1:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:06:16.77
ID:XJiA5g9W0
――事務室
コンコンコン
モバP(以下P)「ん。どうぞ」
ガチャ
速水奏「プロデューサーさん、いる?」
P「ああ、奏か。パーティーはどうだった」
奏「楽しかったわ。ほら、見てこれ」ガサッ
P「おわ、すごいことになったな」
奏「こんなにたくさんの花を持ったの、初めてだわ」
P「企画したのは相葉さんだったっけ」
奏「そうなの? てっきりPさんかと思った」
P「さすがにロマンチックが過ぎるよ」
奏「そう? 皆から渡される花で作る花束なんて、素敵じゃない」
P「それを俺が企画したって?」
奏「んー……そうね、タイプじゃないかも」
P「だろ」
奏「でも、私のためにタイプじゃないことを考えてくれたなら、嬉しいかもって」
P「なら、今後の参考にさせてもらうとしよう」
2:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:07:18.54
ID:XJiA5g9W0
P「今日はあと……藤居さんが一緒の誕生日だったな」
奏「ええ、ふたりで花束作っていたわ」
P「藤居さん、髪に飾られてそう」
奏「よく分かったわね」
P「えっ、マジにやられたの」
奏「最初にやったのはあいさんだったかしら」
P「あー」
奏「そしたら大人組がわらわらと」
P「悪のりしたな」
奏「彩華さんが仕上げを担当してたわ。朋って髪量あるじゃない。身長10cmは増やされてた」
P「うわ、見たかった」
奏「あとで誰かデレぽにあげるんじゃない? あれは髪を洗うの大変ね」
P「奏は被害に遭わなかったのか」
奏「周子とフレちゃんに詰め寄られたけど」
P「けど?」
奏「こう、全力の笑顔をしたら退いてくれたわ」
P「さすがの圧力」
3:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:07:50.21
ID:XJiA5g9W0
奏「圧力をかけたわけじゃないんだけど……あのメンバーに行動に出られたら、抵抗しても無駄でしょ」
P「まあ」
奏「抵抗するつもりも無かったけど、結果的にブラフになっちゃったわね」
P「奏にやるには後が怖いってことかな」
奏「別に飾られても嫌じゃなかったのよ? 実際、朋も楽しんでたし」
P「なんだ、少しはいじられたかったか」
奏「どうかな。そういういじられる、みたいなのは得意じゃなかったけど」
奏「……この一年で変わったかも。一緒に楽しんでしまえば、悪くないって思えるわ」
P「濃い面子と仕事してるもんな。変わりもするか」
奏「ふふ……」
P「?」
奏「当事者の自覚ないの? 変えたのは、Pさんよ」
P「そうか」
奏「そうね」
P「……いい環境を用意できたのなら、プロデューサー冥利に尽きるよ」
奏「照れ隠しに仕事を言い訳にするなんて、ずるい人」
4:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:08:22.95
ID:XJiA5g9W0
奏「なんで途中で抜け出してきちゃったの」
P「最後までいたかったけどな。仕事があったから」
奏「そっちも仕事なの? もう」
P「そこに文句は付けないでくれよ」
奏「ふふ、冗談」
P「まったく……ああ、そっちにいろいろ届いてる」
奏「いろいろ?」
P「ファンからのプレゼントがメイン。前に仕事で一緒したタレントさんとか、社内からも少しあるか」
奏「結構あるわね……」
P「これでも少しは減ったんだぞ」
奏「減った?」
P「検閲済みってこと」
奏「ああ」
P「生ものはどうしてもな。言えないようなものは無かったけど」
奏「言えない?」
P「あー……しまった、藪をつついた」
奏「ふふ、今日の蛇はおとなしくしておくわ」
5:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:08:49.77
ID:XJiA5g9W0
奏「……でも、ちょっと切ないわよね」
P「ん?」
奏「理由、目的はどうあれ、私に宛てて贈ってくれたものが届くことがないなんて」
P「まぁ、奏の気持ちは分からんでもない」
奏「そう?」
P「だけど、それこそ人に言えないような物を贈るのは、相手のために贈ったものじゃない」
