1:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:37:50.85
ID:kYvrtNl10
自己満足のための投稿です.
試験的な作品です.
2:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:38:59.60
ID:kYvrtNl10
大潮「朝潮姉さん、身長、伸びた?」
朝潮「えっ?」
大潮は朝潮と背中を並べる。二人共改二になっており、練度の差はそれほど大きくはない。
大潮「満潮、どっちが大きい?」
満潮「朝潮姉さんのほうが、5センチくらい」
大潮「ほらっ! 朝潮姉さん、背、伸びたんだよ!」
朝潮「そ、そう・・・」
荒潮「あらあらお姉さん、私の知らない間に、成長しちゃって」
朝潮「ちょ、ちょっと・・・」
荒潮は朝潮と腕を組む。この行為自体はよくあることだが、身長差を意識すれば、朝潮にとって、また妹達にとって少し照れくさいものに感じられた。
3:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:40:01.60
ID:kYvrtNl10
朝潮「――以上が報告です」
提督「うむ、ご苦労・・・ところで朝潮、ちょっと聞いていいか?」
朝潮「はい」
提督「・・・朝潮、身長伸びたよな」
漣「やっぱりそうですよね! 漣、最初びっくりしましたもん! 改二になって大人びたと思ったら、今度は身長も伸びてきて!」
提督「だよな! 漣と肩を並べていてびっくりしたよ!」
朝潮「は、はぁ・・・」
提督「ああ、悪い悪い。ゆっくり休んで、明日に備えてくれ」
朝潮「・・・・・・」
4:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:41:41.66
ID:kYvrtNl10
夜戦を終えた朝潮が部屋に入る。いつもどおりの、暗い、電気の消えた部屋
大潮「朝潮姉さん!」
朝潮「うわっ、大潮。起きてたの?」
大潮「うん。それより朝潮姉さん・・・身長・・・」
朝潮「えっ?」
咄嗟のことで気が付かなかったが、朝潮には今、大潮のつむじが見える。おおよそ、10センチ程度の身長差である。
大潮「朝潮姉さん・・・どうしたの? 何か変なものでも飲んだの?」
朝潮「そんなこと、全然・・・」
大潮「本当に? 何もしていないのに、こんなふうになるの?」
朝潮「え、えっと・・・最近は何も、うん、近代化改修とか、それくらい。でも近代化改修なんて、よくあることでしょう」
大潮「・・・そう」
大潮は悲しそうな顔で布団に入る。大潮以外の他の妹は皆寝ていた。
5:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:42:11.20
ID:kYvrtNl10
翌朝、いつも通りの時間に目を覚ます。
大潮「朝潮姉さん!」
朝潮「きゃっ! どうしたの、大潮」
大潮「朝潮姉さん・・・立ってみて」
朝潮「え?」
朝潮は嫌な予感を抱きながら、その場でゆっくり立ち上がる。大潮の頭は、昨日の夜よりも低い。
大潮「朝潮姉さん・・・」
荒潮「あらあら・・・もう、からかえないわね」
霰「・・・制服は、きつくないの?」
朝潮「・・・うん。そういえば、大丈夫みたい」
霞「・・・司令官に、相談してみれば」
朝潮「・・・そうね」
7:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:43:18.27
ID:kYvrtNl10
朝潮「失礼します」
提督「おお朝潮って・・・なんかでかいな」
朝潮「はい・・・昨日くらいから、背が伸びるようになって・・・」
提督「うーん、何か心当たりは?」
朝潮「いえ、全く・・・」
提督「そうか・・・服とかは、どうしている?」
朝潮「どうしてか、服はいっしょに大きくなるようで」
提督「・・・そうか。もう少し様子を見よう」
朝潮「・・・わかりました」
8:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:43:59.12
ID:kYvrtNl10
神通「朝潮ちゃん! 動き悪いわよ!」
朝潮「は、はい!」
神通「ほらそこ!」
ドン!
