1:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:17:47.12
ID:TyKn21J40
イカリソウ「う~ん……なんで~?」シガミツキ
アイビー「なんでって、貴女さっきからずっと団長さんに抱き付いてるじゃない! そろそろ変わりなさいよ!」
イカリソウ「でも~陸にいると酔っちゃうから、団長にくっついてないとフラフラしちゃうよぉ。だからぁ、陸にいる間は団長にしがみついちゃうのも仕方ないと思うんだ~」
イカリソウ「それに~……団長にしがみついてると寒さなんて全然感じないんだ~! えっへへ///」
2:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:23:16.29
ID:TyKn21J40
アイビー「なっ……!ずっ、ずるいわよ! 陸酔いなんて聞いた事ないわ! それに私だって!」
アイビー「私と団長さんは永久なる古の契約を結び、力が繋がりし半身……我が身から溢れし不滅の力「ウンシェアゲングリヒ・パーペチュアル」は、私だけだと暴走しかけてしまうわ! 力を抑えるためにも、私は団長さんにしがみついて力の一部を流す事が重要なの!」
アイビー「よって、私は団長さんに抱き付く『権利』があるわ! これは破る事を禁じられ、厳格な十戒で守られた契約なの!」
アイビー「さぁ、そろそろ変わりなさい! じゃないと、私の中の精神のコスモが乱れ、本格的に危ないわ……!」プルプル……!
イカリソウ「ウンシェ……? コスモ……? う~ん、わたしお馬鹿さんだから、アイビーちゃんの言ってる事が良く分からないよ……」ギュウウウウ
アイビー「だ、だから離れなさい! そろそろ変わりなさいったら! 私だって団長さんに抱き付きたいの!」
3:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:24:52.52
ID:TyKn21J40
団長「…………いや、二人とも仕事中はやめてくれないか……。正直やりにくい……」
イカリソウ「ダメだよ団長~! 団長だって、ずっと陸にいると陸酔いしちゃうよぉ。イカリを持ってるわたしが、しっかり支えになってないと大変だよぉ」
団長「陸酔いの感覚は多分イカリソウ独特の物なんじゃないかなぁ……」
アイビー「団長さん! 団長さんが副団長業務で疲れた私を放っておくから、このままじゃ私の内なる不滅の力が暴走しあふれ出し、魔眼華王ブロッサム・グラスの制御も難しくなるわ!」
アイビー「この力で常命なる者達を守る為にも、私の契約者たる団長さんには力の制御に手を貸す義務があるわ!」
アイビー「さ、団長さん! 抱き付くわよ!」
団長「俺も先にこの溢れ出る仕事の山を制御しなきゃいけないんだが……」
4:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:25:56.26
ID:TyKn21J40
アイビー「こうなったらイカリソウちゃん! 団長さんに、どっちに抱き付かれたいか直接決めてもらうわよ!」
イカリソウ「いいよ~。団長、どっちに抱き付かれたい?」
団長「抱き付かれないで仕事に専念させてもらう選択肢はないのか……。そうなのか……」
団長(これはどちらか選ばないと、この2人ずっと終わらなさそうだな……)
団長(どうする? 抱かれ心地はアイビー一択だ。だが……)
団長(正直、アイビーのわがままボディに抱き付かれると、いろいろ我慢しなくちゃいけない! そうなると、この後の仕事に支障をきたすのは間違いない!)
団長(イカリソウなら、イカリがちょっと重いが、この後の仕事への支障は少ないな……)
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/08(木) 00:28:21.69 ID:57uuKyz60
花騎士スレとは珍しいな
6:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:28:48.52
ID:TyKn21J40
団長「う~ん……まず先にイカリソウで良いか?」
イカリソウ「は~い♪」
アイビー「な、何でよ! 納得いかないわ!」ガーン!
アイビー「団長さん! 納得のいく説明を要求するわ!」
団長「えっと……イカリソウは明日から航海に出るらしいし、今日は先に……」
ナズナ「団長さん、失礼します! 再び古代害虫の出現が確認されました!」バンッ!
団長「何だと!? クジラ艇は?」
7:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:31:04.53
ID:TyKn21J40
ナズナ「いつでも発進可能です! 団長様、至急出撃メンバーの編制をお願いします!」
団長「分かった! イカリソウ、アイビーも一緒に来てくれ! というかイカリソウは一回離れてくれ!」ズルズル
イカリソウ「うわ~ん! 引きずらないで~」ズルズル
アイビー「む~……何で私じゃダメなのよ(ボソッ)」
アイビー(でもどちらにせよ、今日は抱き付く雰囲気じゃなくなっちゃったわね……。こうなれば明日、突然抱き付きに行って、びっくりさせてあげるわ!)
アイビー(ふふん、見てなさい団長さん♪)
8:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:33:20.52
ID:TyKn21J40
―――――――――
翌日 騎士団庭園
アイビー(さて……今日こそ、団長さんに抱き付くわよ!)
アイビー(仕事中に行くと迷惑だし、今度は団長さんの休憩時間を狙うわ。イカリソウちゃんはあの海賊船に乗って航海に出たし、今日は心配はないわね)
アイビー(団長さんは呑気そうに散歩してるわね……ふふふ、覚悟しなさい団長さん! 昨日の分まで、たっぷり抱き付いてあげるんだから!)
アイビー(我が永遠に近き時を待たされ、光を求め渇望せし我が闇の抱擁『ウムアルムング・シュヴェルツェ』……とくと味わうが良いわ!)
9:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:36:08.55
ID:TyKn21J40
アイビー「見つけたわよ団長さん! さぁ、契約に則り我が抱擁を―――」
ヤドリギ「だ~~~ん~~~~ちょ~~~~~!!」ドーーーン!!!
団長「うぐぁぁ!? 」
ヤドリギ「団長団長! 自分の今日の活躍、見てたッスか!」ギュウウウゥ
団長「お、おう……骨が痛い……」
ヤドリギ「頑張ったッスよ! 団長、あたし目立ってたッスか!? 」
団長「あぁ、今日のヤドリギは誰よりも目立ってたぞ。文句なしのMVPだな」
ヤドリギ「えへへ/// やったッス♪」ギュッ
10:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:38:59.45
ID:TyKn21J40
アイビー(ま……また先を越されちゃった!?)
ヤドリギ「団長! ご褒美として、今日はずっと抱き付いてていいッスか?」
団長「う~ん……褒美になるのか良く分からんが仕事までなら……」
ヤドリギ「やったッス! 今日はあたしが、団長を征服するッス!」
ヤドリギ「今ならもっと褒めるのも追加して良いッスよ!」
団長「はいはい」アタマナデナデ
ヤドリギ「な、子ども扱いはひどいッス~!」
団長「子供扱いじゃないって。これは純粋にヤドリギの健闘を褒め称えてるんだって」ナデナデ
ヤドリギ「ホントッスかねぇ……。まぁ団長になら悪い気はしないから、騙されてあげるッス♪」ギュッ
11:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:45:12.43
ID:TyKn21J40
アイビー(しかも、中々……どころか、かなり入り込みにくい雰囲気だわ!)
アイビー(お、何を怖気ついてるのよ私! 私はアイビー、この世の全ての命を守る、不滅の力を纏いし誇り高き守護者! この程度の事で怖気ついたりなんて……)
アイビー(……ヤドリギちゃん幸せそう。この雰囲気の中行ってもただの空気読めない女になっちゃうわね……)
アイビー(ヤドリギちゃん頑張ってたみたいだし、今日は譲って、また後日出直しましょう……)トボトボ
12:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:48:39.69
ID:TyKn21J40
ヤドリギ「あれ、アイビーさんじゃないッスか。どうしたんすか?」
団長「おっ、本当だ」
アイビー「き、気付かれた!? け、気配を消した私を補足するなんて流石、純白のパティシエールと名を馳せたヤドリギちゃんね!」
ヤドリギ「何か落ち込んでそうな顔してたけど大丈夫ッスか? 自分で良ければ、何でも相談に乗るッスよ!」
アイビー「お、落ち込んでないわよ! ただ……ちょっと……その……私も……」(ボソボソ)
13:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:49:34.14
ID:TyKn21J40
団長「あっ、もしかしてアイビーもしたいか?」
ヤドリギ「??」
団長「そういえば昨日は副団長だったのに全然構ってやれなかったもんな……」
アイビー「か、勘違いしないでよ! 私は団長さんに構ってほしい訳じゃ、ただ力を制御する為には契約者たる団長さんの力が必要というか、充電が足りないというかそのぉ……」アウアウ
ヤドリギ「えと、つまりアイビーさんは昨日、団長に何かの事情で抱き付けなくて、それで物足りなく団長のところへ来てって事でいいッスよね?」
アイビー「う~……//// 」
14:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:51:28.65
ID:TyKn21J40
ヤドリギ「成程、事情は分かったッス! でも困ったッス……。代わりたいんすけど、一度抱き付いちゃうと中々団長からは離れられないッス……」ギュ∼
アイビー「分かるわ、その気持ち。団長さんに抱き付くと、心地よくて、光に吸い寄せられる闇の如く、中々離れられない物ね」
団長(そうなの?)
ヤドリギ「順番にしても、団長の休憩時間が終わって一人辺りの時間が短くなっちゃうッスよね……そうだ!」さっと団長の片腕に移動
ヤドリギ「それなら、団長を半分こッス! 二人で団長を征服するッスよ!」ギュウウウ
アイビー「い、いいの?」
ヤドリギ「もちろんッス! 『もし あたしの みかたになれば だんちょーの はんぶんを おまえにやろう』ってやつッス!」
15:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:52:21.30
ID:TyKn21J40
アイビー「えっと、団長さんも……」
団長「勿論。それでアイビーが満足するなら」
アイビー「それじゃ、片腕だけ……」ギュッ
ヤドリギ「えへへ、暖かいッスね♪」
アイビー「そうね……片腕だけでも力がみるみる制御出来てきているのを感じるわ! さすが『加護受けし古の聖騎士のシュリクター』ね!」
団長「花騎士団長って事かな?」
16:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:54:16.38
ID:TyKn21J40
団長(それにしても、気軽にOKしてしまったが……)
「団長、また女の子侍らせてる……」ヒソヒソ
「しかも今日は両手に花状態……」ヒソヒソ
「アイビーさんとヤドリギさんのお互いを信頼してる様子と団長さんに甘える仕草! あぁ私も団長さんになりたい! あの二人に挟まれるなんて……むっはぁーたまんねぇっす!! 私も団長さんになって、あの楽園でもふもふぬくぬく出来たら……あ、やばい鼻血出そう……」ブッシャアアアアアアアアアアアアアアアアア
団長(男冥利に尽きる状況だが、ここで女の子二人に抱き付かれているのは流石に目立つ!)
団長(ここで『はい、おしまい!』にするのは二人が可哀想だし、この状態で人目につかない場所に移動すると更にあらぬ噂が立つのは目に見えてる!)
団長(俺がこの視線に我慢すればいいだけだ……頑張れ俺)
17:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:55:23.96
ID:TyKn21J40
アイビー(う~ん……でも、やっぱり片腕だけじゃなくて、全身でも思いっきり『ぎゅ~~!』って抱き付きたいわ)
アイビー(団長さん、明日はオフだったかしら? それなら、明日の朝に団長さんを起こしに行くって名目で行けば、団長さんを独占できるかも)
アイビー(あっ、それに朝ごはんとか作っていってあげれば、二人っきりで食事も出来ちゃうかも……!)
アイビー(……うん、それでいくわよ! 作戦決行は明日の朝! 今度こそ団長さんを思う存分ぎゅ~ってしてやるんだから!)
18:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:56:38.06
ID:TyKn21J40
―――――――――
翌朝 団長のお部屋前
アイビー(さて、団長さんのお部屋にやってきた訳だけれど……団長さん起きてるかしら?)
アイビー「団長さ~ん、今日も新たな太陽が昇ったわ! 休日だからって、あんまり遅くまで寝てるのは良くないわよ! さぁ、お弁当持ってきてあげたから、黎明の聖餐と行くわよ!」コンコン
団長「あ、アイビーか……?あ、頭いってぇ……。助けてくれ……」
アイビー「団長さん!?」
アイビー(団長さん頭痛いって、風邪!? ど、どうしましょ、とりあえず入って看病しないと……!)
19:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:57:49.82
ID:TyKn21J40
アイビー「団長さん、入るわよ! 団長さん、大丈夫……」
ホップ「うえぇぇ~~~~頭痛い。誰か、誰かおしゃけぇぇ……うっぷ」ダキツキ!
団長「あ、アイビー……助かった。水、水を……」ダキツカレ!
アイビー「ナニコレ、ってお酒臭っ!?」
アイビー「ほ、ほら水筒のお茶で良かったらあるわよ! ホップさんも飲んで!」
ホップ「あ!アイビーだ~~えへへ、これお茶割~?」
アイビー「普通のお茶だから! 辺り一面酒瓶だらけなのにまだ飲む気なの!?」
ホップ「うえええ、おしゃけが良い……」ゴクゴクッ
20:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 00:59:08.40
ID:TyKn21J40
アイビー「団長さん、これって一体どういう状況なのかしら……?」
団長「あぁ、話すと長くなるんだが……うぅ、ズキズキする……」
~~~昨日の夜~~~
団長「……ふぅ、今日の仕事も無事終了。さて、そろそろ部屋に戻るか」
ホップ「あ、団長。お疲れ様~。その様子だと、お仕事終わりって所かなー?」テクテク
団長「やぁホップ。その通りだが……」
ホップ「ふっふっふ。ちょうどいいね~♪ 団長、これから……どう?」クイッ
21:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 01:01:21.28
ID:TyKn21J40
団長「これからか……。今日は疲れたし、このまま寝たい所なんだが……」
ホップ「おやや? 良いの~? 今夜のお酒は一味違うよ~?」ガサッ
団長「そ、それは……!?」
ホップ「そう! ベルガモットバレーの土地で育った高級葡萄を使った、限定品のにごりワインよ~。もう時期も終わっちゃうから、今を逃したらしばらく飲めないと思うけどな~」
団長「おぉぉ……!」
ホップ「それにバナナオーシャンの果実酒各種、それにとっておきの大吟醸まであるわよ~! どう? 今夜は二人で盛り上がらない?」
団長「ちょっと待って、その量持ち歩いてたの? 重くないか?」
22:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 01:01:58.70
ID:TyKn21J40
ホップ「重かったわよ~。ここらで中身を減らしとかないと、またこの重いお酒を持って帰る羽目になっちゃうわね……」チラッ
団長「分かった分かった。そこまで持ってきてもらったんだ。それだったら今夜はとことん飲もう」
ホップ「さっすが団長~♪ 話が分かる~! 今夜はヘザーもクチナシも留守で、一緒に飲んでくれる人を探してたのよ♪」
ホップ「いや~団長と飲むなんて久々でテンション上がっちゃうねぇ。それじゃ、団長の部屋でいーい?」
団長「あぁ、構わんぞ」
23:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 01:15:51.72
ID:TyKn21J40
~~~~~
団長「って事があってな……。ついつい飲みすぎてしまって、気が付いたら朝までって感じで……」
アイビー「あんまり長くも深くもなかったわね……。はぁ、全くしょうがない団長さんね。オフの日だからって羽目を外しすぎじゃない?」
団長「うぅ、面目ない……」ズキズキ
アイビー「とりあえず、このお部屋の惨状をどうにかしないとだわ。団長さんは、辛いなら無理しないで休んでて良いわよ?」
団長「いや、アイビーが酒以外の飲み物をくれたおかげでだいぶ楽になった……人に全て任せて汚した張本人がダウンしてるようじゃ申し訳なさ過ぎるからな」
団長「ほら、ホップもそろそろ離れてくれ」
ホップ「えぇぇぇえ~~やらぁ~~」ギュウウ
アイビー「って、部屋の惨状にまず目が行っちゃって気にしてなかったけど、何でホップさん抱き付いてるの!?」
24:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 01:17:58.60
ID:TyKn21J40
団長「いや、酔っぱらって体勢が保ってられなくなったのか。急に抱き付いてきて離れなくなってな。おまけに酒は飲むもんだから服に酒がドバドバかかって……」
アイビー「道理で団長さんが異常に酒臭いわけだわ……これは早く洗濯もしないとダメね。お風呂も入った方が良さそう」
アイビー(でもホップさん夜通しずっと団長さんに抱き付いてたって事よね……)
アイビー(良いなぁ……私も団長さんと一緒に飲んで、酔っぱらっちゃえば団長さんにずっとくっついていられるかしら……?)
アイビー(でも、私すぐに潰れちゃうから、抱き付いてもすぐ寝ちゃったり抱き付く前に潰れちゃうのがオチかしら……。うぅ、こういう時自分がお酒に弱いのが恨めしいわね)
アイビー「ホップさん立てる? まず寝かせた方が良いかもしれないわね……」
団長「ほらホップ。今日は一回寝ないと―――――」ユサッ
ホップ「ゔっ! ゔぇ……うっぷ……ちょっと待ってまずいかも」ギュッ
アイビー「えっ、まさか……!」
団長「ちょっと待って! この状態で吐くな! アイビー、すぐにバケツを……」
25:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/08(木) 01:22:14.43
ID:TyKn21J40
ホップ「無理じょう……げんがい……ウェェェェェェェェェ」レインボー!
団長「ぎゃああああああああ!」
アイビー「きゃあああああ!?」
~~~~~
アイビー(結局この後、部屋の騒音を聞いて入ってきたタチバナさんが、部屋の惨状を見て激怒。お説教とか掃除とか全て片付いた後は、疲れて団長さん一人でお休みモードになっちゃったし、抱き付くとかそういう雰囲気じゃ全くなくなっちゃったわね)
アイビー(うぅ~~……最近ずっと、団長さんに思いっきり抱き付けてなくてもう限界が近いわ……どうすれば……)
28:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 22:43:02.74
ID:H5muU2rt0
―――――――――
後日 街の喫茶店にて
アイビー「という事で、皆の聡明なる知恵を、私に貸してくれないかしら? 指揮者に取り残され哀音の嘆きを響かせる我が魂へ、導きの救済を!」
バルーンバイン「要するに、団長さんへどうやって抱き付いていくか、その方法を考えればいいのですね」
バルーンバイン「風船で空を飛ぶ研究の事や、設計などの事ならともかく、そういった事で力になれるか分かりませんが……アイビーさんが困ってるなら力になれるように頑張りますね」
シャムサクララン「うん。分かった。それでアイビーさんに幸せが来るなら、頑張る」
ベロニカ「面白そうじゃない♪ いいわよぉ、悩める子羊を救済するのは、修道女としてとーぜんの役割だわ」
バルーンバイン(私含め、何でこの人選なんだろう……)
アイビー「助かるわ! 早速、ヴァルハラのその向こうへ到達する為の会議を開始するわよ!」
バルーンバイン「まずは団長さんの状況確認ですね」
バルーンバイン「……思い返すと、本当に、最近の団長さんはいろんな花騎士に抱き付かれたり、抱っこさせられてたりしますよね。この前もハナモモさんやハゼさんが団長さんに抱っこを要求して甘えてるのを見ましたよ」
ベロニカ「あのよく泣いてる青髪の娘も、この前執務室に行ったら団長にくっついて幸せそうな顔してたわねぇ……あまりに幸せそうだったから、ついつい邪魔したくなっちゃったわぁ」
29:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 22:45:03.26
ID:H5muU2rt0
シャムサクララン「人の幸福を邪魔するのは良くない」
ベロニカ「大丈夫よぉ。してないから♪」
シャムサクララン「そっか。なら安心」
ベロニカ(本当は、その後ウサギノオの悪戯にすこ~~~~~~しだけ手を加えてあげて、団長さんが出動せざるを得ない状況を作って邪魔してあげたけど♪)
バルーンバイン「団長さんは控えめに見てもモテモテです。最近めっきり寒くなったのを口実に団長さんにくっつこうとする花騎士で溢れ、団長さんの側にはいつ見ても誰かが抱き付いてたり、団長さんが抱っこしてるような気がします」
バルーンバイン「団長さんに抱き付くの、そんなに良いのでしょうか……」
アイビー「ふっふっふ。団長さんと抱き付いてるとね……すっごく落ち着いて、安心出来るわ! それに全身で団長さんを感じられて、とっても気持ちいいのよ! まるで、万物を受け入れし聖なる揺り籠のようだわ!」
バルーンバイン「そっ、そんなに……ちょっと興味湧いてきちゃいました(ボソッ)」
30:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 22:48:27.66
ID:H5muU2rt0
アイビー「? 何か言った?」
バルーンバイン「あっ、いえ! 何も言ってないですよ、はい!」
ベロニカ「それにしても、あの団長……いつか刺されそうね♪ というか、そろそろ刺されるんじゃないかしら。それはそれで面白そうな展開になりそうだけど」
アイビー「ダ、ダメよ! 団長さんがいなくなっちゃうなんて、そんな事! 耐えきれる気がしないわ!」
ベロニカ「まぁ、何だかんだでこの状況を上手く切り抜けたり躱したり、まとめたりしてるから(まだ)大丈夫だと思うわよぉ」
アイビー「ほ、ほんと……?」
ベロニカ「本当にそう思ってるわよ~」
ベロニカ(普通なら修羅場だらけになって、騎士団の崩壊とか起こってもおかしくない状況なのに、上手くまとめ上げてるわよねぇ。あの団長)
ベロニカ(ギリギリのところで潜り抜けてる団長の疲れ切った苦悶の表情が、その分だけ長く見れるから良しとしようかしら。最後にはダメで騎士団が崩壊して絶望する団長の顔を見れる日が楽しみだわ……♪)
アイビー「ま……万が一そういう事態になっても、団長さんは生命の守護者たるこの私が守って見せるわ!」
シャムサクララン「大丈夫。私も、協力する。団長はみんなの幸福。絶対に消させたりしない」
バルーンバイン「当然です。みんなで力を合わせれば、団長は安全ですよ!」
31:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 22:51:48.40
ID:H5muU2rt0
アイビー「頼もしいわ! 流石、轟音の装具で不幸を払い、至高の幸福を振りまきし稲妻と自由なる飛翔のフラッグ・クーゲルを操り、空を支配せりし者だわ!」
バルーンバイン「あはは、まだ風船で空を自由に飛ぶ事自体は成功してないので、まだ空を支配したとは言えない気がしますけどね……。あっ、店員さん。ホットケーキとチョコレートケーキ、それとパフェの追加をお願いします」
シャムサクララン「……まだ食べるの?」
バルーンバイン「えへへ、少しお腹空いちゃいまして」
シャムサクララン(少し?)
