ツンデロ (メガストアコミックスシリーズ No. 200)
1 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 07:55:32.19
ID:TmTwg4gG0 ―魔王城 王の間
女魔王「とりあえず武器をしまおうか勇者よ」
勇者「いや、俺一応アンタを殺しに来たんだけどな・・・」
女魔王「私は殺し合いをするつもりはないよ、正直めんどい」
勇者「それだと俺が困るんだけど」
女魔王「私がその気になればお前など3秒で消し炭だ」
勇者「それはどうかな?」
女魔王「やかましい落ちこぼれ」
2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 07:56:13.88
ID:TmTwg4gG0 勇者「へ?」
女魔王「お前は歴代勇者の中で最弱、対して私は歴代最強魔王。戦いでは月とス
ッポンフナムシとマリーアントワネットほどの差がある」
勇者「かなり傷ついた」
女魔王「ということで勇者の旅はここで終了だ」
勇者「いやいや、一応俺も国から正式に依頼されてる訳でして・・・ハイ終了~
って帰るわけにはいかないんすよ」
女魔王「誰が帰すと言った?」
勇者「あ、やっぱ俺消し炭?」
3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 07:57:31.65
ID:TmTwg4gG0 女魔王「殺しはしない、多分お前の国では現勇者は殉職で新勇者選考会が始まっ
てるだろうがな」
勇者「mjsk」
女魔王「ところで、私は人間の風習である彼氏彼女の関係というものに興味があ
る」
勇者「なんか風向きが怪しくなってまいりました」
女魔王「ついてはお前を私の彼氏とする」
勇者「拒否権は?」
女魔王「あると思っているのか?」
勇者「すんません妄言でした」ビクビク
4 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 07:58:50.16
ID:TmTwg4gG0 女魔王「それとも私の容姿体型に何か不満でも?私は人間に近い顔をした魔族だ
し、出るとこは出てるし引っ込むとこは引っ込んでいるぞ?」
勇者「いや、プロポーションは非常に素晴らしいというかデカイっていうかアレ
とかコレとか挟みたいって感じなんだけど」
女魔王「なら問題なかろう。私の彼氏になれ」
勇者「待て待て、女魔王は彼氏というものをちゃんと理解してます?」
女魔王「ふむ、俗に彼氏というが正式には恋人、魔界にはそういった風習は無い
が、結婚の前段階といったところであろう?」
勇者「そういう知識はあるんすか・・・というか、やっぱ彼氏彼女っていったら
キスとかえ、え、えっちなこともするわけでっ!」わたわた
7 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 07:59:58.41
ID:TmTwg4gG0 女魔王「結婚の前段階なら問題なかろう?少し手順が先に回るだけだ」
勇者「結婚する気ですかっ!?というかなんだ・・・女魔王としては俺とそうな
ってもオッケーなわけ?」
女魔王「問題無い。ずっと好きだったのだから」
勇者「今なんか世界を震撼させる核爆弾発言をさらっと言われた気がするんです
けど」
勇者「で、なんだって?俺の耳がおかしくなったらしいからもう一度大きな声で
頼んます」
女魔王「何度も言わせるな。これでも恥ずかしいんだ・・・ずっと好きだった!
私の彼氏になってくれ!これでいいか!?」ぽっ
10 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:01:16.13
ID:TmTwg4gG0 勇者(いやマジなんなのこの状況、最強魔王が最弱勇者に告白なんてこれなんて
エロゲ?添え膳食わぬはなんとやらでこのままぐへへな展開になればないすばで
ーな女魔王と毎日ぱふぱふな訳でして・・・いや冷静になれ勇者!世界を救うた
めに立ちあがったんじゃないか!こんな誘惑に負けるなんて勇者失格d)
伝令「魔王様・・・ごにょごにょ」
女魔王「部下からの報告だ、次の勇者が決まったらしいぞ」
勇者「はやっ!決まるのはやっ!死亡確定も選考会の開催も新勇者の決定も何も
かもがはやいっ!!」
11 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:02:01.70
ID:TmTwg4gG0 女魔王「ぷくく・・・よほど期待されてなかったとみえる」くすくす
勇者「笑うな、これでもかなりショックなんだ」しょぼん
勇者(まあ元々期待されてなかったのは知ってたけどさ、やっぱりこう簡単に裏
切られるとショックはでかいなぁ・・・これからどうしよう)
女魔王「そう気を落とすな、なんとかなる」ナデナデ
勇者(あー、そういえば人間界では失敗とかしても誰も慰めてくれなかったな・
・・頭撫でられるなんて何年ぶりだろ)
勇者「こんなのも、いいかなあ」ぽやー
女魔王「だろう?魔界での暮らしも悪くないぞ」
14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:03:52.18
ID:TmTwg4gG0 勇者「一つ聞かせてもらっていいか?」
女魔王「なんだ?」
勇者「ずっと好きだったと言ってたよな、なんでなんだ?こんな落ちこぼれで剣
は人並みで魔法はほとんど発動しなくて目が悪くてメガネで身長低くて髪くるく
るな俺を好きになったんだ?」
女魔王「お前は勇者としては確かに最低だ。正直普通の人間でも訓練すればお前
より強い。だけどお前は勇者であろうとし続けた、どんな嘲笑にも堪え、毎日ひ
たむきに剣を振り呪文を覚えた。だからだ・・・なんというか守りたくなる」
勇者「さんざん悪行の限りを尽くしてきた魔王とは思えないセリフっすね」
女魔王「私の代になってからは人間界への侵略はしていない、人間との戦いも避
けているつもりだ」
15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:05:05.48
ID:TmTwg4gG0 勇者「ああ、それは教会の爺さんが言ってた。最近魔族が来ないって」
女魔王「言い忘れていたが、先の理由と併せて私はメガネ萌えだ」ぽっ
勇者「なんとっ」
女魔王「だから私の彼氏になれ、勇者」
勇者「仕方ないか、他に行く場所もないしなー」
女魔王「いいのか?」
勇者「いいさ、外見は美人でボンキュッボンだし、性格も悪くないことがわかっ
て、その上勇者は首だし、断る理由が見当たらないっ」
女魔王「・・・」プルプル
勇者「どうしたんすか?怒ってます?」
17 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:06:04.65
ID:TmTwg4gG0 女魔王「やったやったやったー!勇者が告白受け入れてくれたー!!やったぞー
!今日は魔界の記念日にしようそうしよう!おい誰ぞいないか!?今晩は宴だぞ
ー!」きゃいきゃい
勇者「え?キャラ変わりすぎじゃね?」
メイド「お呼びでしょうか魔王様」すっ
勇者「アンタどっから湧いて出た」
女魔王「メイドか!宴の準備をいたせ。今宵は宴会じゃ、無礼講で飲み倒すぞ!