朝潮「ああ、負けちゃった」
神通「しっかりしなさい! ・・・まあ、事情は知っていますが」
朝潮「・・・」
神通「でも、うまく活かせば最高の武器ですよ。身長なんて、自分の力ではどうもできないものですから!」
朝潮「はい、ありがとうございます!」
朝潮は先輩の前で無理やり笑顔を作るが、このことを、どうも楽観的に受け入れることができなかった。
9:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:44:45.86
ID:kYvrtNl10
出撃。作戦自体は成功したものの、朝潮は大破をして帰ってきた。
朝潮「ごめんなさい」
提督「・・・回避能力が下がったようだな」
朝潮「・・・ごめんなさい」
漣「でも、作戦は成功したんだし、いいじゃないですか!」
吹雪「そうですよ! 結果オーライです!」
漣「にしても朝潮ちゃん、大きくなったよねぇ。漣よりも大きい」
吹雪「・・・さ、漣ちゃん」
漣「あっ、そっか・・・ごめん」
朝潮「いえ・・・」
提督「・・・朝潮、今更ではあるが」
10:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:45:36.85
ID:kYvrtNl10
提督はその場で土下座をする。
提督「すまん、朝潮。俺の責任だ」
朝潮「え、えーと、どうしたのですか?」
提督「お前の近代化改修の時、駆逐イ級の瀕死死体を入れてみた」
朝潮「え・・・」
漣「何やってんですか! 本当にクソなんですね!」
吹雪「司令官、何がしたかったんですか!」
提督「すまん、出来心だ。うまく行けば資材の節約になると思って。本当にすまない」
朝潮「あ、そ、それで、どうすれば、元に・・・」
提督「全くわからん!」
漣「このクズ!」
提督「蹴らないで!」
朝潮「・・・・・・」
11:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:46:38.85
ID:kYvrtNl10
漣に蹴られ、足跡のついた制服で提督は起き上がる。
提督「本当にすまない」
朝潮「・・・・・・」
吹雪「本当に、どうするんですか! この調子じゃ、もっと大きくなりますよ」
提督「すまない。ただ、今日はもう遅いから、明日話しあおう。皆、もう戻ってくれ」
漣「じゃあご主人様は、明日までに何か案を考えてくださいね!」
提督「ああ、考えるよ」
朝潮「・・・・・・」
12:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:47:38.92
ID:kYvrtNl10
朝潮は部屋に戻る。すると、部屋の前に大潮が立っている。
朝潮「大潮・・・どうしたの」
大潮「朝潮姉さん・・・」
大潮は朝潮の胸に抱きつく。
大潮「朝潮姉さん、また身長伸びたね」
朝潮「・・・うん」
大潮「私が140くらいだから、お姉さんは160とか?」
朝潮「・・・大潮、もう寝ましょう」
大潮「お姉さん・・・」
16:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:54:42.96
ID:kYvrtNl10
大潮は朝潮に抱きつく。
大潮「お姉さん・・・どこかに行かないで」
朝潮「えっ?」
大潮「私達の元を、離れないでね」
朝潮「・・・何を言っているの?」
大潮「不安なの。朝潮姉さんが、このまま大きくなって、戦艦の人とかと一緒になっちゃわないかって・・・私達と、離れ離れになって、そしてそのまま死んじゃうんじゃって・・・」
朝潮「・・・・・・」
朝潮は静かに、大潮を抱きしめる。
朝潮「大丈夫よ、大潮。私はずっと、皆のそばにいるから」
大潮「・・・本当に?」
朝潮「うん、本当よ」
17:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 21:58:59.80
ID:kYvrtNl10
訓練。キレのある動きで、的に弾を当てる。
神通「調子を取り戻したようね、朝潮ちゃん!」
朝潮「はい。ありがとうございます」
神通「それにしても、大きくなったわね」
朝潮「・・・はい」
神通「その身長を活かして、これまで以上に活躍してください」
朝潮「はい!」
18:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:00:25.17
ID:kYvrtNl10
訓練の直後、朝潮は提督に呼ばれる。どこか不穏な空気を感じながら、執務室へと向かう。
提督「朝潮に、重巡や戦艦並の装備を与えようと思う」
朝潮「・・・はい?」
