1:
◆8HmEy52dzA 2015/07/17(金) 21:16:23.19
ID:B2ciWSU0O
地の文、短いです。
作中時期は偽物語後くらい。
2:
◆8HmEy52dzA 2015/07/17(金) 21:21:50.14
ID:0XhJBn560
001
かりかりと、紙の上を鉛筆が走る音が静かに部屋に流れる。
時折、何かを言いたげにちらちらとこちらを窺う阿良々木くんの視線。
いえ、阿良々木くんの言わんとしようとしている事はわかっているのだけれど、それをわざわざ指摘するのもつまらないのよね。
と言うか、今日阿良々木くんの部屋に来たのは勉強という名目はあるものの、それが本当の目的なのだ。
だから私から言い出す事はない。絶対に。
「休憩を、しましょう」
「ん、ああ……それじゃあ、ちょっとコーヒーでも淹れてくるから待ってろよ」
「どうぞお構いなく。決して決して要求している訳ではないのだけれど、阿良々木くんに勉強を現在進行形で教えている私に対する謝礼として、しいては勉強によって疲労した脳内シナプス及びニューロンへの労いとして糖分補給という建前の下にケーキがあると素晴らしいと思うし、阿良々木くんの私に対するちゃちな義理も果たせると思うのだけれど」
「……お前に礼をすることはやぶさかではないが、残念ながらケーキは今うちにはない」
「あらそう。死に値するわ」
「そこまで!?」
「ケーキがなければ死ねばいいのに」
「暴君すぎるだろ!」
「買って来なさい。コンビニので許してあげるわ」
「なんで許されなきゃいけない立場なのか僕には理解出来ないんだが」
「え? 阿良々木くんは私の下僕でしょう?」
「さも当然のように言うな!」
「だって阿良々木くんはいつも自分の一人称に『僕』を使っているじゃない」
「それはそうだけれど……それがどうやってさっきの話に繋がるんだ?」
「あれって『戦場ヶ原ひたぎ様の従順な下僕』の略語でしょう?」
「なにその斬新すぎる曲解!」
「いいから行きなさい。私の身体が求めているのよ」
「いや、買ってくるのは構わないんだけどさ……ここで待ってるのか?」
「ええ。今の私は生クリームがないと一歩も動けないのよ」
「そりゃ難儀な事だな」
言って、阿良々木くんが特大の溜息をつく。
マザーグース曰く。
女の子は砂糖とスパイスと素敵な何かで錬成されていると言われているし、あながち間違ってはいないでしょう。