1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:05:01.28
ID:xb2fRlPY0
提督「うーむ、今年は特に蒸し暑いな」
提督「こんな日は、いっそクーラーを切って」
提督「艦娘と汗だくックスしたいところではあるが……」
金剛「」ピクッ
榛名「」ピクッ
大和「」ピクッ
提督「こうも蒸すと、脱水症状になりそうだ」
提督「ここは一つ、納涼怪談大会でも開いてみるか」
艦娘「チェッ」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:13:43.48
ID:xb2fRlPY0
~昼 海岸~
長門「さあ、どんどん来い! 私はびいちばれえでも負けはせん!」
吹雪「すごい……! サーブしたボールが全部破裂してる!」
陸奥「そういうゲームじゃないんだけど……」
赤城「去年の水着が入らない……」
加賀「赤城さん、それは……」
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:17:15.66
ID:xb2fRlPY0
~昼 仮設屋台~
比叡「提督! これ全部タダって本当ですか!?」
提督「ああ。どんどん焼くから、どんどん食え」ジャッジャッ
雪風「カレーに焼きそばにカキ氷……雪風、目移りします!」
提督「おかわりもいいぞ」ジャッジャッ
提督「遠慮するな。今までの分、食え……」ジャッジャッ
飛龍「はい! ごちそうになります!」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:21:27.19
ID:xb2fRlPY0
~昼 海~
伊19「泳ぎでイクたちに勝てるわけがないのね!」ザババー
伊8「ここは勝たせてもらいます」ザバー
天龍「くっ、流石にはええ……!」バシャバシャ
夕立「負けが確定っぽい~!」ザブザブ
島風「でも、負けないよ! だって私が一番早いもん!」シャーーーーー!!
潜水艦「海の上を走るのはずるい!!」ガーン
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:23:11.33
ID:xb2fRlPY0
~夕方 室内~
カナカナカナカナ……
提督「zzz」
暁「zzz」
響「zzz」
雷「zzz」
電「zzz」
カナカナカナカチャン……
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:25:42.38
ID:xb2fRlPY0
~夜 食堂~
提督「さて、スイカも割ったし花火でも遊んだ」
提督「昼寝もしたしトイレも済ませた」
提督「そして、日が沈んだところで……」
提督「いよいよ、納涼怪談大会の始まりだ」
艦娘「わーーーー!」パチパチパチパチ!
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:28:44.68
ID:xb2fRlPY0
提督「今年は親睦も兼ねて、深海棲艦のみんなも呼んでいるぞ」
レ級「オッス♪」
戦艦「こんばんは」
港湾「お世話になります……」
提督「しっかりと肝を冷やし、今年の夏を乗り切ってほしい」
8:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:32:42.20
ID:xb2fRlPY0
提督「さて、早速、怪談でも打とうと思うが……」
提督「まずは誰がやる?」
駆逐「はい!」
提督「おっ、駆逐棲姫ちゃん。やる気だな」
提督「では、お願いしようか」
駆逐「分かりました……」
全員「……!」ゴクリ
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:42:07.06
ID:xb2fRlPY0
船が沈むと、どうなると思いますか?
沈没船になる。傷つき、腐食し、魚礁となる
その通りです。普通はそうなります
ですが、時々……
そうならない船が、あるんです
死者の怨念と悔恨をまとい、夜な夜な、ひとりでに動き出す船が
それは海の底から光に誘われ、他の船を引きずり込もうとやってきて……
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:43:12.83
ID:xb2fRlPY0
駆逐「まあ、私たちのことなんですけどねwwwww」
レ級「wwwwwwwww」
戦艦「wwwwwwwww」
艦娘「wwwwwwwwwwwwww」
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:45:27.83
ID:xb2fRlPY0
提督「いやあ、なかなか、つかみとしては良かったぞw」
駆逐「お粗末様でした」
提督「ふふふ……いや、失礼」
提督「さて、次からはちゃんと怖い話をしようかw」
提督「次は誰がいく?」
吹雪「はい!」
提督「おっ、吹雪か。じゃあ、頼む」
吹雪「お任せください」
12:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:48:43.93
ID:xb2fRlPY0
これは私が体験したことですが……
鎮守府近海で潜水艦を掃討する時、よく組む人がいるんです
ええ。五十鈴先輩です
対潜のプロと言われたあの人といっしょなら、潜水艦だって怖くない
いつもそう思っていました
13:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:51:23.49
ID:xb2fRlPY0
でも、ある日、気づいたんです
五十鈴先輩は、何かがヘンだって
はじめは、基礎を大事にする人だと思っていたんです
だって、そうじゃないですか。改になったのに、すぐに改造前に戻るだなんて
強い力に溺れないよう、初心を忘れないようにそうしているのかと思っていました
だけど……
14:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:53:30.48
ID:xb2fRlPY0
「五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ。全力で提督を勝利に導くわ。よろしくね」
工房から戻ってくる度に、五十鈴先輩はこう言うんです
まるで、私と初対面であるかのように……
……おかしいですよね?
