこの黒豹だって死ぬか戦闘不能に陥るであろうし、なによりもそこに。


アリウスが隠した―――『制御基盤の核』もあるはずなのだから。



764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:58:39.02 ID:oWfNi2Njo

土御門『―――』


と、ここで土御門はふと大事な事に気付いた。

黒豹の上半身は、カーテン状に形を変え大地にめり込み、
そして周囲の影に溶け込んだ。

境などまるっきりわからない。

そして下半身も、同じく周囲の影に。


―――となるとその『本体』は今、どこにいる?


その点に思考が至ったのと同じくして、白狼の真後ろ僅か4m。
そこに地面に落ちている影の中から出現した。


土御門『(―――しまっ!)』


黒豹が。

ずるりと巨体の上半身を出現させ、そのまま猛烈な勢いで体当たり。
先と同じく全身を刃にしての。

即座に白狼も回避行動に移るも、
不意打であるため接触を免れることはできず。

背にあった鏡が間に入ったものの、
その白き獣体は弾き飛ばされてしまった。



765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 01:59:37.27 ID:oWfNi2Njo

その光景は、白い光線が放たれたようなものであった。

光を纏う白狼の体は凄まじい勢いで吹っ飛んだが、そのまま地面に叩きつけられることは無く、
四肢を踏ん張っての強硬着陸などもしなかった。

筆しらべの『風神・疾風』で風を操っては体性を建て直し、
シルビア達がいるビルから100m程の地に、身を翻して軽やかに着地―――

土御門『……くっ……』

―――までは決まったが着地した途端、後ろ足の一本がもつれてしまった。

鏡があったおかげで刃で抉られることはなかったものの。
先ほどは受け流したが、今回は衝撃をストレートに受けてしまっていたのだ。

鏡が押し付けられた腰から背中にかけて触覚が『怪しい』。

いやそれどころか、実感している以上にダメージを受けていた。
慈母の効果で苦痛の類の『主張』がかなり抑えられているのであって、実際は満身創痍に近いかもしれない。

まず依り代である土御門元春自体が、慈母の力の大変な負荷で限界状態なはず。

いくら慈母が優しく丁寧にしてくれていたって、
その点だけはどうしようもないのだ。

とその時。


シルビア『土御門?土御門!大丈夫か!?』


上からこちらの姿をやっと捉えたのであろう、シルビアからの魔術通信が土御門の脳内に飛び込んできた。
もちろん上方のシルビアの目に映っているのは、白狼が低い姿勢で唸っている光景だろうが。

最初の呼びかけが疑問系だったのも、
その容姿を見て一瞬迷いが生じたからであろう。



766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:00:22.05 ID:oWfNi2Njo

土御門『……こっちの事は気にするな。それよりもそちらはどうだ?』

シルビア『……オッレルスが術式の作成に入ってる。進み具合はわからん』

土御門『完成したら俺にリンクしろと伝えろ』

シルビア『わかった』

土御門『では頼んだ。俺はそれまであのドラ猫とジャレていよう』


シルビア『あっ待て。もう1つ話がある。あんたから預かった例の通信機、全く通じないんだが』


土御門『……は?何?』

そのシルビアの思わぬ言葉に。

土御門はそんな脳内の返答と共に、
白狼の肉体の方でも思わず喉を鳴らしてしまった。

通信機とはもちろん、
この能力者部隊間の通信網に接続する軍用イヤホンマイクの事。


滝壺理后が形成するネットワークの、だ。

土御門『通じないだと?』

シルビア『ああ。電源?は入っているみたいなんだが返答が無い。向こうに気配が無い。誰も聞いていないんじゃないか?』

続くシルビアの言葉で、更に土御門の思考が白くなっていく。

オッレルスの術式が完成次第、各ランドマーク上で待機してるチームにやってもらう事がある。
そのためにシルビアに通信機を託したのだ。

それが通信不可? 

通じない?

なぜ?


まさか―――滝壺が―――?