提督「お前は駆逐艦としてはもったいないほど大きい。故に、お前の艤装をより巨大なものにして、重巡や戦艦並の働きをしてもらおうというわけだ」
朝潮「・・・・・・」
提督「すでに、明石が装備を開発している。朝潮には今日から、駆逐艦のためではない、より高度な訓練を受けてもらいたい」
朝潮「・・・・・・」
提督「以上だ。何か質問はあるか?」
朝潮「・・・いえ。これからも、鎮守府のお役に立てるよう励みます」
提督「素晴らしい戦果を上げることを、期待している」
朝潮「・・・ありがとうございます」
22:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:12:24.19
ID:kYvrtNl10
朝潮はその後朝潮型の部屋に戻り、私物を新しい部屋に移動する。
この時間に、部屋には誰もいない。皆、訓練などで忙しいのだから。
最後の私物を運ぶとき、朝潮はもう一度、部屋を見渡す。もう、戻ることはないであろう、この部屋。
満潮「・・・朝潮姉さん」
朝潮「うわっ、満潮・・・どうしてここに」
満潮「ここ、私達の部屋じゃない・・・それより、それ・・・」
朝潮「・・・うん、私、部屋を移ることになったの・・・。そう! 今度は戦艦として戦えるかもしれないのよ! すごいでしょう!」
朝潮は無理に明るく繕うが、空回りしているのは、満潮の目には明らかだった。
そして、満潮は朝潮に抱きつく。
朝潮の顎の下に、満潮の頭がすっぽり入る。
23:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:13:19.74
ID:kYvrtNl10
満潮「本当に、大きくなったわね」
朝潮「満潮・・・」
満潮「・・・お姉さんの嘘つき。昨日、大潮には、ずっと一緒だって言っていたのに」
朝潮「満潮・・・聞いてたの?」
満潮「当たり前じゃない・・・朝潮姉さんが急にこうなって・・・心配するに、決まってるじゃない」
朝潮「・・・ありがとう、満潮」
部屋の前で、二人は静かに抱き合う。しかし、ゆっくりできるわけではない。
朝潮「・・・ごめんなさい、満潮。私、もう行かなきゃ。大潮には、ごめんなさいって、伝えて。」
朝潮は後ろを振り返らずに、小走りで新しい部屋へと向かう。
その背中を、満潮にはただ見つめることしかできない。
25:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:14:08.91
ID:kYvrtNl10
大潮「嘘つき! お姉さんの嘘つき!」
満潮「しょうがないでしょ! もう・・・しょうがないじゃない」
荒潮「朝潮姉さん・・・」
山雲「本当なら喜ぶところなのにー・・・なんか寂しい」
朝雲「私も・・・」
霰「・・・・・・」
霞「もう! 決まったことはしょうがないじゃない! 心機一転、私達は駆逐艦として、任務をこなすのみ!」
明るく振る舞う霞。
彼女の明るさは不自然であり、顔には悲しみの色が見て取れた。
26:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:15:11.08
ID:kYvrtNl10
清霜「霞ちゃん!」
霞「あら清霜。どうしたの?」
清霜「えへへ、あのね、ちょっと耳に挟んだんだけどね」
霞は、清霜の言おうとしていることが、大体分かった。
清霜「朝潮さん、戦艦になったんでしょ?」
霞「・・・うん、まあ、そうね」
清霜「いいなあ、朝潮さん。背もすごい大きくなってたし」
霞「・・・・・・」
清霜「私もいつか、あんなふうに戦艦になれるのかなあ?」
霞「・・・清霜」
清霜「ん?」
霞は、清霜の手を、両手で優しく握る。
霞「・・・あなたは、あなたらしくしていれば、いいのよ」
清霜「ん?」
そのまま霞は、清霜を優しく抱く。清霜はわけもわからずに、それを受け入れる。
27:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:16:48.74
ID:kYvrtNl10
朝潮「敵艦発見!」
朝潮の弾が、敵の旗艦に命中。その一発で敵は沈んだ。
長門「朝潮、よくやった! もう、こっちには慣れたか?」
朝潮「はい! おかげさまで」
勝利した艦隊は、鎮守府へと帰投する。
駆逐艦として優秀だった朝潮は、戦艦としても、相変わらず優秀だった。
身長も伸びて、今や最高身長だった大和をも、抜かそうとしている。
背は伸びたものの、容姿としては、駆逐艦の頃から変わっていない、未発達な状態であった。
しかしそれがかえって、高火力ながらも身軽な動きを実現していた。
28:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:17:26.45
