1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:31:18.46
ID:FnjdjSFpo
乙雅三を本にした露伴。
露伴「ふむふむ……こいつの名は『乙雅三』」
露伴「電話したヤツに間違いないようだな」
露伴「――ん!?」
「近頃、背中に変なヤツがとりついた。『チープ・トリック』と名乗っている」
露伴「こ、こいつッ! まさか……スタンド使いかッ!」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:32:44.21
ID:FnjdjSFpo
露伴「一体どんな能力なんだ!?」ペラ…
「能力はしゃべるだけ」
露伴「しゃべるだけ……だと?」
露伴「パワーもないようだし、大したスタンドじゃあないな……」
露伴(他のページを読んでみても、特にぼくに敵意や悪意はないようだ)
露伴(こいつに家の修復を任せて問題はなさそうだが……)
露伴(念のため、この露伴には攻撃できないと書いておくか)サラサラ
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:34:06.91
ID:FnjdjSFpo
乙「……ん?」
乙「あれ、わたし、どうかしてましたか?」
露伴「いや、なんでもない」
露伴「さっそく打ち合わせを始めたい。焼けた部屋を見て、修復費用を見積もってもらおうか」
乙「かしこまりました!」ニコッ
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:37:57.66
ID:FnjdjSFpo
……
……
乙「この焼け具合からですと……二千万は見てもらわないと」
露伴「二千万!?」
露伴「冗談じゃあないぞッ! 建て直した方がマシなんじゃあないかッ!」
乙「そうおっしゃられても……」
チープ・トリック『ね? 二千万で妥協しとこ? ケチってもいいことないって、ねっ』
露伴「う~む、そうだな。二千万でお願いするか……」
露伴(――ん? 今なにかこの設計士の声ではない声がしたような……)
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:39:37.53
ID:FnjdjSFpo
乙「ご安心下さい! 見違えるようにしてごらんにいれます!」
露伴「分かったよ。じゃあ二千万で――」
チープ・トリック『ところで、今何時?』
露伴「今? 今は昼の三時だな」
チープ・トリック『三千万で商談成立! ねっ』
乙「ではお見積りは三千万ということで、契約に入らせていただいてよろしいでしょうか?」
露伴「ああ、かまわないよ」
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:42:35.86
ID:FnjdjSFpo
乙「では、この契約書にハンコを……」
露伴「ああ――」
露伴「ちょ、ちょっと待ったッ! やっぱり三千万というのは高すぎるんじゃあないかッ!」
乙「ええっ、そ、そんなッ!」
チープ・トリック『チィッ! おしい!』
露伴(やっぱりそうだ……ぼくがボケてるんじゃなけりゃ、見積もり金額は二千万だったはずッ!)
露伴(いつの間にか三千万に……!)
露伴(たしか、さっきのは……落語の『時そば』を真似た手口だ……)
露伴(そうか、あの乙雅三の背中にいる小さなスタンド……あれのせいだッ!)
露伴(あいつのささやきで、ぼくの調子が狂わされているんだッ!)
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:45:21.43
ID:FnjdjSFpo
露伴「三千万なんて金額じゃあ、ぼくは契約しないッ! 他の建築士を探すッ!」
チープ・トリック『じゃあさ、いっそ四千万でいいよね? ね?』
チープ・トリック『家を建て直すんだもん……ケチケチしてたら、またすぐ壊れちゃうもんねっ』
乙「そうですとも! ここは前より豪華にする勢いで改装を……」
露伴「ふざけてんじゃあないぞッ!」
露伴「さっきまでは二千万だったはずだ! 二千万でなければ、契約はしないぞッ!」
乙「……お」
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:48:21.42
ID:FnjdjSFpo
乙「終わりだよ……わたしはもう終わったんだ……」
乙「四千万で仕事を引き受けてもらえないと……」
乙「わたしはもう終わりなんだよォォォォ――――ッ!!!」
露伴「お、落ち着けよ……。悪かったよ……! ちょっと言いすぎたよ……」
チープ・トリック『値切るなんてやめよ? ね?』
チープ・トリック『ポコチンついてるんだから、男らしくドーンとお金出そ?』
露伴「分かったよ……四千万でいいよ……」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:51:11.41
ID:FnjdjSFpo
露伴「!」ハッ
露伴(まずい……まずいぞ)
露伴(この設計士の背中についてるスタンドの話術で、どんどん値がつり上がっていく!)