土御門『―――』



767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:01:08.47 ID:oWfNi2Njo

―――とその時。


突如土御門の後方20mの場所で閃光が煌き、巨大な爆発が起こった。
それを引き起こしたのは、文字通りの『光の矢』。

シルビアがビルの屋上から放ったロングボウだ。

影の動きを報せるために、言葉にするよりも速いと彼女が放ったのだ。

土御門『ッ!』

そして驚愕の事実に注意力が薄れてしまっていた土御門にとっては、良い警告であった。
シルビアから聞いた事柄はひとまず思考の隅におくべきだ、と。

シルビア『後ろ!』

遅れて脳内に響いてくる彼女の声に耳を傾けながら。

まずは影に対応するべきと白狼は四肢で跳ねながら、
彼女が警告弾を放った方角へ振り向―――いた瞬間だった。

土御門『―――…………』


唐突に違和感を覚えた。


そのシルビアの矢が着弾した影に。

もちろん、彼女の矢は今までの例と同じくあっさりと『拒絶』されていたが。
その時に土御門の目に映る情報、それが『何か』が違うと。


『何か』が異なっているのだ。


慈母の力をぶつけた時とは。



768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:02:46.47 ID:oWfNi2Njo

この違和感の正体を知るには。

土御門『―――シルビア!もう一発放て!』

もう一度見るべき。

シルビア『っ?!……わ、わかった!』

彼女の声に次いでの光の矢。
そして再びの爆発と、無傷の影。

その拒絶の、今までのとの違いは何か。

土御門『―――』

獣の鋭い瞳を見開き、
土御門はその瞬間を目に焼き付けた。

見えてくるのは矢に対する反応、拒絶の力の動き。
そこに発見できる、慈母の力に対するのとの僅かな相違。

その相違とは。

僅かな点に意味を見出し意識し気付いたことで、
周波数が合ったように土御門の認識が晴れ上がっていく。


完璧に拒絶してた一方、シルビアの矢に対する反応は完璧ではない。
非常に小さなブレ、微かな『漏れ』が見える。


そして遂に彼の思考は、
その相違を決定している1つの因子の意味を理解できた。

それは。



―――『新しい』という意味。



769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:04:27.95 ID:oWfNi2Njo

ならば、次は再度慈母の力で試す。

延びてくる影の槍。
それらをかわしながら土御門は、
次いで慈母の筆しらべ『一閃』を影に叩き込む。

そして見える、相違に当たる因子。

先ほどは新しいと認識ができた部分の、今度の意味は―――


―――『古い』。


慈母の一閃に対しては『古い』と示し、拒絶は完璧。

一方でシルビアの矢に対しては『新しい』と示し、拒絶は不完全。

では。


―――もっと『新しい』とどうなる?


