1:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 23:26:02.83
ID:+KmGKB950
甘奈「え?」
甜花「甜花……このままじゃ、ダメになる……」
甜花「なーちゃんがいないと、生きていけない……ダメ人間になっちゃう……!」
甘奈「そうかなぁ? あれだけ不安がってたアイドルのお仕事も、今は一生懸命がんばって楽しんでるし」
甘奈「いつの間にか、1人で何でもできるようになっちゃうと思うけどなー」
甜花「えっ……そう思う……?」
甘奈「うん! 甜花ちゃんはできる女の子だから!」ニコニコ
甜花「甜花はできる子……にへへ……」
甜花「じゃあ、まだなーちゃんに甘えててもいいよね……?」
甘奈「当たり前だよ! 歯磨きの続きしよ? はい、あーんして」
甜花「あーん……」
甜花「はっ……!? だ、ダメ……!」プイッ
甘奈「どうしたの?」
甜花「これ、いつものパターン……こうして甜花は、なーちゃんの優しさにハマっていく……」
甜花「堕落していく……危ないとこだった……」フゥ…
甘奈「もー、気にしすぎだよ甜花ちゃん。歯磨きを妹にしてもらうのなんて、万国共通で一般常識だからね」フフ
甜花「……」
2:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 23:34:41.09
ID:+KmGKB950
甜花「なーちゃん……」
甘奈「?」
甜花「甜花が、堕落の一途を辿ってる原因……なーちゃんにもあると思う……」
甘奈「え」
甜花「なーちゃんは、お掃除もお洗濯も、てきぱきこなして……お料理も作れる……ハイスペック……」
甜花「その上、甘えさせ上手……甜花のお世話、嬉しそうにしてくれるから……ついつい甘えちゃう……」
甜花「もちろん……一番悪いのは、甜花だけど……」
甘奈「ど、どっちが悪いとか、そういうことじゃないと思うな。甘奈は甜花ちゃんのお世話してて幸せだもん!」
甘奈「甜花ちゃんは、お世話されてどうだった? 喜んでくれてたよね?」
甜花「……」
甘奈「て……甜花ちゃん……?」
甜花「喜んでたのは確か……だけど……」
甜花「あのね、なーちゃん……。さっきなーちゃんは、甜花のこと……できる子だって言ってくれた……」
甜花「でも、正しくは……やればできる子だと思う……」
甘奈「うんっ! そうだよ! 甜花ちゃんはやれば何でも…」
甜花「だから、甜花……これから、やらなきゃいけない……」
甜花「やっぱり、なーちゃんに甘えないよう……がんばらなきゃいけない……!」グッ
甘奈「!!」
3:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 23:43:55.21
ID:+KmGKB950
甜花「歯ブラシ、貸して……」スッ
甘奈「あっ」
甜花「これからは……歯磨き、自分でやる……」
甜花「これが、甜花自立の第一歩……!」シャコシャコ
甘奈「……甜花ちゃん……」
――――
千雪「そんなことがあったの」
甘奈「……」
千雪「で、いつもみたいに甘えて来てくれないから、しょんぼりしてるのね」フフ
甘奈「し、してないよ。甜花ちゃんの一世一代の決意だもん」
甘奈「甘奈は応援してあげなきゃ。自分の脚でしっかり立とうとしてる甜花ちゃんを」
甜花「うぅぅ……」グッタリ
千雪「レッスンでヘトヘトになって、違う意味で立てないみたい……」
甘奈「て、甜花ちゃん!?」スタタッ
甜花「来な、いで……!」
甘奈「!?」
甜花「大丈夫……甜花、まだ余裕……っ」プルプル
甜花「ここで、なーちゃんに頼ったら……ぜんぶ水の泡、だから……!」
4:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 23:52:36.74
ID:+KmGKB950
甘奈「甜花ちゃん……!」ウルウル
甘奈「分かった、じゃあ全力で応援するね! がんばれ!」
甜花「ふうっ……くっ……!」プルプル
