P「夏葉は方言出ないよな」夏葉「そうね」

2019-04-18 (木) 18:01  アイドルマスターSS   0コメント  
1: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:47:58.27 ID:Mu19C/tP0


P「この前、アンティーカの月岡さんと雑談する機会があってさ」

夏葉「ええ」

P「そういえば夏葉も地方の出身なのに方言出ないよな、と思ったんだよ」

夏葉「そうね……私は幼い頃から、畏まった場所で話す機会も多かったから」

P「あー。そっか、そういう場所だと」

夏葉「そう。あまりふさわしくないのよ。……特に私の出身地の方言は」

P「……夏葉の出身地の方言は? どういう?」

夏葉「わからないかしら」

P「ああ、ちょっとよく」

夏葉「汚いのよ」

P「え」

夏葉「名古屋弁は」





2: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:48:38.79 ID:Mu19C/tP0




P「汚いっていうのは?」

夏葉「例えば、そうね。プロデューサーはお鍋の取っ手の温度が高くて触れなかったとき、なんて言うの?」

P「……? 普通に『熱い』、だろ?」

夏葉「名古屋弁は『ちんちん』って言うのよ」

P「今なんて?」

夏葉「…………」

P「あの、夏葉さん? ちんちんって言いました?」

夏葉「仕方ないでしょう。そういう方言なのだから」

P「これは……うん、そうだなぁ。確かに夏葉の言うとおりかもしれない」

夏葉「でしょう? わかってもらえたなら嬉しいわ」

P「っていうか、用例がめちゃくちゃ気になるんだけど……名古屋の人はどんな感じで使うんだ」

夏葉「ここに、沸かしたばかりのお湯が入っているやかんがあるとするわ」

P「うん」

夏葉「当然、やかんも熱いはずよね」

P「そうだな」

夏葉「であれば、触ってしまったらやけどするでしょう?」

P「ああ」

夏葉「そういうときに……その……『ちんちんだで触ってかんよ』って言うのよ」

P「なんて?」

夏葉「…………」

P「あの、ごめん、もう一回言ってもらっていい?」

夏葉「嫌」

P「だって、夏葉、いま」

夏葉「セクハラで訴えるわ」

P「夏葉が自分から言ったのに」

夏葉「有栖川の家についてる弁護士は強いわよ」

P「ごめんなさい」




3: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:49:38.00 ID:Mu19C/tP0





夏葉「プロデューサーもこれでわかったはずよ。名古屋弁は汚いの」

P「いや、でも、悪意のある切り出しだろ、これは」

夏葉「というと?」

P「ほら、最低最悪の一単語を夏葉が持ってきた可能性もある」

夏葉「……まぁ、理解できなくはない反論ね」

P「だろ?」

夏葉「いいわ。今日は徹底的にやりましょう」

P「受けて立つ」

夏葉「さっきは名古屋弁の汚さを挙げたけれど、今度は難解さを切り口にするわ」

P「難解さ」

夏葉「プロデューサーも学生の頃は掃除時間、というものがあったでしょう?」

P「ああ」

夏葉「そのときは机を教室の後方に運ぶわよね」

P「もちろん」

夏葉「それ、なんて言ってたの?」

P「机を下げる……とか、運ぶ……とか?」

夏葉「ふふ、名古屋はね。机は『つる』の」

P「???」

夏葉「机をつって、って言ったら名古屋では机を運ぶのよ」

P「なんで?」

夏葉「知らないわよ。名古屋では机はつるものだもの」

P「ええ……」




4: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:50:25.65 ID:Mu19C/tP0





夏葉「それから……施錠することは?」

P「施錠すること……これは普通に鍵をかける、だろ」

夏葉「違うわ。名古屋では鍵はかうの」

P「かう……?」

夏葉「そう。かうのよ」

P「どういう字を当てるんだ、それ。飼う? 買う?」

夏葉「支う、らしいわ」

P「……また用例を聞いてもいいか」

夏葉「『ちゃんと鍵かっとかんと泥棒に入られるで確認しときゃあよ』……こんな感じかしら」

P「……なるほど」

夏葉「一瞬、ん? ってなるわよね」

P「そうだなぁ」

夏葉「でしょう?」

P「でも、これはまだ意味が取りやすい気がする。文脈からなんとなく理解できるし」

夏葉「そうね。でも強烈でしょう? 音が」

P「そうだな。強烈だ。音が」




5: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:52:00.78 ID:Mu19C/tP0





夏葉「あとはね、これはネイティヴになればなるほど顕著になるのだけれど」

P「ネイティヴ」

夏葉「書いてある文章を読むときも名古屋弁ナイズされるのよ」

P「名古屋弁ナイズ」

夏葉「お宮参り、って言葉があるでしょう」

P「あるな」

夏葉「ネイティヴはこれを脳内で勝手に変換するのよ」

P「どうやって」

夏葉「『おみゃあまいり』よ」

P「じゃあ『お前』なんかもそうなるんじゃないか」

夏葉「御名答。プロデューサーもわかってきたわね」

P「『おみゃあ』か」

夏葉「そうよ! ふふ、いいわね」




6: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:52:48.35 ID:Mu19C/tP0





夏葉「それじゃあ、ここからはもう一段階レベルを上げるわ」

P「ねぇ、趣旨変わってきてない?」