だがそれを試す前に、一体何が、一体どの部分を指して新しい・古いなのか、
その点について明らかにする必要がある。


新しい、古いという表現で示される尺度は、
その存在が確立されてからどれだけ時間が経ったか、だ。



770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:06:53.29 ID:oWfNi2Njo

瞬間的に回転数を上げていく土御門の思考は、
まず一番最初に攻撃を構成している『力』に意識を向けたが

シルビアが使う力の源か慈母のどちらがより昔から存在していたか、そんな事はまずわかりようがない。

いや、違う。

そもそもこの影の防御の系統は、
実際的な力の性質にとらわれない『概念否定』の系統だ。

となると、もっと抽象的なもののはず。

『天界系』という因子を拒絶しているのか、いや、違う。
この島中を覆う魔の大気をも拒絶している。

『飛び道具』、という因子を拒絶しているのか、いや違う。
白狼が直に立てた牙をも拒絶した。


では、もっと大きな括りで『攻撃手段』という因子はどうか―――


土御門『―――』


その瞬間、土御門の意識内のピースが全て結びついた。


慈母の『筆しらべ』は、太古から慈母が使用している『攻撃手段』。


一方でシルビアの攻撃手段は『ロングボウ』。

ロングボウが、『ウェールズのロングボウ』という強弓としての認識で確立されたのは12世紀頃。



―――ならば。



771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:07:59.57 ID:oWfNi2Njo

その答えに帰結した土御門は、即座に即座に筆しらべを使い。

『爆神―――輝玉』

周囲に複数の、凄まじい爆発を引き起こす。
それは影に対しての攻撃ではなく、一瞬の間を作るための『目くらまし』だ。

その隙に、白狼は100m先のビルの一階に中に駆け込んだ。

土御門『……どこにある?どこだ?』

フロアに飛び込むと同時に、一瞬で人の姿に戻った土御門は、
目を凝らしてはあるものを探し。

そしてあるものを見つけて、駆け寄っては滑り込み手を伸ばした。

それは『処刑台』で天使に会う直前に脱ぎ捨てた、上着と装備の類の中にあった―――


―――『拳銃』。



土御門『こいつは―――』


拳銃を手に取り、振り向くようにしてはとある一方に向けた。
その先には、土御門を追ってフロアの中へと延びてくる影。

土御門『―――もっと「新しい」だろ?』

そして、土御門は引き金を引いた。
慈母の力をこれでもかと上乗せして。


次の瞬間、銃口から光輝く弾が放たれた。



772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:09:20.12 ID:oWfNi2Njo

結果は弾かれた。

そう、弾かれはしたが。


拒絶反応は微塵も無かった。


ぶつかって、押し負け、そして『弾かれた』のだ。

閃光が飛び散り、
ガラスが叩き割られるような音が響き。

そして影に走る『亀裂』。


土御門『はは、決まりだ』


その結果を見て小さく、それでいながら最高の笑みを浮かべる土御門。

彼の手に合った拳銃は今の一発で、
一瞬の内に蒸発してしまっていた。

術式防護も何もなされていないタダの銃に、
圧倒的な慈母の力を流しこめば当然の結果であろうが。

だが、土御門にとってそんなことはどうでもいい。

これで確定したのだから。


影の防御が、『何の概念』でどう拒絶しているのか、


そして見出した。


この鉄壁を崩す確かな方法を。



773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:10:14.63 ID:oWfNi2Njo

影の防御、その特性は今までの記憶を使った否定。

今までの歴史を元にした、攻撃手段そのものの拒絶。

過去に経験がある攻撃手段、また、周知になっている攻撃手段の概念を、
片っ端から拒絶できるのだ。

なんとも非の打ち所が無い力に聞えるが、実は穴もある。

新しすぎるもの、またユニークなものには対応できないのだ。
歴史や記憶を元にしているため、当然『更新』作業は遅れる。

そして魔界の存在からすれば、
人間界時間の百年そこらなどちょっと気を逸らしているうちに過ぎ去ってしまう。

そのため、発祥から1000年近くになるロングボウは『ほぼ完璧』に更新済みであっても。


『人間界の銃』にはまだ対応してなかったのだ。


確かに魔界にも『銃』と呼べる存在はあるだろう。
魔界のみならず、数多の世界に類似の武器・攻撃手段の概念があるはずだ。

だが。


だが人間界の銃のような、『単純なる物理現象が基盤』のものは他にあるか?


単なる物理現象なんて、『力』ありきの世界では誰も見向きもしない。

力こそが唯一の真理である魔界では特にそうだろう。
タダの物理現象を前提とした攻撃手段の概念など存在していないのだ。



774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:11:31.74 ID:oWfNi2Njo

また、同じく『矢』と呼べる攻撃手段も多く有るだろう。
だが影の防御は、シルビアの矢を『新しい』と判断した。


その点からも実際的にどうだではなく、
『攻撃手段の概念』のみで拒絶判定を下しているのだとわかる。


今のシルビアのロングボウは天の力で動いては入るも、

『人間界発祥のロングボウ』という攻撃手段の概念そのものは、
『単なる物理現象』が前提となっているのだから。

またその点が、更に土御門にとって好ましい点である。

この点は、こうも解釈できる。

ベースが『単なる物理現象』を前提する攻撃手段であれば、
銃を魔界や天界の力でどれだけ強化しても良いのだ。


そしてこの島には今、
『単なる物理現象』を前提とした、『最高に新しい』概念の銃があるではないか。



―――圧倒的な魔界魔術で強化された『大砲』が。



775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:13:26.43 ID:oWfNi2Njo

土御門『シルビア。呼び出してもらいたい女がいる』

白狼の姿に戻っては。
即座にまたフロアから外へ飛び出しながら、土御門はシルビアに呼びかけた。


シルビア『なんだ!?』


土御門『レールガン、という―――』


だが。

そこで土御門は思い出した。


土御門『(―――ッ!しまった!!)』


先ほど、シルビアから聞いた件を。
ここまで来てやっと気付くとは、頭の隅に置きすぎていたのかもしれない。


だが直後、とりあえずその『大砲』を呼び出す件は、
ひとまず解決することとなった。


その時。


土御門の前方、200mの場所を覆う影に青白い光の矢が着弾したのだから。



776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/11(水) 02:14:37.63 ID:oWfNi2Njo