甘奈「がんばれ! 甜花ちゃんなら立てる!」
甜花「うゅーーっ……!」プルプル
千雪(生まれたての子鹿さんみたい)
甜花「……え、いっ……!」スッ
甜花「や、やった……! ひとりで立てた……!」パァァ
甘奈「すごいっ! すごいよ甜花ちゃんっ!」スタタタッ
甜花「にへへ、なーちゃ……あっ」
甜花「ダメ……!」
甘奈「!!」ピタッ
甜花「こ、このくらい……甜花なら、できて当然……」キリッ
甜花「だから、褒めるのも、なでなでもいらない……」
甘奈「そ……そっか。そうだよね」
甜花「お水飲んでくる……」
スタスタ
甘奈「……」
千雪(またしょんぼりしちゃった)
千雪(それにしても、甜花ちゃんの意思は本物みたい。いつもならすぐ立たせてもらうのに)
5:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 00:03:54.41
ID:CUOVQqxp0
――――
甜花「なーちゃん……」
甘奈「どうしたの!? ケーキ食べさせてほしいの!?」キラキラ
甜花「ち、違う……ひとりで、食べれる……」パクッ モグモグ
甘奈「そう……」
千雪(やっぱり甜花ちゃんのお世話ができなくて辛そうね)
千雪(こうなると、甘奈ちゃんも『脱・甜花ちゃん』を目指さなきゃ)
甜花「ケーキじゃなくて……これ、見て……」ピラッ
甘奈「?」
甜花「千雪さんも……」
千雪「私も?」スッ
千雪「これは……」
甜花「さっき考えた……甜花が自立するための、5ヶ条……」
甜花「これからは、これを意識して生活する……」
千雪「確かに、この5ヶ条が当たり前になれば自立したと言ってもいいと思うけど」
千雪「大丈夫? 一気にやらなくても、少しずつ…」
甜花「へーき……! 甜花は、やればできる子だから……!」フンス
千雪(すごいやる気。まるで別人を見てるみたい)
千雪(だけど……)
甘奈「いいんじゃないかな」
千雪「!」
6:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 00:15:25.21
ID:CUOVQqxp0
甘奈「甜花ちゃんなら、きっとすぐに慣れちゃうよ!」
甘奈「応援するからね!」スッ
甜花「なーちゃん……ありがとう……」ギュッ
千雪(固い握手……)
千雪(そうよね。せっかくの決意なんだから、口は出さずにしばらく見守りましょう)
――――
『甜花自立への5ヶ条・その1』
甜花「規則正しい生活リズムを、身につける……!」デデン
甜花「朝、決まった時間に起きて……夜、決まった時間に寝る……」
甜花「お昼寝は1日30分……ゲームは1日2時間……」
甜花「お休みの日も……なるべく……同じ、リズムで……」ウトウト
甘奈「あ……! 甜花ちゃん、うとうとしてる……!」コソコソ
千雪「いつもならお昼寝の時間だから」コソコソ
甜花「……zzz」
千雪「あら、ソファーに座ったまま夢の中へ」
甘奈「ヤバい! もう30分のお昼寝は済んでるし、このままじゃ甜花ちゃん自立計画が危うい!」
甘奈「何とかしないと。何とか……」
千雪「甘奈ちゃん」ツンツン
甘奈「え?」
千雪「あれを見て」
7:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 00:25:10.95
ID:CUOVQqxp0
甜花「うー……!」ブンブン
甘奈「あれ? 起きてる」
千雪「必死に頑張ってるわ。このまま眠らず過ごせるといいけど」
甜花「……zzz」
甜花「はっ……!? ね、寝てない……甜花、ぜんぜん寝てない、よ……」
甜花「うう……睡魔、強力……このままじゃ負ける……」
ポワンッ
悪魔甜花『ふっふっふ……』
甜花「!」
悪魔甜花『ちょっとくらい、大丈夫……1日だけなら、平気……』
悪魔甜花『眠っちゃえ……きっと気持ちいいよ……』
甜花(そ……そうだよね……追加で、30分くらいなら……)
ポワンッ
天使甜花『ダメだよ……』
甜花「!」