ベロニカ(はぁぁ……/// 協力しあうと誓った3人が、結局団長を守り切れずに表情が絶望で染まる瞬間も見たいわぁ。いっその事、私がもうやっちゃおうかしら)
ベロニカ(いえ、そうするとこの愉悦も終わりになっちゃうわ。もっともっと、団長にはあがいてもらわないと)
ベロニカ(他人の不幸の蜜の味は、しっかり熟せば熟す程、美味しくなるのよ。うふふ♪ 本当に、この騎士団にいると退屈しなくていいわぁ)
バルーンバイン「ベロニカさん、ずっと笑顔ですね」
ベロニカ「何だか3人が仲良くて微笑ましいのよぉ。これなら団長は安心だわって。もちろん、私も団長を守るのに協力するわ」
シャムサクララン「助かる。ありがとう」
32:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 22:54:11.84
ID:H5muU2rt0
シャムサクララン(……でも、実は私も、団長と二人っきりの時はくっ付いてる)
シャムサクララン(団長と一緒にいると、心がとても温かくなってくる。団長とくっついてると、もっと体も心も温かくなって、私の中の全部、団長さんがくれる幸せに満たされていく)
シャムサクララン(でも、この事を今アイビーさんに言ったら、アイビーさん、幸せって気持ちじゃなくなっちゃうと思う。今黙ってた方がいいのかな……)
バルーンバイン「さて、この状況でアイビーさんが上手く団長さんに抱き付く方法……討伐時でケガをした時に団長さんに介抱してもらって、その時とかは……」
シャムサクララン「推奨しない。まず、怪我をする事が不幸。団長も心配する」
シャムサクララン「それに、わざと怪我をするのはもっとダメ。団長、きっと怒るよ?」
バルーンバイン「うっ、そうですよね……」
アイビー「私も団長さんに心配をかけたり、痛いのは避けたいわね……」
シャムサクララン「団長の休憩時間を狙っても、その日の副団長に取られてしまう可能性、高い」
シャムサクララン(私も、副団長の日は、団長の休憩時間はすぐに団長にくっついちゃうし)
アイビー「うぐっ、この前は私が副団長の日だったはずのに……」
シャムサクララン「だから、次の副団長の日が勝負。その時に、予約、する」
33:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 22:57:30.42
ID:H5muU2rt0
アイビー「予約? 新たなる契約をするって事ね!」
シャムサクララン「多分、そう。予約。団長にこの日はずっと抱き付かせてもらうっていう約束を……」
ベロニカ「あら。でも、そうしたら、団長も他の花騎士との約束だらけになっちゃって、結局はあなたが団長さんと過ごす時間も減っちゃいそうねぇ……」
ベロニカ「まぁ、黙っていれば良いけどね。でも、あまり約束を増やしすぎると、他の花騎士の事も約束って言って断る回数も増えると思うし、そこから団長が追究されてポロっちゃう可能性も高いと思うわ」
ベロニカ「そうしたら結局、団長は予約だらけになって、団長予約制みたいになっちゃうと思うけど」
ベロニカ(まぁ、隠し通せたとしても私がバラしちゃうけど)
シャムサクララン「……成程。確かに」
ベロニカ「そんな回りくどい事をするより、手っ取り早い方法があるわよぉ♪」
アイビー「そ、そうなの!? それでその方法は……」
ベロニカ「簡単よ。自分以外の抱き付く女は全て消しちゃえばいいのよ。じゅーりん♪ じゅーりん♪ って」
アイビー「消すって……暴力的なのはいけないわよ! 流石にそこまで病んでないわ!」
34:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 23:02:49.18
ID:H5muU2rt0
バルーンバイン(ちょっとは病んでるの……? 聞いてると、抱き付く事への依存性は結構高そうだけど……)
バルーンバイン(……そこまでハマりこんじゃうほど、団長さんに抱き付くのって癖になっちゃうのかな……)
ベロニカ「それならこれはどう? 夜中に団長さんの布団に入れてもらって添い寝するの。そのままシちゃってもいいかもね♪」
アイビー「添い寝!? シ、シちゃう……」プシュー!
バルーンバイン「……だ、大胆に行きますね」
シャムサクララン「…………」顔真っ赤
アイビー「は、破廉恥なのはいけないと思うわ!」
ベロニカ(あなたの進化後の衣装も十分破廉恥だと思うけれど)
ベロニカ「でも、そうも言ってられないわよ」
ベロニカ「良い? 恋は競争であり、戦争なの。なりふりなんて構ってたら、いつの間にか団長の隣なんて誰かに取られているわ」
ベロニカ「成功すれば、団長を一晩中抱きしめていられるだけじゃなく、上手くいけば関係を一歩先へ進める事も出来るわ。それに、既成事実さえ作っちゃえば、他の花騎士よりも強く出れて多少の融通も効きやすくなるかもしれないわよ」
35:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 23:05:59.53
ID:H5muU2rt0
ベロニカ「アイビー。確かにスプリングガーデンは一夫多妻も認められてるわ。でも、その中でも団長の隣を確保し続けられるのは一人よ。団長との将来も考えるなら、早いうちに他の花騎士より関係を進展させておくのも考えないと」
シャムサクララン(本当にそう……かな? 誰か一人だけしか幸せになれなかったり、一人だけが重点的に幸せを手にするんじゃない、みんなで団長と幸せになる方法はないのかな……?)
ベロニカ「それに、どちらかと言えば団長には今のうちに貴女にゾッコンになってもらって、一夫一妻にしてもらった方がいいと思わない? 団長を永遠に独占できるのよ?」
アイビー「団長さんを永遠に独占……」ポー……
アイビー「で、でも! 拒否とかされちゃったら……」
ベロニカ「自信がないなら、最初は添い寝だけで良いんじゃないかしら。一緒に抱きしめあいながら眠るだけでも、関係を深める事が出来るわよ。しばらく続けてから、頃合いを見てその先へ進めばいいんじゃないかしら」
ベロニカ「団長の昼間の時間を束縛しないから、予約案よりかは周りにバレにくいと思うわ。まぁ、部屋から出るタイミングには気を付けないとだけど……♪」
ベロニカ(良い具合になってきたところで、私が噂を広めて……楽しみね♪)
ベロニカ「理由なんて適当に『怖い話を聞いて眠れなくなった』とかで良いのよ。ついでに怖がる演技もこなしてみせれば、団長は断りにくいじゃないかしら?」
シャムサクララン「それなら、良い物。ある」サッ
シャムサクララン「ウィンターローズにいる、怖い話が得意な花騎士からオススメされた本。どうせなら、演技より本当に怖がって行った方が成功率は上がる。そう思う」
36:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 23:07:54.96
ID:H5muU2rt0
シャムサクララン「貸す?」
アイビー「ふっ……何者をも恐れず、勇猛なる生命の守護者たる私に、たかが怖い本など通用しないわ! ……でも、念のため借りておこうかしら」
ベロニカ「あら、ならその作戦でいくのね?」
アイビー「えっ! えっと……」
シャムサクララン「ファイト」
バルーンバイン「ちょっとエッチな気もしますが……男の人を落とす方法としては間違ってないかもしれませんね」
バルーンバイン「アイビーさん、無理はせず、少しずつですよ」
アイビー(うぅ、なんだかやる雰囲気になってる……!?)
アイビー「……えぇい! 分かったわ! 見てなさい、必ずこの静寂なるヴェットシュピールの夜で団長さんを落としてみせる! オペレーション・ニュクス・ヒュプリーギンよ!」
バルーンバイン「その意気ですよ、アイビーさん!」
バルーンバイン(それにしても、団長さんの抱き心地……私も興味湧いて来ちゃいました)
バルーンバイン(そ、空を飛ぶためには安心感が必要だと思うんです! 緊張した状態で空なんて飛べませんからね!)
バルーンバイン(団長さんに抱き付くと安心感があるって言いますし、ここは空を飛ぶための研究の一つとして、団長さんに今度お願いしてみましょう! こ、こじつけじゃないです!)
37:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 23:10:36.23
ID:H5muU2rt0
シャムサクララン「幸運を」
シャムサクララン(みんなと団長が幸せになる方法……一人が独占すると、他の人が幸せじゃなくなる)
シャムサクララン(かと言って、みんなで団長と幸せになろうとすると、一人辺りの幸せの時間は減ってしまう)
シャムサクララン(団長となるべく一緒にいたい人は、多分不幸を感じる人も出てきちゃうかも)
シャムサクララン(……むぅ。難しい。こうなれば、今度二人っきり。団長に相談。ギュッってくっつきながら、みんなの幸せを二人で考える)
ベロニカ「応援してるわぁ」
ベロニカ(この娘は気付いてないみたいだけど、今回相談したことで逆にライバルが増えてるのよねぇ。シャムサクラランは何か考え込んでるようだし、おそらく団長絡みね)
ベロニカ(うふふふ。本当、愉快だわ。将来の修羅場の種を蒔いてるようで、どうなっていくか想像するだけでゾクゾクドキドキしちゃう♪ 団長、精々たくさん困って苦しんで、私を楽しませてよね♪)
38:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/09(金) 23:12:51.41
ID:H5muU2rt0
今回はここまで!
また近いうちに続きを書きます
39:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/10(土) 06:20:59.51 ID:gnBwS9BlO
乙、シャム可愛いよシャム
ベロニカさんはなんだかんだでいい人だなぁ、歪みまくってるけど
40:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 22:54:33.15
ID:HYPCcdnZ0
―――――――――
その日の夜
アイビー「ついにこの時がやってきたわ……廊下の先へ辿りつけば団長さんの部屋ね」
アイビー(まず最初は添い寝だけ! だ、大丈夫よ! 何も心配する事はないわ!)
アイビー(パジャマは団長さんの部屋で着替えるのも恥ずかしいし、最初に着てきちゃった)
アイビー(これでいいかしら……お気に入りのベビードールは流石に着て歩くのは恥ずかしくて置いてきちゃったわ)
アイビー(念の為、下着は良いのにしたけど……)
アイビー(それにしても、本当に怖すぎるわよあの本! 正直少し舐めてたわ!)ブルブル
アイビー(わ、私は古より受け継がれし華王ブロッサム・グラスの継承者! カタストロフィを阻止せし不死なる生命の守護者アイビー! おばけや幽霊程度、何の障害にも―――)
カタン!
アイビー「ぴぃ!? か、風の音かしら……?」
アイビー(は、早く団長さんの部屋に行っちゃいましょう…! お、怯えてるわけじゃないわ!)トトトトト
41:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 22:58:42.71
ID:HYPCcdnZ0
―――――
団長の部屋前
アイビー(もう後には引けないわ……行くわよ、私! 英霊よ、我が戦を照覧あれ!)
アイビー「団長さ~ん……いる――――」
ガサゴソガサゴソ
アイビー(物音……? 団長さん、何かやってるのかしら?)
アイビー(い、戦を有利に進めるには状況をしっかり把握する必要があるわ! 団長さんもよく『偵察は戦いに置いて何よりも大事。偵察なしでは、灯りなしで暗闇の中を進むようものだ』って言ってるし)コソッ ピトッ
???「団長、今日もぐっすり――――――クスクス」
???「今日も――――しめ―――」
アイビー(お、女の子の声!? 団長さん以外に誰かいるの!?)
アイビー(も、もしかして幽霊……)プルプル
アイビー(いや、まさか……)
――――――ベロニカ『あの団長、いつか刺されそうね♪』
アイビー(団長さんに恨みを持つ誰かが、団長さんを襲いに来たの!? ベロニカさんもああ言ってたし、よく聞こえなかったけど絞めるとか言ってたし……)
42:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:03:05.99
ID:HYPCcdnZ0
アイビー「そ、そんな!? 団長さん!」ガチャガチャ
アイビー(ダメ! 鍵がかかってる!)
アイビー(……させない。もう大切な人を目の前で失うなんて、絶対に嫌!)
アイビー(団長さんは、私が守る!)
アイビー「世界花よ! 栄光の内に散りし八百万の英霊よ! 今こそ我に想い人を守りし力を授けたまえ!」
不死・不滅の力を最大限まで引き出す為の魔道具(という設定)であり、おしゃれ兼武器の紅白のステッキを取りだす。力を抑え込む為の腕のリボンを放り投げ、魔力を込め、構える(設定)
アイビー「開け! 華王ブロッサムグラス! 世界花と我が不滅の顕現たるグングニール! 狂い咲く浄化の花びらの旋風を!」
眼帯を投げ捨て、金に輝く華王ブロッサムグラス(カラーコンタクト)が顕わになる。それと同時にパジャマの腕の部分が弾け飛び、ブロッサムグラスが光り輝く(妄想)
「――――――――咲け! グングニール・ヴァイス!!」
43:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:06:14.44
ID:HYPCcdnZ0
暗唱が終わると同時に、そのステッキを団長の部屋の扉へ振り投げる。害虫の甲殻をも容易く打ち砕くそのステッキは、扉などいても簡単に弾き飛ばした。
???「ひゃっ!? な、なに……!?」カキン!
