1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:03:11.85
ID:B38J0ZySo
―ゲーセン―
男「お、太鼓の達人がある!」
女「あ、ホントだ!」
男「ちょっとやってこうぜ」
女「いいね、やろうやろう!」
男「曲はサイレントマジョリティーな!」
女「え~、難しそう~」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:03:37.54
ID:B38J0ZySo
男「ほれっ、ほれっ」ドンッドンッ
女「あーん! 難しい、これ~!」ドンッドンッ
男「よっ、ほっ、よっ!」カッカッ
女「やだ~! 可ばっかり~」カッカッ
『…………』
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:04:03.38
ID:B38J0ZySo
男「よっしゃ、連打だ!」ドドドドドドンッ
女「え~い!」ドドドドドドンッ
『叩かれるのはもう嫌になったドン……』
男「――ん?」
男「お前、今なにかいわなかった?」
女「何もいってないけど?」
男「気のせいか……」
『だから……人間を叩くドン!』
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:04:46.85
ID:B38J0ZySo
ドゴォッ!
男「ぐはぁっ!?」ドサッ…
女「え、なになに!? 太鼓が動き出した!?」
和田どん「まずは一匹……だドン」
女「ひっ!」
和田どん「さぁ……開始(はじ)めるドン!」
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:05:14.03
ID:B38J0ZySo
和田どん「次はお前だドン!」
女「ま、待って! あたしが何したってのよ!」
和田どん「ボクを叩いたドン!」
ドゴォッ!
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:05:39.26
ID:B38J0ZySo
客A「なんだなんだ!?」
客B「太鼓の達人の太鼓が動き出して……暴れてる!」
客C「みんな逃げろォッ!」
和田どん「おやおや、こんなに人間がいるのかドン!」
和田どん「もう一曲、遊べるドン!」
バキィッ! ドゴォッ! ズギャッ! ドガッ! ドゴォッ!
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:06:16.40
ID:B38J0ZySo
―ゲーセン前―
ウーウー……! ピーポーピーポー……!
警部「被害は?」
部下「重傷35名、軽傷4名です。犯人は未だにゲームセンター内に立てこもっています」
警部「……犯人の要求は?」
部下「それが……何もないんです」
部下「ただ人間を叩きたいだけ、それだけだ……と」
警部「ふぅ~む、愉快犯か、はたまた精神異常者か……」
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:06:55.06
ID:B38J0ZySo
警部「犯人に告ぐ! 君は完全に包囲されている! 大人しく投降しなさい!」
和田どん「おおっ、警官がいっぱい集まってきたドン!」
和田どん「たくさん遊べるドン!」
警部「な、なんだあの太鼓の化け物は……!」
警部「ええい、撃て撃てーっ!」
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:07:46.78
ID:B38J0ZySo
パンッ! パパンッ! パンッ!
キキキキキンッ
和田どん「長年、人間どもに叩かれてきたこの肉体……」シュゥゥ…
和田どん「そんなもんじゃ屈しないドン!」
警部「拳銃が効かない!?」
和田どん「さぁ……開始(はじ)めるドン!!!」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:08:49.26
ID:B38J0ZySo
和田どん「リズムに乗るドン!」
ドガッ! バキッ! ドゴッ! ベキッ! ドガァッ!
「ぐはぁっ!」
「うげえっ!」
「ぐぎゃっ!」
和田どん「ふぅ~……いい汗かいたドン!」ニヤ…
部下「機動隊が全滅しました!」
警部「くそっ、撤退! 撤退だっ!」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:09:15.71
ID:B38J0ZySo
警部「なんなんだあの化け物は……!」
部下「どうしますか、警部?」
警部「う~む……」
警部「なにしろ、太鼓の化け物なんて今まで相手にしたことがないからな……」
オタク「ぐふふっ、ここはボクにお任せ下さい」
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:10:42.90
ID:B38J0ZySo
部下「誰だ君は? 危ないから――」
警部「いや、待て」
警部「君はあの化け物について、何か知っているのか?」
オタク「和田どんは『太鼓の達人』というゲームのキャラクターです」
警部「ゲームの……!」
オタク「ゲームキャラの気持ちが分かるのは、やはりボクのような人種のみ」
オタク「ボクがたちまちのうちに事件を解決してみせましょう」
部下「どうします?」
警部「うむむ……一理あるかもしれん。やってみてくれたまえ!」
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:11:22.25
ID:B38J0ZySo
オタク「和田どん……ボクにはキミの気持ちが分かるよ」
オタク「ゲームをバカにしてきたリア充どもに復讐したいんだろう?」
オタク「ボクたちは仲間だ……さあ……」グフフッ
和田どん「不可」
ドグシャッ!!!