それは『魔弾』。

土御門が求めていた『破魔の矢』。

彼方から大気を切り裂いてきた魔弾は影を『貫通』。
凄まじい衝撃と破砕音を打ち鳴らしながら巨大な穴を穿ち。

影の破片が、黒いガラス片のように飛び散っていく。


土御門『―――はッ!』


思わずその狼の喉を鳴らしては笑い、
土御門はその魔弾が放たれた方角、更にその先の発射点を見た。


5km以上向こうの超高層ビルの屋上。

そこに、慈母の目で土御門は見た。

全身から電撃を迸らせ、髪を靡かせ。

巨大な大砲を腰溜めに構えている少女の姿を。



                                        ジョーカー
超攻撃特化、いや超威力特化のトリッキーな『切り札』。


最大火力を有する『ド素人』。


そんな彼女が、その本領を発揮する時がここに到来する。


―――



782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:47:27.92 ID:YROEru4Io
―――

強化コンクリートの上に落ちる、排された巨大な薬莢。
硝煙の尾を引きながら、鈴に似た金属音を打ち鳴らす。

その音を耳にしながら、御坂美琴は遠くの戦場を見据えていた。
一際高い超高層ビルの屋上淵にて。

帯電し、砲口から煙を吐く大砲を腰溜めに構えながら。

御坂「…………あの辺りの『黒いの全体』、ね」

視線先の一帯を覆う漆黒のベールを、
悪魔の体、もしくは悪魔による精製物体だと確認するその御坂の顔は、
凛々しく引き締まっていた。

圧倒的な存在を目にして当然恐怖は覚えるも、その恐怖に心は囚われてはいない。
その恐怖に体は縛られてはいない。

恐怖を客観的かつ冷静に捉えているのだ。

さすれば恐怖は更なる闘志の糧となり、己が身を守る盾となり、
的確な判断の材料となって勝機へと繋がる。

そして、そんな彼女の斜め後ろには、『それ』が『できなかった』黒子がいた。
やや身を竦ませ、『取り戻した感情』で顔を引きつらせては畏怖の色を滲ませて。

黒子「あれ……は……」

震え混じりの、途切れがちな言葉を漏らしながら。



783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:49:13.74 ID:YROEru4Io

だが、その口にしようとした言葉を全て漏らしきる前に。

御坂「―――黒子。掴まって」

確かで安定感のある声が聞こえ。

次いで一瞬で、その御坂の腕に掴まれては引っ張られ、
胸に抱き寄せられて。

そして、御坂は黒子を抱いたまま屋上から跳び出した。

ビルが乱立するこのような地は、
御坂の電磁力を利用した高速移動にとってかなり最適、というのは黒子は前から知ってはいた。
そして今まで何度か、その状態の御坂に抱かれて移動したこともあったが。

最高速度で連れられたのはこれが初めてであった。

『中心地』へ向けてビルからビルへと飛び移っていくその速度は、
想像を遥かに超えていた。
御坂自身が『妙に調子が良い』と言っていた事も関係しているのであろう、いや、確実にそうだ。