部屋の中にいた小柄な少女は、持っていた杖のような物でアイビーのステッキを弾く。ステッキはそのまま音を立てて部屋の壁に突き刺さった。
団長「な、何だ!?」ガバッ
アイビー「我が名はアイビー! 全ての命と平和、永遠を守りし守護者! 団長さんの命を狙う不届き者よ! 闇に抱かれ虚無の深淵へと誘われる前に、団長さんの前から消えなさい!……ってトリカブトちゃん!?」
トリカブト「むー……アイビー。危ない……怪我するところだった」
アイビー「何でトリカブトちゃんがここに……まさかトリカブトちゃんが団長さんの命を狙って……」
トリカブト「アイビー。言ってる事がよく分からないかも……」
団長「何が起こったか分からんが……トリカブト、また来たのか」
トリカブト「ん……♪」
アイビー「団長さん、どういう事?」
団長「最近、いつの間にかベッドにトリカブトが潜り込んでる事があってな……。こういう事は良くないって毎回言ってるんだが」
団長「一体いつもどうやって入ってきてるんだ?」
トリカブト「秘密……だよ……♪」
44:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:07:35.34
ID:HYPCcdnZ0
アイビー「それじゃあ、絞めとか、そういう言葉が聞こえたのは……」
トリカブト「分からないけど……抱きしめるとかは……言ったかも。寒いから、団長をたくさんぎゅーってして眠るの……気持ちよくて、すごい好き……///」
アイビー「だからトリカブトちゃんも寝間着なのね……。でも良かった。団長さんの命が狙われてる訳じゃなくて……」
トリカブト「失礼しちゃうの……。団長を殺す理由なんてない」
団長「アイビーも何でそんなことを思ったんだ。それに、アイビーは一体どうしたんだ?」
アイビー「えっと、私は……その……怖くて……(ゴニョゴニョ)」
アイビー「そ、それより団長さん! つまりトリカブトちゃんと毎晩一緒に寝てるって事!? トリカブトちゃんの寝間着のベビードールも随分薄いのだし、まさか、変な事とか……」
団長「いや、何もして―――」
トリカブト「団長、昨日も(寝返りが)激しかった……///」ポッ
アイビー「!?」
団長「!?」
45:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:10:09.38
ID:HYPCcdnZ0
トリカブト「私の上に(寝返りで)乱暴にのしかかってきて、息が凄く近くて……///」
トリカブト「ドキドキして……団長(の匂い)が私に一杯広がって……凄い気持ちよかった……またしよ? 団長」
アイビー「団長さん……! こんな小さい娘に手を出してたなんて……」プルプル
団長「ま、待ってくれ、誤解だ! 俺はしてないぞアイビー!」
アイビー「うっ、ぐすっ……団長さんが……」ペタン……
アイビー「団長さんが性犯罪者になっちゃったぁぁ」ビエーン!
団長「泣くほど!?」
アイビー「グスッ、やだぁ……団長さんが捕まっちゃうのやだよぅ……」グズッグズッ
団長(何か少しよう児退行もしてる気がする!)
団長「えぇい! 聞いてくれ、アイビー!」肩掴み
アイビー「あぅ!? だ、団長さん、顔近っ、近い///」カァァァ
団長「俺はトリカブトに手は出していない! いつも起きたらトリカブトが潜り込んでる事に気付くだけだ! トリカブトが言ってるのは多分俺の寝相の事だと思う!」
アイビー「ホ……ホント……?」
46:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:15:23.39
ID:HYPCcdnZ0
団長「あぁ、神に誓って本当だ」
アイビー「良かった……団長さん捕まらなくて済むんだ……離れ離れにならなくてもいいんだ……グスッ、良かったぁ……///」
団長(やばい、めっちゃ可愛い)
トリカブト「むー、団長……私にも構って」ギュッ
団長(うぉ、後ろから心地よい体重が)
トリカブト「団長……今日も一緒に……寝よ?」
アイビー「ダメよ! 今日の団長さんは私と一緒に寝るの!」
団長(もしかしてアイビーがパジャマだったのはそういう用事だったのか? しかし何でだ……?)
団長「あー……どちらにせよ、部屋の扉壊れちゃったから寒いだろうし、執務室のソファ辺りで寝ようかなぁと考えてたんだが……」
トリカブト「ならこうする……私とアイビーで、団長をむぎゅーってサンドイッチみたいに挟んで眠るの」
トリカブト「でもそれだけだと、まだ寒いかも。だから、みんなで服を脱いで全裸になるの。人肌で温めあいながら眠れば、寒さなんてへっちゃら。きっと気持ちいいよ……♪」
アイビー「ぜ、全裸!?」顔真っ赤
団長「いや、それは流石に不健全な……」
47:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:16:44.94
ID:HYPCcdnZ0
団長(でも裸のアイビーとトリカブトに左右から抱き付かれるのかぁ……うっ、想像したら興奮してきた。し、静まれ俺の体……!)
トリカブト「ふふふ……団長、お顔、真っ赤……♪」
アイビー(トリカブトちゃん、みんなのマスコット的な娘だと思ってたけど……この娘、かなり出来るわ! こんな思わぬ伏兵がいるなんて……!)
アイビー(でも団長さんと裸で添い寝……添い寝……)プシュー!
団長「とりあえず冷静に―――」
コスモス「失礼します団長さん! 先ほど物凄い音や、言い争う声が聞こえましたがご無事ですか!? 扉も壊……れ?」
リンゴ「リンゴちゃんの出番ですかってはうぁぁ!?」
団長「あ」
コスモス「団長さん、これは~……どういう状況で?」
団長「えっと、いやその、複雑な事情が……」
48:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:19:00.06
ID:HYPCcdnZ0
リンゴ(ぺたん座りして、顔を真っ赤にしながら潤んだ瞳で団長さんに肩を掴まれてるアイビーさん、その後ろから抱き付くトリカブトちゃん!)
リンゴ(これは一体どういう状況なのか……その前に!)
リンゴ(トリカブトちゃんのパジャマは黒のベビードール! 幼い身体にミスマッチな大人のベビードールのギャップが、逆に妖艶な魅力をこれでもかと言うほど放っています!)
リンゴ(それからアイビーさん! アイビーさんは露出少なめながら可愛らしい黒パジャマですが、普段付けているリボンや眼帯を外しただけなのに、普段よりお姉さんっぽさが更に増して、貞淑なお姉さんの魅力がムンムンします!)
リンゴ(そしてアイビーさんは何より表情! 潤んだ眼で真っ赤なそのお顔! 大人のお姉さんが不意に見せた弱さみたいな感じでドキドキしちゃいますね!)
リンゴ(その魅力たっぷりのまるで漆黒の天使とも言うべきお二人が、団長さんを凄い近い距離で挟んでいる! むっはぁー! 団長さんになりたい! あの凄い良い匂いしそうで美しさと色気が充満した狭い空間に私も入ってみたい! あぁ、あの空間に入ってたっぷり美少女空間を堪能出来たら! 想像しただけでも……あっ、やばいです)
リンゴ「リンゴちゃんの生涯に一片の悔い無し……」ブシャアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
団長「リンゴ!? リンゴ大丈夫か!? 何かいつも以上に鼻血が凄い事に! あっ、あぁ、部屋も血だらけになっていく! とにかく医務室へ……」
コスモス(これは一体どういう状況なのか……)
コスモス(アイビーさん泣いてたみたいですし、修羅場でしょうか……)
コスモス(団長さんとアイビーさんとトリカブトちゃんのドキドキ三角関係? 団長さんとアイビーさんが清い交際をしている中、団長さんを好きで好きでたまらないトリカブトちゃんが誘惑?)
49:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:25:20.85
ID:HYPCcdnZ0
コスモス(団長さんは我慢を続けますが、遂に耐え切れなくなりトリカブトちゃんに手を出してしまいます。団長さんは、トリカブトちゃんの幼い肢体から受ける奉仕にすっかりハマってしまう)
コスモス(アイビーさんにバレないように情事に及ぶ日々。しかし、遂にアイビーさんに浮気がバレてしまいます)
コスモス(愛する人の不義の現場に出くわしてしまったアイビーさん。彼女は、怒りや悲しみという感情がごちゃごちゃになり、その場に泣き崩れてしまう)
コスモス(泣き崩れたアイビーさんを見て、自分がアイビーさんがいかに大事だったのか思い出した団長さん。団長さんは決死の覚悟でアイビーさんを宥め説得。自分がいかに愚かだったかをアイビーさんに語り聞かせる)
コスモス(団長さんの想いが通じて顔を上げたアイビーさん。ですが、団長さんの後ろから『私を……捨てるの……?』とトリカブトちゃんの悲痛な声が聞こえ、そっと後ろから軽くもいつもより重く感じる体重がそっとかかる)
コスモス(果たして団長さんはどういった選択をするのか……! アイビーちゃん編、トリカブトちゃん編で分岐出来そうですね)
コスモス(いや、いっそ『二人まとめて俺の物になれよ。一生俺から離れられなくしてやる』って二人を調教していく鬼畜団長編もアリですね!)
コスモス(これは捗る! どんどんアイディアが湧いてきますよ! これだけで何本でも書けそうな気がしてきました! 冬はこれで決まりです! 早速帰って執筆作業をしなきゃ!)
コスモス「インスピレーションが止まらないので一回部屋に帰らせて頂きます! それでは!」ピューン!
団長「この状況で帰るの!?」
50:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/10(土) 23:28:11.16
ID:HYPCcdnZ0
ハナモモ「失礼しますわ! 団長さま、先ほどお部屋で凄い音がして、何かあったのではと思って来ましたわ! 一体どうしたんですの……って何ですの、この状況!?」
団長「あぁぁぁ、どんどんカオスになっていく……」
アイビー「一度流れ出した混沌の渦は止まる事なく、万物を飲み込み荒れ狂う……ってやつね」
トリカブト「もうすっかり、みんなで寝れる雰囲気……なくなっちゃった……あうぅ……」
――――――――
アイビー(結局、この後は場が収まっても、すっかり添い寝とかそういう雰囲気じゃなくなっちゃったわ)
アイビー「今日のオペレーション・ニュクス・ヒュプリーギンは失敗ね……。明日再度チャレンジしようにも、団長さんは各国の団長が集まる団長会議とかで一日いないのよね……」
アイビー「明後日は遠征任務……遠征任務中に何とか団長さんと二人っきりを狙えないかしら?」
アイビー「遠征任務中に二人っきりになる機会をうかがう……オペレーション・ヘルメスよ! 寂寥の旅の果てに東雲の光を! 今度こそ団長さんに……!」
53:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:05:54.80
ID:5tSVQldU0
―――――――――
団長「では、俺は村長と話してくる。みんなは各自休息を取るなり自由に過ごしてくれ。では、解散!」
ベルガモットバレー郊外の村。長らく害虫による襲撃がなかった比較的規模が大きく、温泉等の観光地としても有名な村であった。が、先日、害虫の群れによる襲撃事件が起きた。
駐在していた花騎士達の迅速な対応や善戦もあり、村への損害は出なかった。だが、大型の害虫も多数含まれており、現地戦力だけでは撤退へ追い込む事が精一杯だった。
ベルガモットバレー上層部は、害虫による再度の襲撃の前に、村周辺からの害虫の群れ掃討作戦を立案。
ブロッサムヒルの対害虫国家連合軍に援軍が要請され、団長が率いる騎士団に白羽の矢が立ったのだ。
作戦は騎士団や現地花騎士団の奮闘により滞りなく終了。村の周辺からは害虫は一掃された。
そして、作戦を終えた騎士団は万が一に備え村に一泊。後に帰還する事となっていた。
アイビー(……さて、この時を待っていたわ!)
アイビー(解散直後の今なら団長さんはフリー!今日は買い物や温泉に行く花騎士も多いだろうし、行くなら今ね! 多分お仕事はあるけど、手伝ってあげてそれからぎゅってすればいいわ!)
アイビー(団長さんは物資の集積所で村長さんとお話し中……あっ、終わったみたい)
アイビー(さぁ行くわよ! 今度こそ、アビスの底へ!)
54:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:08:20.73
ID:5tSVQldU0
アイビー「団長さん! この後って用事―――」
カラスウリ「団長! 今日の物資の中にプリンがないよ! 約束が違うじゃないか!」ツカツカ
アイビー(くっ! またわずかに出遅れたわ! 流石に対抗馬は出てくるわね……)
アイビー(でも、男嫌いのカラスウリさんじゃない。どうしたのかしら?)
アイビー(……普段から『男には頼らない』って言ってるカラスウリさんなら大丈夫かしら? ちょっと様子を見てみましょう)
団長「あれ? そんなはず……」ペラッ
団長「……本当だ、ないな。確かに申請したような気がするんだが……」
カラスウリ「任務後のプリンを楽しみにしてたのに、酷いじゃないか! プリンはボクの生き甲斐なのに!」
カラスウリ「プリンがないと仕事の疲れが全く癒えないよ! こうなれば団長。ボクと一緒にプリンが売ってるお店を探しに行こう」ダキッ ギュウウウウウウウウウウ
アイビー(なぁぁ!?)