P「自分を満たすために贈っているんだよ。そんなのは届かなくても仕方がない」
奏「なるほど。そう考えれば、そうね」
P「まあ気にするなってこと。それよりどうするこれ」
奏「今日持って帰るのはちょっと無理ね。ただでさえ花で片手ふさがってしまうもの」
P「アイドルの人数考えると、片手で済んで良かったな」
奏「そこは考えてあって、ある程度ユニットで纏めてくれたみたい。全員が来てた訳じゃないしね」
P「あぁ。バランスよくまとめてくれたんだな」
奏「……これが、贈り物ってことなのね」
P「そういうこと」
6:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:09:30.43
ID:XJiA5g9W0
P「個人でもらう分はまた別に貰ってるだろ」
奏「そうね、かさばらないものが多かったわ。あ、ちょっと持ってきていい?」
P「いいけど、どうした」
奏「荷物の整理がてら、もらったもの一緒に見たいの」
P「あの、仕事……」
奏「少しだけ。ね?」
P「……はぁ、断れないな」
奏「ありがとう。すぐ戻ってくるわ」
パタン
P(……貰ったプレゼントを自慢したいこどもみたいな顔してんだもんな)
P(ん? そのものか)
- - -
奏「文香からはブックカバーね。ん、ありすちゃんから栞……あら?」
P「同じ意匠で同色か。合わせたんだろうな」
奏「ふたりで買いに行ったのかしら。ふふっ」
7:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:10:00.74
ID:XJiA5g9W0
奏「志希からは、オリジナルのパルファン」
P「言ってたけど、小物が多いな」
奏「でしょう。これは美嘉と加蓮、ふたりでって言ってたわ。たぶんネイルね」
P「ああ。……そうだな、ピンク」
奏「分かるの?」
P「多分だけどな。どっちともユニット組んでるんだから、奏に詳しそうだなって」
奏「果たして、どうかしら」パカ
奏「凄いわ、当たり。私に詳しいとピンクなの?」
P「持ち物に多いだろ」
奏「ふぅん。ということはPさんも、私に詳しいんだ」
P「……あー……事務所と仕事の範囲までなら?」
奏「もっとプライベートなところまでは、知りたくない?」
P「そこは遠慮しておくよ」
奏「そう。残念だけど、そっちの方がいいかも」
P「ん?」
奏「その方が、見せていく楽しみがあるから」
P「……はぁ」
奏「ふふっ。楓さんのは……これ何かしら」
P「なんだろうな。小箱だけど……指輪でも入ってそうな大きさ」
奏「それなら、Pさんに付けてもらおうかな」
P「意味のないことならやってもいいけど」
奏「それじゃつまらないわ」
8:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:10:28.84
ID:XJiA5g9W0
奏「でも私、楓さんにサイズ教えたかしら」
P「指輪ならフリーサイズのもあるけど」
奏「楓さんがフリーサイズの指輪を贈るっての言うのは、想像つかないわね」
P「まあ、そういうのはあんまり高いアクセサリーじゃないか」
奏「とはいえ高いものでも困るけど」
P「開けてみれば」
奏「そうね……渡してくれる時に『ちょこっと悩んじゃいました』って言ってたわ」ガサガサ
P「……あ、なんだか予想ついた」
奏「え?」
P「予想ついたけど贈るか普通」
奏「え、ちょっと、どう言うこと」パカ
P「……あ。うん」
奏「……猪口」
P「うん。江戸切子だ……渋いな」
奏「未成年に贈ってどうするつもりなのあの人」
P「そこも含めて、悩んだんだろうな」
奏「成人したら飲みましょうってこと?」
P「……好意的にとらえると、そうかな」
9:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:10:55.60
ID:XJiA5g9W0
奏「こんな感じね。まだあるけど、全部は見てられないわね」
P「ファンからのプレゼントで大きめの紙袋のあったな。それに詰めさせてもらうか」
奏「包装を事務所に捨てていくのも気が引けるし……そうさせてもらうわ」
P「残りは少しずつ持ち帰るか、宅配にするか」
奏「着払い?」
P「申し訳ないが」
奏「そう……じゃあ、持って帰れるものは分けて持っていくわ」
奏「持って帰るのに苦労するのは宅配したいわね」
P「OK、ちひろさんに伝えておくよ」
奏「……」
P「どうした?」