今の御坂はもう。黒子が知っているレベルではなかった。


とにかく速く、それはもう黒子の反応速度を超えており。

二人を包む電膜向こうで移り変わっていく景色、
そのほとんどが認識が出来なかった。

そして跳び跳びで伝ってきたビル達が軒並み、
漆黒の巨大な『杭』によってその上半分が削り取られていたのも。



784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:51:35.28 ID:YROEru4Io

黒子「―――」

気付いたら既に、
ビルの屋上が消えていたのだ。

反応どころか、『眼を凝らしてても見えない』速度で、
黒い杭はビルを削り飛ばしているようであった。

御坂「―――らぁ!」

瞬間、御坂の短い掛け声と共に、凄まじい衝撃と砲声、光が迸る。
当然速すぎて、黒子にとっては何がなんだかわからない。

真っ黒なガラス片のような破片が飛び散って来るのを見てやっと、
御坂が大砲で黒い杭を迎え撃ったということがわかる程度だ。

黒子「……」

そんな格の違う力のぶつかり合いを目の当たりにして、
黒子は疑問に思う。

なぜ、御坂は己を連れ出したのかと。

いまや御坂の反応速度は己を遥かに超えており、
瞬間移動という利点を踏まえても、総合的な回避能力は御坂の方が明らかに上。

とうかこれだけ帯電してしまっていては、そもそもまともに飛ばせそうも無い。

となればいつかのように、回避の足としての役を担うわけでも無さそうだ。

説明する時間すら惜しかったのだろうか、
御坂からは特に説明も無かった。

御坂は同行するよう『命令』を下してはすぐに街区に戻り、
一帯で一番高い超高層ビルに昇っては即ぶっ放して。



785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:53:08.80 ID:YROEru4Io

と。

黒子の目からはそんな風に見えていた、いや、
『見えて』はいないのだから『感じていた』とした方が良いか。

とにかく、
速すぎて何が起こっているのかすらまともに認識できないのだから、当然知るわけが無い。

御坂「(―――チッ!)」

御坂にとって、
この弾幕を張りながらの強行軍はかなり厳しかったことは。

実は当の彼女にも、この黒い杭が『伸びてくる』のは認識できていなかったことは。

反応して避けていたのではなく、
とにかく動きながら前方に弾幕を張って凌いでいたのだ。


歯を噛み締めては、睨むように視線を飛ばすその先。
ビル街の中に、区画ごとぽっかりと更地になっている広大な『広場』、
一帯を覆う『影』と、中央に唯一残って聳える超高層ビル。