」
メイド「それはよろしいのですが・・・勇者様の国から軍が近づいているようで
すがそちらはいかが致しましょう?」
19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:07:08.04
ID:TmTwg4gG0 女魔王「軍?」
メイド「はい。どうやら勇者様が殺されたということで報復目的で出兵したよう
で」
勇者「ふん、見捨てたくせにしっかり戦争の理由にはするんだな。腐れ国王が!
」
女魔王「ふふふ・・・さっきまで私を殺そうと息巻いていた威勢が嘘のようだな
」
勇者「うっ・・・」
メイド「イチャラブするのはよろしいのですが、いかがなされますか?」
20 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:07:54.29
ID:TmTwg4gG0 女魔王「い、いや、イチャラブなどしておらん!まあいい・・・それで出兵され
た軍隊の規模は?」
メイド「物見によると歩兵5千、長槍兵2千、銃兵7百、他諸々含め約1万とい
ったところです」
女魔王「ふむ・・・ところで魔王城の大ホールは何人まで収容できたかな?」
メイド「は?えーと、約2万5千ですがそれが何か」
女魔王「ふっ、ならば歓迎してやろうではないか」にやり
メイド「なるほど、御意に」
勇者(こいつ何を考えてるんだ?)ハラハラ
23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:09:20.50
ID:TmTwg4gG0 >>21
メモ帳とかに書き溜めて投下するとこうなってしまう
何故だかはわからん
―魔界入口 深い森の中
遠征軍指揮官「諸君!時は迫っている!我々は今まで耐え忍んできた。度重なる
重圧、繰り返される略奪、そして一方的な虐殺にだ!先日魔界へと勇敢にも単身
乗り込んだ勇者は魔王に惜しくも敗れた。だが、我等を神アミルは見捨てはしな
かった!!神は我等に新たな勇者をもたらして下さったのだ!」
うおおおおお!
神アミル万歳!新勇者万歳!!
新勇者「我々は神の子だ。神は我々をいつも慈愛に満ちた目で見てくださってい
る。諸君らに問おう!神の軍たる我等と異端の魔族ども、勝つのはどちらだ!」
おおおおおおお!
勝つのは神の子!魔族には死の裁きを!!
24 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:10:17.60
ID:TmTwg4gG0 遠征軍指揮官「ふん、民衆なんてちょろいものだな」にやり
新勇者「ええ、こんな言葉で煽られるとはね」にやり
遠征軍指揮官「こやつらが死んだところで大した損害でもない。適当なところで
我等だけ逃げるぞ」
新勇者「わかってますよ」ニヤニヤ
26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:11:20.62
ID:TmTwg4gG0 ―魔王城 大ホール
メイド「急ぎなさい!速やかに1万人分を追加するのです」
召し使い「ほいほい、忙しくなってきたねー」
料理人「俺の腕も鳴るってもんよ!」
兵隊「しかし魔王様も毎回面白いことを考えて下さるもんだな」
女魔王「首尾はどうだ?」
メイド「恐らく間に合うかと」
勇者「あのー・・・何をするつもりなんすか?」
女魔王「見てればわかるさ」にやり
27 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:12:17.75
ID:TmTwg4gG0 メイド「出るのは私と魔王様で?」
女魔王「そうだな、他の者だと手加減する余裕はあるまい。それに1万程度なら
私たち2人で問題なかろう」
メイド「左様で」
勇者「まさか2人で1万と戦いに行くつもりか!?」
女魔王「そうだが?」
勇者「無茶だ!女魔王はいいとしてメイドさんまで・・・そんなことはさせられ
ない、メイドさんの変わりに俺が行く」
女魔王「私の心配はしてくれないのだな・・・それはともかく問題無い。私なら
人間1万人程度なら5分とかからん」
28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:13:09.03 ID:G2mnmx6NO
ハッピーエンドならこのままパンツ脱いどくけど?33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:15:00.06 ID:IPM3Y20f0
とりあえず脱いだ29 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:13:16.63
ID:TmTwg4gG0 勇者「確かに女魔王は強いかもしれないけどメイドさんはっ」
メイド「それ以上吠えると消し炭にして犬のエサになってもらいますよ」にっこ
り
勇者「え・・・」
女魔王「いいことを教えてやろう。私とメイドが本気で戦ったら、どちらか1人
とこの世界が死ぬことになる」
メイド「いえ、私ごとき魔王様の足元にも及びませぬ」
勇者(なにこのひとたちこわい)
35 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:16:25.78
ID:TmTwg4gG0 ─魔界にいたる門
新勇者「者ども!今こそ魔界をわれらが手に!!前勇者の死を無駄にするなあっ!」
おおおおおおお!!
神の光は我らにあり!!
新勇者(ふん、くだらぬ下等民族めが。貴様らに神の光など差すものか)
遠征軍指揮官「よし、全軍魔界に向かって突撃!!」
37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:20:57.13
ID:TmTwg4gG0 ─魔界にいたる門 内部
民兵「な・・・なんだこりゃ!?」
民兵2「こ、こりゃぁ・・・どういうこっちゃ」
遠征軍指揮官「魔界へようこそ!遠征軍ご一行様・・・魔王様と勇者様の婚約記念パーティーだと!?」
新勇者「これは・・・ぶっははははは!!あのヘタレ勇者が魔王と結婚?なんの冗談だこれは」ゲラゲラ
女魔王「冗談ではないぞ」スッ
新勇者(いつの間に背後に・・・これだけ禍々しい邪気を発しながらこの俺が気づけなかっただと!?)