天使甜花『妥協しちゃ、ダメ……自分で決めたことだから……』
天使甜花『最後まで、やり通さなきゃ……』
甜花「……」
甜花「うん、その通り……。甜花、がんばる……!」
甜花「あぅ……でも、睡魔がホントに強い……眠すぎる……」ウトウト
9:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 00:38:06.51
ID:CUOVQqxp0
甜花「ようし……事務所の中、歩く……」スッ
スタスタ
甜花「こ……こうしてれば、眠気に負けない……」
甜花「……zzz」ガクッ
甜花「はっ……!? こ、この……!」ペチ
甘奈「甜花ちゃん、ほっぺを叩いて眠気を堪えてる……!?」
甘奈「並外れた根性だよ……! さすが甘奈のお姉ちゃん……!」ウルウル
千雪「甘奈ちゃん、あまり身を乗り出すとバレちゃいますよ」
――――
『甜花自立への5ヶ条・その2』
甜花「お菓子の摂取量を、最小限に抑える……!」デデン
甜花「これまでは……際限なく、お菓子を食べてた……」
甜花「ポテチ、チョコレート、アイス……アメ、グミ、なーちゃん特製スイーツ、などなど……」
甜花「色々あるけど……どれか1つだけで、1日を乗り切る……」
甜花「……もうケーキ食べちゃったから……がまん……」
千雪「甜花ちゃんそんなに食べるの?」
甘奈「ううん。最低2つ、多くて3つだよ」
甘奈「近頃はアイドルのお仕事が忙しいから、反動で3つくらい食べちゃうかな」
智代子「あっ、甜花ちゃんだ!」
甜花「!!」ササッ
智代子「え? な、なんで身構えるの?」
10:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 00:48:24.81
ID:CUOVQqxp0
甜花「智代子ちゃん……通称チョコちゃん……」
甜花「いつも甜花に、美味しいチョコレートくれる……優しい人……」
智代子「えへへ、だって美味しいものはみんなで食べた方がいいし」
智代子「そうだ! 実はさっき有名店の限定チョコをゲットしたんだけど、よかったら食べる?」
甜花「はう……!?」
甜花「げ、限定チョコ……うう……ほしい……」
智代子「あげるよ。はいどうぞっ」スッ
甜花「……美味しそう……」ゴクリ
甘奈「ダメだよ甜花ちゃん……! アイス食べたんだから我慢しなきゃ……!」
千雪「あ、手が伸びてる」
甘奈「甜花ちゃーん……!!」
甜花「にへへ……1日だけ、2つ食べたって……」
ポワンッ
天使甜花『ダメ……せっかく、自立しようと頑張ってるのに……』
甜花「!」
天使甜花『ここで負けちゃ、ダメ……頑張って……!』
甜花「そ、その通り……ちょっとの油断が、命とりになるかもしれないし……」
ポワンッ
悪魔甜花『ふっふっふ……』
甜花「!?」
悪魔甜花『1つくらい、余分に食べても……大したことない……』
悪魔甜花『きっと美味しいよ……限定チョコ……。1つ、食べちゃえ……!』
11:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 01:02:20.39
ID:CUOVQqxp0
甜花「お……美味しいチョコ……」
甜花「限定の……」
智代子「うん、限定のチョコ! 口に入れたらとろけちゃうんだー」
甜花「……」ダラー
甘奈「甜花ちゃんのヨダレがすごいことに」
千雪「我慢できるかしら……」
甜花「……」
甜花「ご……ごめんなさい……!」ペコリ
甘奈・千雪「!!」
甜花「甜花、今……すといっくな生活を、目指してる……」
甜花「気持ちは嬉しい、けど……チョコは、遠慮します……」ペコリ
智代子「あっ、そうなんだ。ごめんね? そんな時に誘惑しちゃって」
甜花「ううん……で、でも……」
甜花「明日なら、食べられるから……」チラッ チラッ
智代子「そうなの? なら事務所の冷凍庫で冷やしておくから食べてよ!」
甜花「いいの……?」
智代子「メモも添えておくよ。『これは甜花ちゃんの』って」ニコッ
甜花「あ、ありがとう……!」パァァ