団長「いや、俺には仕事が……って痛い痛い! きつく締め過ぎだ!」
カラスウリ「これは団長への罰だよ! 今日のボクは、団長から離れるつもりないからね!」
55:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:09:50.13
ID:5tSVQldU0
アイビー「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
アイビー(うぅ、普段はそんな素振りを見せなかったから本当に油断してたわ。まさかここにも伏兵がいるだなんて)
カラスウリ「!?」
カラスウリ(み、見られた見られた見られた)ギュッ
アイビー「団長さんにも機関より与えられし解放の任務があるわ! それを邪魔する者は私が許さない!」
アイビー「というか離れなさい、離れなさいったら! 別に団長さんにくっつく必要はないでしょ!」
カラスウリ「こ、これは寒いから団長の体で暖を取ってるんだよ! ボクのプリンを忘れた団長への罰で仕方な~くやってるだけ!」
カラスウリ「それに仕事って言うなら、花騎士の士気を保つのも団長としての立派な仕事だと思うよ!」
カラスウリ「ボクは楽しみにしていた約束のプリンがない事で士気がガタ落ち。これじゃあ、万が一また害虫の襲撃があった時に影響するかも」
団長「あれ、確かにそんな気もしてきたな……」
56:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:13:04.45
ID:5tSVQldU0
アイビー「くぅ! でもカラスウリさん! 貴女たしか『女の子扱いしないで』って言ってたわよね……? 今の団長さんにくっついてる姿は凄い女の子らしいわよ……?」
カラスウリ「こ、これは……正直団長には別に女の子扱いされても……」ゴニョゴニョ
カラスウリ「えっと……ボクは確かに女の子扱いはイヤだけど、時と状況によってはたまには女の子扱いされたい時もあるし、そもそもボクは女の子だし……」ギュウウウ
アイビー(め、面倒ね……この子……)
アイビー「とにかく! 団長さんのお仕事の邪魔をするのはダメよ! 団長さん、一緒にお仕事を片付けるわよ!」
アイビー「試練を乗り越え更なる高みを目指す事こそ、我ら選ばれし解放の使徒には必要なんだから!」グイッ ギュゥゥ
カラスウリ「いや、コレは譲れないよ! 団長、プリンを一緒に買いに行く時間くらいあるよね?」ギュゥ
団長(左右から柔らかな感触が! 喜んでいいのか胃を痛くしていいのか!)
団長(絶対嬉しい状況なんだろうけど、本気で喧嘩し出しそうだし止めないとな……)
団長「二人ともまずその辺に……」
カラスウリ「むぅぅ! ……あれ、アイビーって近くでよく見てみると……凄い肌が綺麗だね」
アイビー「えっ、そうかしら? ……ふふん、カラスウリさんも良い眼をしているのね」
57:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:17:03.84
ID:5tSVQldU0
カラスウリ「何か良い石鹸とか使ってるの?」ズィ
アイビー「我が不死なる契約の加護を受けし体には、高貴なるサングイスが流れているわ! だから手入れなんて必要ないのよ!」
アイビー「……本当はちょっと気を使ってるけど……って、ちょっと近くないかしら……?」
カラスウリ「……ちょっと良いかな?」ツツー
アイビー「ひゃあ! 何するの!?」バッ!
カラスウリ「いや、本当に綺麗な肌してるなって思ってね。それにとっても柔らかい」
カラスウリ「良いスベスベプニプニ肌だね。赤ちゃんみたい」サワサワ
アイビー「ちょ、何か触り方がやらしいわよ……まさか『男は嫌いなんだ』ってそういう事なんじゃ……!」
カラスウリ「違うよ! ボクはただ、純粋に女の子の柔らかい肌が好きなだけだって!」スベスベモミモミ
カラスウリ「……だめだ、我慢できない! アイビー、もうちょっとだけ、触らせてもらってもいいかな?」ガバッ
アイビー「やめっ! やめてったら! 私はノーマル、ノーマルなの!」
団長「おぉ……これはこれで眼福……」
アイビー「って、団長さん、見てないで助けなさい! 助けなさいったらぁ!」
58:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:19:11.93
ID:5tSVQldU0
団長「おっ、おう。そうだな」
団長(もう少しだけ見ていたかった……)
団長「あー……話を戻すぞ」
団長「まぁ、プリンを買いに行く時間くらいならある。プリンの件は俺の不備もあるし、まずは菓子屋を探しに行ってみよう」
カラスウリ「うんうん♪ さすが、団長♪」パッ
団長「その後は……アイビー、手伝ってもらえるなら、一緒に仕事をしてもらってもいいか?」
アイビー「はぁ……はぁ……ふふっ」
アイビー「とーぜん、我が力が無きゃよね! ただ団長さん、プリンを買いに行くの、私もついていっていいかしら?」
カラスウリ「なっ……!?」
アイビー「私も壮烈なる戦いで魔力を使いすぎて消耗したわ。次の戦いに備える為に魔力の供給が必要よ! つまり私も疲れたし、甘い物が食べたい気分だわ、団長さん!」
アイビー(ベロニカさんだって恋は戦争って言ってたし、これくらい攻めても良いわよね?)
59:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:22:44.92
ID:5tSVQldU0
団長「勿論構わないぞ。仕事を手伝ってもらうんだ、どうせなら奢ってやる」
アイビー「ありがと♪ 団長さん!」
カラスウリ「むむむむ……それだったら、団長! ボクも仕事手伝うよ!」
団長「いいのか? そんなことしなくても、プリンは俺の不備だし奢るぞ?」
カラスウリ「ボクはプリンさえあれば文句はないし、特にやる事もないからね。頼ってくれていいよ!」
団長「分かった。そういう事ならよろしく頼む」
アイビー「むぅー……」
アイビー(やはり来るわね。でも、まだ三人なら、二人っきりになって思いっきり抱き付くチャンスをうかがう事は出来るわ。今は雌伏の時よ)
団長「そうと決まれば早速行こう。ここら辺に菓子屋は……まぁ歩いてれば見つかるか」
カラスウリ「観光地だし、そういうお店も多いはずだよ! それじゃあ、罰の離れないの刑を継続して――」
団長「う~ん、今更な気もするが、ここで抱き付かれて移動するのは不味いかもしれんな。討伐を終えた花騎士達なら兎も角、仕事があるはずの団長の俺があんまりそういう姿を大衆にに晒すのはまずい」
団長(それに、街や村だと、あの騎士団は団長が花騎士を侍らせてると噂される危険性もあるしなぁ)
60:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/13(火) 02:25:12.61
ID:5tSVQldU0
カラスウリ「む、それもそうだね……団長に抱き付けないのは残念だけど―――っていやいや、全然残念じゃないよ! 抱き付くのは嫌だけど暖が取れなくなって寒いなぁーって!」
アイビー「それに、外で抱き付きながら歩いてると、女の子な姿がもっといろんな人に見られちゃうかもしれないわよ~?」
カラスウリ「それは同じ団の花騎士じゃなければ―――って、そうだね! いやぁ、ボクに対する誤解が広まっちゃうところだったよ! うん!」
アイビー(何かちょっと、カラスウリさん面白くなってきたわね。体触られるのは勘弁だけど)
アイビー(さっきの団長さんの話もあるし、今抱き付くと迷惑になるだけ……我慢……我慢よ私……!)
62:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:38:16.18
ID:fSnXBQO50
~~~~~~~
カラスウリ「んぅ……プリン風呂ぉ……えへへ」ムニャムニャ
団長「随分遅い時間になっちゃったな……」カキカキ
アイビー「プリン探しに手こずったり、害虫を見たって報告の確認に言ったら鹿だったりで、取り掛かるの自体が遅くなっちゃったものね……」
アイビー(おまけにカラスウリさんとは牽制のし合いで、結局団長さんと二人っきりになる隙をうかがえなかったわ!)
団長「冷静に考えれば温泉地に売ってるのは和菓子ばかりで、プリンとか洋菓子系は少ないよな……」
団長「誤報は、長らく害虫の襲撃がなかった村だったんだ。警備隊も気が張って神経質になってるんだろうな。まぁ、気持ちは分かる」
アイビー「そうね、でも有限なる終局の幻想に浸りすぎるのも良くないわ! だから、これくらいで良いのかもしれないわね」
アイビー(ところで……)
アイビー(カラスウリさんは寝ちゃったし、やっと団長さんと二人っきり―――あふぅ)
アイビー「ふわぁ……」
団長「あはは、アイビーもそろそろ眠いか」
63:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:39:16.23
ID:fSnXBQO50
アイビー「あ、あくびじゃないわよ! これは気が抜けた事による魔力の漏えいというか……」
団長「それあくびじゃないのか……? まぁ、時間も時間だ。アイビーも寝た方がいいな」
アイビー(うわぁぁん、折角チャンスが来たのに! 私ったら何て馬鹿なの!)
アイビー「でも仕事残ってるじゃない! まだやれるわ!」
団長「ここまで手伝ってくれれば十分だ、ありがとう。アイビー」
アイビー「せめて団長さんが寝るまでは……」
アイビー(そうすれば添い寝作戦がもう一度……)
団長「だが、討伐任務の後にそのまま仕事を手伝ってもらってる事自体、結構無茶をさせてる。そろそろ体を休めてくれ」
団長「寝なきゃ明日に支障をきたす。これは団長命令だ」
アイビー「うぐぅ……」
団長「カラスウリは……ここで寝かせたままも可哀想だな。ほら、起きろ~」
64:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:40:11.95
ID:fSnXBQO50
カラスウリ「う~ん……プリンが崩れちゃうよぅ……」ムニャムニャ
団長「ダメだ、起きんな。仕方ない……」ヒョイ
アイビー「おっ、お姫様だっこ……!」
団長「この方が安定するからな。歩いてる内に起きてくれるだろう」
団長(後、おんぶは胸が背中に当たって悪い気がする)
カラスウリ「むにゅ……うふふっ、団長~♪」ギュッ
アイビー「……モテモテね~、団長さん?」ムスーッ
団長「普段のカラスウリも、もう少し素直になってくれればなぁ……起きたらまた『女扱いしないで!』って怒られそうだ」
団長「さて、部屋の前まで送る。今日は本当にありがとうな、アイビー」トコトコ
団長「……しまった、この状態じゃ扉が開けられん! 助けてくれアイビー!」オヒメサマダッコ—
アイビー「団長さん……」アキレ
65:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:42:57.59
ID:fSnXBQO50
――――――――――
翌日 遠征任務後
ブロッサムヒル騎士団本部
アイビー(団長さんのペン、借りっぱなしだったわ)トコトコ
アイビー(団長さん、帰還後にすぐ上に報告行かなきゃいけないって言ってたけど、まだいるかしら……?)
アイビー(それにしても、一日中移動はやっぱり疲れるわね……執務室から声? また先客……?)キキミミ
ナズナ「団長様、遠征任務お疲れ様でした!」
団長「ありがとう。今回も大した被害なく終われてよかったよ。現地の花騎士団もだいぶ強くて助かった」
ナズナ「ところで団長様、もしかして任務先で花騎士同士が喧嘩したりとかしました?」
団長「……あ~、したかも」
ナズナ「それで心配の声が届いていて……」
団長「すまん。俺の監督不届きだ……。そうだな、まだ緊張が張りつめている村で、あまり良くない行動だった」
アイビー(うっ、私達の事かしら……)
ナズナ「あまり怒ってる様子ではなかったですが、皆さんの様子には団長様も気を付けてくださいね」
66:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:44:46.47
ID:fSnXBQO50
ナズナ「もしかして……団長様絡みですか?」
団長「原因の一端は間違いなく俺だな……」
ナズナ「やっぱり! 団長様団長様♪ 実のところどうなんですか?」
団長「何が?」
ナズナ「団長様はたくさんの花騎士に慕われていますが、実際のところ誰と誰が気になるとか、全員好きだとかそういう所です!」
団長「うっ、そういう話か……気になるのか?」
ナズナ「恋バナは乙女の花であり蜜です! たまには、こういう話もどうでしょう♪」
アイビー(団長さんの本命……!?)
アイビー(こ、怖いけど気になるわ!)