露伴(『ヘブンズ・ドアー』で乙雅三に命令して安く見積もらせるのは簡単だが……)
チープ・トリック『おい露伴、まさかスタンド使って値切るなんてマネはしないよね?』
チープ・トリック『岸辺露伴ともあろう者が、そんなズルみたいなことしないよねっ?』
チープ・トリック『だってぼくらはただしゃべってるだけなんだぜ? フェアじゃないよね?』
露伴(ぐっ……! こんなこといわれて、『ヘブンズ・ドアー』を使うわけにはいかないッ!)
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:53:44.64
ID:FnjdjSFpo
乙「じゃあ、四千万で契約ということで……」
チープ・トリック『いーや、一億だ!』
チープ・トリック『ね、露伴? 一億でいいよね? マンガで稼いでんだし、パーッと散財しよ?』
露伴「一億!?」
露伴「いい加減にしろッ! 一億も出すんだったら、新しく豪邸でも建てた方がマシだ!」
露伴「この露伴に、お前の怪しげな話術はもう通じない! お前の能力は封じられたんだッ!」
チープ・トリック『ぐッ……!』
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:56:53.28
ID:FnjdjSFpo
チープ・トリック『じゃあ五千万でいいや』
露伴「なに、半額だと!? よし……五千万でいいだろう」
乙「ありがとうございます!」
露伴(まさか半値になるとは……ゴネてみるもんだな)フフフ…
露伴(――ん!? いや待て、なんかおかしくないか!?)
露伴(あのスタンド、『最初に無茶な要求をしてから、本当に通したい要求を話す』という)
露伴(セールスマンや詐欺師御用達のテクニックを使いやがった!)
露伴(こんなチープなトリックに、この露伴がしてやられるとはッ!)
露伴(なんとか、五千万から少しでも値切らないと……)
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 20:58:57.81
ID:FnjdjSFpo
チープ・トリック『もう一声! もう一声! もう一声! もう一声! もう一声!』
乙「いかがでしょう? もう一声……」
露伴「ええい、やかましいッ!」
露伴「分かったよ、六千万で契約してやる! ほらハンコ!」ポンッ
露伴「だからとっとと帰ってくれ! 耳障りだッ!」
乙「ありがとうございます」ニコッ
乙「では、今日のところはこれで……」バタン
露伴「…………」
15:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 21:01:13.07
ID:FnjdjSFpo
乙「いやー、ありがとう!」
乙「君のおかげで、値段をチョッピリボッたくるどころか、だいぶボッたくることができた!」
チープ・トリック『ねっ? ぼくが背中にくっついてよかったろ!』
乙「ああ、わたしにはとてもあんなメチャクチャな値上げ交渉はできないよ」
チープ・トリック『でもね? ぼくをあこぎな商人みたいにいうのは、お前の勝手だけどさ』
チープ・トリック『ぼくを産み出したのは、お前の精神なんだからね? それ忘れちゃダメね』
乙「分かっているよ」
乙「さて、君も疲れたろう。今日はもう帰ろう」
チープ・トリック『彼女いないから、今日も一人で晩ご飯だねっ』
乙「うるさい」
チープ・トリック『でもぼくがいるから、寂しくないよね?』
乙「うん……ちょっとやかましいけど」
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/06(火) 21:04:37.04
ID:FnjdjSFpo
……
……
康一「露伴先生? ずいぶんやつれてますけど、どうしたんです?」
康一「ハッ、まさか……スタンド攻撃を受けたんじゃあ!?」
露伴「受けたといえば受けたけど……大丈夫だよ。ぼくはいたって無事だよ」
康一「そ、そうですか」
露伴「それより、吉良吉影の件について話したいことがあってね」
康一「あっ、何か分かったんですか!?」
露伴(『チープ・トリック』……しゃべる以外なにもしないが、おそろしいヤツだった……)
―おわり―
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1481023878/
- 関連記事
-
Amazonの新着おすすめ
おすすめサイトの最新記事