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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 19:56:46.80
ID:tuTmdYX90
以前エタらせたフルメタヨルムン二次創作。
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 19:57:56.86
ID:tuTmdYX90
◇◇◇
メリダ島、ミスリル西太平洋戦隊のブリーフィングルーム。
そこに列したSRTメンバーのひとり、相良宗介の呟きに応えたのは、同じSRTの――そもそもこの部屋には特別対応班の人員しかいないが――メリッサ・マオ少尉だった。
「名前くらいは聞いたことあるでしょ?」
「……確か、アメリカの海運会社だったな。かなり手広くやっている」
「そ。今回のターゲットはそこの武器運搬業担当、まあ武器商人ね。そいつってわけ。いつもの"火消し"よ。そいつがテロリスト共に武器を流すのを阻止する」
ミスリルの理念は平和維持――武力によってテロや内戦を防ぐことである。この手の"煙が上がる前に火種を踏みにじっておく"というような任務は珍しくとも何ともない。
だがこの場には、任務の内容を言い渡されてなお訝しげな顔をした人間がいた。というより、疑問符を浮かべているのが大多数だった。
例外はメリッサと、その隣で腕組みをしているベルファンガン・クルーゾーくらいのものだ。
だからこんな質問が出ても、おかしくはない。
「それって俺らが出張る必要あるのかい、姐さん?」
掲げた片手をぷらぷらと振りながら、クルツ・ウェーバーが呟いた。
「テロリストに武器を流すような奴ってことなら、まあ堅気じゃねーのかもしれねーけど。相手するのは武器商人なんだろ? テロリストの方じゃなくて」
要は"武器商人相手に、最精鋭であるSRTを動員させる必要があるのか?"ということだ。
これは怠慢や侮りから来るものではなく、純然な疑問だった。
兵士は"何故"を考えてはいけない――これはこの業界の不文律だが、しかし疑問の残る作戦では士気も上がらない。これもまた事実だった。
武器商人相手ならばPRT(初期対応班)で充分に対応できる。あるいは単に、ミサイルで商品を吹っ飛ばしてしまえばいい。
この金髪の優男はそう言いたいのだろう。そして、口にこそ出さないが他のメンバーもそう思っている。
メリッサは鷹揚に頷いて見せた。彼らの疑問はもっともだ。データを精査する前の自分も同じことを思っていたのだから。
「普通の武器商人なら、ね。でも今回は違うの」
手元のリモコンで、プロジェクターを操作する。壁に掛けられた大型のスクリーンに投影されたのは、10代後半から20代前半と思しき白人の女性だった。
「ココ・ヘクマティアル。HCLIの社員で、ヨーロッパ・アフリカを担当区域に持つ敏腕ウェポンディーラー。各国の軍にも兵器を卸してて、そっち方面にもかなり顔が利くみたい」
「こんなカワイコちゃんが? マジかよ、俺のライフルも査定して貰いたいね」
「お前の22口径なんて鼻で笑われるのがオチさ」
途端にブリーフィングルームが騒がしくなる。クルツやスペックを初めとする数人のメンバーが口笛を吹いたりして囃し立て始めたのだ。
確かに騒ぎ立てたくなるのも分かる。豊かなプラチナブロンドを肩口まで伸ばしたココ・ヘクマティアルは端正な顔立ちをしていたし、そして何より、
「……若いな」
「あんたに言われたくはないでしょうけどね」
喧騒の中でぽつりと呟かれた宗介の一言に、メリッサは気が抜けたように肩を落とした。だがすぐに気を取り直し、注目を集める様に手を打ち鳴らす。
「はいはい、お猿さん達、静かにしなさい。でないとアンタたちご自慢のライフルとやらを潰して屑鉄にするわよ」
「おっかねえ……で、この子のどこが脅威だって?」
「正確には、ココ・ヘクマティアルの私兵が問題なのよね……」
クルツの問いにメリッサが再びリモコンを操作し、スクリーンの画面が切り替わる。
新たに映ったのは8人の人相と、簡略なプロフィールだった。それがどうやらココ・ヘクマティアルを護衛しているメンバーらしい。
それを一目見て各々が抱いた印象は、"ごちゃ混ぜ"といったところだろう。