1:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:31:12.50
ID:Syr9wPYLO
ある日の事務所
P「………」カタカタ
P「あー……目がしょぼしょぼしてきた」
冬優子「プロデューサーさん、お疲れ様です♪ コーヒー、いかがですか?」
P「冬優子……わざわざ淹れてくれたのか。ありがとう、いただくよ」
冬優子「このくらい、プロデューサーさんのためなら朝飯前です?」キャピルーン
P「はは……嬉しいよ」
はづき「プロデューサーさん、よくできた担当アイドルを持てて幸せ者ですねー」
冬優子「いえいえ、ふゆなんてそんな……ねっ、プロデューサーさん?」
P「いや本当にそんなもんじゃないですよイタタタタ」
はづき「プロデューサーさん?」
冬優子「ねっ、プロデューサーさん?」ギューッ
P「いや~本当に気配りができていい子ですよ、冬優子は」
冬優子「プロデューサーさん……えへへ、嬉しいです?」
はづき「仲良しさんですね~。私、おやつの買い出しに行ってきますね~」
ガチャ、バタン
P「………」
冬優子「………」
P・冬優子「「おい(ねえ)、何か言うことは?」」
2:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:32:42.43
ID:Syr9wPYLO
P「いきなり人の尻をつねっておいて何もなしってことはないだろう」
冬優子「それはこっちのセリフよ! あんた、ふゆの評判とかそういうの守る気あるわけ?」
P「守る気はあるけど、はづきさん相手だとつい本音が漏れそうになって……」
冬優子「……ふぅん? あんた、もしかしてあの人のこと好きなの? へえ~~、そうなんだ。ああいうのがタイプなのね、ふ~~ん?」
P「べ、別に好きとかそういうのじゃないぞ。ただ、お付き合いするならああいう人がいいな~と漠然と思ってるだけだ」
冬優子「それを好きって言うんじゃない」
P「違うんだよ。こう、言葉にはしづらいけどさ……」
冬優子「……まあいいけど。さっき、最後にはちゃんと合わせてくれたし、ギリギリ及第点にしといてあげる」
P「つねられながら言葉を探すの、結構大変だったんだぞ」
冬優子「その状況で思ってもないことを言えるんだから、あんたも十分役者ね」
P「? 思ってもないことなんて言ってないぞ、俺は」
冬優子「え?」
P「冬優子のこと、『よくできた子』だなんて口が裂けても言えないけど。『気配りができる子』っていうのは本音だからな」
P「仕事中やオーディション中も、周りのことがよく見えてるし。今だって、俺が疲れてる時にタイミングよくコーヒー淹れてきてくれただろう」
P「だから、さっきのは俺の偽らざる本音だよ」
冬優子「………」
冬優子「あんたさ。そういうの、誰にでも言うんじゃないわよ」
P「え?」
冬優子「いいから、返事!」
P「は、はい……?」
冬優子「よし。そういうクッサいセリフ、大体の人間にはドン引きされるんだから。わかった?」
P「クサいかなぁ……」
冬優子「クサいクサい。あんたの靴下くらいクサい」
P「………」
冬優子「冗談だから! 本気で死にそうな顔するのやめなさいよ!」
P「俺の靴下、クサくないか?」
冬優子「クサくないから安心して」
P「じゃあ俺の言動も」
冬優子「それはクサい。覆らない事実」
P「えぇ……」
冬優子「あとウチと使ってる洗剤同じなの気に食わないから変えてくれない?」
P「それは知らん」
3:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:33:26.73
ID:Syr9wPYLO
冬優子「ていうかコーヒー冷めちゃうじゃない。せっかく淹れてあげたんだから飲みなさいって」
P「おっと、忘れてた。いただきます」
P「……うん、おいしい」
冬優子「甘さ加減が絶妙でしょ?」
P「これ、ブラックだから甘さの調節はしてないんじゃないか?」
冬優子「細かいことはいいのよ。甘さの調節をしないという調節をしたの」
P「哲学めいてるな」
冬優子「しっかしあんた、よく砂糖なしで飲めるわよね。苦くないの?」
P「苦いけど、それがいいんだよ。頭がスッキリするんだ」
冬優子「ふーん……ふゆも飲んでみようかな」
P「いるか?」
冬優子「新しく淹れなおすの。誰があんたの飲みかけなんていらないから、せいぜいたっぷり味わうことね!」
P「下手くそなツンデレみたいになってるぞ」
冬優子「うっさいバカ! 淹れてくる!」
P「ははっ」
4:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:34:42.94
ID:Syr9wPYLO