そのビルの近くにて、白いレーザーのような線が複数走っているように見えていた。
恐らくそれは、超高速で動いている1つの光点。

そして同じように走っている、赤いレーザー。

そう、『赤』とくれば当然最初に思い浮かぶのは『魔を宿す瞳』。

御坂「(……アレね)」

その『赤』が、この影の元凶であることは間違いないようであった。



786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:54:52.52 ID:YROEru4Io

とその時。

唯一残ってるそのビルの頂点にて、別の光点が瞬いたかと思った次の瞬間。

御坂「!」

『巨大な翼』が出現し。
別のビルへ向けて空へ跳び出したばかりの御坂の前に一瞬でやって来た。

その翼には、御坂は先も見た覚えがあった。

翼の付け根の男も。

麦野・ルシアと共にアリウスと戦っていた際に現れた、
短い茶髪に大剣を持った厳つい大男だ。

左目を覆っている紅に染まっている布切れは、さっきは無かったが。

ともかくその時の行動から見て、勢力不明だが敵ではない事は確かだ。

そして。

『レールガンだな?』

男の口からのその問いかけで、
御坂は的確に『空気を読んだ』。

一定の領域での戦いに馴れた者達は、即席でもリズム・テンポ・息が合う。

場や相手の空気を読み取り、
それぞれがそれぞれのやるべき事を見出し、的確に実行する力量があるのだから。

ただ、それが出来ない者は当然混乱するが。

黒子「??」



787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:55:22.05 ID:YROEru4Io

御坂「この子を『中央』に届けて」

レールガンかという問いかけに、
御坂は『答えになっていない返答』を返す。

何もかもの言葉を省き過ぎな返答を。

黒子「?!はい……?!」

当然のように状況が把握できず、戸惑いの声を漏らす黒子。

だがそんな黒子の様子など気にせず、
御坂は彼女の体を大男の方へと放り投げた。

『了解した』

御坂と同じく特に気にする風も無く、
その丸太のような腕で黒子をキャッチしては、大男は頷いた。

黒子「―――お、お!?お姉さまぁッ!!?」

突如現れた見ず知らずの大男に、
空中で投げ渡されて普通は黙っていられない。

御坂「『事態の中央』にて状況を把握し―――」

そんな黒子に向けて御坂は。


御坂「―――後は自分の判断で動きなさい」


彼女を戒めるように、静かで確かな口調でそう言葉を放った。



788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:56:59.24 ID:YROEru4Io

黒子「―――っ」

並んでいるのは簡単な言葉で、意味は至極単純。
それでいて、成すにはちっとも易くはない事。

あまりにも抽象的で漠然としてて大雑把。
このような状況では特に。

無責任にも、過剰な信頼にも聞えてしまう。

黒子の頭には返す言葉も浮かばず、いや、浮かんでいたとしても返せなかっただろう。
直後、大男は彼女を腕にしたまま、すぐさまその場を離れたのだから。

先ほどの御坂の高速移動なんかとは、全く比べ物にならない程の超速度で。

黒子「……」

気付くと、黒子はとあるビルの屋上にいた。
オベリスクのようの聳えていた、あのビルの屋上らしかった。

突然の事の連続に頭が追いつかずの
呆け気味の顔のままだが、そこは何とか確認できた。

彼女を降ろした大男は、何も言わずに屋上の淵に行き、
大剣を足元に突き立てては番人の如く仁王立ち。

屋上の中央には、直径5m程の球状の赤と金の光体。
良く見ると、『得たいのしれない文字列』のような光の粒子で形成されており、

球体の中には地面に座り込んでいるキリエと、
彼女の前に立って、虚ろな目をしているこれまた見覚えが無い金髪の男。

黒子「……」


そしてその球体から2m程の場所に。

作業着にエプロンという姿の、金髪の涼やかなオーラの女性が立っていた。
土御門とそれなりに面識があるらしい、確かシルビアと名乗った女だ。

木製と思しき大きな弓を手にした彼女は、黒子の姿を見るや、
その短い金髪を揺らしては歩き寄って来た。



789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:58:05.88 ID:YROEru4Io

黒子「―――……」

と、そこで黒子は気付いた。
この場所にいると思っていたとある人物が、どこにも見当たらない事に。

土御門が装着していた通信機はシルビアの頭にあり、当の土御門がいないのだ。

そして。

黒子「(……なるほど)」

ここに己がいなければならない理由をも、この瞬間悟った。


御坂はこの状況を具体的に知っていたのか。
それとも、先の不確定性を考慮した予備行動として黒子を連れ出したのか。

ここに『能力者を置く必要性』は黒子が来る前から存在していたのか、
それとも黒子自身が今、その『必要性』を見出した第一人者なのか。

そこはわからない。

そして今更どうでもいい。


問題は今この瞬間この状況、
それらとの己の関係性と、己がやるべき事である。



790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/14(土) 23:59:39.24 ID:YROEru4Io