ID:kYvrtNl10
提督「朝潮、絶好調だな!」
朝潮「ありがとうございます!」
提督「当時はどうなるかと心配だったが、俺には先見の明があったようだな! ハッハッハ」
朝潮「はい!」
長門「朝潮、今後も期待しているぞ!」
朝潮「ありがとうございます!」
長門よりも頭ひとつ大きい体で、朝潮は微笑む。
しかしその微笑みの奥には、暗い影がかかっていた。
鎮守府の役に立つのは、純粋に嬉しい。
しかし、それとは引き換えに失ったものも、大きい。
29:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:18:48.56
ID:kYvrtNl10
霞「朝潮姉さん! 猫背よ!」
朝潮「えっ?」
すれ違いざまに、霞が指摘する。朝潮はゆっくりと、直す。
朝潮「・・・ありがとう、霞」
霞「お姉さん・・・」
今や、霞の頭は朝潮の胸よりも下にあった。
しかし朝潮は、かつてと同じように、霞に接する。
30:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:19:18.14
ID:kYvrtNl10
朝潮「どうしたの、霞」
霞「・・・・・・」
朝潮「・・・ごめん、もう行くわ」
霞「待って!」
朝潮「霞・・・」
霞はただ、朝潮と一緒にいたいと思っただけである。
いきなり、もう手の届かない場所へと行ってしまったお姉さん。
一緒にいたい、以前のように。
しかし、それももう叶わない。
31:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:22:48.10
ID:kYvrtNl10
提督「意を決して、取り組むように!」
「ハイ!」
艦隊全員の声が、響き渡る。作戦決行。
朝潮「作戦を共にするのは、私が移ってから、初めてよね」
霞「どんな時であれ、役目を果たすだけよ」
朝潮「うん、私も一緒・・・そうだ、ちょっと縁起悪いけど」
朝潮はしゃがみ込み、霞に耳打ちする。
朝潮「私を雷撃処分するときは、しっかりとね」
霞「お姉さん!」
朝潮は微笑みながら、出撃した。
作戦を言い渡された時から、不穏に感じていたこと。
そして霞は胸に誓う。
この戦い、負けるわけにはいかない。
32:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:24:01.46
ID:kYvrtNl10
初めて目の当たりにする、朝潮の高火力、高練度。
そして、朝潮自身から放たれる、黒い殺気。
主力として使われている理由を、霞は一目で感じ取った。
鎮守府で、猫背で歩いている朝潮とは、何かが違う。
そして、出撃前の不安は杞憂に終わった。
艦隊は無事に、鎮守府へと帰投する。
霞「・・・朝潮姉さん」
朝潮「はい?」
霞「その・・・強く・・・なりましたね」
朝潮「ありがとう・・・どうしたの? 急に、他人行儀になって・・・」
霞「いや・・・」
すでに手の届かないところにいる朝潮に対して、かつてのように接することが霞にはできなくなっていた。
34:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:38:52.18
ID:kYvrtNl10
朝潮「大潮、今までありがとう! これからは、この1番艦朝潮に任せて!」
大潮「・・・うん、お姉さん、ありがとう」
新しい、駆逐艦朝潮がやってきた。
空いた穴は埋める。当たり前のことだ。
朝潮はもう、ここにはいないのだから。
朝潮「大潮。私の布団て、このあたりで大丈夫?」
大潮「うん、大丈夫だよ」
かつて朝潮が使っていた押し入れのスペースを、また、朝潮が使う。
35:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:39:31.40
ID:kYvrtNl10
自室にて、床に座ってぼうっとしている朝潮。
そこに、同室の大和が話しかける。
大和「朝潮さん」
朝潮「はい?」
大和「なんだか、ぼうっとしているようですが」
朝潮「・・・はい」
大和「戦っている時の、あの殺気漂う朝潮とは、まるで別人のよう」
朝潮「・・・大和さん」
朝潮は、大和に対して、涙を流した。
大和の頭は、朝潮の顎の下にある。まるで姉妹のような身長差。
大和「あら・・・どうしました?」
朝潮「私は、もうダメだと思うんです・・・」
大和「・・・急に、どうしたの?」
36:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:40:14.18
ID:kYvrtNl10