甘奈「甜花ちゃん……よく耐えたね……偉いよ……!」グスッ
千雪「だ、だから甘奈ちゃん。そんなに身を乗り出すと見つかっちゃうから」アセアセ
16:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:05:40.20
ID:+bxGooI/0
甘奈「見つかってもいいと思う! すぐ近くで応援したい!」
千雪「そうすると、甘奈ちゃんに頼るっていう、甜花ちゃんへの誘惑が1つ増えちゃうから……」
甘奈「あっ、そうだった……。甘奈も甜花ちゃんへの甘やかし欲を無くさないと」
千雪「応援したいって気持ちは、甘やかしでも何でもないと思いますよ。こっそりと見守ってあげましょう」
甘奈「うん!」
――――
『甜花自立への5ヶ条・その3』
甜花「なるべく、外に出る……!」デデン
甜花「甜花、学校とお仕事の時以外は……ほぼ自宅警備してる……」
甜花「それはマズい……ゲームやお昼寝の時間を、制限しちゃえば……外出の時間も増えるし……」
甜花「お散歩でもして、健康的になろう……!」グッ
甜花「さっそく行動する……。今日はもう、やることないから……じっくり外で過ごせる……!」
スタスタ
甘奈「甜花ちゃんが1人で外に出ようとするなんて」
千雪「半端な覚悟じゃないってことね。改めて、甜花ちゃんの覚悟が伝わってくる」
甘奈「大丈夫かな? 人酔いしないかな?」
千雪「この辺はそんなに多くの人が通らないから、大丈夫だと思うけど……」
千雪「もしものことがあったら、助け舟を出しましょうか」
甘奈「うん、そうしよう」
17:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:18:39.74
ID:+bxGooI/0
――――
甜花「……」スタスタ
甜花(甜花……なーちゃんや、千雪さん……プロデューサーさんがいなくても……歩けてる……)
甜花(1人で、お散歩してる……)
甜花(ふふ……ウォーキング……今の甜花は、意識が高い……)キラーン
千雪「今のところ、順調ね」
甘奈「だね。歩き方も普通だし、顔も自信が満ち溢れてる」
甘奈「甜花ちゃんのドヤ顔、可愛いなぁ」ニコニコ
千雪「うふふ、そうね」
甘奈「あ! 人が来た!」
「でさー」 「マジで?」
甜花「……」スタスタ
甘奈「おお! 難なくすれ違った! 甜花ちゃん、成長したね……!」
千雪「ええ」
「はい、お世話になっております」 「あははは!」
甜花「……」スタスタ
甘奈「また普通にすれ違った!」
千雪「……いいえ、よく見て」
甘奈「?」
甜花「……」プルプル
甘奈「あっ、ちょっと震えてる」
千雪「苦手意識はまだあるみたい」
18:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:27:40.17
ID:+bxGooI/0
甘奈「多少は仕方ないよ。このままいけば、いずれは1人で都心を歩けちゃいそう!」
千雪「そうなるといいですね」フフ
甜花(……ふー……間違いない……)
甜花(甜花、成長してる……!)
甜花(完璧とまではいかないけど……知らない人、大丈夫になってきた……)
甜花(サイン会、握手会で……ファンの人と、お話ししてるおかげかな……にへへ……)
スタスタ
甜花(……ちょっぴり、疲れてきたかも……体力的にじゃなくて、精神的に……)
甜花(お散歩、気持ちいいけど……事務所に帰りたくなってきた……)
ポワンッ
悪魔甜花『帰ろう……』
甜花「!」
甜花(また出た……甜花の、悪の心……!)
悪魔甜花『お散歩なんて、つまんない……事務所に帰れば、お昼寝もできるし、限定チョコも食べれる……』
悪魔甜花『まだ、眠いでしょ……? 甘いもの、食べたいでしょ……?』
甜花(ううっ……)
悪魔甜花『それとも、お家に帰る……? ゲームができるし……どの場所よりも、リラックスできる……』
悪魔甜花『さあ……自分に正直になって……』
甜花(く……屈しない……甜花、屈しない……!)