遠征軍指揮官「なっ!貴様は女魔王っ!」
民兵24「あれが魔王・・・」
民兵48「なんという存在感か」
遠征軍指揮官「お前ら何をボーっと見ている!全軍攻撃だ!」
女魔王「やはり戦いは避けられんか、仕方あるまい」
40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:25:30.66
ID:TmTwg4gG0 女魔王「おいメイド」
メイド「は、ここに」
女魔王「殺すなよ」
メイド「御意」
民兵263「うおおおおお!魔王の首を取れー!」
民兵538「相手は二人だ、数で押せー」
遠征軍指揮官(相手は二人、対してこちらは1万・・・負けるはずがない)
新勇者(これはマズいな・・・とりあえず戦場から眼を話さないようにしながら逃げる準備でもしとくか)
メイド「ふっ・・・」
民兵たち「「うっぎゃああああああ!」」
女魔王「散れ」
民p「「おわあああああ」」
伝令兵「ほ、報告いたします!こちらの損害は約4千を超えました!このままではあと5分もしないうちに全滅します!」
41 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:29:53.93
ID:TmTwg4gG0 遠征軍指揮官(これが魔界のトップの実力か・・・あなどっていた)
遠征軍指揮官「者共!ここで足止めせよ!我らは撤退の準備を整える」
民兵たち(逃げるんだな・・・アホ指揮官が・・・)
─5分後
女魔王「片付いたか?」
メイド「はい、全軍中死者0名、他は武装解除及び無力化されています」
女魔王「あの見るからに無能な指揮官はどこにいった?」
メイド「はあ、先ほど勇者っぽい男と一緒に魔界の外へ」
女魔王「いや、追えよ・・・」
メイド「うっかり」テヘッ☆
女魔王「・・・」
女魔王「まあよいわ、客人は集まった。もう行くぞ、パーティーに遅れてしまう」
メイド「御意」
女魔王&メイド「集団転移魔法」
42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:33:48.54 ID:ziiFQBDIP
女魔王&メイド「集団転移魔法☆」
こうすると二人が左右対称にかわいい決めポーズを取っているように見える43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:34:01.78
ID:TmTwg4gG0 ─魔王城 大ホール
勇者「ちょ・・・えっ・・・」
女魔王「来賓の方々だ」
勇者「国王軍の人たちじゃないすかっ!どっから拉致ってきたんですかこれっ」
メイド「拉致とは失礼な。少しおとなしくなってもらって魔法で運んできただけです」
勇者「それを拉致と言います」
女魔王「まあ細かい事情は後で話そう。さて魔界に住む生きとし生けるものよ!宴会を始めようではないか!」
ヒュールルルル・・・ドーン!
勇者「へえ、魔界にも花火ってあるんだな」
女魔王「あれは火薬ではなく魔法で打ち上げているのだがな」
勇者「どこで見ても花火ってのは綺麗なもんだ」
50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:39:44.29
ID:TmTwg4gG0 勇者「さて、話してくれてもいいんじゃないか?」
女魔王「何をだ?」
勇者「ごまかさないでくれよ。国王軍をわざわざここにつれてきたってことは何か思惑があるんだろう?」
女魔王「・・・戦争は、なんで起こると思う」
勇者「え?それは・・・お互いに気に食わないからじゃないのか?」
女魔王「子供の喧嘩じゃあるまいに、ただ気に食わないという理由だけで戦争が起こるなら、この世界はとっくに滅んでいるよ」
女魔王「それに、数百年前までは人間界と魔界はお互いに不干渉を保ってきたんだ」
勇者「じゃあなんでいきなり戦争が始まったんだ?」
女勇者「理由は色々とあるが、一番大きいのが物資だろうな」
勇者「物資?」
女魔王「見てのとおり魔界は土地が悪くてな、人間界のように麦や米などの農作物が出来にくい」
女魔王「それに対して人間界では魔界の鉱山で産出される希土類が不足している」
女魔王「これが物資の差、戦争が起こる理由の一つだ」
53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:44:13.32
ID:TmTwg4gG0 勇者「一つ・・・ってことは他にもあるんだろうな」
女魔王「そうだ、もう一つの理由・・・言いにくいんだが、それは差別だ」
勇者「差別・・・か」
女魔王「思い当たるフシがあるだろう?われわれ魔界の者は色々と特異な身体的特徴や能力を持ったものが多い。例えばあそこで酒に溺れすぎて溶けてるスライムとかな」
女魔王「だが人間は微々たる違いがあるにしろほぼ同じ姿形をしている。ゆえに自分たちと違う姿を持つ生物を嫌うのであろうな」
勇者「そうだな、俺も女魔王が人間に近い姿じゃなかったら逃げ出していたかもしれない」
女魔王「そこは普通勇者なら戦うと言わねばならんところだろう、まあそこが勇者らしくて可愛いのだが」くすくす
勇者「・・・」///
56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:52:02.26
ID:TmTwg4gG0 勇者「そ、それでっ!ここに国王軍の人たちを集めたのは何かワケがあるんだろう?」
女魔王「もちろんだ、メイド」
メイド「ここに」
女魔王「そろそろ始めよう」
メイド「御意、ライトを落とせ!」
バッ!
民兵たい「「な、なんだ!?」」
「「俺たちついに生贄にされちまうんだべな・・・」」
女魔王「紳士淑女の皆様!よくぞこの女魔王と勇者の婚約記念パーティーにお集まり下さった」
勇者(はっ!?婚約記念って・・・聞いてないぞっ!)
女魔王「長ったらしい挨拶は皆の望むところではないだろうから割愛する。本日は人間のご一行様に来ていただいた」
勇者(あれは招待じゃなくて拉致っていうんだよ)
女魔王「我らは永らく人間との戦争を行ってきた。多くを殺し、殺され、多くを奪い、奪われ、そして多く悲しませ、悲しんできた」
女魔王「私は・・・私は魔王として、その流れを断ち切らなければいけないと考える!」
女魔王「歴代の魔王は人間を忌み嫌ってきた。その感情は皆の中にもあるであろう」
女魔王「だが、我々は隣人だ。互いに手を差し伸べ、支えあいながら生きていくことが必要だと私は考える」
65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 08:59:43.07
ID:TmTwg4gG0 女魔王「その第一歩として!私は今朝魔界に単身切り込んできた勇者を婚約者(仮)として迎えることを決断した!」
わあああああああ!!
勇者(なんだこの展開)
女魔王「皆も知っての通り、この勇者は弱い」
勇者(ぐっ・・・)
女魔王「ここに集まっている者たちの9割が素手で勝てるであろう」
わははっははは!!