奏「分かってはいるわ」
P「うん?」
奏「Pさんがこう言う日に、パーティーを開く援助をしてくれている」
P「まぁ」
奏「それで十分。担当だからって、特別なプレゼントを貰えるわけじゃない」
P「……ああ、それも仕方ないな。何か品物にすると、どこかで差が出るし」
奏「分かってはいるの。……でも、それでも」
奏「Pさんからの特別なプレゼントが欲しい」
10:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:11:22.47
ID:XJiA5g9W0
P「……」
奏「なんて思ってみたり、ね」
奏「ごめんなさい、困らせてしまったわ。欲張りね、私」
P「そうだな……分かってくれるならいい」
奏「ええ。でも、他の子もそう思ってるんじゃないかしら」
P「そうかもな。別に全く贈り物をしない訳じゃないぞ」
奏「そうね、CDデビューとか、初ライブとか……そう言う時には何か聞いてくれるわよね」
P「あくまでできる範囲でだけど」
奏「なら、形に残らないものなら?」
P「……何かをしてほしいって?」
奏「例えば」
奏「キスして欲しいとか」
P「予想はしていたけど」
奏「だめ?」
P「だめ」
奏「そう、残念」
11:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:11:49.40
ID:XJiA5g9W0
P「こう返ってくるのも、分かってたろ」
奏「そうかもね」
P「……思ったんだが」
奏「ん?」
P「奏、されたい方なんだな」
奏「されたいって……キスを?」
P「ああ」
奏「そうね…… ああ、思えばそうかも」
奏「女性からのキスも情熱的でいいと思うけど」
P「けど?」
奏「……秘密」
P「そうか」
奏「訊かないの?」
P「隠しごとは美貌の秘訣なんだろ」
12:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:12:18.45
ID:XJiA5g9W0
奏「噂でしょう、それ」
P「なんだ、違うのか」
奏「まあ、悪くはないかしら」
P「別にいいと思うぞ、そのスタンス」
奏「そう? なら、そうさせてもらうわ」
P「ああ」
奏「キスをしてくれないのは、Pさんのスタンスなの?」
P「それ、スタンス以前の問題だよ」
奏「それもそうね」
P「なんにせよ、俺からするなんてことは無いだろうな」
奏「そう……実はね」
P「ん?」
奏「Pさんにキスされるかもって思ったこと」
奏「一度だけあるのよ?」
13:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:12:45.17
ID:XJiA5g9W0
P「えっ。嘘だろ、そんな覚えないぞ」
奏「それはそうよ。私の勘違いだったから」
P「……なにしたっけ」
奏「私をスカウトして、売りだす前のこと」
P「えー……」
奏「たいしたことじゃ……いえ、私には大したことだったかな」
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
P「ちょっと、良く見せてもらっていいか」
奏「えっ。ええ、いいけど……」
クイッ
P「綺麗だな。薄い茶色……いや、ほとんど金色だ」
奏「……」
P「ほんの少し釣り気味で、しっかりと大きく形もいい。うん、この眼もポイントにできるな」
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
奏「眼を見たの」
P「眼?」
14:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:13:11.45
ID:XJiA5g9W0
奏「ちょっとそこに座って」
P「ん? ああ」ギシ
奏「私のね、この瞳を、こう」
P「おっと……」
奏「こんな感じに」クイッ
P「……顎に手を添えてもいたのか」
奏「そう」
奏「こんなことされたら、キスされるかと思っても仕方ないわよね?」
P「あー、うん、やったな……すまなかった」
奏「謝る必要ないわ。嫌じゃなかったんだから」
P「そうか……」
奏「これだけ顔を近づけているのに、避けようとしないんだ」
P「自分からは、しないんだろ」
奏「そう、そうね……信頼されているのかな」
P「気を悪くしないで欲しいんだけど」
奏「ええ」
P「そんな度胸はないかなって」