甜花(せっかくここまで、頑張れてるから……やり遂げなきゃ……)
19:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:43:19.44
ID:+bxGooI/0
ポワンッ
天使甜花『その通り……ここまでよく頑張ってる……』
天使甜花『今までの甜花からは、考えられない……すごいこと……』
甜花(うん……)
天使甜花『なーちゃんや、千雪さんも……背中を押してくれてるはず……』
天使甜花『甜花のすごいとこ、もっと見せよう……』
甜花「……うん……!」
甜花「ありがとう、善の心……やる気出てきた……。ちょっと先の公園まで、出発……!」
スタスタ
甘奈・千雪「……」
甘奈「千雪さん」
千雪「なに、甘奈ちゃん?」
甘奈「甜花ちゃん、本当によく頑張ってるね」
千雪「ええ」
甘奈「実はね? 甘奈、良くないこと考えてたんだ」
甘奈「『甜花ちゃんのことだから、すぐ甘奈を頼ってくれる』って。自分が甜花ちゃんを甘やかしたいからって、そんなことを」
甘奈「でも、あの顔を……甜花ちゃんの『やるぞ!』って顔見てたら……」
甘奈「自立計画、心の底から応援したくなった」ニコッ
千雪「そうね。あんなに必死だもの」
甘奈「いい加減に甘奈も、甜花ちゃんを気にかけるの卒業しないとね」エヘヘ
千雪「ううん、姉妹だから気にかけて当然よ」
千雪「ただ歯磨きとか、ご飯を食べさせたりするのは……」
甘奈「あはは……ほどほどにしないと、だね」
20:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:53:52.11
ID:+bxGooI/0
――――
『甜花自立への5ヶ条・その4』
甜花「知らない人と、お話する……!」デデン
甜花「外出できたから、次の段階に移る……名前も、顔も知らない人とお話して……人見知りを、克服していく……」
甜花「最初はあいさつだけでもいい……話しかけよう……」
甘奈「あの甜花ちゃんが知らない人とお喋りなんて」
千雪「驚きの連続ね」
甘奈「これこそ不安だよ……大丈夫なのかな? パニックで固まっちゃうかも」
千雪「ファンの方との交流で、ある程度は喋れるようになってると思うけど」
甜花(うー……ハードル、高すぎたかな……)
甜花(そ、そんなことない……! 甜花は、やればできる子……自信を持って……)
甜花(えっと……誰にしよう……)キョロキョロ
甜花(あ……向こうの、ベンチに座ってるおばあさん……優しそう……)
甜花「すー……はー……」
甜花(よし……)スッ
スタスタ
甜花「……」スタスタ
スタスタ
甜花「……」スタスタ
甘奈「おばあさんの周りをウロウロしてる」
千雪「なかなか勇気が出ないのね」
21:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 01:06:47.97
ID:+bxGooI/0
甘奈「こうなったら、ここから念を送ろう。頑張れーって」
千雪「いい考え! 私も参加するわ」フフ
甜花(あぅ……一歩が、踏み出せない……)
甜花(甜花はやればできる子……甜花はやればできる子……)
甜花「……あ……」
甜花「あのっ」
おばあさん「?」
甜花「こっ……こんにち、は……」
おばあさん「こんにちは」ペコリ
甜花「い、いい……お天気、ですね……」
おばあさん「そうですねぇ。こんな日は、外に出ないともったいないわ」
甜花「て、甜花も、そう思いましゅ!」
甜花(あぅ……噛んだ)
おばあさん「あなた、とっても可愛いわね。モデルさんかしら?」
甜花「ふぇ? あ、えっと……アイドル、です……」
おばあさん「まあ、アイドル! すごいわねぇ」
甘奈「やったね千雪さん♪」
千雪「ええ、よかった」フフ
千雪(思いが通じたのかも。いいえ、甜花ちゃんの頑張りね)
25:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:23:16.01
ID:qRrpq2AY0
――――
おばあさん「アイドルって、歌を歌ったり、踊ったりするの?」
甜花「は、はい……」
おばあさん「素敵なお仕事だわ」
甜花「甜……わ、わたしも、そう思います……」
おばあさん「テレビにも出てるのかしら」
甜花「ちょっとだけ……」
おばあさん「そうなの」
甜花「……」
甜花(10分くらい経ってるけど……これ、ちゃんとお話できてるの……かな……)
甜花(『はい』とか、『そうです』とか……相槌しかうってない……)
甜花(甜花も……おばあさんのこと、聞いた方がいいよね……?)
甜花(な、なにを質問すれば……)
ポワンッ
天使甜花『落ち着いて……頭、整理して……』
天使甜花『なーちゃんや、千雪さん……プロデューサーさんと、お話する時みたいに……』
甜花(そ、そっか……深呼吸して、いつものように話せば……)スー ハー
ポワンッ
悪魔甜花『無理しないで……知らない人と話すの、嫌でしょ……?』
悪魔甜花『挨拶できただけでも、充分……今日はもう、やめとこう……』
甜花(それは……そうだけど……)
26:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:44:04.58
ID:qRrpq2AY0
天使甜花『……ずっと、思ってたけど……』
天使甜花『悪魔甜花……甜花を悪い道へ導くの、やめて……』
悪魔甜花『どこが悪いの……? 人間、無理しない生き方をした方が、ずっと楽だし……』
天使甜花『楽な道ばっか選んでたら……甜花のためにならない……!』
悪魔甜花『負担をかけちゃうと、甜花が可哀想……!』
天使甜花『なにを……!?』スッ
悪魔甜花『やるの……!?』スッ
ペチペチペチペチ
甜花(あわわわ……! て、甜花の中で、甜花が戦ってる……!?)
