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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/09/02(水) 22:06:07.68
ID:VrI1bENjO
「手、繋がないと危ないんだよ?」
「……あい。すんません」
女の子が思った以上に強くて、そして時々弱いという当たり前の事実を、俺は自分の祖父の忘形見である鹿賀りんと同居するようになって初めて知った。
「りん、俺ちょっと買うものあるから……」
その日、電車を乗り継いで大型ショッピング・モールを訪れていた俺は、連れてきたりんと別行動を取るべく待ち合わせ場所を決めようとしたのだが。
「あっ! い、居ない……?」
繋がないと危ないと言われて繋いでいた小さな手がいつのまにか解けて、りんの姿が見当たらないことに気づき、青ざめる。
「りーん! りん、どこだぁー!?」
人混みで大声を張り上げる三十路の中年男性に周囲の視線が刺さるが、知ったことか。
今の自分はあの小さな少女の保護者であり、その身を守る義務がある。故に叫び続ける。
「りーん! 返事しろー! りーん!!」
「お店の中で叫んだらいけないんだよ?」
「りんっ!?」
振り返ると、そこには探し求めたりんが居て、さっきまで繋いでいたその手には何故か紐が上に向かって伸びていて、真っ赤な風船に繋がっていた。たまらず、問い詰める。
「どこに行ってたんだ!? ていうか、その風船はどうした!? 誰から貰った!?」
「あそこに居るくまさんがくれたー」
りんの指差す方向を見るとたしかに熊が居て、着ぐるみの手には沢山の風船が握られており、どうやらあのくまの着ぐるみから風船を貰ってきたらしい。存外、近くに居た。