奏「……やっぱりPさん、私に詳しいわ」
P「悪かった」
奏「謝らないでよ、私の立場がないでしょう」
P「……ああ」
15:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:13:39.11
ID:XJiA5g9W0
奏「ふふっ、離れてって顔してる」
P「それを口にしないで離れてくれよ」
奏「せっかくのチャンスなのに、もったいないのね」
ギッ
P「ふぅ……キスにもったいないとかあるのか」
奏「あるかもしれないよ?」
奏「私は初めて会った時から、あなたにキスをねだったわ」
奏「最初はPさんをからかうため」
P「ああ」
奏「いまでも変わってないと思う?」
P「ん?」
奏「ふふ……ねえ。18歳になって、いろいろOKになったのよ」
P「……そうだな、選挙とか、免許とか」
奏「結婚とか」
P「……」
奏「キスは」
奏「何歳でだって、いいのに」
P「無理 矢理はだめだろ」
奏「そんなの前提にしてないわ」
16:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:14:09.39
ID:XJiA5g9W0
奏「ねえ」
奏「私はあの時から、あなた色になるのを許した……いえ、決めた」
奏「歌と踊りだけじゃない。いろんな私を見せてくれて、そして私もそうなろうとした」
奏「私はあなたの望むアイドルになれている?」
P「ん……そうだな」
奏「そうなった先は?」
P「先?」
奏「言語学者に拾われて、レディに仕立てられた町娘は、もう庶民として暮らせなくなった」
P「古い映画だ」
奏「私も」
奏「もう戻れないわ」
奏「この華やかに飾り付けられた世界を知ったの」
奏「教えたのは、あなたよ」
P「あー……責任もてって?」
奏「そんな重いこと言わない」
奏「でも、今日この唇を奪わなかったこと、後悔するかも」
17:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:14:35.43
ID:XJiA5g9W0
奏「覚悟してね」
奏「私はもっと素敵になるから」
奏「ねえ、立って」
P「ん? ああ」
ギッ
奏「Pさん」
P「……」
奏「……」
P(眼が)
P(金色の瞳が、まっすぐに)
奏「私」
P「……」
P(あれ……これ、まずいんじゃないか)
P(止めた方が)
18:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:15:02.91
ID:XJiA5g9W0
P「……」
奏「あなたが好き」
P「……あ」
奏「……」
P「その……いま言われるとは、思ってなかった」
奏「私も」
P「え」
奏「いま言うなんて思ってなかった」
19:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:15:29.21
ID:XJiA5g9W0
P「勢いなのか」
奏「そう……ごめんなさい、言うつもりなかったの」
P「……」
奏「もっと言わずにいられると思った。いえ、Pさんに言わせてみせるなんて思ってた。でも……」
奏「溢れてしまった。止められなかったの」
P「奏、俺は…… ……どう答えたものかな」
奏「……答えが欲しいわけじゃないわ」
P「……」
奏「伝えたいことを、伝えてしまっただけ」
奏「あなたへの贈りものじゃないの。私のために伝えただけ」
奏「そんなものは、あなたに届かなくても仕方がない。そうでしょ?」
P「……聞かなかったことにしろって?」
奏「そうね……でも、あなたは聞いてしまったから。取り消せないなら」
トン
奏「Pさんの、ここに。届いてくれたら嬉しい」
奏「態度で分かっていたかもしれないけどね」
P「いや……どこまで本気かは分からなかったよ」
20:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:15:55.60
ID:XJiA5g9W0
奏「ねえ、抱き着いていい?」
P「……ま」
奏「答えは聞かない」
ギュッ
奏「……」
P「今日はいつも以上に我がままだな……」
奏「ごめんなさい。……気持ちがね、溢れて止められないの」
奏「それでもPさんなら、受け止めてくれるかなって」
P「……答えは言わないでおく」
奏「でも、避けないでくれている」
奏「そのまま受け止めてくれた」
奏「そんなところが、好きよ」