甜花(やめて……争わないで……!)
おばあさん「そうそう。アイドルといえば」
甜花「!」
おばあさん「私、孫がいるんだけど、アイドルの女の子が出る番組が大好きでね」
おばあさん「テレビの前でマネっこするらしいの」
甜花「マネっこ……可愛い……」
おばあさん「そう、可愛いのよ。大きくなったらアイドルになるんだって、口癖のように言ってて……」
おばあさん「あら? あなた、名前は確か」
甜花「て……甜花、です……大崎甜花……」
おばあさん「甜花ちゃん! もしかしたら」
甜花「?」
27:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 01:08:23.61
ID:qRrpq2AY0
おばあさん「孫がね、目標にしてるアイドルがいるの」
おばあさん「『あるすとろめりあ』っていうユニットの、『てんかちゃん』みたいになりたいって」
甜花「!!」
甜花「それ……わたし……!」
おばあさん「やっぱり! こんな偶然あるのかしら!」
おばあさん「ごめんなさい、年甲斐もなく興奮しちゃった」フフ
甜花「い、いえ……」
おばあさん「そうなのね。あなたが甜花ちゃん……」
おばあさん「今度、あなたが出てる番組を孫に教えてもらうわ。どんなに素敵か、知りたくなっちゃった」
甜花「あう……お、おそれ多い、です……」
おばあさん「ふふ」
甜花「……あの……お、おばあさん……もしよければ……」
甜花「お孫さんに……甜花の、サインとか……」
おばあさん「サイン? いいの?」
甜花「て、甜花のでよければっ」
おばあさん「嬉しいわ! きっと大喜びする」
甜花「にへへ……あと、写真なんかも……」
おばあさん「写真まで。ありがとうございます」ペコリ
甜花「あ、頭、上げてください……!」アセアセ
甘奈・千雪「……ふふ♪」ニコニコ
28:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 01:16:14.36
ID:qRrpq2AY0
甘奈「甜花ちゃん、人気者だねっ」
千雪「そうですね。メディア露出も着実に増えてきてるし、色んな人に知ってもらえてると思う」
甘奈「知らない人とお話するのもクリアしちゃったし!」
甘奈「ヤバいよ、ただでさえ可愛い甜花ちゃんが、完璧なコミュニケーション能力を得たら……」
甘奈「トップアイドルへのハードルが無くなっちゃう! 顔パス状態だよ!」
千雪(ちょっと想像できない……って言ったら酷いわね)アハハ…
千雪(でもソロ活動の時に必ず役立つし、アイドルとして成長できることには違いないわ)
おばあさん「あら、そろそろ帰らなきゃ」
おばあさん「もう少しお話したかったんだけど……」
甜花「時間なら、仕方ない、です……」
おばあさん「サインに写真まで。ありがとうございます」ペコリ
甜花「いえ……! お孫さん、絶対アイドルになれるから……!」
おばあさん「ありがとうございます。伝えておきます」ニコッ
――――
『甜花自立への5ヶ条・その5』
甜花「家事をこなす……!」デデン
甜花「ということで、公園から事務所……事務所から、家に帰ってきた甜花が、今からすることは……」
甜花「なーちゃんと甜花の、夕食を作る……!」フンス
甜花「ママとパパは、お出かけしてるから……2食分……できるかな……」
甜花「うん……やれる……甜花なら、絶対に……!」フンス
甘奈(鼻息ふんすしまくってる。おばあさんとのお話で、やる気が最高潮に達してるみたいだね)コソコソ
甘奈(千雪さんにはラインで逐一報告するとして……大丈夫かな。なにを作るんだろう)タプタプ
29:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 01:36:00.92
ID:qRrpq2AY0
甜花「料理未経験だし……難しいものに挑戦したら、失敗する……」
甜花「だからここは、簡単にできるメニューを……!」キリッ
甘奈(冷静だ! いいよいいよ甜花ちゃん!)