この戦いの中で、御坂が一体どのような視点から物事を見ているのか、
初めてそれがわかったような気がする。

そこに気付いた瞬間、面白いように思考が結びついていく。

キリエの前に立っているあの男。

土御門も同じような立ち居地で、何らかの作業していたことからも、
あの金髪の男が同じ目的の作業を受け継いでやっているのだと想像がつく。

そしてその作業は土御門の言動からも、
北島に展開している能力者達も使うと推定できる。

となると、その作業の中央であるここに、
学園都市側の要員が一人もいないという事は問題だろう。


AIMストーカーの通信網がダウンしている現状は、確かに非常に厳しいものがある。
これが回復するのかはわからない。

しかし。

誰かが回復に向けて、もしくは回復の代替となる状況の構築に向かっている事も、
思い出せば御坂は匂わせていた。

となれば、ここで己が事態を把握しておくことは非常に重要なことになる。

AIMストーカーが回復した際、もしくはその代替策が完了した際には、
即座にその情報を流すことも可能だ。

それ以外にも探せば探すほど、
やるべき事・やっておける事はどんどん出てくる。

とにかく能力分野・学園都市系には、
『プロの能力者』以外に任せてはいられない。


黒子「……」

恐怖に震える手が、精神も思考も今だ正常であることを示してくれる。
手先の凍傷の痛みが、意識を明瞭に保ってくれる。

黒子「……早速ですが、簡潔に現状をお聞かせくださいまし」

それらの『励まし』に『鼓舞』されながら、
黒子は歩み寄ってきたシルビアに向け口を開いた。

『最後の戦場』を全うし、生きて家に帰るべく。



791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:00:45.66 ID:RDZ+/F/lo




一瞬で離れて行った大男と黒子。
『翼』は、次の瞬間には例のビルの上に到着していた。

それを横目に確認しながら、
御坂は次のビルの屋上へと降下する。

その間に、手ではなく能力によって大砲のコッキングレバーが引き上げられ。

肩にかけている弾薬袋から弾が飛び出してきては浮遊し、
次々と大砲の中に充填されていく。

そして目一杯含んだところで、コッキングレバーが弾けるように戻り、
薬室に弾が装填される。

噛み合うパーツとスプリングの、今や御坂にとって心地のよい駆動音を響かせて。


御坂「―――!」

とその時。
御坂は突如、着地点に映ったとある存在に目を丸くした。

一匹の『犬』が、いつの間にか着地点にいたのだから。


いや『オオカミ』、『白狼』か。


とにかくどちらにせよ、『普通』では無かったが。



792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:02:04.84 ID:RDZ+/F/lo

尾から鼻先までは2m程か。

純白清廉な体毛に、歌舞伎のような紅い隈取。

背中には、日本史の教科書で見た銅鏡のようなもの。
炎のように揺らぐ、奇妙な質感の真っ赤な光に縁取りされている。

全身からは、仄かに穏やかな光を放っている。

そして瞳。

獣特有の鋭い瞳にも関わらず、感じられるのは不思議な心地良さと愛くるしさ。

本来ならば反射的に戦闘態勢に入っているはずなのに、
そうはならなかった。


本能から敵愾心の一切が沸かなかったのだ。


白狼の真横に着地した御坂の心には、ただ突然の驚きとその心地良さだけ。

御坂「(えっと……ナニこの生き物……やばい……いい……)」

あまりの『存在感』に、
それどころではないという状況さえも一瞬頭を離れてしまいそうになる。

御坂「えっと……『あなた』は……?」

普通ではない、恐らく異界の存在であろう白狼に対し、
御坂はそんな風に問うたところ。 


『レールガン』


脳内に響く形で帰ってきた声は。


御坂「つ、土御門……土御門なの?!」



793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:05:42.89 ID:RDZ+/F/lo

土御門『―――待ってた』

顎を一度挙げて、
回すような仕草をしつつ喉を鳴らしながら白狼、土御門はそう口にした。

御坂「ず、ずずず随分と可愛k……さ、様変わりしたじゃなの!!」

極限の状況下での戦人には細かい説明は不要、としてもさすがに限度がある。
それが、個人的ツボに嵌ってしまう事柄だと特に。

目を更に丸くして、気持ち良い位に驚き一色に顔を染め上げている御坂。
感情に影響されて、能力によって髪がぞわぞわと浮かび上がってしまっている。

御坂は知る由は無いが、これは仕方のない事でもある。
決して、彼女の意識が散漫だからというわけではない。

慈母神を前にすれば、本能的に心奪われても何らおかしくない。
至極全うな、普通の反応だ。

ただ、そんな彼女の状態になど気にする風も無く。

土御門『まずは乗れ』

そう言うと白狼、土御門は前腕をたたみ、頭部・上半身を低くした。
その動作に合わせ、背中にあった銅鏡が浮遊しては後方に下がり、『席』を空けた。

御坂「―――わ、わかった!」

その光景、この状況に御坂はデジャヴを覚えた。
いや、実際に似たような事があった。

ただあの時は、愛くるしさもなければ心地よさも無い、
魂までが文字通り凍りつくような存在であったが。

今回は違う。

御坂「(ふわ~~~~~~~~~!やっべ!なにこれ!)」

前肩よりの背中に飛び乗って。

押し寄せてきたのは至高の触感。



794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:09:13.08 ID:RDZ+/F/lo

だが、そんな夢心地に浸っていれたのもほんの一瞬。

次の瞬間。

御坂「―――ッ!」

突如、全身をやや強めの痺れが伝っていった。

それは御坂がよく知っているものであった。
昔に何度も、数え切れないくらい味わった痛み。

電気の操作を誤った際のものだ。

御坂「?今のは―――」


土御門『撃神で俺と結ばせてもらった』


御坂「ゲ、ゲキガミ―――?」


その土御門の、説明になっていない説明の直後。

御坂の感覚が一気に鋭敏化していった。
これもまた、御坂は前にも覚えがあった。

かつて第23学区の地下駐機場にて、
アラストルを手にしてた時にも同じだった。

いや、あの時よりも遥かに上。

あれはアラストルにほとんど任せていたのであって、
全てを認識していたわけではない。

というかむしろ、ほとんどがよくわからない。


だが今は本物だった。
御坂は御坂自身の眼で、思考で、意識で、その領域を認識していた。

次元が違う認識点、感応域、思考水準。
外界とは剥離した独自の時間軸を有した者の領域、だ。



795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:10:23.63 ID:RDZ+/F/lo

そして。

白狼、土御門は御坂を乗せたまま、
とんでもない速度でそのビルの屋上から跳ね出でた。

御坂「―――」

ついさっきまでの己だったら到底認識できない速度、時間領域。
それらを今、はっきりと己が目と意識で認識しながら、御坂はふと思っていた。