だって、私と五十鈴先輩は、何十回といっしょに出撃したのに――
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:57:39.90
ID:xb2fRlPY0
提督「おかしくないぞ」
吹雪「えっ」
提督「おかしくない」
提督「どうしたんだ、吹雪」
提督「暑さにやられたのか?」
吹雪「……」
吹雪「そう……かもしれません」
吹雪「冷静に考えると、同じ艦娘が何人もいるはずが……」チラッ
~窓の外~
五十鈴1「……」
五十鈴2「……」
五十鈴3「……」
吹雪「……!?」ゾッ
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 20:59:05.08
ID:xb2fRlPY0
吹雪「今! 今、窓の外に!?」
提督「……?」
提督「どこだ? 誰もいないじゃないか」
提督「やっぱり夏バテなんだよ」
提督「ゆっくり休め……なっ?」
吹雪「は、はい」ガタガタ
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:02:32.37
ID:xb2fRlPY0
提督「さて、なかなか迫真的な話だったが……」
提督「その分、ハードルが高くなっちゃったな」
提督「次は誰がいく?」
艦娘「……」
最上「うーん、じゃあ、ボクがいこうかな?」
提督「おっ、最上か」
提督「期待しているぞ」
最上「自信はないけど、頑張るよ」
20:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:08:32.67
ID:xb2fRlPY0
みんな、鎮守府近海にある小屋のことは知ってる?
うん、そうそう。それそれ
出撃や遠征から帰ってくる時に、いつも目にするあの小屋だよ
小さな島にある、小さなプレハブ
元は見張り小屋だったんだよね?
でも、不便だったから、あんまり使われずに放置された……
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:10:01.02
ID:xb2fRlPY0
知ってる?
あの何もない部屋の、何もない壁に
赤黒い手形がついているのを
みんなは気にしてないみたいだけど
ボクは手形を見てから、どうにもあの小屋が気になっちゃってさ
22:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:12:08.10
ID:xb2fRlPY0
通りかかる度に、色々考えたよ
幽霊がいるのか、とか
それはどんなのだろう、とか
もしかすると、こっちを見てるのかもしれない、とか
そのうち、自分で考えたことを自分で怖がるようになってさ
近くを通る時は、いつもビクビクしてたっけ
23:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:14:08.43
ID:xb2fRlPY0
夜戦から帰る時は特に怖かったね
小屋の中で、うすぼんやりとした人影が
目だけはしっかと見開いて、こっちを見ているかもしれない――
そう考えると、足がすくんじゃってさ
そのうち、遠回りをして帰るようになったよ
24:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:16:15.49
ID:xb2fRlPY0
――でも、おかしいんだ
小屋の近くを通らないようになってからも
やけに気になるんだ。あの小屋が
頭に浮かぶんだ――
小さなプレハブ。荒れ果てた室内。ガラス窓の奥には、赤黒い手形があって
その近くにいるんだよ。小さな影が。目だけがギョロギョロした、白い影が
その光景が、やけにはっきりと頭に浮かぶ――
25:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:17:11.99
ID:xb2fRlPY0
……実は、見ていたのかもしれない
ボクは小屋を見ているつもりだったけれど
そこにはいつも『アレ』がいて、
いつもボクの方を、見ていたのかもしれない――
26:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:18:26.51
ID:xb2fRlPY0
最上「おしまい」
最上「あはは、人前で話をするのはちょっと照れくさいね」
最上「どうだったかな・・・・・・って」
最上「どうしたの、みんな?」
提督「あわわわわ……!」
暁「ひぃぃ……!」
天龍「ガチじゃねえか、バカー!」
27:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:22:17.24
ID:xb2fRlPY0
龍田「そ、その小屋って、いつもの通り道にあるあの小屋?」
最上「そうだけど?」
睦月「あああああ! 思い出してみたら、あった! 手形があった!!」
如月「いつも見られているような気配がしたけど……」
カ級「も、も、もうあの辺りに行けない……!」
最上「えーと……なんか、ごめんね?」
28:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:51:35.55
ID:xb2fRlPY0
提督「ジャブの次にレバーブローを喰らった気分だが……」
提督「納涼という意味では、趣旨に適った話だった」
提督「さて、次は誰がいく?」
艦娘「……」
深海「……」
提督「むっ、しり込みしたか?」
提督「ならば、私が……」
雪風「しれぇ!」
雪風「雪風にお任せください!」
提督「おお!」
29:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:53:14.81
ID:xb2fRlPY0
提督「ちびっ子に怪談を語らせると」
提督「なにやら『学校の怪談』じみてきそうだが」
提督「それも一興! 頼むぞ、雪風!」
雪風「はい!」
30:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:55:37.35
ID:xb2fRlPY0
夕方ごろの話です!