甜花「冷蔵庫を確認……」ガチャ
甜花「……ふむふむ……」
パタン
甜花「決めた……オムライスを、作ろう……!」
――――
甜花「あう……卵の殻、ボウルに入っちゃった……」
甜花「取り出すの、難しい……」
甘奈(うー、やってあげたい)
甜花「ふぅ……なんとか摘出できた……」
甜花「次は、ケチャップライスを作る……!」
甜花「玉ねぎ、にんじん、豚バラ肉を細かく刻んで……」トントントン
甘奈(あああああっ! 猫の手だよ甜花ちゃんっ! 指切っちゃうよぉっ!)
甜花「……う……ひっく……目に染みる……」ウルウル
甜花「玉ねぎ、強敵……でも刻まないと……」トントントン
甘奈(玉ねぎより猫の手にして、お願いだからっ! どうする!? 出て行っちゃう!?)
甜花「あ……そうだ、猫の手……」
甘奈(ほっ)
甜花「包丁で、食材を切る時は、猫の手にする……危なかった……」トントントン
甘奈(ひとまず安心だけど、幸先不安だよ。怪我だけしないように気をつけてね……)
31:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 01:53:11.25
ID:PCyvT48i0
(30分後)
甜花「できた……! あとは、ケチャップで……ハートマークを書いて……」
甜花「なーちゃん、呼びに行こう……」
甘奈(ヤバっ。すぐ近くで見守ってたことを知られるわけにはいかない)
甘奈「あれ? いい匂いがするー」スッ
甜花「あ、なーちゃん……ちょうどよかった」
甜花「甜花、ごはん作った……よかったら、食べてほしいな……」
甘奈「え!? 甜花ちゃんが甘奈のために!?」
甜花「うん……これも、自立計画のうちの、1つ……」
甘奈「そうなんだ! わあ、オムライスだー♪ ありがとう甜花ちゃん!」
甜花「にへへ……」
甘奈「さっそく食べていい? お腹ぺこぺこなんだー」
甜花「もちろん……先に、食べてて……」スタスタ
甘奈「どこ行くの?」
甜花「なーちゃんが干してくれた、洗濯物……取り込んでくる……」
甘奈「甘奈も手伝うよ!」
甜花「ダメ……甜花1人でやらなきゃ、意味ないから……」
甜花「てきぱきと済ませて……戻ってくるね……!」
スタタタッ
甘奈(ふふ、元気いっぱい。やる気が衰え知らずだね)
甘奈「さてと。いただきまーす」パクッ
モグモグ
甘奈(形は不格好だけど、愛情がこもってて。すっごく美味しいよ甜花ちゃん♪)ニコニコ
32:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 01:54:21.10
ID:PCyvT48i0
――――
カチャカチャ
甜花「なーちゃん……お皿、甜花が洗うよ……」
甘奈「任せっきりはよくないもん! 甘奈にも手伝わせて?」
甜花「だけど……」
甘奈「これは大崎家のお仕事だし、なにも1人でやることないよ」
甘奈「自立計画のことなら、甜花ちゃんがお皿洗いに参加してるってことが大事だと思うな」
甜花「そ、そうかな……」
甘奈「そうだよ! ね? 一緒にやろ?」
甜花「……うんっ……」ニコッ
甘奈「お皿洗ったら何をするの?」
甜花「えっと……お風呂を沸かして……甜花の部屋の掃除、ちょこっとやる……」
甜花「そのあと、お風呂入って、歯を磨いて……寝る……」
甘奈「寝るの? テレビ観ないんだ」
甜花「今日は、早めに寝たい……」
甘奈(やっぱり疲れたのかな。急に色んなこと始めたから)
甜花「明日は、7時に起きないと……なーちゃんに、起こしてもらう前に……」
甘奈「早寝早起きだね。がんばって!」
甜花「うん……!」
――――
甘奈「っていう感じだよ」
千雪『お家でも一生懸命ね。今は何をしてるの?』
甘奈「お風呂に入ってる」
千雪『そう……』
33:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 01:55:05.22
ID:PCyvT48i0
千雪(いつかガス欠を起こすんじゃないかって不安だったんだけど、心配はなさそうね)
甘奈「千雪さん? どうしたの?」
千雪『ううん、何でもない。そろそろお休みしましょうか』
甘奈「そだね! また明日事務所で!」
千雪『ええ。おやすみなさい』
甘奈「おやすみなさい!」
甜花「へくちっ」
甜花「んぅ……誰か……甜花の噂、してる……?」
――――
(翌日・事務所)
千雪「ふー……」
P「千雪、お疲れ様」
