1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:12:58.00
ID:V8wRmJAW0
14巻後の設定です。
八幡(俺は今日、雪ノ下が一人暮らししている部屋を訪れていた。雪ノ下直々のご招待だ)
八幡(その……そういう関係の女子から部屋に誘われ、二人きり……これは、そういうことか?そういうことなのか?)ピンポーン
雪乃「……いらっしゃい、比企谷君。早かったわね」ガチャッ
八幡「お、おう……悪い。もうちょい遅い方がよかったか」
雪乃「いえ、問題ないわ。準備もさほどかからなかったし」
八幡(準備?準備ってなんの準備だ?あれか?やっぱりあれなのか?)
八幡「雪ノ下……今日は、その、何するんだ?」
雪乃「プリキュアを見るのよ」ドンガラガッシャン
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:13:30.12
ID:V8wRmJAW0
雪乃「意外なのは分かるけど、そこまで驚かなくても……大丈夫?」
八幡(気付くと俺は床に倒れていた。が、しかしそれに相応しいだけの衝撃であったことは言うまでもない。あの雪ノ下雪乃の口から、プリキュア)
八幡「んんっ……あー……質問。なんで、プリキュアを?」スック
雪乃「その……小町さんにあなたがどんなアニメを見ているか聞いてみたら、プリキュアをよく見ていると言っていたから……」
八幡「……質問を三つ追加だ。一つ、何で俺に直接聞かずに小町に聞いた?」
雪乃「あなたは私が聞いても、かっこつけてプリキュアだなんて答えないでしょう」
八幡「ぐっ……」
八幡(その通りだった。多分俺が聞かれて居たらかっこつけてノイタミナとかでやってる意識高いアニメを挙げて、プリキュアを見ていることには言及しなかっただろう)
八幡(どうやら全てお見通しらしい……が、不思議と恐怖も悔しさも感じない。むしろ自分の性格を理解されていることに一抹の嬉しさを感じる。俺も丸くなったものだ……)
八幡「じゃあ、質問二つ目だ。何故俺が見ているアニメを聞いた?」
雪乃「……好きな人の好きな物を知りたいと思うのは、ごく自然だと思うのだけれど」カァッ
八幡「んぐっ……」カァッ
八幡(これはまた、ストレートな……いや、雪ノ下は元からなんでもズバズバ言う奴だったが、あれからは唯一の例外だった感情表現すらストレートに言うようになった。丸くなったのは俺だけではないらしい)
八幡「……最後、三つ目……」
雪乃「……? 三つ目の質問は、何?」
八幡「いや……いい」
八幡(三つ目の質問は……『俺が雪ノ下と一緒にプリキュアを見る理由』だ。だが、この質問への答えはさっきのやり取りからなんとなく類推できる)
八幡(つまり……そういう関係にある男女が、並んで同じ作品を見ることはごく自然なのだ。要はそういうことだろう。これ以上の赤面を避けるため、俺は質問を飲み込んだ)
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:14:01.59
ID:V8wRmJAW0
雪乃「さて……と」ポスッ
八幡(二人並んでソファーに座る。前のテーブルには飲み物、軽食が用意されている……準備とはこれのことだったらしい。そしてテレビにはプリキュアの各シリーズが見えていてまさに準備万端だ。後はどれを見るか選ぶだけ)
雪乃「プリキュアってこんなにシリーズがあるのね……小町さんはあなたが見てるシリーズまでは知らないと言っていたけど……あなたの一番好きなシリーズはどれ?」
八幡「っすぅー……ちょっと考えさせてくれ」
雪乃「急に真剣な顔になったわね……」
八幡(『一番好きなシリーズは?』……雪ノ下は軽い気持ちで口にしたのだろうが、この質問はオタクの前では禁句。質問したが最後回答者の思考をざっと二三時間は奪う。その上で特に答えは出ない。毎回皆違って皆良いの境地に辿り着くのだ。何のために毎回二三時間も悩んでんの?)
