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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 20:20:35.78
ID:XONA7ke50
「すごいねぇ、キノ」
「それはどっちのことだい、エルメス」
「どっちも。今はこの都市かな?」
「それは同感だ」
キノとエルメスは、巨大な都市の廃墟を走っていた。
大きなビルがどこまでも続いている、未来的な都市だった。しかし、人の姿はどこにもない。使われなくなって長い年月が経ったと思われる舗装道路のあちこちに、打ち捨てられた機械が転がっている。
「ほらキノ、ビルの向こうに大きな柱があるでしょ? あれで上の階層を支えているんだ。つまりこの都市は二階建てなんだよ。もしかしたらそれ以上かも」
「なるほど……。こんなものを体験できる機会はないな。ここに来てよかった」
「ほんとにねぇ。あ、キノ、ちょいストップ」
キノはエルメスのスピードを落とす。
「どうした、エルメス?」
「ほらキノ、そこの道路、積もった雪に履帯の跡が残ってる」
キノはエルメスを止めた。
「雪が上に積もっていないってことはまだ新しいね、キノ」
「……ここに人はいないって聞いてたのにな」
キノは顔を上げた。履帯の跡はキノが走っていた道路を横切っていた。
「どうする? キノ」
「まあ、少し気になるから見てみよう」
そういってエルメスのハンドルを切る。
「どっち?」
「……右で」
キノは交差点を右に曲がり、スピードを上げた。