提督の思いつきで、深海棲艦を素材にして近代化改修をした。
それから、朝潮はドンドン背が伸びていった。
結果、今では戦艦として活躍している。
実際に、朝潮は変わってしまった。
戦闘以外の時は、以前の朝潮と何も変わらない。
しかし戦闘となれば、体全体が、敵を殺そうと動き出す。
その動きを、朝潮は制御できなかった。
朝潮「私は・・・怖いんです。いつか、自分が深海棲艦になってしまうようで」
大和「・・・・・・」
朝潮「出撃して、会敵までは意識があります。しかし、それ以降は、全く・・・」
大和「・・・そう」
大和は、朝潮の震える背中をさする。
もう、どうにもならないことである。
37:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:41:12.96
ID:kYvrtNl10
朝潮の意識が飛ぶ回数が、日に日に増えていく。
ある日、朝潮は近づいてきた清霜の胸ぐらをつかみ、そのまま吊るしあげた。
清霜「ひっ! あ、朝潮さん!」
朝潮「・・・・・・」
朝潮は無表情で、清霜を見つめる。
そして、ふっと我に返る。
朝潮「・・・あれ?」
清霜「ご・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい」
朝潮「き、清霜さん?」
朝潮は、今、自分のしていることを知り、清霜を床に下ろした。
朝潮「ごめんなさい、ごめんなさい、清霜さん。私、ぼうっとしていて」
朝潮は清霜に、何度も何度も謝る。そして、自分の危険性を、再確認した。
38:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:41:39.13
ID:kYvrtNl10
朝潮は提督に、このことを相談する。
提督「・・・そうか」
朝潮「はい・・・このままでは、いつか、仲間を傷つけると思います」
提督「・・・お前は主力艦だ」
朝潮「承知しています。しかし、味方にこんな危険因子がいるというのは」
提督「・・・・・・」
提督はしばらく考えて、結論を言い渡す。
提督「お前の好きに、してほしい。きっとそれが、最良の選択だろう」
朝潮「司令官・・・ありがとうございます。今までお世話になりました」
朝潮は執務室のドアをくぐって出て行く。
39:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:42:05.39
ID:kYvrtNl10
大和「・・・本当に、それでよいのですか?」
朝潮「はい。これが、私の最後の望みです」
大和「・・・そう。朝潮さん、立ってみて」
部屋で二人は立つ。大和よりも頭ひとつ以上大きい朝潮。
鎮守府のドアはどこも、朝潮にとっては低いものになっていた。
大和「本当に、大きくなりましたね」
朝潮「・・・はい」
大和「前は、こんなに小さかったのに」
朝潮「・・・はい」
大和「・・・本当に、良いのですね」
朝潮「・・・はい。これが私の、最後のわがままです」
40:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:44:11.38
ID:kYvrtNl10
朝潮「いっけぇー!」
爆発音と共に、的が破壊される。
駆逐艦の訓練。最近着任したばかりの朝潮は、日に日に練度を上げていく。
神通「朝潮ちゃん。素晴らしいわ!」
朝潮「ありがとうございます!」
神通は朝潮の頭を撫でる。
朝潮は照れて顔を赤くする。
これは、神通にとっても初めてのことである。
神通も照れて、顔を赤らめた
大潮「お姉さん、先行くよ!」
神通「あら、ごめんなさい」
朝潮「いえ、ありがとうございます! 大潮! 今行くわ!」
41:
◆zPnN5fOydI 2017/01/06(金) 22:44:37.34
ID:kYvrtNl10
執務室にいる提督の耳に、外からの朝潮の声が聞こえる。
提督「・・・平和だな」
大和「・・・平和ですね」
提督「・・・本当に、やったのか?」
大和「はい・・・彼女の、最後の願いですから」
提督「そうか・・・」
大和「ちなみに、資材は結構入りましたよ」
提督「今はやめてくれ、その話は」
大和「はい、提督」
鎮守府には、いつもと同じ、平和な風が吹いている。
-FIN
45:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/06(金) 22:56:43.40 ID:fEU0FCDeO
乙
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483706270/
- 関連記事
-
Amazonの新着おすすめ
おすすめサイトの最新記事