団長「う~ん……男としては嬉しい状況なんだろうけど……」
ナズナ「あれれ……何かお悩みの様子ですね……」
ナズナ「分かりました! 団長様のお悩み解決も団長補佐の役目です! 団長様、何でも話してみてください!」ズイッ
団長「た、楽しそうだな、ナズナさん……」
67:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:46:08.76
ID:fSnXBQO50
団長「何と言うか……俺自身がどうしたらいいか分からなくて、結局いつも場を濁したりとかしか出来なくて、申し訳がないんだ」
ナズナ「ふむふむ」
団長「俺は騎士団長で、花騎士に手を出すのは好ましくない。団の悪評にも繋がる。下手に一人に傾注すると、団長は花騎士に平等であるべきという規則も崩してしまいかねん」
団長「上から提案された日替わりでの副団長交代も、多くの花騎士に副団長経験を積ませる以外にも、そういう理由で導入しただろう?」
ナズナ「そうですね……ところで、気になる人はいるんですね!」
団長「茶化すとやめるぞ」
ナズナ「あぅ……ごめんなさい」
団長「……それに、まだ多感な時期の花騎士だって多い。その中には恋に恋する花騎士だっているんじゃないかなって」
団長「ただでさえ男性が少なく、日ごろ害虫と命のやり取りをしてる環境だ。恋をしようと焦って、俺に対する親しみの感情を恋と勘違いしてしまう子だっているだろう」
ナズナ「あ~……ハナモモさんとかはそのタイプですね。恋そのものに憧れているというか……」
68:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:48:27.73
ID:fSnXBQO50
団長「その子達に勘違いさせたまま、相手に応えてしまうのは、勘違いを利用するだけなような気がして気が引ける」
団長「かといって、正面からそれを説明するのもなぁ。そういうのは自分でいつか気付いていくものだ」
ナズナ「でも、中には本気で団長様に恋している花騎士だっていると思いますよ?」
団長「それはとても嬉しいし、俺が花騎士との交流を通して築けた信頼の賜物だと思ってる」
団長「だからこそ、団長だからどうするべきかと考えて、結局何も答えられず場を濁すだけの自分が不甲斐ない。彼女達との築いた信頼を無下にしているんじゃないかって」
団長「結局、そうやってウジウジ悩んでグルグルしてるだけなんだ。情けない……」
ナズナ「う~ん……団長様は『団長』に縛られすぎかもしれませんね。端的にいいますと、真面目過ぎです!」
ナズナ「真面目なのは良い事ですが、団長様も潰れちゃいますよ?」
ナズナ(まぁ、そんな真面目な団長さんだからこそ、いろんな花騎士に正面から真面目に向き合ってくれて、みんな心を開いたのかもしれませんが……)
団長「……そうかもしれんな。騎士団の花騎士と上手くいかなくて悩んでる団長だって多いのに、贅沢な悩みだったかもしれん」
団長「花騎士のみんなと上手くやれているなら、それでいいのかもしれないな」
ナズナ「女職場で女の子と上手くいかない程、辛い事はないですからね……」
69:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:51:09.49
ID:fSnXBQO50
ナズナ「あんまりすぐに手を出してしまうタイプの騎士団長も困りますが、団長様はもっと『ハーレムだぜグヘヘヘ』くらいに思った方が良いかもしれません。そうした方が気持ちは楽になると思います」
団長「いや、それは不味いのでは?」
ナズナ「団長補佐のわたしがこういう事を言うのは、本当はいけないかもしれませんが……」
ナズナ「確かに上層部には花騎士と団長による騎士団内恋愛を快く思ってない人もいます」
ナズナ「……ですが、そんな事はどうとでもなります! 実際、花騎士と付き合ったり、結婚している団長はたくさんいます」
ナズナ「団長だからこうしなければならない、ではなく『団長様自身がどうしたいのか』を考えてください。自分の本当の考えや想いを殺して理想の団長像だけを追い求めると、いつか必ず限界が来ます」
ナズナ「花騎士より先に、導く立場の団長様自身が潰れないようにしてくださいね?」
ナズナ「そして、団長としてではなく、団長様自身が、後悔のしない選択をするようにしてください」
団長「団長としてではない、俺個人としての意思か……」
ナズナ「……って、ごめんなさい。何か説教みたいになっちゃって……」
団長「いや、ありがとう。目が覚めた気分だ」
団長「後は俺自身が答えを出す事だと思う。もう一度、よく考えてみるよ」
70:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:52:25.28
ID:fSnXBQO50
ナズナ「はい、そうしてください!」
ナズナ「……それで、団長様は、誰が気になるのです?」
団長「結局それは聞いてくるのか……」
ナズナ「気になりますから♪」
ナズナ(まぁ本当は、『多くの花騎士に実戦経験を積ませる為』と編成をよく入れ替える団長様が、唯一ほとんど外さない花騎士がいるので、なんとなく想像はつくんですが……)
団長「それは……あっ、そういえば、そろそろ報告に行かなければ」
ナズナ「あっ! 逃げましたねー!」
団長「勘弁してくれ……時間が迫ってるのは事実だし……とりあえず、はい。これ書類」
ナズナ「全くもう、団長様……あれ?」パラッ
団長「どうした?」
ナズナ「足りません」
団長「……ほんと?」
71:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:53:36.06
ID:fSnXBQO50
ナズナ「はい。討伐害虫の種類と余剰物資関係の書類が……」
団長「あっれー……おかしいな。鞄の中にあるかな」ガサゴソ
団長「あっ……」
ナズナ「どうしましたか? 団長様」
団長「届かなかったプリンの申請書類、あった……」
ナズナ「……交代制副団長、せめて書類整理とかデスクワークの補佐がしっかり出来る人限定で回した方がいいかもしれませんね……」
団長「俺もそんな気がしてきた……」
団長「とりあえず、言われた書類はあった。これで全部か?」
ナズナ「はい、大丈夫です! ではわたしは行きますね! 団長様も、報告に遅れないようにしてくださいね?」
72:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:55:24.79
ID:fSnXBQO50
団長「あぁ、了解だ」
ナズナ「最後に……」
団長「?」
ナズナ「たまには私の事も、構ってくださいね?」ウィンク
ナズナ「それでは団長様、失礼しますね!」バタン
団長「……本当、ナズナさんには敵わんな……」
~~~~~~
アイビー「団長さん……」
アイビー(団長さん、凄い悩んでた……)
アイビー(……みんなのアプローチが団長さんを悩ませたり罪悪感を与えるなら、私だけでも団長さんへのアプローチはやめて、身を引くべき?)
アイビー(団長さんに抱き付いたり甘えられなくなるのは辛いけど……団長さんの苦しみが少しでも和らぐなら……)
アイビー(それに、あの時みたいに大切な人がこの世からいなくなるって訳じゃない。団長さんはそこにいて、私は遠くからでも見てられる)
アイビー(私は闇なる守護者アイビー。影闇に溶け、団長さんを護る……それでいいじゃない……)
73:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:56:27.75
ID:fSnXBQO50
アイビー(でも、明日の副団長は私。せめて明日……最後に明日くらいは団長さんを……)
アイビー(って、ナズナさん来ちゃうわ! ど、どうしましょう……無理がありそうだけどここしか!)トトッ! サッ!
ガチャ
ナズナ「……あら?」
アイビー(私は影私は暗闇私は月影)鉢植えの陰
ナズナ(……アイビーさん? 何をしているんでしょう……)
ナズナ(先ほどの話、聞かれてましたかね?)
ナズナ(……アイビーさん、きっと団長さんは……)
ナズナ(……頑張ってくださいね、アイビーさん!)グッ! トコトコ
アイビー(行った? 嘘でしょ、バレなかったわ)
アイビー(何か最後ガッツポーズみたいなことしてたけど、何だったのかしら)
74:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:58:05.09
ID:fSnXBQO50
アイビー「それじゃあ……」
アイビー「団長さん、失礼するわ!」ガチャ
団長「おぉ、どうした? アイビー」
アイビー「昨日の共闘により共鳴せし剣の返還を忘れていたわ! さぁ、受け取りなさい!」
団長「あっ、そういえば、ペンを預けたままだったな」
団長「わざわざ届けに来てくれたのか。ありがとう、アイビー」ニコッ
アイビー(団長さんが、この笑顔を私に向けてくれるのは、今日か明日が最後になるかもしれないのよね……)ズキッ
アイビー「ところで団長さん? 明日の副団長は私だったわよね?」
団長「あぁ、そうだな」
アイビー「なら、その時は私に思いっきり構いなさい! 良いわね?」
団長「直球だな」
75:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/15(木) 23:59:34.51
ID:fSnXBQO50
アイビー「団長さんに構ってもらいたい気分なの! じゃないと、私の士気は精神の深淵まで落ち込み、二度と湧き上がる事なく封印されてしまうわ!」
団長「士気の話を持ち出されると弱いな……」
団長「分かった。明日は俺達の騎士団は遠征任務明けで仕事も少ない。明日はアイビーの為に時間を使おう」
アイビー「ふふふっ……言ったわね!」
アイビー「団長さん! 約束よ!」
団長「あぁ、約束だ」
団長(なんだ? 何だかアイビーの様子が……)
アイビー「それじゃあ、団長さんはこの後まだお仕事でしょ? 私は部屋に戻って、この不朽なる身体を休める事にするわ!」
アイビー「団長さん! また明日!」バタン
団長「あっ、あぁ……また明日な」
団長(杞憂だといいんだが……)
76:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 00:11:39.76
ID:7XQf75da0
今回はここまで
そういえば補足なんですが
「スプリングガーデンは一夫多妻も認められている」については、ゲーム本編で春庭での結婚についてはっきり言ってる所が見つからなかった為、公式小説一巻の「スプリングガーデンの男性は一夫一妻制と一夫多妻制を選択できる」って設定を今回は使っています。
一夫多妻の記述が出てきた時に書くべきでした。申し訳ないです。
でも嫁ハナモモのキャラクエを見てると、(一夫一妻?)って感じがしてきますね。よく分からない。
では、また近いうちに続きを書きますね。
77:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:34:43.41
ID:7XQf75da0
これ以降、アイビーのキャラクエのネタバレ要素含みます(一番最初に書くべきでした、ごめんなさい……)
ネタバレ等嫌な方はご注意ください
78:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:36:14.66
ID:7XQf75da0
――――――――――
アイビー(ついにこの時がやってきたわ! 今こそ永きに渡る聖戦もラグナロクを迎え、我は新たなる守護の化身へと開花する!)
アイビー(……そうね、これが最後よ。今まで団長さんに抱き付こうとする度に横やりが入って、団長さんに甘えられなかったわ)
アイビー(団長さんの心労は軽くしたいけど、このままでは終われないわ。今日という日を存分に堪能して、私は明日への新たな自分を切り開く!)ガチャ
アイビー(…………えっ?)
ランタナ「ふっふっふ! だんちょ! 今の私は誰にも止められないっ!」
ランタナ「今日こそ、だんちょをゆんゆんするのだぁー!」ダキダキ
ペポ「ランタナちゃん! 団長さん迷惑してるよ、やめようよぉ……!」
団長「朝から凄い疲れるな……一先ず報告が終わったなら離れてくれ」
ランタナ「へっへっへ、そいつぁ無理なお話ですぜぇ、おやっさん!」
ランタナ「ランタナはお泊り警護任務から帰ってつかれたぁ! ねむい! 主にぃぃ……さむい!」
79:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:37:20.12
ID:7XQf75da0
ランタナ「だんちょは寒くて震える薄幸の美少女ことランタナちゃんを温める義務があるのだ!」
団長「なぁ、俺ってみんなから湯たんぽ代わりにされてる?」
団長「ってうわぁぁ、本当に齧るな!」
ペポ「あぁぁぁぁごめんなさいごめんなさい団長さん」
団長「ペポにやってくれ!」
ペポ「団長さん!?」
ランタナ「う~ん……だんちょはペポの味しないね!」
団長「そりゃそうだ!」
アイビー「団長……さん……」
アイビー(また……また……)
80:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:38:29.95
ID:7XQf75da0
ペポ「でも団長さん。今日ってお仕事少なめでしたよね? この後ってご予定とかありますか?」
ペポ「近くに可愛いおもちゃ屋さんが出来たんです! この後ランタナちゃんと一緒に行こうって話してて!」
ランタナ「そーいう事! だんちょ、今日は離さないよ~?」
アイビー(また……邪魔され……)
アイビー(今日こそは……せめて今日こそは団長さんと二人っきりで……団長さんに抱き付いたりくっ付いて過ごせると思ってたのに……)
アイビー(せめて……最後の今日くらいは……)
アイビー(約束も……したのに……)ジワッ
団長「今日は……って、アイビー!?」
アイビー「……グスッ……」
団長(しまった、ランタナに絡まれてて完全に気付かなかった……!)