千雪「プロデューサーさん、お疲れ様ですっ」
P「今日はやけに気合入ってるな。何かあったのか?」
千雪「はい。身近な人がとても頑張ってるんです。だから、私も感化されちゃって」
千雪「いつもより気を引き締めてレッスンができた気がします」
P「見ていて伝わってきたよ。その身近な人って誰だ?」
千雪「プロデューサーさんも知ってる人ですよ」
P「俺も?」
ガチャ
甘奈「こんにちはー!」
千雪(あら、噂をすれば)
34:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 01:56:24.63
ID:PCyvT48i0
P「甜花と甘奈が来たみたいだ」
千雪「そうですね」
千雪「……あら?」
甘奈「ほら、甜花ちゃん。事務所着いたよー」グイグイ
甜花「あうー……」グデー
甘奈「ソファーまで行こう? あとちょっとだから」
甜花「うん……」ダラーン
千雪「……」
P「どうしたんだ甜花!? 具合が悪いのか!?」
甘奈「ううん、病気とかじゃないの。甜花ちゃん、もうちょっとだからね!」
甜花「うう……」
甘奈「あんよがじょーず、あんよがじょーず」
ボフッ
甘奈「はい到着!」
甜花「ありがと、なーちゃん……」ゴロンッ
千雪(ソファーに着いた途端、寝ころんで丸まっちゃった)
P「説明してくれ甘奈。甜花に何が起きた?」
甘奈「んーと……とりあえず大事ではないよ。明日にはいつもの甜花ちゃんに戻ってると思う」
P「???」
35:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 01:58:13.51
ID:PCyvT48i0
甘奈「あはは、あまり気にしないで。幸い今日はレッスンないよね?」
甜花「プロデューサーさん、平気だよ……甜花、余裕だから……」
P「そ、そうか……ならいいけど」
千雪「甘奈ちゃん」コソコソ
甘奈「あ、千雪さん」
千雪「甜花ちゃん、どうしたの?」
甘奈「朝ベッドまで起こしに行った時から、こんな感じなんだ」
甘奈「倦怠感がすごいらしいよ。たぶん、昨日の頑張りの反動だと思う」
千雪「……」
千雪(やっぱり。予感が的中しちゃったわ)
千雪「こういうことになるなら、もう無理はさせられないわね……」
甘奈「うん。でも、まだ意識を改善する気持ちが強いみたいだし、少しずつこなしていくのがいいね」
千雪「そう思うわ。本人に無理のないように」
甜花「あ……そういえば冷蔵庫に、智代子ちゃんからもらった、限定チョコが…」
甘奈「甘奈がとってくるよっ! 待っててね甜花ちゃんっ!」ピューンッ
千雪(甘奈ちゃん活き活きとしてる……この娘も反動がきてるみたい)ハハ…
36:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 01:59:15.96
ID:PCyvT48i0
甜花「……千雪さん……」
千雪「!」
甜花「甜花……学んだ……一度に、たくさんのこと変えるの、難しい……」
千雪「そうね」
甜花「だから……これからは、ちょっとずつ頑張る……」
甜花「……応援……してくれる……?」
千雪「もちろんよ」ニコッ
甜花「にへへ……」
甘奈「とって来たよ、甜花ちゃん!」スタタタッ
甜花「わ、ありがとう……」
甜花「ようし……甜花、このチョコを食べて……」
甜花「明日から、頑張る……!」モグモグ
甜花「……おいしい……」ニヘヘ
おわり
37:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 02:03:54.66
ID:PCyvT48i0
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます
まだ全種類のカードをプロデュースできてませんが、全キャラ魅力的というのだけは分かりました
大崎姉妹可愛い
38:
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 04:48:11.27 ID:iBbLFmWS0
乙
素晴らしかったぞ
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1541255162/
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