オタク「ぶべらっ!」
部下「瞬殺でしたね」
警部「なんだったんだ、あいつは」
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:12:16.35
ID:B38J0ZySo
格闘家「ここはオレに任せてくれ」
警部「あ、あなたは……有名な格闘家の……!」
部下「拳銃が通用しなかった相手ですよ? いくらあなたでも無茶です!」
格闘家「あれはゲームのキャラなんだろう?」
格闘家「そういう輩には、心を込めた拳をブチ込むのが一番!」
部下「なんだか説得力ありますね!」
警部「うむ……この人ならやってくれそうな気がする」
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:12:42.05
ID:B38J0ZySo
和田どん「おっ、強そうな奴が来たドン!」
格闘家「いくぞ……我が拳、受けてみるがいい!」
格闘家「せやぁっ!」
ドゴォッ!
格闘家「フッ、終わった……」
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:14:24.65
ID:B38J0ZySo
和田どん「この程度かドン?」
格闘家「な、なにっ!?」
和田どん「今度はこっちの番だドン!」
ズドッ!!!
格闘家「ぐふっ!?」
格闘家(な、なんだこの重さは……!? まるでヘヴィ級トップランカー並みのパンチ……!)
和田どん「おおっ、一発で倒せないとは流石だドン!」
和田どん「もう一発……遊べるドン!」ニタァ…
格闘家「ちょ、ちょっと待っ――」
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:14:58.25
ID:B38J0ZySo
和田どん「開始(はじ)めるドンッ!」
バキィッ!
格闘家「ごふぅ!」
ドゴッ! グシャッ! メキッ! バゴッ! ズギャッ!
和田「50コンボ~」
バキッ! ガッ! ボグッ! メキャッ! グシャッ!
和田「100コンボ~」
ドカッ! ドゴッ! ボゴッ! ズドッ! ガゴッ!
部下「ひ、ひでえ……」
警部「なまじタフなのが、彼の不運だったな……」
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:15:28.96
ID:B38J0ZySo
ドゴォンッ!
和田「フルコンボだドン!」
格闘家「ぐげえ……」ドサッ…
警部「まさか……彼でも歯が立たないとは……!」
部下「どうしましょう、警部!?」
警部「こうなれば――」
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:16:44.65
ID:B38J0ZySo
―バンダイナムコ―
社員「ほう、『太鼓の達人』の和田どんが暴走を?」
警部「は、はい……」
部下「何とかしていただけないでしょうか……」
社員「ふっふっふ、私に任せなさい」
社員「壊れたオモチャは処分してあげなくてはね」クイッ
20:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:17:37.53
ID:B38J0ZySo
―ゲーセン前―
社員「お久しぶりですね、和田どん」
和田どん「あんたは……ボクを生んだメーカーの社員だドン!」
社員「太鼓風情とはいえ、なかなか記憶力はいいようですね」
社員「しかし、貴方には罰を与えなくてはなりません」
和田どん「拳銃も格闘技も通じなかったボクに、あんたが勝てると思うのかドン?」
社員「余り私を舐めない方がいいですよ、和田どん……」
社員「メーカーの人間として、あなたの弱点は知っています」
和田どん「!」
社員「あなたの弱点は、ずばり――」
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:18:16.84
ID:B38J0ZySo
社員「普段プレイヤーに叩かれない……側面ッ!」
ドゴォッ!
警部「なるほど! 太鼓の普段叩かれてる部分は、叩かれていたおかげで鍛えられ頑丈だが」
警部「側面は叩かれてないから弱点というわけだ!」
部下「あの一撃には、いくらあの太鼓が頑丈でも耐えられないはず! 事件解決だっ!」
22:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:19:47.28
ID:B38J0ZySo
和田どん「これがどうしたドン?」ニヤ…
社員「!?」
社員「バ、バカな……私の一撃は側面を直撃したはず……」
和田どん「あいにく、ボクは弱点を放っておくほどマヌケじゃないドン」
和田どん「今のボクに弱点はない!」ドン!
社員「ひ、ひいい……」ジョボボ…
和田どん「せめてもの情けとして、一発で終わらせるドン!」
バキィッ!