勇者(なにこの羞恥プレイ)
女魔王「だが、私はこの勇者に並々ならぬ魅力を感じたのだ。それは強さではない、圧倒的なカリスマでもない。弱い体の中に走る一筋の光を私は感じたのだ」
68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 09:03:56.61
ID:TmTwg4gG0 女魔王「私は人間と戦いたくない。もう余計な血は流したくないのだ。夜の帳が下りるたびに赤子の鳴き声と嘆き悲しむ声が響く世界にわたしは耐えられない」
魔界兵士「そうだよなあ・・・もう俺たちも戦いたくないよ」
71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 09:06:26.92
ID:TmTwg4gG0 民兵973「オラたちもできれば戦争なんてしたくねーだ」
女魔王「これからも、もしかしたら血が流れることがあるかもしれない。
身を守るために武器を取らなければならない時が来るかもしれない。
だが、そのとき思い出して欲しい。
その手に取った刃が刺す相手にも愛する者がいることを・・・果たして、
人間と魔族にどれだけの違いがあるかということを」
女魔王「そして、出来るならば・・・もし出来るならば、その武器を持った手を下ろし、握手を求めることができないだろうか?」
女魔王「その一歩を踏み出す勇気を持てば、もしかしたら我々は共に生きていけるのではないだろうかっ!!」
72 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 09:10:37.99
ID:TmTwg4gG0 女魔王「そして、ここにいる勇者は私の手を取ってくれた。敵であるはずの私の言葉に耳を傾けてくれた」
女魔王「だから皆も、あー・・・ごほんっ!少し強引に連れてきてしまったが、人間の方々も、
隣にいる魔族と、人間と、手を取り合うことができないだろうか」
女魔王「いや、私と勇者にできたのだ!皆にできないはずがないっ!!」
おおおおおお!!
女魔王様に栄光あれ!勇者様に神の光あれ!
勇者(すごい・・・さっきまで怯えてた国王軍の人たちまで熱狂してる)
76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 09:16:28.20
ID:TmTwg4gG0 女魔王「私だけ話すのも不公平だな、勇者にも話をしてもらおうじゃないか」ふふっ
勇者「えっ、マジで」
女魔王「マジだ」
ざわざわ
勇者「えーっと、勇者です」
勇者「俺はさっきも言われた通り、弱い勇者です。頑張って剣を練習しても、呪文を覚えても強くなれなかった。
だけど、僕は使命のために魔界に来ました。魔王を倒すために・・・ごめんなさい。
だけど、女魔王は俺に殺し合いをするつもりはないと言いました。」
勇者「最初はもちろん驚きました、歴代最強の魔王だと聞いていたから。即殺されるんだろうと覚悟していました。でもそうじゃなかった」
勇者「死んでもいないのに死んだことにされて、戦争の理由に使われて、落ち込んでいるときに女魔王は頭を撫でてくれました。人間界では誰もそんなことをしてくれなかったのに・・・正直うれしかったです」
勇者「これが、手を取るってことなんですね」
80 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 09:23:14.99
ID:TmTwg4gG0 勇者「皆さんの周りに落ち込んでいる人がいたら、是非声をかけてあげてください、頭を撫でてあげてください。俺がそうされて嬉しかったように、きっとその人も嬉しいはずだから」
女魔王(嬉しいのはこっちだ・・・そう思っててくれたんだな、勇者)
勇者「俺は人間だ、今まで魔族を敵だと思ってきた。でも今は、そんなことを思えない俺がいる。勇者失格だね、あはは」
勇者「でも、失格でもいい、裏切り者と呼ばれても構わない。女魔王の話すことが、人間と魔族が手をつないで歩いていくことができるようになるなら、俺はなんでもする」
勇者「国の勇者になれなかった俺だけど、俺は、世界の・・・この世界全てを救う勇者になりたい」
しーん・・・
勇者(あれ・・・俺みたいな弱いヤツがこんなこと言ってもダメだったか)
小さな魔族の子「新世界の勇者様バンザイ・・・」
ああ、あいつはすげえよ・・・
世界を救う勇者だってよ、魔王様とならできるんじゃないか?
これだけの魔族に囲まれながらあんなことを言えるなんて、もしかしたらすごいヤツなんじゃ・・・
ざわざわ
民兵たち「新たなる世界の勇者に栄光あれ!」
わああああああああ!勇者に栄光あれ!!
83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 09:27:45.76
ID:TmTwg4gG0 女魔王「ふふっ、すごいじゃないか勇者。皆の心を掴んだな」
勇者「やめてくれ、これでもすごい恥ずかしいんだ」
伝令「女魔王様、お伝えしたいことが・・・」
女魔王「うむ、かまわん」
伝令「人間界で動きがありました」
女魔王「それで?」
伝令「勇者様の国を含む5カ国同盟で出兵案が可決されました。おそらく総兵力100万を超える軍隊が1ヶ月以内にこちらに来ることになります」
勇者「な、なんだと!?」
女魔王「ふむ・・・これはマズいな」
メイド「やはり拉致はまずかったでしょうか」すっ
勇者「やっぱり拉致だったんだな・・・というかどっから出てきた」
157 :
◆wV/dOv7SG.:2010/11/20(土) 14:15:57.91
ID:TmTwg4gG0女魔王「チャンスだな」
メイド「チャンスですね」
勇者「は?」
女魔王「わからぬか?もうすぐこちらに100万の軍勢がやってくるのだぞ。これをチャンスと言わずしてなんとするか」
勇者「ちょっと待ってくれ。100万の軍勢が来るんだろ!?いくらなんでも勝てるわけないじゃないか!」
女魔王「勝つ必要は無い。講和すればよいだけの話だ」
勇者「簡単に言うなよ・・・俺の国の国王をよく知らないからそんなことが言えるんだ。国王の魔族嫌いは半端じゃないんだぞ」
女魔王「それでも、血を流して手に入れた勝利と、血を流さずに手に入れた平和なら、私は平和を取るよ。そのためにはこの命を賭けたっていい」
159 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:17:26.70
ID:TmTwg4gG0 勇者「・・・」
女魔王「どうした?」
勇者「命を賭けるとか言うなよ」
女魔王「そうしなくてはならない場面も存在するということだ」
勇者「俺にできることはないのか?」
女魔王「今のところ・・・な」
メイド「魔王様」
女魔王「うむ、今行く」
女魔王「悪いな、来る人間軍との接触のために策を練らねばならない。少し会議やらなにやらで忙しくなると思うが、適当にこの城でも散策しておいてくれ」
勇者「・・・わかった」
161 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:22:54.58
ID:TmTwg4gG0 ─魔王城 回廊
勇者「はあ・・・」
勇者(女魔王はあんなこと言ってたけど、やっぱりあの国王が話し合いに応じるとは思えない。下手をすれば話し合いに出た瞬間に虐殺される・・・どうすればいい?俺に一体何ができるっていうんだ)
小さな魔族の子「お兄ちゃん」
勇者(いや、でも・・・もし俺が出て行けばきっかけくらいにはなるかもしれない。ダメか、新勇者が居る今、秘密裏に殺されるのがオチだ)
小さな魔族の子「ゆーしゃお兄ちゃんっ!」
勇者「っ!?」
小さな魔族の子「これ・・・あげる」
勇者「これは・・・短剣?」
小さな魔族の子「わたしのたからもの。りゅうぞくのおとめにうけつがれるひほう」
勇者「綺麗だ・・・でも大切なものなんだろ?」
小さな魔族の子「いいの、ゆーしゃお兄ちゃんががんばろうとしてるから・・・これはおまもり」
163 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:27:16.31
ID:TmTwg4gG0 勇者「わかった、大切にするね」
小さな魔族の子「がんばってね!」
勇者(人の子も、魔族の子も変わりない。朝起きて仕事して、仕事が終わったら仲間と酒を飲んで、家に帰ったら奥さんが食事を作ってて、子供がお帰りなさいって言ってくれて・・・同じだ、人間と)
勇者(こんなところで悶々と考えてるだけじゃダメだ!俺も何か行動を起こさないと!)