冬優子「にっが!」
P「ははは」
冬優子「あーなによその勝ち誇った顔! はー出た出た出ましたブラック飲めるだけで俺大人ですよアピールしてくるパターン! はいはいこっちはホットココアが美味しいお年頃で悪かったわね! ちょっと味覚の守備範囲が広いだけでマウント取ってくるなんて人間としての器が知れるのよこのすっとこどっこい!!」
P「ブラックひとつでよくそこまでスラスラ罵倒が出てくるな」
冬優子「それで? あんた、はづきさんのどこが好きなのよ」
P「急に話が戻ったな」
冬優子「どっかのプロデューサーが話を逸らそうとするからなー」
P「そうだったか?」
冬優子「で? で? どこが好きなの?」
P「だから好きとかそういうんじゃないって」
冬優子「でも魅力的だな~とは思ってるんでしょ? どの辺があんたの琴線に触れたの? 言ってみなさいってば~♪」
P「えらく食いつくな」
冬優子「乙女はみーんな恋バナが好きってこと!」
P「はぁ……仕方ないな。まず、雰囲気がほんわかしていて癒されるところ」
冬優子「ふゆと同じね」
P「え?」
冬優子「は?」
P「はい……」
冬優子「他には?」
P「ちょっとこっちをからかってくる小悪魔なところとか」
冬優子「ふゆと同じね」
P「効率よく仕事を終えられる切り替えの速さとか」
冬優子「ふゆと同じね」
P「まあ確かに切り替えは早いよな。切り替えは」
冬優子「はいはい、トゲトゲ皮肉言ってないで次。次教えて」
P「豊満なバスト」
冬優子「ケッッッッッ!!!」
P「そっちの方がよっぽどトゲトゲしてないか?」
冬優子「フンっ。なによ、豊満なバストがなくてわるーござんしたね!」
P「別に悪いとは言ってないだろう」
冬優子「じゃあ大きいのと小さいのどっちが好き?」
P「大きいの」
冬優子「そうね。あんたはこういう時でも正直に本心をぶつけてきてくれる。そういう奴だから、ふゆも信じてみようって思えたの」ゲシゲシ
P「待て冬優子、それは俺を足蹴にしながら言うべきセリフじゃない。もっと感動的な場面であいたたた」
冬優子「ツーン」
P「………」
P「よし、楽しく話せたな」
冬優子「逃げんなっ!」
5:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:35:46.17
ID:Syr9wPYLO
翌日
冬優子「うーん……もうちょっと遠目で撮ったほうがいい?」
P「……さっきから何してるんだ? スマホ片手にあっち行ったりこっち行ったり」
冬優子「見ればわかるでしょ?」
P「阿波踊り?」
冬優子「全国の徳島県民に謝りなさいよ!」
P「全国に拡大しても徳島にしか徳島県民はいないだろう」
冬優子「ツイスタにアップする写真を厳選してるのよ」
P「ああ、なるほど。見映えがいいワンショットを探していたんだな」
冬優子「そ。そのために今日は豪華なおやつを用意してきたんだから♪」
P「普段ドラッグストアの安売りお菓子をおいしそうに食べてる人間とは思えないほどの豪華さだ」
冬優子「うっさいバカ。ああいうのもおいしいけれど、こういう華やかなブレイクタイムがアイドルふゆには求められてるのよ」
P「確かにいい画になりそうだ」
冬優子「でしょ? 今日はバスケットの柄にもこだわってきたんだから」
P「このマフィン、手作りか?」
冬優子「そ! 美味しそうでしょ?」
P「ああ。よくできてる」
6:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:37:01.99
ID:Syr9wPYLO
冬優子「あんたも欲しい? ふふーん、どうしよっかなー♪ ふゆの手作りお菓子はすっごい価値があるんだから」
P「昔は何も言わなくてもスコーンを差し入れしてくれたりしてたのに……」
冬優子「あれは、あんたへの点数を稼ぐため! 今さらそんなの必要ないじゃない」
P「明け透けな関係も良し悪しだなぁ」
冬優子「……前の方がよかった?」
P「………いや。今の冬優子もいい」
冬優子「マーゾ♡」
P「おい」
冬優子「ほら、これでも食らいなさいっ!」
P「おわっ、馬鹿、いきなり口にマフィン押し込むなもごもご」
冬優子「あははっ!」
P「ツイスタ映えはどうした、ツイスタ映えは!」
冬優子「はっ! いけない、すっかり忘れてた!」
冬優子「今日は気合いに気合いを入れて服装もバッチリ整えてきたのに」
P「………」
P(確かに、いつも以上に寄せてあげている気がするな……)
冬優子「……じーー」
P「あっ」
冬優子「プロデューサーさんには、なんでもお見通しなんですね♡」
P「あ、あははは……」
冬優子「うふふ、ヘンタイ♡」
P「すみません」
冬優子「マフィン返せ!」
P「それは無茶だろう」
