「んーっ……」
カーテンの隙間から漏れた日差しを受けて目を覚まし、横になったまま寝起きの身体をぐーっ と大きく伸ばす。続いてゆっくりと起き上がると、僕は目をぱちぱちと何度か瞬かせた。
昨夜は 早く眠りについたお陰か、普段のように大きな欠伸が出るなんて事もない。目覚めは実に爽快だ。
何だか今日一日は、不思議と何でも上手く行きそうな気がする。まあ、実際はそんな事は全然な いんだろうけど……それでも、気分がいいに越した事はないよな。
ベッドから降りて立ち上がると、窓まで歩み寄ってカーテンを全開にした。
温かい春の日差しが、僕の全身をぽかぽかと照らす。
昨日に負けないくらい、気持ちのいい朝だ。
まるで新しい門出を迎えた僕を、祝福しているようにも感じられる――。
(……今日から、本格的に学園生活が始まるんだよな)
振り向いてからざっと見渡したこの部屋は、僕の部屋と言えば僕の部屋なんだけど、決して住み慣れた実家の部屋じゃない。
ここはとある学園の敷地内にある寄宿舎の一室で、これから僕が新しく生活を送っていく場所なんだ。……そう。新しい門出、新しい生活。
――私立、希望ヶ峰学園。東京のど真ん中にある、他の高校とは一線を画す政府公認の超特権的な学園。
入学希望者の募集はしておらず、学園自らが超一流の才能を持った高校生を全国からスカウトして、その才能の育成や研究を日々行っている。
そんなとんでもなくすごい学園に、僕も昨日無事に入学を果たしたんだ。
まあ、僕が入学出来たのは『運』のお陰なんだけど……。
それでも、入学出来た事に変わりはないんだ。
だから、出来うる限りの力を以って頑張っていきたい。
個性豊かなクラスの皆と……そして、再会を果たした『彼女』と。
「もう起きてる……かな?」
窓枠に背中を預けてそう呟きながら、横の壁に視線を移す。
規則正しい彼女の事だから、僕より早く目を覚ましてるのかもしれない。
……会えるのをずっと心待ちにしていた彼女との再会だけど、それは残念ながら情けない形での物となってしまった。
ハンカチを拾ってあげた相手がその人だったとか、不良に絡まれてる所を助けてあげたとか、決してそんなかっこいい展開なんかじゃない。
寧ろ、誰が聞いてもかっこ悪いと感想を抱くような物だったと思う。
実際、家族に話したら案の定笑われちゃったし……。
けど、別にそれでも構わない。だって、例えかっこ悪くても――僕達の再会がドラマチックだったと言う事に、何ら変わりはないんだから。