八幡(……とそこまで考えた所で自分の気持ち悪さを顧みる。プリキュアシリーズの順位付けで熟考する死んだ目の男子高校生ってめちゃくちゃ気持ち悪いのでは……ドン引かれてないかしらと雪ノ下の方を窺う)
雪乃「……別に、これくらいのことは気にしないわよ。あなたがこういった人種であることは出会ってから早い段階で察していたし……私が好きになったのは、そんなあなたなんだから……今更身振りを改めようなんて考えなくていいのよ」
八幡「おう……そうか」カァッ
雪乃「そうよ、あなたが気持ち悪いなんて今に始まったことじゃないんだから」
八幡「俺をときめかせたいのか貶したいのかどっちだ」
雪乃「っすぅー……ちょっと考えさせてくれるかしら」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:14:31.81
ID:V8wRmJAW0
八幡(そんなこんなで俺達はプリキュアを数話見終えた)
雪乃「うん……子供向けでも、いや、子供向けだからかしら……きちんと起承転結が意識されていたし、キャラクターの成長も描かれている。王道という奴ね。そういった衒いのない、子供向けらしい溌剌とした雰囲気には若干気恥ずかしさを感じないでもないけれど……こういった純粋さが胸に響くのも分かるわ」
八幡「思ったより理解を示してくれるねお前……」
雪乃「……ところで、数話見て、少しあなたに聞きたいことがあるのだけれど」
八幡「ん?なんだ」
雪乃「あなたは……どの子が一番好みなの?」
八幡「!?」
雪乃「ここで言う『好み』は女性として、という意味よ。答えて」
八幡「いや、プリキュアをそんな目で見るなんて、そんな……」
雪乃「答えて」
八幡(……なんだこれ……何か試されてるのか?だったらなるべく雪ノ下のご機嫌を損なわないように……)
八幡「この、髪が青色で、クールな娘……だな」スッ
雪乃「そう……じゃあ、今度この子のコスプレするから見てちょうだいね」ドンガラガッシャン
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:14:59.95
ID:V8wRmJAW0
八幡「……なんでそうなる」
雪乃「……好きな人が喜ぶことをするのは、ごく自然だと……」
八幡「いや、それで即コスプレはおかしいだろ……頼んでもねぇのに」
雪乃「私のプリキュアコスプレに価値はないということかしら?」
八幡「いやそれはめちゃめちゃ見てみたいが……お前が自主的にってのは、違うだろなんか」
雪乃「……じゃあどうすればいいのよ……」
八幡「どうすればって、何が」
雪乃「……誰かと、こんな関係になるのは初めてで……関係を維持するのにどういう努力や行動が必要なのか、分からなくて……」
八幡「それでコスプレって、生き急ぎすぎだろお前……」
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:15:41.86
ID:V8wRmJAW0
八幡「……別に、いいんだよ。何か特別なことをしなくても」
雪乃「でも……」
八幡「思い返してみろ。お前俺と会った時プリキュアのコスプレなんかしてたか?してなかったろ……」
八幡「だから、いつも通りの、そのままのお前でいいんだよ……俺が好きになったのは、そんなお前なんだから」
八幡(そう言ってすぐ、羞恥で顔面が燃え盛る。俺は慌てて雪ノ下から顔を背けた。向こうも同じように照れて、こっちを見れなくなっているのを祈る)
雪乃「かっ、変わったわね……あなた」
八幡「……そりゃお互い様だな」
八幡(本当に、特別なことなんて要らないんだろう。二人でこんな軽口を叩ける内は)
八幡「大体なんだコスプレって。お前にプリキュアのコスプレされたら、俺はお返しにパンさんのコスプレしてやらなきゃいけなくなるだろうが」ハハハ
雪乃「私、やっぱりプリキュアのコスプレするわ」キリッ
八幡「えっ」
了
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/08/23(日) 19:16:09.17
ID:V8wRmJAW0
以上になります。
14巻を読んだ感想ですが、ガハマさんがふられちゃうのはいいんだけど八幡から解放してあげてほしかった。「諦めないでいいのは女の子の特権」という台詞に共感してる内は永遠に八幡への想いに囚われて生きることになるじゃないですか。略奪愛なんかできる子じゃないし。
どこかで八幡への想いを吹っ切って彼女なりの幸せを掴むルートを示唆してほしかったです。(すぐさま吹っ切られるとそれはそれで寂しいので示唆する程度で)
ありがとうございました。
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1598177577/
- 関連記事
-
Amazonの新着おすすめ
おすすめサイトの最新記事