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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/30(日) 23:22:15.86
ID:ZOjUA0V2O
麦端高校に通う、高校一年生である仲上眞一郎を取り巻く環境は、少々複雑だ。
酒蔵を営む家系のひとり息子であり、両親と3人で暮らしていた頃は至って平凡な暮らしをしていたのだが、一年前のある日、両親を亡くして身寄りが居なくなった湯浅比呂美と同居するようになってから、普通ではなくなった。
というのも、眞一郎は幼馴染とも呼べる比呂美のことを、密かに意識していたからだ。
長い艶やかな黒髪が特徴的な比呂美は美人であり、且つ成績優秀という才色兼備な優等生であるにもかかわらずそれを鼻にかけた様子もないところが周囲の好感を集め、眞一郎も周りと同じくそんな比呂美に好意を抱いていたのだ。
そんな存在と一つ屋根の下で暮らすことを、悪友である野伏三代吉はしきりに羨ましがっていたが、当事者からすると嬉しくもなんともない、というのが現状であり、現実だった。
「あ、おはよ」
「うん。おはよう、眞一郎くん」
朝起きて、顔を洗おうと洗面所の扉を開いた眞一郎は、先に顔を洗っていたらしいパジャマ姿の比呂美と出くわし、固まってしまった。
一緒に暮らしているからと言って、比呂美のパジャマ姿をいつも拝める関係性ではないので、眞一郎としては嬉しいやら、気まずいやら。
「ごめんなさい。洗面台、使っていいよ」
「い、いいよ。ゆっくり使えば」
「私はもう済んだから」
また、比呂美はごめんなさいと口にした。
それが堪らなく不憫に思えて、憤りを覚える。
他人の家の中で肩身の狭い思いをして、小さくなっている彼女を見るのが、眞一郎は辛かった。