164 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:33:53.45
ID:TmTwg4gG0 ─魔王城 会議室
女魔王「さて、各々方。来る100万の軍勢を迎え撃つにあたり私は武力ではなく話し合いで決着をつけたいと考えている」
参謀「しかし人間どもが話し合いに応じるという保障がどこにあるのですか閣下」
女魔王「正直言って保障などないな。ただ私が直接出向けば話くらいは聞いてくれるだろうよ」
将軍「甘いですぞ!我らが人間に受けた仕打ちをお忘れになったか!先ほどの演説には大変感銘を受けましたが、それも人間と魔族が対等の立場であってやっと成立する話です。攻める側と攻められる側になった今、もはや平穏な講和など望めませんぞ!?」
165 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:37:49.02
ID:TmTwg4gG0 女魔王「それをなんとかするのが魔王だ。私は今までそれをやってきたではないか」
参謀「し、しかし・・・やはり危険ですぞ閣下」
女魔王「危険など承知の上、私とて100万は相手にできぬ。心配するな、次期魔王はすでに私の中で決まっている。私が殺されたとしてもその者に後を継がせればよかろう」はっはっはっ
メイド「次期魔王の座は私のもの・・・」ぼそっ
女魔王「何か言ったか?」
メイド「いえ・・・」
166 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:43:03.77
ID:TmTwg4gG0 女魔王「さておき、計画はこうだ。まあ計画というほどのものでもないがな」
女魔王「私が単身敵陣深く統合指揮官、あるいは国王の下へ出向き、講和条約ないしそれに順ずる条約を書面にて交わす。以上だ」
参謀「それは無謀というものですぞ閣下!」
将軍「無茶です!」
女魔王「はっはっはっ」
将軍「笑い事ではござらん!せめて護衛の10万や20万はつけるべきです」
女魔王「そんなことをすればそれこそ開戦の火蓋をこちらから切るようなもの。大切な交渉だからこそうかつなことはできんよ」
将軍「しかし・・・」
女魔王「将軍は私の強さを知っているだろう?確かに100万を相手にするのは無理だが、逃げおおせることくらいはできるだろうよ」
168 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 14:44:17.16
ID:TmTwg4gG0 勇者「無理だな」
女魔王「勇者!なぜここに?」
勇者「そんなことはどうでもいい。とにかく無理だ、相手には新勇者がいるんだぞ」
女魔王「問題ない」
勇者「ありまくりだ、新勇者は俺みたいに弱くない。今の女魔王と対等に戦える力を持った真の勇者だ」
女魔王「なぜ知っているのだ?」
勇者「新勇者は俺をはるかに超える実力を持ちながら、俺が勇者に選ばれた。理由はわからないが、とにかく俺が選ばれた。それでもあいつは俺を勇者と信じて俺の横で剣を振り続けていた。あいつは俺の元仲間なんだ」
メイド「元・・・とは?」
勇者「俺はもう裏切り者だろうからな」
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 16:11:51.30 ID:C0iUF1NF0
魔王とメイドが戦えば世界がどうとか言ってたのに
100万人は無理なんだな178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 16:12:13.21 ID:kbRF27+80
殺さずにはってことじゃね186 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:01:04.86
ID:TmTwg4gG0 ─出兵案可決から20日目 魔界へいたる門近くの野営にて
民兵「ついに出陣だべか・・・」ヒソヒソ
民兵「嫌ですね、戦争なんてしたくないのに」ヒソヒソ
遠征軍指揮官「ついにこの日がやってきた!諸君、今日は記念すべき日である。我々誇り高き神の騎士団は、明朝より魔界へと全軍進行を開始する。
我らは一騎当千100万の強者、対して敵は下等な魔族共である、負ける理由など存在しない!殺せ!奪え!!焼き尽くせ!!!
我らが神は我らに力を授けたもう!」
新勇者(神の騎士団とか言ってるくせに略奪を推奨かよ・・・まったくどうしようもねえな)
新勇者(明日、か・・・結局あいつは俺の勇者じゃなかったんだな)
新勇者(仕方ねえ、これも`運命´ってヤツなんだろうさ)
遠征軍指揮官「さあ飲め!歌え!我らの地響きは魔界まで届き、下等な魔族共を怯え震わせるであろう!」
187 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:04:55.66
ID:TmTwg4gG0 わああああああ!!
神の祝福あれ!我らに勝利を授けたまえ!!
