1:
◆FreegeF7ndth 2020/06/07(日) 22:56:44.65
ID:l/v3zoKYo
・まえがき
ユッコとPがゴタゴタしたり、えっちしたりする話です。
約37000文字。
2:
◆FreegeF7ndth 2020/06/07(日) 22:57:14.85
ID:l/v3zoKYo
※※
「プロデューサーって、もしかして私のことが好きなのでは……?」
「そうだな、好きだな」
「ぴゃっ!?」
私が、休日朝一番に事務所で見た担当プロデューサーは、デスクのパソコンで何かを作業しながら、
けっこう眠そうな目つきと顔色をしていた。昨晩、大人組の誰かの遅い仕事に付き添ったのか。
休日、といっても私たち学生が春休みなだけで、プロデューサーはお仕事だったらしい。
そして学生アイドルにとっても、学校が休みな時こそお仕事だ。
私もレッスンが……なんだか朝早くに目が覚めたので、予定より早く事務所に来たわけだけど。
「もしかして……プロデューサー、テレパスに目覚めたんですかっ」
「違う。ユッコが声に出していたのが聞こえただけ。
なんでも……『プロデューサーって、もしかして私のことが好きなのでは……?』……とか」
「おぉ、乙女の独り言を盗み聞きなんて、さいきっくセクハレーションですよっ」
「セクハラのハラは“harassment”だ。“halation”ではないんだな」
私が口をとがらせたり頬をふくらませると、
ようやくプロデューサーはモニタから私に目を向けてくれる。
……スーパーでパックされてる魚みたいな目。
「ムムムーン! いけませんプロデューサー、目が濁ってますっ。落ち窪んでますっ」
「昨日、広告屋さんとのお付き合いで、遅くまで。3月だから、送別会も兼ねてて、雰囲気で飲んでしまった。
飲んでしまったんだが、俺は酒に酔ったまま寝ると寝付きが悪い体質なんだ。
それで軽く朝を食って、あとは抜けるまで仕事でもして時間をつぶそうかと」
「そんな状態でお仕事できるんですか? 休みましょうよ」
「そりゃ書類や資料の清書とか、チェック作業とかはできたものじゃないが……。
企画のネタだしとか、徹夜明けの変なテンションだと、ふだんは出ない考えが出ることがあるんだ」
じゃあ、さっきの『好きだな』ってのも、ふだん出ない言葉が出たのかな。
「そう? 俺はふだんからユッコのこと好きだって言葉や態度に表してたつもりだったんだが」
「のぉおあああっ!? 今度こそプロデューサーはテレパスを!」
「いや、今のはユッコの顔に書いてあった」
私はプロデューサーの顔を見つめ返した。
さっきパソコンを見たときは、スーパーでパックされてる魚みたいな目だったけれど、
いま私を見る目は、若狭小浜で水揚げされたあたりの目にはなってるかな?
私のさいきっくのおかげだったらいいな。
「じゃ、じゃあ、私のどんなところが、好きですか……?」
「そうだな……例えば、愛嬌」
「えへへ、愛嬌ですかー。そうですね、男は度胸、女は愛嬌……。
も、もうちょっと具体的だと嬉しいかなーって」
私だって、アイドルになるって予知夢を見て、その勢いでオーディションを受けちゃうぐらい、
今までの人生で「かわいい」とか褒められたことがあるんだけどなぁ。もちろんアイドルになってからも。
でも、プロデューサーからそう言われると、ちょっと違う。
嬉しいと思いつつ、ムズムズして座りの悪い感じもある。相反するフィーリングが混ざってる。
「まぁ……ユッコぐらい愛嬌に溢れてるのも、アイドル業界を探せば、チラホラはいるか」
「喜んでいいのかよくないのか困る褒め方をしますねぇ……」
プロデューサーはアイドルの子たちを、自分の事務所はもちろん、他の事務所の子もたくさん見ている。
そういう口から「愛嬌がある」って褒められるのは、そりゃちょっと違うかもしれない。
「あとは、自分がアイドルとしてどう活動していくか、しっかり考えてるところ。頼もしいと思う」
「か、かんがえて? たのもしい?」
私は耳を疑った。しっかり考えてる? 頼もしい? ……私が?