P「……」
21:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:16:23.76
ID:XJiA5g9W0
奏「さっきのキスの話覚えている?」
P「え? ああ、秘密って」
奏「気が変わったから言おうかな……私がキスされたい理由」
P「……それは?」
奏「やっぱり、意中の人に求められるのって、嬉しいでしょう?」
P「……はー……」
奏「ふふっ。ねえ、Pさん」
奏「私の言葉に、あなたへの好意が含まれているのを知っているなんて、素敵だと思わない?」
P「……光栄だね」
奏「本音は?」
P「……」
奏「いいよ、正直に言って」
P「……面倒」
奏「でしょうね」
22:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:16:50.13
ID:XJiA5g9W0
奏「ふふっ、また困らせちゃったわ」
奏「やっぱり、あなたの隣に立つには、私はまだ幼くて」
奏「こんな我がままを言ってしまうくらい子どもで」
奏「そんな私を受け止めてしまうくらい、あなたと差がある」
P「……奏を見くびっているわけじゃないんだけど」
P「年齢の差って、そうやって出てくるだろ」
奏「……そうよね」
奏「ねえ、Pさん。あなたの隣に立って恥ずかしくないくらいの人になれたら」
奏「私を認めてくれたら、その時は」
奏「私にキスをして?」
23:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:17:17.65
ID:XJiA5g9W0
P「……告られた、以上のことを言われた気がする」
奏「そうね……すごいこと言ったかも」
P(止めるべきだっただろうか)
P(そもそも、俺に止める気はあったんだろうか)
P(……正直、自分にもわからない)
P「あ」
奏「?」
P(わからないんだな。自分にも)
P(奏の、このまっすぐな想いを受け止めたいのか、突き放したいのか)
奏「……Pさん?」
P「ちょっと離れて」
奏「え? ええ」ス…
24:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:17:44.21
ID:XJiA5g9W0
ガサッ
P「これ、ひとつ貰うな」
奏「? いいけど……」
P「ハサミは……デスクにあったな」
パチン
P「こんなもんか」
奏「……」
P「答えは伝えられない」
P「どっちの答えでも……たぶん、この関係は続かなくなる」
P「だからいまは」
スッ
奏「……!」
P「これで勘弁してくれ」
P「俺が贈るものじゃなくて、形に残らなければ、まあいいだろ」
25:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:18:10.25
ID:XJiA5g9W0
奏「……やっぱり、ロマンチストね」
P「参考にしただけだよ」
P「いや……俺も少し浮かれてるのかも」
奏「でも、タイプじゃないことを……あなたの精一杯の答えを返してくれたね」
P「……」
奏「私も浮かれていたのかな。すごいこと言っちゃった」
P「取り消しなら、いつでも聞くよ」
奏「絶対しないわ」
P「……余裕あるな」
奏「そう見えてるだけかも、ね」
奏「Pさん」
奏「プレゼント、ありがとう」
P「どういたしまして」
26:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:18:36.79
ID:XJiA5g9W0
奏「今日は帰るわ」
P「ああ」
ガサッ
奏「いま持って帰れるのは、これくらいかな」
P「わかった」
奏「……ねえ」
P「うん」
奏「帰るまで、このままでいい?」
P「……お好きに」
奏「うん。……お疲れさま」
P「お疲れ」
パタン
P「……」
27:
◆WO7BVrJPw2 2019/07/01(月) 00:19:03.04
ID:XJiA5g9W0
奏「……ふぅ」
奏(バレていたかしら)
奏(バレていたら仕方ないけど……信じるしかない)
奏(耳に掛けるように飾られた花が)
奏(あなたからの、特別なプレゼントが)
奏(私の赤くなった耳を隠してくれているだろうって)
奏「……ふふっ」
おわり
元スレ
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