─魔王城 王の間
メイド「人間界に動きが、『2つの世界を繋ぐ橋』人間界側の野営で決起集会が開かれました。動き出す時も近いかと」
女魔王「人間の最終戦力はいかほどか?」
メイド「当初の報告通り約100万です」
女魔王「やはり減ってはくれないか・・・ならば予定通りに事を進めよう」
メイド「御意」
女魔王「メイド」
メイド「はい?」
女魔王「もしものことがあれば、後はお前に任せる。首尾よく取り計らえ。もし、人間が略奪や虐殺をしようというのなら・・・全面戦争も仕方あるまい」
メイド「そのことは終わってから考えるとしましょう。今は目の前の懸案事項を全力で片付けるまでです」
女魔王「ふふっ、そうだな」にっこり
伝令「報告します!人間の軍が動き始めました!魔界の森を通ってこの城にたどり着くまでに3日ほどかかると思われます」
女魔王「来たか・・・」
メイド「準備を進めます」
女魔王「頼んだ」
191 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:08:48.57
ID:TmTwg4gG0 女魔王「勇者、隠れてないで出て来い」
勇者「うっ・・・」
女魔王「全く、できない子だとは思っていたが、気配も消せないのだな」
勇者「すんません・・・苦手なんです」
女魔王「得意なものなどあるのか?」けらけら
勇者「う、うるさいっ!」
女魔王「・・・」
勇者「・・・」
女魔王「あのな・・・」
勇者「本当に一人で行くのか?」
女魔王「あ、ああ・・・他に連れて行けば引き金を自ら引くことになりかねない。それだけは避けたいのだ」
勇者「俺なら弱いから引き金にはならない」
女魔王「それでも・・・」
勇者「決めたんだ、どんなに止めても俺はついていく」
女魔王「・・・」
勇者「・・・」
女魔王「わかった・・・好きにするがいい。ただし、どうなっても知らんぞ」
勇者「ありがとう」
192 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:13:31.72
ID:TmTwg4gG0 ─2日後 女魔王の部屋
勇者「女魔王、いるか?」
「・・・」
勇者「おーい、寝てるのかー?」
「・・・・・・」
勇者「空けるぞー」
「・・・・・・・・・」
勇者「・・・まさか」
メイド「そのまさかでございます」すっ
勇者「っ!?」ビクッ
勇者「あいかわらずあなたはどこから沸いて出るのですか」
メイド「メイド基本術その11、空中散歩でございます」
勇者「メイドって大変ですね」
メイド「ええ、それはともかく。女魔王様なら朝方出てゆかれました」
勇者「どこに?」
メイド「敵陣、100万人の軍勢の一番奥・・・勇者様のお国の国王様の元へ」
勇者「え・・・?」
メイド「お一人で、向かわれました」
193 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:16:59.45
ID:TmTwg4gG0 勇者「なんで言ってくれなかったんですかっ!!!」
メイド「っ!?」ビクッ
勇者「あ、ごめんなさい・・・」
メイド「問題ありません、急に大きな声をお出しになるものですから」ドキドキ
メイド「勇者様も感情が昂ぶることがあるのですね・・・安心しました。それが我が主に向けられていることも」
勇者「女魔王は・・・腐っても俺の彼女だから」
メイド「追われますか?」
勇者「もちろんだ」
メイド「女魔王様は転移魔法で向かわれました。恐らく敵陣の中心部まで一直線かと・・・
私は魔法が不得手なもので、飛ばせても軍団の一番手前までしか飛ばせません」
勇者「お願いできるなら」
メイド「了解しました」
194 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:23:44.16
ID:TmTwg4gG0 メイド「それと、これをお持ちください」
勇者「それは・・・剣?」
メイド「はい、先代の魔王様が捧げていらっしゃった剣です。私が女魔王様から管理を申し付かっているのですが、勇者様にお預けします。
もし女魔王様に何か身の危険があったらそれが役に立つでしょう」
勇者「重いですね・・・お借りします」
勇者(まさかとは思ったけど、本当に一人で向かうなんて・・・俺はそんなに頼りないか?好きな人のそばにいたいと思うのがそんなにいけないのか?)
勇者(好きな人・・・?ああ、そうか。俺はもう、`アイツ´に惚れてたんだ)
勇者(助けになんてならないかもしれない、むしろ足手まといかもしれない。けど、俺が頭を撫でられて嬉しかったように、俺もアイツが辛いときに手を握っていてあげたい)
メイド「参ります」
勇者(今、行くから)
メイド「転移魔法、発動」
勇者「待ってろよコンチクショー!!」
メイド「っ!?」ビクッ
シュンッ!
メイド「全く、いつもビクビクしていると思ったらこういう時だけやる気になるのですね・・・世界を救う勇者、あなたなら、なれるかもしれませんよ」ふふっ
197 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:31:23.81
ID:TmTwg4gG0 メイド「全く、いつもビクビクしていると思ったらこういう時だけやる気になるのですね・・・世界を救う勇者、あなたなら、なれるかもしれませんよ」ふふっ
─遠征軍 中央指令部 国王のテント
国王「首尾はどうじゃ」
部下「ハッ!我らが神の軍勢は順調に進軍し、魔王の城まであと1日を切っております。食料も十二分に確保できており、軍全体の士気も依然高く保たれております!陛下!」
国王「そうか・・・ついに、この日が来るのだな」
国王「新勇者を・・・新勇者を余の元に」
部下「ハッ!」
新勇者「呼びましたか?」
国王「おお、近こう寄れ、もっと近こう」
新勇者(ジジイに手招かれても嬉しくねーっつーの)
国王「先代の勇者は駄犬であった・・・あの者はもう勇者ではない」
新勇者「・・・はい」ブルブル
国王「勇者はお前一人だ、そうであろう?」
新勇者「はい、その通りです」
国王「そうだ、魔王の首を取れ。さすれば一生の富と名声と平穏を約束しよう」
新勇者「っ・・・、必ずや」
国王「よろしい、下がれ」
198 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:38:14.50
ID:TmTwg4gG0 シュン!