冬優子「かーえーせー! ふゆの純情も返せー!」
P「じゅ、純情!?」
どったんばったん
ガチャリ
はづき「おはようございまーす……あら? ふたりで何をしてるんですか~?」
冬優子「はーいプロデューサーさん、あーん!!」グイグイ
P「あーん!!」モゴモゴ
はづき「あらあら。仲良しもやりすぎないように、ですよ~?」
7:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:38:46.74
ID:Syr9wPYLO
後日
冬優子「ただいまー。あー、レッスン疲れた~」
P「………」
冬優子「プロデューサー? 戻ったわよ?」
P「ああ……おかえり。その様子だとこってり絞られたか」
冬優子「そーよ。あのトレーナー、いっつもふゆにダメ出ししてくるんだから……いつか目に物みせてやる」
P「はは……その反骨心が冬優子の強さだな……」
冬優子「………」
P「……冬優子?」
冬優子「あんた、今日はもう帰ったら?」
P「えっ」
冬優子「えっ、じゃないわよ。体調悪いの、見ればわかるんだから」
P「……バレるか」
冬優子「あんたの演技なんて、ふゆにかかればイチコロよ。伊達に普段から演技してないんだから!」
P「はは、それは説得力がある……冬優子はやっぱり、周りをよく見てるよ」
冬優子「褒め言葉なら今度でいいから。この後の仕事は?」
P「今日は、あとは冬優子の撮影の付き添いだけ」
冬優子「だったらなおさら問題ないじゃない。撮影にはふゆひとりで行ってくるから、あんたはさっさと家に帰って休みなさいよ」
P「……俺がいなくて、大丈夫か?」
冬優子「バカにしすぎ」
P「そうか……なら今日は、冬優子の優しさに甘える。ありがとう。このお返しはいつか必ず」
冬優子「言ったわね? じゃ、元気になったら容赦しないんだから」
P「はは、手厳しい」
8:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:40:08.79
ID:Syr9wPYLO
冬優子「荷物まとめるの手伝ったげるから、早く帰る準備しちゃいなさいよ」
P「ああ、わかった……」
冬優子「それと、一個だけ」
P「?」
冬優子「……笑って」
P「え」
冬優子「わかってるから。体調悪いのわかってて言うから。一回だけ、笑って」
P「……こ、こうか?」
冬優子「………」
冬優子「あははっ、ヘンな笑顔。ガッチガチ」
P「そりゃ、意識して笑おうとするとな……」
冬優子「でも……うん、これで大丈夫」
冬優子「きっと、撮影もうまくいくわ」ニコッ
9:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:42:06.67
ID:Syr9wPYLO
一週間後
P「で、お返しの内容が荷物持ちか」
冬優子「さーて! 今日は重さとか大きさとか気にせずにグッズ買い漁るわよー♪」
P「ちょっとは気にしてくれよ?」
冬優子「男なんだから根性見せなさい? ふゆがお仕事頑張ったご褒美なんだから」
P「確かに、この前の撮影の写真は最高の出来だったけど」
冬優子「じゃあプロデューサーさん、お願いしますね♪」
P「そっちのモードだと言い返しづらいな……」
冬優子「あはは、弱点発見♪」
P「女の子は強いな……」
冬優子「こうして歩いてると、周りからはデートに見えるのかも」
P「妙に嬉しそうに言うな。俺なんかがデートの相手と思われていいのか?」
冬優子「………はぁ」
P「なんでため息」
冬優子「あんたさ。ふゆをスカウトした日のこと、覚えてる?」
P「もちろん。ちょうどこの街で、アニメのポスターを眺めていた冬優子を見つけたんだ」
冬優子「そう。あんたはぶしつけにもいきなり声をかけてきて、いきなりアイドルに勧誘してきたの。段階とかいろいろすっ飛ばして、突然にね」
P「あれは、まあ……勢いが大事だと思って」
冬優子「いくらふゆの心が広いからって、あんなスカウト、普通その場で受けると思う?」
P「それは……でも、冬優子は受けてくれたじゃないか」
冬優子「そ。なんでだと思う?」
P「………」
10:
◆C2VTzcV58A 2019/04/09(火) 22:43:44.67
ID:Syr9wPYLO
冬優子「『この人、ちょっといいな……』って思ったから」
冬優子「……だったりして」
P「……冬優子、それって……」
冬優子「………」
冬優子「あ、お店着いた。ほらカゴ持って、行くわよ」
P「えっ!? ちょ、それはないだろ!」
冬優子「何から買おっかな~♪」
P「なあ冬優子、今のって」
冬優子「うっさいばーか♡」
おしまい
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