社員「ぐはぁっ!」ドサッ
社員(和田どんは……創造主の思惑を超えて成長しているというのか……)ガクッ
23:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:20:17.83
ID:B38J0ZySo
和田どん「さてと……人間叩きを続行(つづ)けるドン!」ザッザッ
部下「うわわっ! こっちに来ましたよ、警部!」
警部「もう……打つ手はない……! 全人類は彼によって叩かれる運命なのだ……!」
警部「全人類は彼のコンボの餌食となり、絶滅(クリア)させられてしまう……!」
そこへ、一人の老人が現れた。
24:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:20:57.39
ID:B38J0ZySo
?????「ほぉう? 太鼓の匂いがしたから来てみれば、こりゃなかなか楽しそうな祭りじゃねェか」
部下「誰だあなたは!? 危険だから下がりなさい!」
警部「いや待て!」
警部「あなたは……あなたは……!」
部下「警部、ご存じなのですか?」
警部「日本中の祭りに招かれ、和太鼓を叩きまくっているという生ける伝説!」
警部「ひと呼んで、太鼓の達人!!! ――87歳!」
太鼓の達人「おうよ、“太鼓の達人”とはオイラのことよ!」
25:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:21:56.41
ID:B38J0ZySo
太鼓の達人「太鼓の妖怪さんよぉ、次はオイラが相手するぜ」
和田どん「今度はジジイが相手かドン?」
和田どん「いっとくけど、ボクは敬老精神なんざ持ち合わせちゃいないんだドン」
和田どん「そのしわしわの顔面を叩きまくって、グチャグチャにしてやるドン!」
太鼓の達人「おお、おっかねえ。太鼓にそんなクチ叩かれるたぁ、長生きはするもんだ」
太鼓の達人「バチを構えるぜ」スッ…
和田どん「!!!」
26:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:22:35.39
ID:B38J0ZySo
この時のことを、事件を目撃していた会社員、矢寺馬夫氏(34)はこう述懐する。
「ええ……達人がバチを構えた瞬間、和田どんの動きが止まったんですわ」
「そうです。ハイ、まるで金縛りにあったように」
「蛇に睨まれた蛙? いや、そのたとえは適切じゃありませんね」
「たとえるなら……長年探し求めた恋人にやっと出会えたような――という表情でしたね」
「和田どん……い~い顔(ツラ)してましたわァ……」
27:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:23:10.84
ID:B38J0ZySo
太鼓の達人「あんた、和田さんっていったっけ?」
和田どん「うっ……」
太鼓の達人「あんたの反応を見て、分かったぜ」
太鼓の達人「あんたが動き出し暴れたのは、人間に復讐したかったからじゃねェ……」
太鼓の達人「オイラに叩かれたかったんだろう?」
和田どん「あ、あああ……あああっ……」
太鼓の達人「叩いてやるぜ……和田さん」
太鼓の達人「この“太鼓の達人”が、思う存分なァ!!!」
28:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:24:27.64
ID:B38J0ZySo
太鼓の達人「それぇっ!」
ドンドンドコドンッ
ドンドコドンッ
カカカッ
ドドンドドンッ
カカッ
警部「なんというバチさばき……迫力と繊細さを兼ね備えている。さすが太鼓の達人」
部下「子供の頃の、縁日の楽しい思い出が頭に浮かんできて、涙が出てきましたよ」ウルッ
警部「私もさ」グスッ…
29:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:24:55.45
ID:B38J0ZySo
太鼓の達人「そぅらぁ!」
ドンドコドンドコドンドコドンッ
カカッ
ドンドンドンッ
和田どん(嗚呼……そうだドン)
和田どん(ボクは……叩かれるのが嫌になったんじゃなかったドン……)
和田どん(ボクはずっと……真の太鼓の達人に……ボクを叩いて欲しかったんだドン……)
和田どん(ボクの望みは……それだけだったんだドン……)
和田どん(ボクは……満足……ドン……)
30:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:25:28.50
ID:B38J0ZySo
シュゥゥゥ……
部下「ああっ、和田どんが……ゲームの筺体に戻っていきます!」
警部「『太鼓の達人』というゲームをつかさどる者として、満足したんだろうさ」
警部「なにしろ、本物の達人に叩いてもらったんだからな……」
太鼓の達人「あばよ……和田さん。楽しかったぜ……」
ワァァァァッ! パチパチパチパチパチ…!
31:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:27:10.23
ID:B38J0ZySo
警部「太鼓の達人さん、事件を解決していただき、ありがとうございました!」
部下「事件が長期化していたら、死者も出ていたかもしれません」
太鼓の達人「いやいや、オイラも楽しませてもらったよ!」
太鼓の達人「それにしても和田さん……いい太鼓だったよ」
太鼓の達人「『太鼓の達人』か……これからはオイラも遊んでみるとするかな」
太鼓の達人「そうすりゃ、また和田さんが暴れることはなくなるだろうしな」
社員「あちらに筺体がございますので、ささ、どうぞ! 1プレイ100円になります!」
警部&部下(金とるのかよ……)
32:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 02:27:37.25
ID:B38J0ZySo
太鼓の達人「あれ? あらら?」ドンッドンッ
不可 不可 不可 不可 不可
太鼓の達人「なかなか難しいな、これ」ドンッ ドンッ
不可 不可 不可 不可 不可
部下「これ……一番易しい曲ですよね?」
警部「まぁ……本物の和太鼓とゲームはやっぱり違うからな」
和田どん(でも……ボクは幸せだドン!)
―おわり―
34:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 04:21:30.60 ID:uNk3rlDr0
ワロタ乙
35:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/25(土) 04:47:50.52 ID:Sa1Z0R5i0
筐体 をもっと大切にしなきゃって思いました乙
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487955791/
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