ペポ「ア、アイビーさん?」
アイビー「団長さん、今日、約束して、グスッ、したのに」グスグズ
81:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:40:25.57
ID:7XQf75da0
ペポ「あわわわわ、これもしかして私達、やっちゃった……?」
ランタナ「見たいだじぇ……うぅ、胸がひゅんひゅんするのだ」
団長「アイビー、これは……」
アイビー「うっ……うぅ……団長さんの……団長さんのばかぁぁぁぁぁぁぁ!」ダッ! タッタッタ……
団長「アイビー!」ガタッ
団長「すまん二人共、しばらく席を外す!」
ペポ「はい! 行ってあげてください団長さん!」
ペポ「書類整理くらいは出来ますから、ここは任せてください!」
ランタナ「さぁ往くのだ、勇者だんちょ! 蔦姫はきっと待っている!」
ペポ「ランタナちゃんも反省しようね?」
ランタナ「わ、分かってるよぅ」
団長「……すまない、おもちゃ屋はまた今度、みんなで行こう!」ダッ!
82:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:41:31.62
ID:7XQf75da0
ペポ「アイビーさん……心配だよぅ。何があったか分からないけど、突然泣き出しちゃうなんて」
ランタナ「うにゅ……明日、謝らないとだね」
ランタナ「でも、アイビーは勇者だんちょがいれば、きっと何とかなりそうな気もするじょ!」
ランタナ「だから今はアイビーの事は任せて、私達に出来る事をしちゃお、ペポ太郎!」
ペポ「……うん! そうだねランタナちゃん! 早速書類整理を……」
ランタナ「その前に……だんちょがいなくなったから、この齧り欲求をどこにぶつけたらいいんだぁー!」
ランタナ「こうなればしょうがない! ペポを齧る!」ガブッ
ペポ「きゃー!! やーめーてーよぅ、ランタナちゃーん! 書類逆に散らばっちゃうからー!」
83:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:45:30.75
ID:7XQf75da0
~~~~~~~
団長「……ダメだ、完全に見失った。流石にアイビーは足が速い……」
団長(ここ最近、アイビーは何度も俺の元に来たが、全くと言っていいほど構ってやれなかった)
団長(今度こそって約束した矢先に、他の花騎士を構ってる様子を見せつける……傷付いて当然だ)
団長(俺がアイビーの気持ちを、もっと早く考えてやれば……)
団長「……アイビーとの約束を破るのは、これで二度目になるのか」
団長(子供達と一緒に遊ぶ約束を破った俺を、アイビーはずっと待っていてくれたっけな……)
団長(……こんな俺でも、アイビーはまた迎えを待っていてくれるだろうか……?)
84:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:50:25.95
ID:7XQf75da0
―――――――
ブロッサムヒル
子供達の遊び場となっている場所
アイビー「はぁ…………きっと幻滅してるわよね、団長さん」
アイビー(突然怒って怒鳴って出てって……傍から見たら、ただのヒステリック女じゃない)
アイビー(団長さんは報告に来たランタナちゃんやペポさんと話してただけだし、そのまま待ってれば、二人っきりの時間を作ってくれたかもしれない)
アイビー(なのに、二人と楽しそうに話してる所を見たら、今日も団長さんと一緒になれないんじゃないかって考えて、止まらなくなって……団長さんを傷付けて……)
アイビー「……今日はあのマセガキ達もいないのね」
アイビー(もしいたら、一緒に遊べば少しは気が晴れたかしら)
アイビー(……こうしていると、孤独感が嫌でも増してくるわ。団長さんにも嫌われて、またあの時みたいに一人に戻って……)
アイビー(……今日が終わったら、団長さんとは距離を置く事は覚悟していたのに、やっぱり凄く辛い……)
アイビー「うぅ……団長さん……」ナミダメ
85:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:52:53.74
ID:7XQf75da0
トットットッ
???「うふふ、だ~れだ?」パサッ
アイビー「あぅ!?」メカクシ
アイビー「誰って、その声は、ささささササさサ、サクラしゃん!?」
サクラ「あらあら~、バレちゃったわね~」パッ
サクラ「アイビーちゃん、おはよう~」
アイビー「なななななな、何でサクラさんがこんなところに……!」
サクラ「配達のお手伝いしてたら、アイビーちゃんの姿が見えたのよー」
サクラ「何か悩んでるようだったから、声かけちゃったわ~」
サクラ「私で良ければ、相談に乗るわよ~?」
アイビー「サクラさんに相談に乗ってもらえるなんて、そんな畏れ多い事……!)
アイビー「配達の途中だったみたいですし、わざわざ私の為に時間を割いてもらうなんて申し訳なさ過ぎますぅ!」
86:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:54:14.32
ID:7XQf75da0
サクラ「大丈夫よ~。これはウメちゃん宛の配達だから、ウメちゃんなら事情を説明すれば分かってくれるわー」
アイビー「で、でも……」
サクラ「泣きだしちゃいそうな後輩を放っておくほうが、私は辛いわ。アイビーちゃん……私の為だと思って、相談に乗らせて?」
アイビー「くぅ、流石サクラさん……後光が射して見えるわ……! 正に聖廉なる微笑みの天使……!」
アイビー「私も……サクラさんみたいだったら……」
サクラ「うふふ、団長さん絡みね?」
アイビー「なう!?」
サクラ「アイビーちゃんの表情を見れば分かるわ~、団長さんと何かあったの?」
アイビー「じ、実は……」
87:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:55:39.79
ID:7XQf75da0
~~~~~
アイビー「――――という事があって……」
サクラ「そうだったのね……」
サクラ「ねぇ、アイビーちゃんは本当にそれでいいの?」
アイビー「えっ……?」
サクラ「団長さんから身を引いて、後悔しないかしら?」
アイビー「それは……」
サクラ「アイビーちゃんが団長さんの事を凄く好きなのはとってもよく分かったわ」
サクラ「それなら、尚更自分を犠牲にしちゃダメよ~」
アイビー「でも、私が行けば、また団長さんは悩んで……」
サクラ「好きな人に甘えたり構ってもらいたいのは、人として当然よ~」
88:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:57:45.91
ID:7XQf75da0
サクラ「それを無理に抑えつけていると、いつか絶対に限界がくるわ」
サクラ「その時、アイビーちゃんは、潰れちゃったり……少なくとも、あまり良いとは言えない状態になっちゃうと思うわ」
サクラ「団長さんと今までのように接しられなくなって、本当に耐えられるのか。アイビーちゃん自身が一番分かってるんじゃないかしら……?」
アイビー「……。はい……」
サクラ「それに、正直な話、アイビーちゃんが一人身を引いたところであんまり団長さんの状況は変わらないわ。団長さんって、本当にたくさんの花騎士に好かれているもの」
サクラ「あんまり変わらない状況の中、アイビーちゃんが潰れちゃったら……団長さんは今以上に悩む事になるわね」
アイビー「団長さんが、今以上に悩んじゃう……」
サクラ「これは結局、団長さん自身がたくさんの花騎士とどういう風に向き合い、付き合っていくか。団長さんはどうしたいのか、団長さん自体が決めるしかないの」
サクラ「それにアイビーちゃんが負い目を感じる必要なんて全くないのよ~」
アイビー「でも、私はどうすればいいんでしょうか……」
89:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/16(金) 23:59:40.66
ID:7XQf75da0
サクラ「アイビーちゃんは、ただ自分に素直に行動すればいいの」
サクラ「団長さんだって、嘘で塗り固めたアイビーちゃんより、素直なアイビーちゃんの方が見たいはずだわ~」
サクラ「アイビーちゃんの想いが、団長さんの考えや決断を一歩前進させる事にも繋がるかもしれないしね」
アイビー「どういう事です……?」
サクラ「うふふ~♪ 団長さんが迎えに来た時は、余計な事なんて考えないで、ありのままのアイビーちゃんで出迎えてあげなきゃだめよ?」
アイビー「で、でも私、団長さんを傷付けちゃって……あの時みたいに迎えに来てなんて……」
――――「アイビィィィィーーー!!!」
アイビー「団長さん!?」
サクラ「あらあら、もう来たみたいね~」
アイビー「どうして……団長さん……来てくれて……!」ポロポロ
90:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 00:01:25.65
ID:A4l9o6xi0
サクラ「うふふ、だって私達の団長さん」
サクラ「特に……アイビーちゃんの惚れた団長さんだもの~」
アイビー「迎え……また、迎えに来てくれた……!」
サクラ「アイビーちゃん。私はそろそろ配達に戻るわね~」
サクラ「きっと大丈夫よ~。それじゃあ……頑張ってね、アイビーちゃん」ナデナデ テクテク
アイビー「ありがとうございます、サクラさん……!」グスッ
タッタッタッタッ
団長「アイビー、ここにいてくれたか……」
92:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 21:32:06.39
ID:A4l9o6xi0
アイビー「団長さん……」
団長(アイビー、やっぱりさっきまで泣いていたのか……)
団長「アイビー……本当にすまない」
団長「俺はアイビーの気持ちを全く考えてやれなかった」
理由はあれど、アイビーを傷付けたのは事実だ。
目の前の少女を泣かせてしまった、その事実が重くのしかかってくる。
アイビー「…………」
アイビーの瞳は、いつもの強さと不敵さは消え去り、未だ潤んでいて今にもまた泣き崩れてしまいそうだった。
理由を問い詰められ、あの時のように糾弾するような目線を向けられていた方が、まだ楽だったかもしれない。
目の前の少女を崩してしまいそうな原因を作った自分が、ただただ不甲斐なかった。
93:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 21:39:57.75
ID:A4l9o6xi0
アイビーは団長を見つめた後、ゆっくりと団長の方へ歩き出した。
団長(ぶたれるか……いや、そのまま素通りされる可能性だってあるか)
団長(俺はそれだけの事をした。どんな結果でも受け入れるさ……)
だが、アイビーが団長の前に到達すると、想像していたものとは別の感触が団長を包んだ。
アイビー「…………団長さん!」ムギュッ
アイビーは団長の前へと来ると、そのまま団長へと抱き付き、両手で包み込んできた。
柔らかであたたかい体が団長に押し付けられ、涙で湿った顔はそのまま団長の胸へと埋められる。
アイビー「……やっと捕まえたわよ、団長さん」ギュウ
団長「アイビー……」
アイビー「私、ずっとこうしたかった……。団長さんにギュッて甘えて、思いっきり抱き付きたかった……寂しかった……!」
94:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 21:44:38.22
ID:A4l9o6xi0
団長「……あぁ、ごめん。ごめんな……」
アイビー「団長さんが謝る必要ないわよ……団長さんは花騎士みんなの相手をしなきゃいけないのは分かってるし、仕方ない事だわ」
アイビー「分かってるのに、寂しくて、破裂しちゃいそうで、今日も一人で暴走して……」
アイビー「でも……また迎えに来てくれたのね。団長さん」
団長「もしアイビーがまだ俺の事を待っていてくれるなら、ここしかないと思ってた」
団長「ここじゃなくたって、アイビーが迎えを待っていてくれるなら、どこへだって迎えに行ってやる」ギュウ
アイビー「……そうね、団長さんは、そういう人よね」
アイビー「ねぇ……団長さん」ギュウウ
アイビー「私、団長さんの事が好きよ」
95:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 21:48:48.80
ID:A4l9o6xi0
団長「……アイビー。それは……」
アイビー「勿論、私の気持ちは恋に恋した訳でも、恋を勘違いしてる訳じゃないわ」
団長「……! 聞いちゃったのか……」
アイビー「ごめんなさい……昨日、団長さんに会いに行くときに聞いちゃって……」
団長(それじゃあ、昨日様子がおかしかったのも……)
アイビー「両親が目の前で死んで、帰る場所だった所も失って……」
アイビー「あの時からいくら時間が過ぎても、花騎士になって害虫からみんなを守れるようになっても、私には誰も迎えに来てくれる人や隣にいてくれる人はいない、ずっと一人のまんまなんだって……空虚感や寂しさは消えなかったわ」
アイビー「このままずっと、胸の喪失感を抱えて生きていくんだと思って、諦めてた」
アイビー「でも、団長さんに出会って、私に向き合ってくれて、話を聞いてくれて、私の隣にいてくれて、帰る場所を作ってくれて、私が一人の時に迎えに来て、一緒に帰ってくれて」
アイビー「今までの私に、とって当たり前だった胸の穴が、団長さんが少しずつ埋めていってくれて、過去に囚われたままだった古い私を壊してくれて……」
アイビー「そしたら、新しい私は、胸の穴の大部分が団長さんで埋まっちゃって、団長さんがいないと生きていけなくなっちゃったじゃない。責任、取ってもらうわよ?」
96:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 21:53:38.32
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アイビー「……決して、私だけを見て他の女の子を見ないでって事じゃないの。他の女の子がいて、何番目だって良い」
アイビー「ただ、私の側にずっといてほしい、私に団長さんの傍にいさせてほしい、離れないでほしい」
アイビー「もう一人は嫌……寂しいのは嫌なの……」グスン
団長「アイビー……」
団長「……すまない。団長として、今アイビーに答えを出す事は出来ない」
アイビー「っ……!」
抱き付くアイビーの腕に、縋るように少しだけ力が込められる。
団長「俺は団長だ。それも、花騎士への平等という気持ちと、慕ってくれる部下の想いを無下にしたくないという気持ちの間で揺れ動き、ウダウダグジグジ悩んでる情けない団長だ」
団長「俺は、今なお団長としてどうすればいいのか答えが出せていない」
団長「俺はどうするべきか、それに自分の答えを出せるまで団長として返事をするわけにはいかない」
アイビー「そう……」
97:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:19:29.17
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団長「だから、団長として、ではなく『俺自身』で返事をさせてくれ」
アイビー「えっ……?」
団長「アイビー、これは団長じゃない、俺自身の願いだ」
団長「君が許すなら、俺の傍にいてほしい」
アイビー「団長さん……? それって……!」
団長「正直に言うと、俺は団長としてアイビーに初めてあった時、また変わった女の子がうちの騎士団に来たと思っていた」
団長「だが、その不死者や超越者を気取る裏の、過去の事を知る度に、このまま過去の傷を隠すように、無理して強がった態度を取り続けると、絶対に限界が来ると心配するようになった」
団長「初めはそういった心配心で、なるべく見守れるように編成からは外さずに、注意深く目を向けていた」
団長「だが、アイビーと接し、アイビーの事をもっとよく知り、過去を乗り越えようとする強さを知って、何より増えていく笑顔を見てる内に、どんどんアイビーの存在は俺の中で大きくなっていったんだ」
団長「いつの間にか、もう大丈夫と確信しても編成から外せなくなったり……アイビーから離れられなくなっているのは俺の方だったのかもな」
団長「アイビー、俺の傍にいてくれないか? 君が良いなら、いつまでも」
98:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:23:47.97
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アイビー「本当にいいの……? 負担になるから身を引いたりとか、離れなくてもいいの?」
団長「何だ、そんな事考えていたのか?」
団長「そんな事しなくていい。むしろしないでくれ」
アイビー「私、少し重いわよ……? 絶対に団長さんを離さない……それこそ、死んでも離れないわよ?」
団長「どんと来いだ。全身で受け止めてやる!」
アイビー「団長さん……団長さん……!」ギュウウウ
アイビーは目蓋の端に光る物を浮かべると、団長の胸に顔をうずめて泣き出してしまった。
団長「……ここ数日、寂しくさせて本当にごめんな」
アイビー「本当よ……次寂しくさせたら許さないんだから……!」
アイビー「……団長さんは、私を寂しくさせた罰を受ける必要があるわね」
団長「……そうだな。アイビーを寂しくさせたのは事実だ。償えるなら、俺に償わせてほしい」
99:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:32:58.93
ID:A4l9o6xi0
アイビー「団長さんには呪いを受けてもらうわ。古より伝わりし、多くの魔力を秘めた束縛の呪いよ」
アイビー「この呪いは非常に高度で複雑な刻印魔術よ。見られている状態では出来ないわ!」
アイビー「団長さん、目を閉じなさい!」
団長「分かった、こうだな」
アイビー「そうよ。そのまま、良いっていうまで、目を開けちゃダメだからね」
そして、暗闇の中でアイビーが少しだけ動く気配がし、その直後
チュッという僅かな音と共に、団長の唇に、柔らかな感触が押し当てられた
驚いて目を開けると、頬を上気させたアイビーがこちらを見つめていた。
アイビー「……これで団長さんには、私から一生離れられない呪いの刻印が刻まれたわ。団長さんは我が永遠の愛の情念昂る焔の蛇にしがみつかれ、団長さんの心をもっと浸食し、二度と解放される事は無いわ!」
100:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:36:42.55
ID:A4l9o6xi0
団長「成程……だが、甘いなアイビー」
アイビー「えっ……?」
団長「俺は数多の加護受けし聖騎士を束ねる団長だぞ? その程度じゃ、俺を束縛など出来ん」
団長「俺を束縛するには、もっとこの呪いを強力なものとしないといけないな」グイッ
アイビー「だんちょ……ムグッ!?」
そのまま、団長は少し強引にアイビーの唇へと自分の唇を押し当てる。
アイビー「んんっ……」
アイビーは初めこそ驚いた様子だったが、すぐに身体の力を抜き、団長に身を任せる。
そして二人は、さっきよりも長く、口づけを交わした。
団長「……慣れないことはするものじゃないな」カァァ
アイビー「本当よ……。団長さん、お顔真っ赤よ?」クスクス
団長「し、指摘しないでくれ……。だが、これで呪いは更に強力なものとなったんじゃないか?」
アイビー「えぇ。これで、この呪いは完全なものとなったわ! これで、団長さんは私から離れる事も、私が団長さんから離れる事も出来なくなったわ!」
101:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:39:18.49
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アイビー「ずっと離さないわよ。団長さん……もう、寂しくさせないでね。お願いよ?」ギュウウ
団長「あぁ、約束する」ナデナデ
甘えるように抱き付いてくるアイビーの頭をひとしきり撫で、あの時の約束の言葉を紡ぎ出した。
団長「一緒に帰ろう、アイビー」
アイビー「……えぇ! 一緒に帰るわよ団長さん! 今日はまだ始まったばっかり……一日中、抱き付いてあげるわ!」ムギュウウ
アイビー「えへへ……あったかい……」
アイビー「とっても安心するわ……。ありがとう、団長さん」ニコッ
102:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:42:02.67
ID:A4l9o6xi0
―――――――
騎士団庭園
アイビー「ぎゅ~、ぎゅう~♪ あぁ……落ち着くわぁ」ギュウ~~
団長(流石に庭園のベンチで対面で抱き合ってるのは目立つな。明日噂が広まるのは確実だが……アイビーの幸せそうな顔見てると、どうでも良くなってくるな)
ランタナ「アイビーとだんちょ、仲直り出来たみたいだね!」
ペポ「良かったぁ……。でも、凄い大人な雰囲気です……///」
バルーンバイン「かれこれずっと、ああやってベンチで抱き合ってますもんね……/// ここが庭園だって忘れてそうです」
ベロニカ「良いじゃない、好きにさせておきなさいな」
ベロニカ(だけど、こんな所で抱き合っちゃって……明日から他の娘のアプローチがもっと激しくなりそうね)
ベロニカ(恋が成就した直後に激しく妨害に合い苦しむ姿が楽しみね……。ふふっ、精々あがきなさいな団長♪)
ホップ「そうだよ~。後はお若い二人にお任せってね~♪」グビグビ
103:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:43:49.93
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シャムサクララン「ホップさんも若いよね。……って、また飲んでる」
シャムサクララン「私もそれには賛成だけど……団長。今日お仕事。……大丈夫?」
ナズナ「大丈夫です! 最近、団長様はお仕事続きでしたし、今日はお休みという事にしてあげましょう!」
カラスウリ「大丈夫なの?」
ナズナ「はい。華霊石150個くらい頂きますが」
シャムサクララン「えげつない……」
ナズナ「じょ、冗談ですよー! 1日くらい、団長補佐権限で私がパパッとお休みにしちゃいますよ!」
ナズナ「という事で、今日は団長様とアイビーさんは二人っきりにさせてあげる方向で……」
イカリソウ「え~、団長~……」
トリカブト「団長……私もギュッてしたい」
カラスウリ「二人ほど反対者がいるようだけど」
ナズナ「あらら、困りましたね……」
104:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:48:44.03
ID:A4l9o6xi0
ヤドリギ「お待たせッス! ケーキが出来上がったッスよー! いろんなケーキたっくさん作ったッスから、みんなで食べようッス!」ガラガラ
サクラ「ホットケーキも出来たわよ~。みんな~、お茶にしましょう~?」
ペポ「わぁ~♪」
ホップ「おっ、いいねぇー! よ~し、今日はシャンパンで一足早いクリスマス気分を味わうわよ~♪」
ホップ「たくさんお茶会でケーキ食べて、その後に今度は宴会!っていうのも悪くないかもね~♪」
ナズナ「ほらっ、お二人も食べて元気出しましょう?」
イカリソウ「うぇ~ん……団長~~」モグモグ
トリカブト「くすん……あっ、このケーキ……美味しい」キラキラ
ヤドリギ「気に入ってもらえて良かったッス! 自分、ケーキ作りは得意なんッスよ!」
カラスウリ「プリンケーキはあるかな?」
ヤドリギ「モチロンッス! みんなの好みはあらかじめ調査済みッスよ!」
105:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 22:53:13.33
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バルーンバイン「うぅ、最近また食べ過ぎでお胸が膨らんできてしまって、控えてるのに……」
ベロニカ「あら、食べないの? このケーキ、凄い美味しいわよ? 流石、騎士団で一番のケーキ職人であるヤドリギが作ったケーキだけあるわ」
ベロニカ「すっごいクリームがふわふわ……生地のしっとり感とイチゴとブルーベリーのハーモニーが絶妙ね。見なさい、このクリスマスをイメージしたシュガークラフトも可愛いじゃないの」
ベロニカ「こっちのホットケーキも良いわねぇ。しっとりモチモチでたっぷ~り甘いメープルシロップもよく合うわぁ。クリームも乗せて……美味しい♪」
バルーンバイン「むぐぐぐぐ……こうなれば、今日は食べます! これを食べない方がきっと後悔します! 減量は明日からです!」
ベロニカ「いいの? あなた、食べ過ぎでお胸が膨らむのが悩みなんじゃないの? ここで食べたら、またお胸が膨らんじゃうかもしれないわよ? そうしたら、お空を自由に飛ぶ夢がまた一歩遠ざかっちゃうわね」
ベロニカ「本当に食べちゃっていいの? ねぇねぇ? いいの? 後悔しない? 自分にそうやって言い訳して……そんな調子だと明日もきっと自分に甘えて食べちゃうわね」
ベロニカ「……う~ん。でも本当に美味しいわぁ、これ♪」モグモグ
バルーンバイン「う、うぅ……うわぁぁぁぁん! ベロニカさんがいじめますぅぅぅ!」
ベロニカ(快感……///)ゾクゾク
シャムサクララン「やめてあげよ……?」
106:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 23:01:37.02
ID:A4l9o6xi0
ランタナ「いよぉぉぉぉし、ランタナちゃんもケーキを食べるぞぉぉぉ! なんと! カボチャケーキもある!」
ランタナ「これはもう、ペポとどっちが美味いか比べっこするしかないね! と言う事でペポ三次郎! 齧らせるのだぁぁ!」カプッ
ペポ「きゃぁぁぁ!やめて、ケーキ食べさせてよぉ! もう! ランタナちゃぁぁん!!」
~~~~~~
団長「アイビー。さっきからずっと庭園でこのままだが、これでいいのか? 折角だし、二人で買い物とか……どこかに出掛けても良いんだぞ?」
アイビー「そんなの嫌よ。こうやって正面から団長さんに抱き付いて歩くのなんて大変じゃない。今日はずっと、こうやってくっ付いていたいの。離れたくないんだもの♪」ギュウウ
107:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 23:03:31.74
ID:A4l9o6xi0
アイビー「団長さん、大好きよ!」
108:
◆iOAo2zMQ6. 2016/12/17(土) 23:04:47.18
ID:A4l9o6xi0
これで終わりです。
読んでくれて、ありがとうございました。
110:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/17(土) 23:19:04.89 ID:4ihZVGkXO
乙
とても良かった、花騎士SSもっと増えてほしい
元スレ
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