女魔王「下がる必要はありません」
国王&新勇者&側近「っ!?!?」
女魔王「突然の訪問お許しいただきたい、我が名は魔界を統べる7代目魔王、女魔王と申す者。対談の目的でここへはせ参じた」
側近「ま、ま、ま、魔王・・・」
国王「ふむ、貴様が魔族共の長か」
女魔王「いかにも」
国王「して、こんなところまで魔族の長直々に何の御用か」
女魔王「率直に申し上げる、兵を引いていただきたい。こちらに戦闘の意思はないのだ」
国王「ふおっふおっふおっ!戦闘の意思がないとな?どの口がそのような戯言を申すのか。
1月前に我が国の軍1万をさらったのはどこの魔王殿であったか?」
女魔王「あの民兵の方々は謝罪の手紙と手土産を持たせて丁重にお送りしたはずだが」
国王「知らぬな、きやつらは自力で帰ってきたと申したぞ?鬼畜魔族共に殺されそうになり、命からがら逃げ出してきたと」
女魔王「なっ・・・」
199 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:43:15.97
ID:TmTwg4gG0 女魔王「そんな嘘をついて恥ずかしいとは思わないのか、一国の長よ」
国王「その言葉、そっくりそのままお返ししよう。ふおっふおっふおっ」
女魔王「わかった、その件に関しては改めて謝罪と賠償金を・・・」
国王「必要ない、殺せ新勇者」
新勇者「は?」
国王「殺せ」
新勇者「いや、だってこの人は戦闘の意思はないって・・・」
国王「こ ろ せ」
新勇者「っ・・・わかりましたよ、殺せばいいんでしょ、殺せば」
女魔王「国王殿っ!」
国王「聞く耳持たぬわ、汚らわしい魔族の分際で」
新勇者「悪いなお嬢さん、俺は勇者だ・・・やらなきゃいけない」
女魔王「抵抗はしない、ただ・・・私の命で、この小さき命で足りるなら、兵を引いていただきたい」
国王「やれ」
新勇者「御免っ」
ドズッ・・・
女魔王(ごめんな、勇者・・・)ガクッ
201 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 17:48:46.31
ID:TmTwg4gG0 ─軍勢の最先端部
勇者「なんなんだこのデタラメな人数は・・・」
国王軍民兵「あれ・・・?あれって・・・」
国王軍民兵「あ、勇者様じゃないか!」
勇者「お前たち!!」
国王軍民兵「1ヶ月ぶりだあよ!あんときのスピーチは感動しただ!」
国王軍民兵「んだんだ、凛々しかっただよ」
勇者「ありがとう、でも今はそれどころじゃないんだ!女魔王が危ない」
国王軍民兵「なんだって!?何があっただ!」
勇者「ひとりで・・・たったひとりで和平の交渉に出た」
国王軍民兵「そげな無茶な・・・」
勇者「だから俺も行かなきゃいけないんだ!アイツのそばにいてやらなきゃ」
国王軍民兵「そんだらこの鎧を着るといいだ、勇者様は地味だから兵隊に紛れられるでよ」
勇者「なんか・・・納得いかないが感謝する!」
210 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:02:51.63
ID:TmTwg4gG0 勇者「はあっ・・・はあっ・・・」
勇者「あと少し・・・」
勇者「女魔王っ!!」
勇者「っ!?」
勇者(なんで・・・どうして!?お前は強いんだろ?100万の兵に囲まれても逃げられるんだろ!?
じゃあなんでこんなところで血流して倒れてんだよ!)
国王「来たか、駄犬」
勇者「国・・・王っ!!」
国王「一足及ばなかったようじゃの」
勇者「何をした」
国王「何も・・・見ればわかるであろう?胸を剣で突いただけのことよ」
勇者「貴様・・・」
国王「魔族に相応しいみっともない末路であったわ」
勇者「キサマアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
ギインッ!
新勇者「悪いがそれはさせない」
勇者「新勇者っ・・・邪魔するなあっ!!」
新勇者「王の御前である、下がれ下郎」
勇者「くっ・・・」
211 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:05:06.64
ID:TmTwg4gG0 新勇者「お前を信じて付いていった。自分よりはるかに弱いお前を、本当の勇者だと信じて」
新勇者「お前が一人で魔王城に向かったとき、俺は誇らしかった。俺の仲間が、戦友が、誇りを持って人間の槍となったからだ」
新勇者「だが、それをお前は裏切った。魔族側に寝返り、人間を裏切った」
新勇者「そんなお前に失望した。恨んだ、憎んだ、憎悪した、嫌悪した、そして・・・お前に殺意を抱いた」
勇者「・・・」ゾクッ
国王「殺せ、駄犬に価値は無い」
新勇者「言われなくともっ!!」
勇者「やめろっ! うわっ!!」
勇者(ダメだ・・・違いすぎる)
勇者(さばくだけで精一杯・・・いや、こいつはまだ本気でもなんでもない。これが持つ者と持たざるものの違いか・・・)
勇者(ゴメンよメイド・・・せっかく魔王の剣を貸してくれたのに、使う人間がダメだとやっぱりダメみたいだ)
勇者(あー、痛いな・・・さっきから何度もかすってる。久しぶりだな、皮膚が切れる感覚、昔はよく訓練で切れてたっけ)
213 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:13:30.34
ID:TmTwg4gG0 勇者(あ、剣にヒビが・・・もうもたないかもな。でも、女魔王と一緒に逝けるならいいかもな)
勇者(ごめんよ女魔王・・・こんな俺で・・・せめて、せめて最後だけは、一緒にいてやるからな)
バキインッ!
新勇者「最後だ、勇者っ!」
勇者(あ・・・れ・・・?)
勇者(なんでこんなにスローモーションなんだろ?」
勇者(これが世に言う走馬灯ってやつか・・・)
214 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:16:59.68
ID:TmTwg4gG0 小さな魔族の女の子「真世界の勇者様バンザイ・・・」
勇者(こんな俺に、バンザイって言ってくれた)
魔族の人たち「世界を救う勇者だってよ、魔王様とならできるんじゃないか?」
勇者(女魔王と一緒にいることを許してくれた)
民兵そんだらこの鎧を着るといいだ、勇者様は地味だから兵隊に紛れられるでよ」
勇者(俺のことを助けてくれた)
メイド「勇者様も感情が昂ぶることがあるのですね・・・安心しました。それが我が主に向けられていることも」
勇者(俺のことを認めてくれた)
勇者(みんな・・・俺を応援してくれた・・・)
「何度も言わせるな。これでも恥ずかしいんだ・・・ずっと好きだった!
私の彼氏になってくれ!これでいいか!?」
勇者(っ!!!!)
勇者「負けるかよ・・・」
218 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:20:50.53
ID:TmTwg4gG0 新勇者「なにっ!?」
勇者「負けるかよおおおおおおおお!!!!!!!!!」
国王「何事だっ!?」
側近「なんだ?勇者の胸が光って・・・うわっ!」
新勇者「まぶしっ・・・」
勇者(これって・・・あの竜族の子がくれた・・・)
「わたしのたからもの。りゅうぞくのおとめにうけつがれるひほう」
「いいの、ゆーしゃお兄ちゃんががんばろうとしてるから・・・これはおまもり」
勇者(最後の光でいい・・・命を燃やしてでもいい・・・頼むっ!俺を、俺を助けてくれっ!!)