夏葉「一つのものを二人で使ったり、何かを分け合ったりすることはプロデューサーはなんて言うかしら?」

P「だめだ聞いてない」

夏葉「それで?」

P「はんぶんこ、とか……シェアする、とかだろ」

夏葉「違うわ! 『もうや』よ」

P「なんもわからん」

夏葉「何かをはんぶんこして欲しいとき、『もうやこしよみゃあ』って言うのよ」

P「これはもう何言われたかわかんないな」

夏葉「でしょう? 名古屋弁は難解なのよ!」

P「なんか楽しそうだな、夏葉な」

夏葉「名古屋弁は名古屋の外では使うべきではない、と教えられてきたから……」

P「ああ、それで……」

夏葉「ええ」





7: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:53:39.31 ID:Mu19C/tP0





夏葉「今度は、プロデューサーに標準語の例文を名古屋弁化してもらうわ」

P「ぜったいできない」

夏葉「できる、できないじゃないわ。やるの」

P「レッスンやトレーニングのときに言うそのセリフはめちゃくちゃかっこいいのに、今聞くとただの無茶ぶりになるの酷いな」

夏葉「まずは簡単なものからいくわよ」

P「まぁ、うん。やるだけやってみるか」

夏葉「『その机を運んでください』」

P「『その机つってください』か?」

夏葉「そうよ! ちゃんと覚えてるじゃない!」

P「さっき聞いたやつだしな。なんか行けそうな気がしてきたぞ」

夏葉「『卑怯なことはしてはいけません』」

P「……!? え、卑怯なことしない……がね……がや……とか? いや、違うな……難しい。ギブだ」

夏葉「『こっすいことしやぁすな』、よ」

P「もうだめだ」

夏葉「諦めたらそこで終わりよ?」

P「こんなんわかるわけない。夏葉こそ『こっすいことしやぁすな』だ」

夏葉「ふふ、使いこなせてるじゃない! 次、行くわね」




8: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:55:13.85 ID:Mu19C/tP0





夏葉「『雨がとても降っているので傘を持って行きなさい』」

P「これは知ってるぞ! とてもは『でら』とか『どやりゃあ』って言うんだろ!」

夏葉「ええ、そうね」

P「だから答えは『雨どえりゃあ降っとるで傘持ってきやぁ』だ!」

夏葉「うふふ、良い線よ! でもあと一歩足りないわ!」

P「え、自信あったのに」

夏葉「『だあだあ降りだで傘持ってきゃあ』よ」

P「こすい!!」

夏葉「ちょっと卑怯だったかもしれないわ」

P「ほらー! 次だ次!」

夏葉「『アナタは阿呆ですか?』」

P「え、そのまんまじゃないの」

夏葉「違うわ。馬鹿とか阿呆とかは『たーけ』って言うのよ」

P「つまり?」

夏葉「『アンタたーけか?』ね」

P「めちゃくちゃ煽られてる感が出るな」

夏葉「そうね」

P「次は?」

夏葉「プロデューサーもちょっと楽しくなってきてるわね」

P「うん。楽しくなってきた」

夏葉「『とてもしんどいです』」

P「『どえりゃあしんどい』」

夏葉「ハズレ。正解は『えらい』よ」

P「えらい!? しんどいこと『えらい』って言うの?」

夏葉「そうよ。疲れたときも『えらい』よ。『とても疲れたからもうダメです』は『えらいでまーあかんわ』になるわ」

P「難しすぎる」




9: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:56:08.33 ID:Mu19C/tP0





夏葉「逆ならできるんじゃないかしら」

P「俺が標準語訳するってことか」

夏葉「そう。いくわよ? 『もうわやだわ』」

P「なんて?」

夏葉「『もうわやだわ』」

P「ごめん、なんて?」

夏葉「『もうわやだわ』……何回言わせるのよ」

P「ちなみに、それはさっきの『もうや』とは全然違う単語か?」

夏葉「全然違うわ」

P「降参」

夏葉「『わや』はね、状況がめちゃくちゃである様を表すの」

P「へぇー、いや、わからんわ」

夏葉「これはちょっと問題が悪かったわ。ごめんなさい」

P「いや、うん、どの道わかんなかったと思うけど」

夏葉「気を取り直して次、行くわね。『おっきいのしかないで壊してちょ』」

P「あー、これはなんとなく状況が読めるぞ?」

夏葉「答えを聞こうかしら」

P「『お札しかないので両替してください』、だ」

夏葉「すごいわ! アナタ名古屋弁の才能あるわよ!」

P「その才能いるか?」




10: ◆TOYOUsnVr. 2019/04/05(金) 17:56:56.26 ID:Mu19C/tP0





夏葉「さて、こんなところかしら」

P「うん、まぁ、地元以外じゃ使いにくそうな言語だってことはよくわかった」

夏葉「でしょう?」

P「ああ。……んー、いや、でも」

夏葉「まだ食い下がるつもり?」

P「夏葉はさ、普段しっかりした言葉遣いだろ?」

夏葉「そうね」

P「だからこそ、その分のギャップがかわいいと思ったよ」

夏葉「……そう」

P「なんだ、照れてるのか」

夏葉「照れてなんかないわよ。かわいい、なんて言われ慣れてるもの」

P「そうか」

夏葉「ええ」

P「かわいかったよ」

夏葉「…………」

P「これは顔が『ちんちん』で合ってるか?」

夏葉「知らないわよ、もう!」



おわり




元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554454077/

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