お昼寝から目が覚めた雪風は……
しれぇがいなくなっていることに気がつきました
あれ? おかしいな?
横になる前は、すぐそばにいたのに……
お昼寝部屋はしーんとしていて
窓の外では、ひぐらしが鳴いていました
31:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 21:57:56.53
ID:xb2fRlPY0
その時のことです
ふと、しれぇの声が聞こえたように思いました
廊下の奥。普段は使われていない部屋から
その声はしているようで……
雪風はお昼寝部屋を出て、しれぇの声をたどりました
32:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:00:19.36
ID:xb2fRlPY0
夕暮れでした
廊下は夕日を浴びて真っ赤に染まり
そうじゃないところは、影になって、真っ暗でした
しれぇの声が、また聞こえます
やっぱりそれは、廊下の奥の部屋からでした
33:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:10:01.49
ID:xb2fRlPY0
でも、おかしいんです
しれぇだけどしれぇじゃない
そんな声でした
そう思った瞬間、急に怖くなってしまって
雪風は、こっそりと、部屋の中をのぞいて……
34:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:14:54.53
ID:xb2fRlPY0
雪風「するとそこには、裸になったしれぇと南方棲戦姫さんがいたんです!」
艦娘「っ!?」
深海「っ!?」
提督「ファッ!?」
雪風「南方さんは苦しそうに『オオー! て、提督、なんて男なの』とか『止めたら殺すから!』とか言ってました!」
提督「ゆ、雪風、止め」
雪風「二人とも汗だくでした!」
提督「フィー!」ビクンビクン
35:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:22:47.38
ID:xb2fRlPY0
金剛「ヘイ、提督ぅ」
提督「」ビクッ
榛名「少しお話が……」
提督「それは、その」
提督「違うんだ」
雪風「なめくじみたいにからみあってました!」
提督「違うんだぁ!」
………………
36:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:25:14.37
ID:xb2fRlPY0
~鎮守府 廊下~
吹雪「はあ……」トボトボ
吹雪「結局、勘違いだったのかな」
吹雪「最近、疲れているのかなあ」
五十鈴「あら?」
吹雪「五十鈴先輩」ドキッ
37:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:29:46.39
ID:xb2fRlPY0
五十鈴「怪談大会はどうしたの?」
吹雪「ちょっと……抜けてきました」
吹雪「そ、その。五十鈴先輩は?」
五十鈴「私はパス。趣味じゃないわ」
吹雪「そ、そうですか」
38:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:32:43.33
ID:xb2fRlPY0
五十鈴「これからお風呂に行くけど……」
五十鈴「あなたも来る?」
吹雪「い、いえ。私は部屋に戻ります」
五十鈴「そう?」
五十鈴「じゃあね」ヒラヒラ
吹雪「は、はい」
39:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:39:31.16
ID:xb2fRlPY0
吹雪(あんなことがあったから、変に意識しちゃったな)
吹雪(……うん。やっぱり、私の考えすぎだよ)
吹雪(五十鈴先輩が何人もいるなんて……)
五十鈴「あら?」
吹雪「っ!?」ドキッ
40:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:40:58.37
ID:xb2fRlPY0
五十鈴「吹雪じゃない。何してるの?」
吹雪「え、えっと」
吹雪「自分の部屋に……戻ろうかと……」
五十鈴「へえ」
五十鈴「やっぱり怪談って子どもっぽいものね」
五十鈴「お風呂にでも入ってた方がマシだわ」
吹雪「そ……う、ですね」
41:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:42:59.89
ID:xb2fRlPY0
五十鈴「あなたもどう?」
吹雪「いえ、わ、私は」
五十鈴「そう? じゃあね」ヒラヒラ
吹雪(……えっ)
吹雪(ど、どういうこと?)
吹雪(さっき会ったのは五十鈴先輩で)
吹雪(今、去っていくのも五十鈴先輩で)
???「あら?」
42:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 22:44:58.25
ID:xb2fRlPY0
???「吹雪じゃない」
???「何してるの?」
吹雪(じゃあ)
吹雪(私の後ろにいるのは)
吹雪(一体、誰なんだろう……?)
~完~
43:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/30(木) 23:03:10.69
ID:idv9Rf8go
乙
考えさせられた。面白かった
47:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 03:59:23.37 ID:qwsiDZoRO
最上だけなんかガチっぽいよなあ
45:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/31(金) 00:32:44.09 ID:XxVMs16U0
乙です
最上の話は割と怖かったな…
- 関連記事
-
Amazonの新着おすすめ
おすすめサイトの最新記事