???「「その願い、聞き届けよう」」
勇者「誰だ!?」
???「「我に願え、全てを掌握する力を・・・」」
勇者「頼む・・・助けて・・・くれよっ!!」
???「「お助けしよう、我が姫君が認めた勇者よ」」
221 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:24:22.32
ID:TmTwg4gG0 国王「な、んだとっ!?」
新勇者「魔界竜・・・でけえ・・・」
側近「ひええええ」
???「「我は竜の姫巫女が臣下、魔界竜ググロス」」
ググロス「「我らが姫君が認めた勇者よ、何なりとご命令を」」
新勇者(なんという圧倒的な・・・無理だ・・・絶対勝てねぇ・・・)
国王「何をしておる新勇者!さっさとあの化け物を倒さぬかっ!」
新勇者「無理だ・・・」
国王「なんじゃとっ!?」
新勇者「無理だ・・・でかすぎる・・・大きいって意味じゃねぇ、存在が、でかすぎる」
国王「貴様も駄犬か・・・もうよい、死ね」
ガキンッ!
勇者「今度はこっちの番だぜオッサン」
225 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:30:48.52
ID:TmTwg4gG0 新勇者「勇者・・・なんで・・・」
勇者「一緒に剣振って、一緒にメシ食った仲だ、死なせはしねえよ」
新勇者「俺はっ、俺はっ!お前を殺そうとしたんだぞっ!!!」
勇者「生きてる」
新勇者「は?
勇者「生きてるよ、俺は。死んでねえ」
勇者「ググロスっ!!」
ググロス「何用か、我が主」
勇者「この軍団の戦闘に行って進軍を止めてくれ!絶対に殺すなよっ、殺したら全てがパーだからなっ」
ググロス「承知」
国王「貴様・・・駄犬の分際ででしゃばるな!」
勇者「テメエこそ、いい加減目ェ覚ましやがれくっそジジイ!」
バキィッ!
国王「貴様っ!国王に手を上げるなど・・・」
勇者「うるっせええええ!お前は俺の女を殺そうとしてんだぞ!顔面グーパンくらいでガタガタほえるんじゃねえっ!!」
国王「なっ・・・」
新勇者(帰ってきた・・・)
新勇者(勇者が・・・あの勇者が・・・帰ってきた)
新勇者(ずっと俺の手を握ってくれていた、いつの間にか追い越したと思っていた。だからコイツが勇者に選ばれたとき嫉妬した。
だけど、こいつはやっぱり俺の前を歩いてたんだ!!)
227 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:34:05.97
ID:TmTwg4gG0 新勇者「おい側近!!」
側近「ハッ!」
新勇者「撤退だ!全軍を引き上げるぞっ!」
側近「は。はいっ!」
国王「何を言っている!この軍の指揮権は余にあるのだぞ新勇者!」
新勇者「アンタは今この時より王の座を外れてもらう」
国王「何を勝手な・・・」
新勇者「なあオッサン・・・こういうのなんていうか知ってるか?」
新勇者「サムライの国で下克上ってんだよ、ハゲ」
国王「なっ!余がカツラだといつからっ・・・ぐふっ」
新勇者「ちょっと寝てろ」
230 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:39:22.59
ID:TmTwg4gG0 新勇者「これで国王軍は撤退する」
勇者「そうか・・・」
新勇者「元気ねえじゃねえか」
勇者「出せというほうが難しいよ。死んだ者は生き返らない」
新勇者「死んだ?誰が?」
勇者「お前が女魔王をっ!・・・スマン、責められないよな」
新勇者「ぶ、ぶ、ぶ・・・・ぶあっはっはっはっ!!」
勇者「笑い事じゃないっ」
新勇者「笑い事だっつの・・・ぶはははははは」
勇者「お前・・・斬るぞ」
新勇者「まあ落ちついてよく見てみろよ。よく見てわからなければ女魔王のお腹の周りの血なめてみろ」
勇者「???」
新勇者「ほらっ!はやくしろよ」
232 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:44:55.24
ID:TmTwg4gG0 勇者「なあ、新勇者」
新勇者「なんだ?ぷくくく」
勇者「魔族の血ってトマト味なのか?」
女魔王「そんなわけなかろう」
勇者「女魔王っ!?」
女勇者「いや、まいった・・・せっかくのよそゆきの服がケチャップで汚れてしまったわ」
勇者「け、けちゃ・・・ええ!?」
新勇者「いや、流石に俺も女を一突きってのは抵抗があってね」
新勇者「ちょっとドンってやったら倒れちゃって」
勇者「んなアホな」
233 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:46:18.26
ID:TmTwg4gG0 女魔王「いやー、食べかけの目玉焼きの中に顔をつっこみ続けるのはちょっと辛かったぞ。でもちょうどお腹の下にケチャップのボトルがあって助かった」
新勇者「その顔の周りの赤いのははなぢだろ?さっきの勇者は格好良かったもんなー」げらげら
女魔王「う、うるさいっ!今まで色恋沙汰とは無縁の世界にいたんだ、仕方あるまいよ」
勇者「お、お前ら・・・」
女魔王&新勇者「「ん?」」
勇者「ええ加減にせぇよー!!!!!!!!!」
この時の勇者の咆哮は魔界を4度往復したと伝えられている。
FIN
231 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 18:43:40.63 ID:XW/T3ug+O
新勇者の心情やポジションがよくわからん
新勇者の過去話必要だったんじゃね?234 :
◆wV/dOv7SG. :2010/11 /20(土) 18:48:19.48
ID:TmTwg4gG0 >>231
それ自分でも書いてて思いました
勇者の幼馴染(学友)的なポジションが一番しっくりくるかなと
236 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 18:49:19.10 ID:zJtwtNryO
乙
面白かったわ238 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 18:50:03.78 ID:to6oHbJP0
途中までおもしろかった245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 18:53:42.17 ID:dfGONXVt0
乙
読んでて恥ずかしかった247 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 18:54:01.95 ID:to6oHbJP0
書き溜めが切れると推敲してない分おもしろくなくなる まあ、でも十分楽しめた
次立てるときは書き溜め最後までしといてくれ239 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11 /20(土) 18:51:43.61 ID:5t3bHxXO0
乙
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