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以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2018/11/04(日) 10:25:51.29
ID:AH9SDsLl0
※地の文の話です
少し百合してます
別段R18要素もない話です
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以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2018/11/04(日) 10:27:32.16
ID:AH9SDsLl0
晩秋の太陽は足が速い。
放課後の花咲川女子学園の教室で、茜差す窓から部活に精を出す運動部の生徒たちを眺めながら、山吹沙綾はもう冬が近いんだと他人事のようにぼんやりと考えていた。その彼女の隣の席で、花園たえが真面目な顔でエプロンに刺繍を施している。
「…………」
その横顔に目を移した沙綾は、おたえは本当に好きなことになると一生懸命だな、なんて思う。
たえが腕によりをかけているエプロンは、家庭科の実習で作っているものだ。簡単な裁縫でエプロンを作るだけならすぐ終わるのだが、彼女はそれを良しとしなかった。
今回はエプロンにどうしてもウサギの刺繍を入れたいと言って、妥協は一切許さないという姿勢で実習に臨んでいた。
そして授業時間のほとんどを「エプロンのどこに刺繍を入れるか、そしてどんなウサギの刺繍を入れるか、あ、でもウサギのワッペンを買ってきてそれを付けるのもありかもしれない。ちょっと調べてみよう」なんて考えることに費やした彼女は、結果として期限内に課題作を提出することが出来なかった。
(そういえば出会ったばっかりの時もそうだったなぁ)
あの時は香澄と一緒にギターを入れられる大きなナップサックを作ろうとしていたな、と懐かしい記憶を掘り起こす。
たえはその課題を終わらせるために居残りでエプロンを仕上げていて、特に予定の入っていなかった沙綾はその手伝いとして彼女とともに教室に残っているのだった。