―――当麻も。力を手に入れてからは、こういう世界にずっといたんだね、と。


文字通り無限大でありながら、拠り所が無い不安定で孤独な領域。

外界の法則が通じ無いということは、
言い換えれば己の力と精神力で律するしかないということ。

己の存在は、己の意識ではっきりと保たねばならない。
それができなければ力の統制を失い、自らの自壊しかねない領域。

強者だけに許された世界とは、強者だけしか存在できないからこそのものなのだ。

今まで、外側からならそのような存在たちの戦いを目の当たりしてきた。
しかし、『内側』からこうして見たのは初めてだった。


覚えるのは闇夜の大海に投げ出されたような、
気が狂ってしまいそうなまでの凄まじい不安感。



796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:11:19.73 ID:RDZ+/F/lo

ただ幸いなことに御坂はゲストだ。
正式に踏み込んだのではなく、白狼からの特別招待だ。

跨っている下からの確かな温もりが、その不安感を跳ね除けてくれる。
包んでくれる光が底知れぬ孤独感を打ち払ってくれる。

そして圧倒的な力と精神力が、そんな負の因子を全てねじ伏せていく。

土御門『はしゃいだ次の瞬間には感傷に浸って忙しい奴だな』

御坂「なっ!!」

土御門『この程度で怖気づくんじゃあ、レディに弟子入りしてももたないな』

白狼は『広場』に降り、花を咲かせながら台地を駆けて行きながら。

御坂「わ、私の頭の中!記憶読んだ?!」

まだ誰にも言っていない、御坂の将来の展望を言及しては。

土御門『俺の考えてることも流れてるだろう?』

この影が何なのか、その防御の特性等々の情報を流して。

御坂「……えっと、私の砲撃が防御に傷を負わせられるのね?そこにアンタが攻撃を叩き込むと!」

土御門『そういう事だ』

御坂「―――ッ!!」

そして黒豹から一定の距離を保って、
この影の主を中心として大きく弧を描くように移動しながら、無数の杭や手の攻撃を掻い潜って行く。



797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:13:28.28 ID:RDZ+/F/lo

影による凄まじい攻撃。

御坂「!!」

その密度や速度は、感覚が鋭敏化している今でさえ、
全て把握しきれない、いや、認識できているのは一部だけであろう。

土御門『じゃあ、そろそろ行きたいんだが、準備は?』

とそこで、これがまだまだ序の口であることを示す、
土御門のそんな平然とした声。

御坂「ちょ、ちょっと待って!AIMストーカーの件で(ry」

土御門『―――「結標が動いてる」って件だな?それも「読んだ」さ。良いか?』

御坂「よ、よし!良いわよ!」


そして再度確認して今度こそ。


土御門『では頼んだぜい。「砲手殿」』


御坂「―――OK!!!やってやるわっっ!!!」


白狼は一気に進路を切り返しては更に加速して。


土御門『あとその撫でるような触り方はやめてくれ。気色悪い』


御坂「―――お、OK!!!」


背中に『砲手』を乗せ、黒豹へと正面から突っ込んでいった。



798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/15(日) 00:14:04.14 ID:RDZ+/F/lo
ぶつ切りですが今日はここまでです。
次は月曜に。



799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/05/15(日) 00:17:56.65 ID:iLKnoeopo
お疲れ様でした。



800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/15(日) 00:18:55.01 ID:5V8ZM33DO

続きがすごい楽しみだわ




801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2011/05/15(日) 00:19:32.66 ID:2hGTrm+AO

しかし土御門につっこまれたって事は
ずっともふもふしてたんだな…羨ましい…




802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/05/15(日) 01:53:06.04 ID:xy95Qtkv0

クシナダならぬ「ミサカを乗せて」か
胸熱だな




次→ダンテ「学園都市か」【MISSION 24】

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禁書目録SS   コメント:8   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
6963. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/05/15(日) 10:24 ▼このコメントに返信する
おお続ききたか。

この作品も長いこと続いてるけどフェードアウトする気配が全然ないな。
作者のモチベーションが凄いと感じるな。
6972. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/05/15(日) 18:16 ▼このコメントに返信する
土御門「ほにゃほにゃ、ほにゃにゃー『ほにゃにゃん』にゃ、ほにゃー?」
御坂「ほ、ほにゃほにゃにゃ!?『ほーにゃ』ほほにゃにゃほにゃ………(ごにょごにょ)
………………ほ、ほにゃ……///」
6975. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/05/15(日) 19:30 ▼このコメントに返信する
相変わらず展開が超熱い。

いつも楽しみにしてます!
最高!!!
6995. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/05/16(月) 01:54 ▼このコメントに返信する
毎度思うがこの作者がこの物語にかけてる熱量はすごいな
それだけで尊敬に値するレベル
7068. 名前 : 名無しさん◆- 投稿日 : 2011/05/18(水) 12:53 ▼このコメントに返信する
これダンテ出てきてんの?
7076. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/05/18(水) 20:40 ▼このコメントに返信する
>>No.7068

最初から読んでみるといいよ
超オススメ!

8808. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/07/01(金) 13:27 ▼このコメントに返信する
続きが気になるな

大変だと思うが主がんばれ、超がんばれ
9123. 名前 : 名無し@SS好き◆- 投稿日 : 2011/07/10(日) 17:33 ▼このコメントに返信する
続きが待ちきれない
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